わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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男はつらいよ 新騎士団長のお悩み相談

「デュクロ。『銀翼』抜きの『銀百合』と演習を行ったとして、我々に勝ち目はあると思うか?」

「はっ。……恐れながら、百に一つ程度の勝ち目しかないかと」

「おい。はっきり言い過ぎだろう、いくらなんでも」

 

 ダミアン・デュクロは、先日新騎士団長に就任したばかりの先輩騎士に「申し訳ありません」と答えた。

 新団長は若い。

 ダミアンに比べるとかなり上だけれど、騎士団長に抜擢されるには普通なら早すぎる。ある程度の求心力を持つ中ではかなり「新しい時代に則している」男だ。

 彼は「まあ、お前が言うならそうなんだろうな」とため息をついて、

 

「で? 具体的にどんなところが俺達との差を産んでいると思う?」

「『恩恵』ですね」

「……だよなあ」

 

 再びのため息。

 

「なんとかならないのか。向こうはほぼ全員が『恩恵』を使いこなしているのに、こっちは手探りだぞ?」

「そう言われましても、そっちはそっちでなんとかしろ、と言われるだけかと」

「形式上団が別と言っても俺達は同じ国の騎士団だぞ?」

「その同じ国の騎士団相手に嫌がらせや妨害を行っていた騎士団がありましたので」

「……身から出た錆とは言え辛いところだな」

 

 ダミアンがわざわざ名指しで呼ばれたのは、彼が一番『銀百合騎士団』に詳しいと思われているからだ。

 彼にしたところで『銀百合』の立ち上げメンバー、その学校時代を知っているにすぎないのだけれど。

 

「この際だ。知っている範囲でどんな奴がいるか聞かせてくれ」

「彼女らが頭角を表すのはおおむね入団後です。私が知っている内容も限られますが」

「構わん。それでも他の奴よりは詳しいだろう?」

「そういうことでしたら」

 

 と、ダミアンは少し考えて、

 

「『銀翼』のメンバーを除外、新たに団長となったマルグリット様、サラ様も除くとして、有名なのは『騎士団最速の女』でしょうか」

「ああ、彼女か。あれは本当に、その、なんというか意味がわからんな」

 

 彼女は乗り物の名手だ。

 彼女が乗るだけで乗り物の性能が上がる。

 といってもこれまでは馬か馬車くらいしかなかったのだけれど、件の飛行船を任されたらこれも見事に操ってみせたらしい。おそらく海の上を走る船だろうと扱えるだろう。

 しかも、乗っている時間が一定に達するたびに特異な異能を獲得する。単発な上に種類があり選ぶことはできないものの、得たものを保持しておくことは可能なので「ここぞ」という場面で多用することもできる。

 

「強行偵察、撹乱、伝令──使い道が多すぎる」

「シルヴィア・トーはいずれ彼女用に、空を駆ける一人乗り用の乗り物を開発したいと言っておりました」

「勘弁してくれ。そんな奴を一体どうしろというんだ」

 

 彼女と並んで名が挙がるのは、隣国の一件にて偵察の大役を任された『潜入の鬼』だ。

 

「『潜入の鬼』も曲者です。彼女の偽装は、傍から見ればそれほど優れているわけではありません。しかし、騙される側に回ると非常に見破りづらい」

 

 極端な話、緑の服を着て草むらに潜んでいるだけでなかなか発見できなくなる。

 

「敵から奪い取った剣や通路に置かれた調度品、割れた窓の欠片──その場にあるものを利用するのも上手く、乱戦においても能力を発揮します。ラシェル・アランブールとは別の意味で曲者ですね」

「騎士団と言っても戦争に駆り出されることは生涯で一度あるかないか。こうした異才を多く抱えていることは、日々の任務において重要だな」

 

 他国と殺し合いをするよりは悪徳貴族の屋敷を探るほうがまだ頻発する事態である。

 

「それ以外で目を惹くところですと……正確には協力要員の魔法使いですが『札の魔女』も厄介な相手です」

「ああ。何をしてくるか非常に読みづらく、相手取るのに苦労するとか」

「ええ」

 

