わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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エピローグ 天駆ける騎士団を目指して

「よくぞ戻った。此度の『銀百合騎士団』の活躍、まことに見事である」

 

 帰還後、国王からはお褒めの言葉と報奨金をいただいた。

 

「其方らには今後ともセルジュを助け、隣国との友好の架け橋となってもらいたい」

「お待ち下さい、陛下。その役目、我らにお任せ頂きたく」

 

 口を挟んだのは男性騎士団の騎士団長。

 例の嫌がらせ男──と考えるとアレだけれど、彼の表情に悪意はなかった。

 むしろ、あるのは誠意。

 

「隣国の復興支援、および殿下の護衛となれば一定期間の滞在が必要となります。そういった任務は我々こそ適任でしょう」

「ふむ。……確かに。では、現在隣国に残っている『銀百合騎士団』と交代で騎士団員を派遣するものとする」

 

 騎士団長が女性の心配をしてくれた……!?

 まあ、純粋な配慮というよりは「隣国で結婚でもされたら重大な損失」という方向性だろうけれど、十分に驚きである。

 でも、長期出張にあまり向いていないのはその通り。

 

「精一杯、務めさせていただきます。……エリザベート騎士団長、派遣までの間、選抜メンバーの鍛え直しに協力していただきたい。頼まれてくれるか?」

「もちろんですわ。隣国には可能な限り優秀な人員を送りたいですもの」

 

 とはいえ、全く『銀百合』が関与しないわけにもいかず。

 

「シルヴィア。其方には隣国各地の浄化を頼みたい。他に魔族が紛れていないとも限るまい」

「かしこまりました。……ただ、さすがに時間がかかると存じますが」

「ゆっくり行ってくれて構わない。準備も含め、数年がかりの計画となるやもしれぬな」

 

 土地が浄化されれば収穫量も上がり、魔物被害は少なくなり、輸入品の価格もその分下がる。こっちとしてもいいことは多い。

 シルヴィアは国王の頼みを了承したものの、

 

「さすがに何回も往復するのは遠いよ! わたし一人で飛んでいっていいならまだしも!」

「さすがにそれは困りますわ。……まあ、次回からは馬車の速度で移動できるでしょうけれど」

「それでも遠いよ。移動だけで何日もかかるんじゃもったいなさすぎる」

 

 今回は往復だけで一月近く。滞在期間も含めると約二ヶ月の任務で、帰ってきた頃には五月になっていた。

 その間に騎士団には新人も入ってきたわけで。

 責任者が本部を空ける期間は少ないほうがいい。今回みたいに上層部がごっそりいなくなるなんていうのは特にだめだ。

 まあ、代わりに騎士団を回してくれる人材は残していたのだけれど。

 

「いっそのことあなたたち、後任に席を譲ってしまえばいいんじゃないかしら?」

「マルグリットさん! 身体の具合はどうですか?」

「順調よ。サラも元気」

 

 シルヴィアたちから騎士団を任された上級騎士マルグリットは、だいぶ大きくなったお腹を抱えて微笑んだ。

 さすがにこの身体じゃ剣は振れないので内勤。

 サラともども、団長以下、幹部不在時の騎士団を守ってくれた。

 隣国に行かなかったのは責任者を残すためであり、身重の身体に無理をさせられなかったからだ。

 

「触れてあげて、声をかけてあげて?」

「は、はい。えーっと……やっほー?」

「ふふっ。あなた、本当にぜんぜん慣れないわね」

「だ、だって仕方ないじゃないですか」

 

 シルヴィアたちがそんなやり取りをしていると、エリザベートがこほんとわざとらしく咳払いをして、

 

「この『銀百合』はわたくしたちの居場所として、わたくしたちが作ったものですわよ? まだ数年しか稼働していないというのに、どうして引退しなければなりませんの?」

「だってあなたたち、窮屈そうじゃない。シルヴィアの『戦略家』は普段仕事がないからいいとしても、団長や副団長は他に任せてもいいと思うわ」

 

