わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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【番外編】騎士学校の一日

 騎士学校の朝は早い。

 日の出と共に打たれる一の鐘で起床し身支度を整える。

 

「寒い季節はほんと冷えるよね」

「魔道具でお湯を作れなかったら凍えるよ」

 

 食堂で朝食をとり、二の鐘と共に訓練場に集合。いわゆる朝練を行う。

 走り込みや腕立て、腹筋といったメニューをこなし、三の鐘が鳴ると教室で座学。

 四度目の鐘は『昼の鐘』と呼ばれ(シルヴィアの感覚で言う)十二時頃に鳴らされるため、鐘の間隔はだいたい一時間半~二時間くらい。

 貴族として基礎教養は必要、と教えられている座学だけれど、疲れが出てくるのもあって居眠りする生徒も多い。

 

「……おやすみ、シルヴィア。終わったら起こしてね」

「もう、クレールってば」

 

 座学での居眠りは基本的に怒られない。

 教師もかつて通った道なことや、やんちゃな子に私語をされるくらいならマシなのが理由。

 なお、あんまりできていないとたまに実家へ帰った時にみっちり叱られ、強制的に教え込まれるらしい。それでも居眠りしたくなってしまうのが「やんちゃな子」と呼ばれる所以というか。

 シルヴィアは眠いのを我慢してしっかり受けている。

 前世知識が活用できるのは計算くらいだ。文字や歴史は一から覚えるしかない。イザベルも眠そうにしながら頑張っていて、エリザベートは足元をそわそわさせつつも背筋を伸ばしてすまし顔をしている。

 

 昼の鐘が鳴ったら昼食である。

 お昼はあまり凝ったものを食べない。

 たいていの子は寮の食堂で作ってもらったお弁当で、これはサンドイッチが多い。単にパンとチーズ、干し肉といったメニューのこともある。

 

「食事が侘しいのが一番の不満ですわ」

「まあまあエリザベート。お腹いっぱい食べられるだけでもいいじゃない」

「それはそうですけれど。保存食の開発ももっと進めるべきですわ」

 

 ちなみに実際の遠征では魔道具の保存箱が使われたり、簡単な調理を行えたりもする。

 前世におけるキャンプとまではいかないまでも全部人力よりはだいぶマシだ。

 缶詰とかああいうのはサイズと重量がかさみやすいし、なかなか難しいところである。

 

「エリザベート様。午後の訓練のためにもしっかり食べておきませんと」

「わかっています。腹が減っては戦ができませんもの」

 

 午後は戦闘技術を中心とした訓練である。

 剣の型をしっかりおさらいさせられ、さらに簡易的な試合を行ったり、指名された生徒と教師の対戦を「見稽古」と称して観戦したり。

 もちろん教師になる人物は生徒よりもだいぶ強い。

 上級学校になると教師を圧倒する生徒もちらほら出てくるらしいけれど、今の学校にいる間は単純に体格の差などもあってそういうことはなかなかない。

 とはいえ、

 

「そろそろ先生にも勝てると思うんだけどなー」

 

 こういうことを言う生徒はたまにいて。

 

「言うじゃないか、エルミート。だが、お前じゃまだ経験不足だ」

「そう? じゃあエリザベートと二対一で試合してよ」

「おいおい。お前ら二人相手だとさすがに俺でもきついぞ」

「あら先生。女子供相手にずいぶん弱気ですのね?」

 

 ちなみにシルヴィアは教師から指名されることはほぼない。あっても「一太刀くらいは受けてみろ」とかそういう扱いなのだけれど。

 

「ええい、わかった! そこまで言うなら二対一でかかってこい!」

「やった、そうこなくちゃ!」

「男に二言はありませんわね?」

 

