わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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飛行船を作ろう! 3

「それで使用人が増えることになったわけね」

「どうぞよろしくお願いいたします」

 

 恭しく頭を下げるシャッテはトー家使用人のお仕着せ姿だ。

 わりと最近まで仕様は統一していなかった──ゼリエのは一般的なデザインだし、スリスのものもそれに倣った。ヴァッフェとティーアは好き勝手なのを着ていて、屋敷を手に入れた際に雇用した面々は以前からのメイド服。

 ただ、それだとどこの家のメイドかわかりづらい。統一するか、役割ごとに分けるかしたほうがいいということで一斉に新調した。

 新しいメイド服は現場の人間の声とシルヴィアの趣味を反映したものだ。

 もちろんスカート丈はロングである。これは譲れない。あと、いざという時動きやすいように(普段は目立たない程度に)スリットが入ったり、胸だけはだけられる仕様に。

 いや、後のは断じてシルヴィアが希望したわけではないのだけれど。

 

「三十人近くいたので、さすがにこの屋敷だけじゃ持て余しますし、イリス様の商会でも何名か雇っていただきました。残った半分は騎士団本部の清掃や物資の管理、その他雑用をお願いしています」

「とても助かるけれど、彼女たちは間諜の類ではないのよね?」

「ご安心を。全員、シルヴィア様の神聖魔法で誓約を済ませております」

 

 そのほうが安心だろう、と、あっさり誓約を受け入れてくれた。覚悟の決まり方がすごい。

 

「それはそれは……本当に願ってもないわ。これから人手も必要になるだろうし」

「トー家の使用人も減るだろうしね」

 

 と、シルヴィアの報告を受け止めているのは騎士服ではなく普段着姿のマルグリットとサラだ。

 二人は揃って産後の休養中。

 形式的にはシルヴィアと結婚してトー家の一員になっているので、シルヴィアの屋敷内に部屋を用意して使ってもらっている。

 

「わたしのメイドは年かさの元巫女や、元伯爵家のメイドが多いですからね。加齢や結婚で引退するなら引きとめるわけにはいきません」

「その点、我々は簡単には死にませんし老いませんのでご安心を」

「私たちとしても助かるわ。メイドの手が足りないままじゃ、いつまで経ってもこの子と遊べないもの」

 

 これはメイド姿のヴァッフェ。

 マルグリットたちが妊娠・出産したのもあって「私にも」と最近よくせっついてくる。

 シャッテ以下、新しくメイドとなった吸血種たちに仕事を教えたら希望を叶えてやらないといけない。

 視線を向けられたシャッテも静かに頷いて、

 

「ご用命とあらば夜伽も承りますのでお気軽にどうぞ」

「それじゃ私の出番が遠のくじゃない」

「あはは……。うん、まあ、その」

 

 美人にそう言われると満更ではないけれどもさすがに多少は空気を読むべきというかなんというか、シルヴィアは笑って誤魔化した。

 

「でも、本当に良かったです。これから育児も加わってきますから」

「基本的には人に任せればいいけれど、それも余裕がないと難しいものね」

 

 マルグリットとサラが産んだのは、遺伝子的には──というか、血縁的にはシルヴィアとの娘だ。

 シルヴィアにとっても初めての子供ということになるけれど、この子たちに関しては「親」と名乗らないことにした。

 少なくとも表向きにはマルグリットとサラの子として育ってもらう。

 そのほうが二人にとってもいいだろう。

 

 ちなみに生まれた子は二人とも、人間に準じた見た目だった。

 シルヴィアやアンジェ同様、素質がある場合は後から聖紋が現れるのかもしれない。

 

「吸血種がこれだけいれば安心でしょう。下手な私兵を置くよりよほど強力だもの」

「お任せください。これでも上位種の端くれ、感知能力も人並み以上のものを持っております」

「ありがとう、シャッテ。……うーん。上位種相手に敬語を使わないのも違和感があるけれど」

「お気遣いなく。むしろ多少高圧的に見下していただくくらいのほうが捗ります」

「え」

「いっそのこと踏んでいただいても構いません」

 

