わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい 作:緑茶わいん
儀式の後、参加していた仲間と共に国王に相談──この際ぶっちゃけたのだけれど。
「要するにステファニー殿下はシルヴィアにご執心ですのね?」
「まだ決まったわけじゃないけど」
「決まったようなものでしょう? まさかここでカトレア・カステルでしたとはならないでしょうし」
接点で言えばカトレアもなかなかのものなのだけれど。
確かに、それならエリザベートとかクレール、アンジェのほうがまだありそうだ。
「ふむ。……それは、女同士で子供を作れる、というわけではないのだな?」
「『恩恵』内にその記述はございません。女性を惹きつける効果はありますし、魔法の成功率が上がる可能性はありますけれど」
「となると……。ステファニーに妻を取らせるかはともかく、若い世代の女と積極的に関わりを持たせるべきか」
「殿下が求心力を発揮すれば国もまとまりますし、惹きつけられた女性の能力も向上すると思われますわ」
シルヴィアのほうを見ながら言うエリザベート。
まるで「誰かさんで実証済みですわ」とでも言わんばかりである。
「これでステファニーにエルフの魔法が使えるようになればいいのだが。……ひとまず、本人にそれとなく尋ねてみるとするか」
「ご協力いたしますわ」
念の為、シルヴィア以外の人間で確認しよう(本人に直接回答されてしまうと告白も同然だ)、ということで、エリザベートとイリスがステファニーをお茶に誘い「憧れている女性はいるか」とそれとなく聞いてくれた。
「『一番憧れているのはシルヴィアよ。できるなら、ずっとそばにいて欲しいくらい』だそうですわ」
「そっかぁ……」
「それはそうでしょう。あの子に『神託』を授け、守り導き、目標を持つ大切さを教え、玉座につく機会を与えた──憧れを抱くのも自然なことだと思います」
なにもステファニーを女王にしようと動いたわけではないのだけれど、結果的にはそうなるか。シルヴィアがいなければ『銀百合』自体結成されていたか怪しく、その場合、セルジュの隣国行きも起こらなかった。
「現状でもシルヴィアがステファニー様に子を儲けさせることはできるのですわよね?」
「うん。……女王陛下自らが妊娠するのはいろいろリスクがあるけどね」
「どうしても政務が滞ることになりますね。そのための側近であり、妃ではあるのですけれど」
治世が安定しなかった場合「じゃあやっぱり女王とか無理じゃん」という風潮になりかねない。
ステファニーの王位継承がいつになるか不明ではあるものの、継承後すぐに妊娠、というのは避けるべきだ。
同時に、世継ぎを作っておくことも求められる。
「他の王族から国王神託者が出るなら、わたしはそれでもいいと思うんだけど」
「出れば、ですわね。王族だけでなく縁戚からでも構いませんけれど、そうなればステファニー様の養子に取るという方法も使えますわ」
「……平民から資格者が出る、という可能性もゼロではないのですよね?」
「それはそうですけれど、さすがにそうなった場合は首をひねってしまいますわ。王の資質とはなにを指しているのかと」
単に治世の腕前、戦争時の采配だけを現している場合、神託で『国王』と出ても、必ずしも王に向いているとは限らない。
血統を重視するのも君主の正当性を主張するうえで重要なこと。
ステファニーにしても王女であって、才能があるというだけで抜擢された庶民ではない。これが平民であればさすがに感情が追いつかない者がかなり出てきそうだ。
平民を王に戴いてしまうと、次代の王族の魔力量が大きく下がるというデメリットもある。権威的な問題だけでなく、王族の自衛を鑑みてもこれは痛い。
「まあ、もしもの話ばかりしても仕方ありませんわね」
「うん。ステファニー様自身がどう考えるかもあるし、王位継承もまだ先の話だし」
「陛下にはまだ長生きしてもらわなければ困りますからね」
少なくともステファニーが成人するまで──あと六年は待って欲しい。
そして、六年もあれば恋する相手も好みのタイプも変わるかもしれない。
「ところで、エリザベート様はもし、シルヴィアが王妃に選ばれたとしたらどうするのです?」
「そうですわね……。まあ、別に構わないのではなくて?」
「いいの!?」
「あなたは自由な結婚を保証されている立場ですし。王妃ならば愛人がいてもおかしくはないでしょう?」
「ない……かな? 王様の子供かどうかわからなくなるからいないほうがいい気がするけど」
「あなたたちに関してはその心配はないではありませんの」
確かに。エルフの魔法も百発百中なので相手がわからなくなることは避けられる。
じゃあ問題ないといえばないのか。
「とはいえ、本当にまだ先の話ですね」
これに関してはもう、なるようにしかならないだろう。
◇ ◇ ◇
シルヴィアとレーナが結婚したことで思わぬところで進展があった。
魔族対策である。
「シルヴィアとレーナが夫婦になったということは、シルヴィア様はわたくしの義理の娘ということになります」
「それは、確かにその通りですね」
まさか「お養母さまと呼んでください」とか言われるのかと思ったら、レティエは真面目な顔で、
「みなさまはもはや家族のようなもの。もしこの国に、シルヴィア様の身に危険が迫れば、わたくしは必ず手助けいたします」
「エルフの国の王女様が手助けをしてくださるということは……」
「ええ。ある程度の兵を動かす権限はある、と、考えていただいてけっこうです」
そうでなくともエルフの国は人間の国とこうして交流を持っているわけで。
もし、人間と魔族の戦争、などということになった場合、どちらにつくかは明白。
今回、魔族側につくメリット、必然性が一つ減ったことでさらに確実になった。
「人間とエルフの協力かあ。それはさすがに心強いね!」
「ふむ。とはいえ、あやつらは姑息な手段を好む。それでも万全とは言い難いが」
「でしたら、我が国とも同盟を締結いたしましょう」
「わっ!? シャッテ!?」
にゅっと生えてきた(比喩表現)吸血種メイドのシャッテがここぞとばかりに提案してくる。
「こう見えて、私も吸血種の王族の血を引いております」
「初めて聞いたんだけど!?」
「初めて申し上げました。……というわけで、有事の際の共闘、ということであれば聞いてもらえる可能性はかなり高いでしょう」
「代わりに人間を奴隷として差し出せ、と言われるんじゃありませんの……?」
「支配を好む派閥も、なにも人間を使い潰したいわけではありません。命令されるほうを好む方々に自主的に行っていただけば問題ないかと」
「確かに、人間と吸血種の混血が進むきっかけにもなりますわね」
というわけで、三国での共闘の話が進むことに。
「魔族の国は北寄りにあります。北の吸血種、南東の人間、南西のエルフと囲む形になりますね」
「面白そうな話じゃな。……そうだ、シルヴィアよ。一度精鋭を連れて竜の巣へ来るがいい。他の竜にも案内してやる」
「それ、また戦って勝ったら嫁にするとかって話だよね!?」
「安心するがいい。全員が全員、嫁を欲しがっているわけではない。……そういう者がいないとは言わんが」
やっぱりそういう話になるんじゃん!?
とは言ったものの、うまくいけば竜ともいい関係を築けるわけで。
あとクレールとかが行きたがったので、じゃあ『銀翼』メンバーで行こうか、という話に。
「セルジュ殿下の結婚式に行くついででいいかな?」
「ついで、でする話でもないと思いますけど、何度も行く手間は省けますね」
なんだかんだで築かれていく魔族包囲網。
さすがに向こう側としてもなにがしかのアクションを起こしてきてもおかしくないところだけれど、そこは徹底した個人主義、全体として動いてくることは特になく。
ここでの協力は、以降の世界情勢において大きな安定に繋がることになるのだった。