 なにも引退しろとは言っていない、と、マルグリットは付け加える。

 

「そうね。例えば遊撃部隊とか。魔族みたいな本当に厄介な事件が起きた時や他国とのやり取りなんかを優先して解決する特殊部隊、なんていうのはどう?」

「……なるほど。少し格好良くはありますわね」

「身軽になるから動きやすくもなるわ。このままだとあなたたち、別行動が増えるでしょう?」

「それはまあ、なんだかんだ主力になりつつありますものね」

 

 なんだかんだもなにも、天使に半竜に吸血種にハーフエルフ、おまけに竜娘では主力に決まっている。

 

「すぐにとは言わなけれど。例えば、産後の体調が戻ったら団長は私が務めてあげてもいいわ」

「それは願ってもないお話ですけれど。……マルグリット先輩? 体よく騎士団の実権を握るのが目的ではありませんわよね?」

「そんなことしたって陛下の目が光っているし、そもそも私たちは半分身内でしょう? 持ちつ持たれつ。助け合いよ」

 

 特殊部隊となっても『銀百合』所属には違いないし、訓練等は一緒にこなすことになる。

 それから、シルヴィアを中心とした広い意味での家族──という意味でも身内なわけで。

 

「……本当に、皆様には助けられてばかりですわね」

「あら。そんなことが言えるようになったのも成長よ?」

「わたくしは昔から素直ですわ。……まあでも、クレールの手綱を握れるのもわたくしたちくらいですし」

「悪くないかもね。わたしはまだ戦略家のままでいいかもだけど」

「女性の戦略家候補なんてそうそういませんものね」

「どうせシルヴィアは戦略家関係なく首を突っ込むんだから、肩書だけ持っておきなさい。十年でも二十年でも特に問題はないでしょう?」

「そうですね。幸い、寿命は長いもので」

 

 翼をぱたぱたと動かして笑う。

 自由にみんなで動けるようになるのはそれはそれで楽しそうだ。

 

「シルヴィア。自由になったらしてみたいことはありませんの?」

「そうだなあ。やっぱり移動手段が欲しいかな。できれば空飛ぶ拠点」

 

 隣国とのやり取りをするならそれくらい欲しい。

 と、エリザベートは苦笑を浮かべて、

 

「のんびりする方向の話だったのですけれど。まあ、シルヴィアらしいですわね」

「のんびりする話だよ! ほら、そういうのがあればクレールの夢も叶えやすいし、エルフの国にも行けるかもだし!」

「まず『空飛ぶ拠点』などというものが絵空事なのですけれど」

「そこはほら、リゼット様に相談して研究したらなんとかならないかな」

 

 全く望みがないわけではない。

 飛行船の原理なら、天使の里に行けばそれっぽい書籍が見つかりそうだし。飛行能力の部分を物理法則で補えれば魔力消費は少なくてすむ。

 するとマルグリットがくすくすと笑って、

 

「なら、まずはその研究をしてみればいいんじゃないかしら。騎士や魔法使い、聖職者、垣根を越えたあなたたちでないとできないことかも」

「そうですね。それは楽しそうです」

 

 この構想はやがて現実のものとなり、一年後には『銀百合騎士団』別働隊としてシルヴィアたちは新たな立場を得ることになった。

 団長ならぬ隊長にエリザベート。ラシェルが「ボクもこれからはヒラがいいなあ」と言ったため、副隊長はリゼット。

 もちろんクレールやプルプル、アンジェやイザベルも所属し──道楽ここに極まれり、と言うべきか、あるいはやばい精鋭部隊と言うべきか。

 

 部隊の名前は『銀翼』。

 

 やがてその名前は、シルヴィアたちが完成させた世界初の飛行船と共に世界に知られ、長く認識され続けることになる。

 

 

 

 

 

−−−−−−−−−

本編終了です

お付き合いくださりありがとうございました

 

……と言いつつ、後日談があと1章分くらい続きます

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