 冗談、ならいいのだけれど、たぶん半分以上本気だな、とシルヴィアは思った。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 きゅー。

 

 しばらく前から、騎士団に行くと白いふわふわした生き物が飛んでくるようになった。

 白い羽毛の翼を持ったうさぎさんである。

 彼ら(彼女ら?)は人懐っこく、人にじゃれるのを好む。

 

「よしよし、元気にしてた?」

 

 きゅー。

 いや、うん、本物のうさぎはこんな鳴き方はしない。ついでに言うとこの子たちは食事を必要とせず、太陽の光だけで生きる。

 おまけに排泄とかもしない。うさぎ好きにとってうさぎさんの出す小さなアレは決して汚いものではなくむしろ愛おしむべきものだったりするのだけれど、それはそれ。

 この子たちはシルヴィアのイメージが影響した半魔法生物なので都合がいいのだ。

 

「この子たちもずいぶん増えてきましたよね」

 

 訓練をしていたのか、弓を手にしたイザベルが寄ってきて微笑む。

 

「ゼリエが頑張ってくれてるからね。あと、自分たちでも増えるみたいだし」

 

 フェザーラビットと名付けられたこの生き物は、隣国での決戦時に作り出されたのと同種。ゼリエが新たにこちらで作り出した個体である。

 見たところ全部メスなのだけれど、気づくと子うさぎが増えていたりする。可愛い見た目のわりに上位種の条件を一つ満たしている。代わりに人型をしていないので上位種認定はされないのだけれど。

 

「この調子だと向こうでも増えていそうですね」

「あはは。そのうち名物になっちゃうかも?」

 

 生き物としては特に害がない。どころか、怪我をしている人がいると寄ってきて癒やしをかけてくれる。力を使いすぎると、ぽん、と消えてしまうのでそこは注意だけれど。

 

「長生きしていっぱい毛を取らせてね?」

「それじゃシルヴィアさんの身代わりじゃないですか」

「でも、わたしだけで糸の供給を賄うのは無理だよ!」

 

 新たにフェザーラビットを作り出した理由の一番は、飛行船のバルーン部分に必要な糸を作るためだ。

 軽くて丈夫、浮遊とも相性の良い素材として目をつけられた「天使の羽」。

 実際、ある程度の量を集めて糸を紡いでもらったところ軽くて綺麗で丈夫な仕上がりになった。これならバルーン部分の軽量化に使えそうだ……とはなったのだけれど、癒やしをかけて羽を回復させながらむしり続けても必要量にはなかなか足りない。

 

『わたし一人じゃ絶対無理!』

 

 かといってアンジェに協力してもらえば解決、というレベルでもない。

 どこかに似たような素材はないか、と思案したところで思い出したのがこのうさぎさんだった。

 試しにゼリエに呼び出してもらって手触りを確かめたところ、シルヴィアの翼と遜色ない感触。というわけで、代替素材の入手先として呼び出せるだけ呼び出し、騎士団本部内をふわふわしてもらうことになった。

 女性ばっかりの団員からは「可愛い」と好評だし、勝手に抜けた毛を拾い集めるだけならうさぎたちにもストレスはかからない。

 羽を引っこ抜かれては自分に癒やしをかける天使の図よりはずっとマシな光景であり、おかげで飛行船づくりも一歩前進した。

 

 日数が経ってゼリエのポイントが回復すれば数を増やせるし、うさぎたちの繁殖も進む。日ごとに毛の回収効率も上がるので、そのうちまとまった量を確保できるようになるだろう。

 

「よろしくね、みんな」

 

 きゅー!

 シルヴィアの言葉がわかっているのかいないのか、白くて可愛いふわふわたちは元気に返事をしてくれた。

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