 学年トップ2のコンビは意気揚々と教師と対峙。

 結論から言うと、さすがに二人がかりだと強かった。

 エリザベートが型通りの綺麗な剣で次々と攻め、クレールが別方向から自由な剣さばきで隙を狙う。

 速く正確な剣と、力強く重い剣。

 さすがに教師も経験豊富、ステップなどを駆使してしばらくは持ちこたえたものの、手数の差もあってあえなく降参を宣言した。

 

「……はあ。二人がかりとはいえ女子供に負けるとはな」

「ふふん。子供だからって舐めてるからだよ」

「ええ。わたくしたちも日々進歩しているのですから」

 

 これを受けたほかの生徒も「二対一なら意外と勝てるんじゃないか?」と声を上げて。

 

「先生! 俺たちとも試合してください!」

「構わんが、お前達相手ならまだまだ俺が勝つぞ」

「エルミート達がそんなに強いって言うんですか! 俺たちだって!」

 

 意気揚々と突っかかっていった男子二人は教師に軽く転がされて。

 

「三対一でちょうど良さそうだな」

「じゃああたしたちとシルヴィアで」

「ははは。二対一よりは勝ち目がありそうだ」

 

 さすがに若干むっとしたのでクレールたちに目配せ。

 普通に戦ってもらいつつ、戦術コマンドで支援した。

 相手の力量を見誤った教師はさっきよりもあっさり降参して、

 

「さらに動きが良くなるとはな。シルヴィアは何もしていないが」

 

 戦術コマンドは見た目に作用しないので、結局評価は変わらなかった。

 

 

 

 

 

「先生にも勝ったし、今日はいい日だね!」

「わたくしとしてはクレール、あなたに勝利したいのですけれど」

「いつでも相手になるよ! あたしが勝つけどね!」

 

 授業が終わった後は自由時間。

 自主訓練をしてもいいし、部屋に戻って休んでもいい。街に繰り出すのはさすがに時間的にも体力的にもなかなかの無茶だけれど。

 シルヴィアは夕食までの時間を休憩に使うことが多い。

 自主練まですると身体が追いつかないからだ。

 ただ、一人で部屋に戻っても手持ち無沙汰。クレールたちが自主練するのを傍に座って見守ったり、読書をして過ごすようにしている。

 最近は部屋で神聖魔法の練習をすることもあるけれど。

 

 クレールたちが切り上げるまで一緒にいると一緒にお風呂に入れる。

 いや、裸が見たいとかではなく。

 人数が少ないのもあって女湯は混みあいづらい。授業終わりすぐだと利用者がさらに少ないのでちょっと寂しいのである。

 魔道具のおかげでいつでも温かなお風呂に浸かれるのはいいところ。

 髪も洗えるし、清潔な状態で寝床に入れるのもありがたい。

 城や貴族家、卒業生が寄付をして設備を維持してくれているおかげである。

 

「わたしも大きな収入があったら寄付しないと駄目かなあ……」

「あなたはその前にドレスやアクセサリーを用意するべきですわね。パーティに招かれたらどうするつもりですの」

「わたしを招くような貴族様はいないよ」

「じゃああたしが」

「わたくしが招待してもよろしくてよ?」

「私の男爵家でしたら気楽に来ていただけるんじゃないかと」

 

 無理に招待してくれなくてもいいのに。

 まあ、もし本当に招待されたらとりあえず制服で済ませるだろう。アクセサリーはダミアンからもらった──むしり取った? 指輪があるし。

 

「どっちにしても貴族学校へ行ったら校内パーティもあるでしょう。きちんと予算は残しておきなさい」

「お金はなるべく貯めるようにしてるけど……そっか、そういうのもあるんだよね」

 

 むしろそういった場での作法を学ぶのも大きな目的の一つだ。

 

「貴族ってお金がかかるんだね」

「当たり前です。代わりに責任を負い、力を尽くす義務がありますけれど」

 

 この時はまだ、近い将来男爵に任命され、メイドまで雇うことになるとは夢にも思わないシルヴィアだった。

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