 詳しくは知らないが、なんでも彼女には「この状況で自分が使うべき魔法」が「自分にしか見えない札」となって見えるのだとか。

 札を選んで魔法を行使すると威力が非常に上がる。

 札を無視して行動することもできるものの、それでは並の魔法使いと同じ能力しか発揮できない。

 代わりに、本気でノリにノっている時の彼女は比喩ではなく「相手になにもさせずに」勝利してくる。

 

「ほんの十秒ほど、呪文のようなものをぶつぶつ呟き、踊るように身振り手振りをしたかと思えば、その魔力が何倍にも膨れ上がり、視界を覆い尽くすほどの数の火の玉が降り注いでくることさえあります」

「悪夢にも程がある」

 

 残念なことに、この手の化け物がごろごろしているのが『銀百合』である。

 

「自身の魔力を100以上──136だかの断片に分けた挙げ句、そのうち14を手繰り寄せ、その組み合わせによって効果も威力も変わる『牌の魔女』も双璧です」

「なんだ牌って」

「なんでも札よりも小さく厚みのあるものを指すとか」

 

 魔女ばかりではなんなので騎士も挙げるなら、例えば──。

 

 独自のリズムでしか攻撃しない。数秒に一度訪れるその時に動くと自分自身にさえも強制力が働き、絶対的な行動となる『捉われることで捉われぬ者(アクティブターン)』。

 隠れた標的の位置さえも瞬時に見抜き、矢の交換が超人レベルに早い、そのうえイザベル・イストと異なり移動射撃も得意なクロスボウの名手『撃ち抜く者(ガンシュー)』。

 自分と相手の両方に「相手の問いに答えない限り動きを拘束される」ルールを強制する『謎掛け名人(クイズ)』。

 

「まだまだいますが、特に注意すべきという意味では『兎使い』でしょうか」

「ん? それは全く聞き覚えがないぞ? 何年目の騎士だ?」

「いえ、現在騎士学校の五年生です。まだ学生ですね」

「学生にして異名だと? というか兎? まさか──」

「そのまさかです」

 

 彼女は兎を愛している。

 特に、例のフェザーラビットの出現は革命だったらしい。

 彼女の目にはすべての兎の微妙な違いがはっきりとわかり、言葉はわからないまでもかなりの意思疎通が可能らしい。

 仲良くなった兎、六匹ほどを常に傍に置き、喧嘩の際は共に戦う。彼女に使役された兎はその力を飛躍的に増すという。

 

「自ら『恩恵』を発見した変わり種であり、自分が戦うより兎を戦わせた方が強い変人です。さすがにまだシルヴィア・トーの息はかかっていませんが……」

「そもそもあの兎達自体がシルヴィア・トーの差し金だろう」

「その通りですね」

 

 兎に懐かれ、兎の体毛同様にふわふわした翼を持つあの天使に『兎使い』が懐かないはずがない。

 争いはあまり好まないタイプらしいので騎士として使い物になるかはよくわからないけれど──ぶっちゃけた話、彼女が都中のフェザーラビットを掌握するだけですごいことになりそうだ。

 

「……本当に、『銀百合』にはそんな奴らしかいないのか」

「今挙げた者達は特に派手な面々ではありますが、地味だから侮れるわけではありません。端的に言って、彼女らは化け物揃いです」

「やれやれ。真面目に訓練するのが馬鹿らしくなるな」

 

 『銀百合』の面々ならば上位種とも渡り合えるだろう。

 ……というか、上位種とは生まれつき『恩恵』を使いこなしている者達だ。

 『恩恵』くらい使えなければ匹敵できない。『恩恵』なしで食らいつこうと思えば片腕片足塞がれた状態で剣を振るくらいの覚悟が必要になる。

 

「『恩恵』を知る方法があるなら教えて欲しいものだが」

「前にそう言ったところ『一人の暴走で都が滅ぶ可能性を受け入れられるなら』と言われました」

「誓約で縛れば──いや、無理だな。それこそ、個人が神に等しい権力を得ることになる」

 

 『あれ』はそれを望まないだろう。

 

「結局、我々は我々で努力するしかありません。腐らず、技を磨き続けていれば、後は知恵と策で打開の糸口が見つかるかもしれませんし」

「そうだな。ないものを欲しがっていても仕方ない。とにかく鍛えられるだけ鍛えるところから始めてみるか」

 

 時と共に関係が改善されれば、もしかするといつか、本当の意味で手を取り合える日が来るかもしれない。

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