わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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エルフの国の姫 1

「ステファニー様。それではまた今度、お目にかかりにまいりますね」

「うんっ。……じゃなかった。ええ、待っています」

 

 きゅー。

 この国の次期王位継承者となった王女には二羽のフェザーラビットを贈った。ステファニーはこれに名前をつけて可愛がってくれており、本人(?)たちもとても元気そうだ。

 ただ、つけられた名前がシルとヴィなのはちょっと恥ずかしい。

 ステファニーのところへ顔を出して話をするのは恒例。

 女性騎士はけっこう護衛任務で顔を合わせるのだけれど、シルヴィアは護衛に参加しないのでこうでもしないと会う機会がない。

 ステファニーも会いたいと言ってくれるので、長期の仕事でもない限りは通うようにしている。

 

「シルヴィア様。それでは、陛下にお目通りを」

「かしこまりました」

 

 城に来るとついでに国王のところに呼ばれる。

 単に現状報告をしたり、単なる愚痴を聞かされて終わることも多いのだけれど、やっかいごとを相談されることもけっこうあって。

 

「エルフの国から交流の申し出があった」

 

 今回もその類だった。

 割と高確率で難題を言われるなあと思いつつ、自分たちの側からも「飛行船を作りたい」だの「吸血種をメイドにしたい」だの言っているので文句も言いづらいシルヴィアである。

 例によって偉い人しかいない空間をもう一度確認してから、

 

「エルフの国というと、リゼット様の……?」

「うむ。リゼットのもう一人の母親が住まう国だ」

 

 シルヴィアの結婚相手の一人であるリゼット・プレヴェール──プレヴェール家は彼女の籍を残すことを希望しなかったため正確にはリゼット・トーと名が変わっている──は、この国の前正室(故人)とエルフの国の王女との間に生まれた子だ。

 正室が不義の子を産んだ。しかもそれが上位種であるエルフ相手となれば当時、国は大いに荒れたことだろう。

 それ以来、エルフの国と大きな交流がなかったのも、リゼットが貴族学校で十年以上籠の鳥になっていたのも、その時の軋轢が原因。

 

「ということは、先方はご存命なのですね?」

「エルフは寿命が長いからな。そして、今回も彼女が訪問を希望している」

「……もう一人のお母上はもう亡くなられておりますが……」

「だからこそ、忘れ形見と顔を合わせたいのだろう。愛し合った女の面影を持つ子だ。可愛いに決まっている」

 

 ため息をつく国王。

 

「できれば、もっと早く会わせてやりたかったのだがな」

「難しかったでしょう。反発を招くことは容易に想像できます」

 

 国王はこの通り、かなり先進的な考え方のできる男だが、国自体には男尊女卑、血統主義的な考え方がはびこっていた。

 最近までそうだったのだから、当時はもっとひどかったはず。

 正室を孕ませ血を穢された恨み、年かさの貴族ほど記憶に残し、恨みに思っていたはず。あるいは今もか。

 国王は「だが」と笑みを浮かべ、

 

「今ならばもう一度、招く事もできよう」

「……わ、わたしのせいでしょうか?」

「其方のおかげだ。都もずいぶんと風通しがよくなり、賑やかになったからな」

 

 以前に行った都全体の浄化により、国内貴族の多くが「シルヴィアへの偏見」だけでなく「積年の恨みつらみ」をも一度リセットさせた。

 論理的に見て自分たちの受けた被害については理性面で反感を覚えるだろうし、それはどうしようもないけれど、感情や生理の面で「なんとなくエルフは嫌い」という感情はなくなったはず。

 加えて、天使に竜に吸血種に翼の生えたうさぎが闊歩する今の都に今さらエルフが増えたところで大した問題はない。

 

「ですが、招く形でいいのでしょうか? 順番を考えるとこちら側が訪問するべきかと思うのですけれど」

「相手国が訪問を希望している。向こうからすれば、短命の我らに遠出をさせるのは心苦しいのだろう」

「ああ、なるほど」

 

 寿命の差を考えると、例えばこっちに五年くらい滞在しても「ちょっと短期留学した」くらいの感覚なのだろう。

 逆に人間が外国に五年もいたら「そのままそっちで暮らすの?」と言われる。

 それならば来てもらったほうがいいかもしれない。

 話をもらった瞬間、エルフの国まで旅するプランも頭をよぎったけれど、

 

「飛行船が完成すれば遠出ももう少し楽になると思うのですけれど」

「まだまだ完成には程遠いであろう?」

「ええ。試作を終えるにも年単位で時間がかかるのではないでしょうか」

 

 空の旅はもう少しお預けである。

 

「ということは、護衛のお話でしょうか? 上層部で相談し、騎士の割り振りを決めたいと思います。先方の人数や役職がわかりましたらお教えいただければと」

「うむ。いや、もちろんそれも必要なのだが、もう一つ重要な相談がある。彼女らをどこでどうもてなすか、だ」

「どこというと……」

 

 そこまで言ってシルヴィアは気付いた。

 国賓となれば通常は城でもてなす。けれど、向こうが会いたがっているのはおそらくリゼット。そのリゼットはあまり城に寄り付かない。

 会う時にいちいち城を出て訪問するというのも手間だし、その場合、エルフご一行様が顔を出すのは──『銀百合』の本部かシルヴィアの屋敷?

 

「……相手方の人数によっては最初からトー家にお招きしたほうが好都合でしょうか?」

「と、いう話になるわけなのだ」

 

 なぜ国賓がいち子爵の家に滞在するのか、という話ではあるものの、リゼットがシルヴィアの結婚相手なのだから仕方ない。

 騎士団の寮で引き受けるとなると騒音だとかの問題があるし。

 

「ですが、その。さすがに手狭かと思いますし……我が家で主導するとなると、なし崩しに失礼な対応をしてしまいかねないかと」

「失礼な対応というと?」

「エルフは魔法に長けていると聞きます。飛行船制作に良い知恵を貸していただけるのではないでしょうか」

「確かに、客に頼む事ではないが、当人が了承するのならば構わないのではないか?」

 

 王様、なかなかに大胆な采配。

 

「客人としてもただ滞在するよりは気が紛れるであろう。加えて、其方らの傍にいてもらった方が貴族らの反感も抑えられる」

 

 かつて正室を孕ませた女が再びやってくる。もう一度やらかすのではないか、と思うのは人の常。城に置いておくと警戒は強まるけれど、シルヴィアの家なら「ああ、あの天使様ね。それならまあいいか」となる。

 シルヴィアが女性を好んでいることは周知の事実だし、同性婚も国王によって許されているからだ。

 

「ここだけの話、我はリゼットがエルフの国に行く事になっても構わないと思っている。あるいは、この国に新たなハーフエルフが増える事もな」

「……陛下」

「さすがにステファニーを誘惑されるのは困るがな。それだけはなんとか其方らに阻止して欲しい。必要であれば誘惑してくれても構わん」

 

 それはまあ、セルジュが隣国へ行ってしまった今、唯一の次期王位継承者を失うわけにはいかないだろうけれど。

 その場合の「誘惑していい」というのは果たしてエルフたちを指すのか、それともステファニーを指すのか。

 シルヴィアはいったん「かしこまりました」と答えつつ、

 

「さすがにまだステファニー様はそのようなお年頃ではないと存じますが……」

「向こうはエルフだぞ? 来訪までに一年かかるやもしれんし、数年滞在してもおかしくない。帰るまでにはステフも成人しているかもしれん」

「それはまた……積もる話もできそうですね」

 

 滞在中暇すぎて飛行船開発を手伝ってくれそう、というのも頷ける長期滞在である。

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