わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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味方がハードルを上げてくる

 国や貴族からの要請に拘らない、という案はその場で検討され──結果、実際に提案されることになった。

 その前にまずは上級騎士学校──エリザベートたちの在学する学校へ行き、ほかの仲間たちに了承を取った。

 

「じゃあいっそのこと女子みんな呼んじゃおうよ!」

 

 話のさわりを聞いたシルヴィアの親友、クレールは「いいこと思いついた」とばかりに目を輝かせ、上級生を含む女子たちに声をかけてまわり始めた。

 

「これはなんの騒ぎなんだ? シルヴィアまで来て、またなにか企んでいるのか」

「ダミアン。別に企んでないよ。新しい騎士団の話だから男子には関係ないだけ」

「十分企んでいるじゃないか」

 

 旧知の男子からは呆れられてしまったものの、そこを気にしている場合じゃない。

 クレールに声をかけられると学校中の女子のうち半分以上が集まった。

 

「持つべきものは人当たりのいい友達だね」

「本当に、クレールさんの物怖じしない性格は宝だと思います……」

 

 親友の一人、男爵令嬢のイザベル・イストはシルヴィアの呟きにしみじみと同意してくれた。

 なお、集まった場所は屋外の訓練場である。

 大人数で集まれる部屋はそうそうない。ならば逆に屋外に出てしまえばいい。

 周りになにもないほうが潜伏のしようもないので逆に話がしやすい。

 

「それで、なんの話なの?」

「ええ。実はこういった事件がありまして──」

「国から資金がもらえないって大問題じゃない!」

「慌てないでくださいませ。デュヴァリエ公爵家やアランブール侯爵家、他にも資金援助を申し出てくれている個人がいくつかあります」

「そのうえで、わたしたちは新しい騎士団を『みんなのための騎士団』にしたいの」

 

 この世界には魔物がいる。

 人を襲う凶暴な生き物を討伐するのも騎士団の任務だけれど、彼らだけでは正直手が足りていないのが現状。騎士団は要人護衛なども行うために魔物討伐以外でも忙しいのだ。

 代わりに魔物を倒しているのは冒険者や神殿。

 新騎士団では彼らと連携して魔物を狩ったり、商人の依頼を受けて馬車を護送するなど様々な仕事をこなすことにする。

 

「泥臭いお仕事が増えるということでは?」

「騎士自体、人や魔物の血に塗れる仕事ですわ。それは変わらないのではなくて?」

「それに、メリットもあります。お城からの資金は潤沢とは言えませんが、持っているところから謝礼として受け取れるようになればみなさんのお給料も増やせるんです」

「装備も更新しやすくなるよね」

 

 もともとシルヴィアたちは神殿と連携するつもりでいた。

 

「既にとある商会の協力も取り付けております」

 

 正確に言うと「将来できる予定の商会」だけれど。

 

「そういうことなら、私はいいと思う」

「男にやられっぱなしで泣き寝入りなんて嫌だもんね!」

「さすが、騎士見習いは血の気が多いよね!」

 

 笑うクレールはどこからどう見ても嬉しそうである。

 

「偉い人を殴ったりしないか心配だけど……」

「そういうシルヴィアさんも発想がけっこう騎士よりだと思います」

「そうかな? ……そうかも」

 

 というわけで、賛成多数により可決。

 まあ、嫌だと言われても「女性の騎士団を新設する」こと自体は認可されているわけで、将来騎士になるのであれば彼女たちには味方してもらうしかないのだけれど。

 一緒に頑張っていくのであれば納得してもらったほうが絶対にいい。

 

「それじゃあ、次はエリザベートのお父さんに相談? ……これ、先にお父さんに話を通したほうが良くなかった?」

「構いませんわ。敢えて先に見習いのみなさんへ話を通したのです」

 

 不敵に笑ったエリザベートは「というわけで」とシルヴィアを見つめて、

 

「明日、お父様へ直談判しに行きますわよ、シルヴィア」

「え、わたしも行くの!? っていうか明日!?」

 

 いきなり公爵様に会いに行くとか言われても。

 

「あら。ラシェル先輩の代わりにもう一人くらい責任者が必要でしょう? それに、頼っていいと言ったのは誰だったかしら?」

「うう、もう。わかった。わかったから。行けばいいんでしょ」

 

 というわけで、シルヴィアはすぐに貴族学校へとんぼ返りして準備を始めることになった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 公爵家に着ていく服がない。

 ……とはいえ、今回は話し合いに行くのであってパーティに出るわけではない。ぶっちゃけ制服でも問題はなかった。

 ただ、インパクトとしては少し弱いか。

 悩んだ末、シルヴィアは神様の威光を借りることにした。以前から要所要所で纏っている巫女の衣。神殿から正式に賜った品である。

 

 シルヴィアが神殿から重要視されているのは『神の言葉』を操れるから。

 神の言葉というのはぶっちゃけると日本語だ。

 人が神から与えられる恩恵は神の言葉──光る日本語の文字で示される。そして、転生者であるシルヴィアだけがこれを読むことができる。

 また、神の力を借りた神聖魔法も日本語の詠唱であるため、こちらも並以上のレベルで扱うことができる。

 

「神様、どうかなにごとも起きませんように」

 

 手を組んでお祈りをしてから、シルヴィアはエリザベートと合流した。

 学校で落ち合ってから二人で屋敷に向かうことになったのがせめてもの幸いである。

 そして。

 

「……すごく大きいんだけど!?」

「そうかしら。領地にあるお屋敷はもっと大きいのだけれど」

「公爵家はほんとうに世界が違いすぎるよ……」

「あなただって男爵なのだから、将来的には拠点が必要ですわよ?」

 

 それに関しては神殿側が部屋を用意してくれるらしいのでお願いしてしまおうかと思っている。

 神殿内の一室なら下手に居を構えるよりも安全のはずだ。

 

「ともあれ、別に普通にしていれば構いませんわ。……あなたは男爵令嬢レベルの礼儀作法が普通にできていますもの」

「そっか。リゼット様に教わって頑張った成果かな」

 

 あらかじめエリザベートが話をとりつけていたお陰で公爵との面会はスムーズにいった。

 しかし、初めて会う大人、しかも偉い人というのはどうしてこう、それだけでプレッシャーを感じてしまうのか。

 たぶん、それこそ「住む世界の違い」のせいなのだろう。

 大人になると専門的な世界に飛び込む。

 当然、詳しくない者にとってはちんぷんかんぷんな世界なので、その「わからない」感覚が近寄りがたさを感じさせる。

 小中高の校長先生とか大学の教授とか、前世で経験のあるシルヴィアは多少、普通よりも落ち着くことができた。

 

「お初にお目にかかります、公爵閣下。シルヴィア・トー男爵でございます」

「ああ。君の話は娘から聞いている。ほうぼうから活躍の噂もね」

「身に余る光栄でございます」

「お父様、世間話は抜きにしてくださいませ。例の件でお話があります」

「ああ。どうやら新しい騎士団を傭兵団にしたいらしいな」

 

 公爵には昨日の今日でもうバレていた。

 

「さすが、お耳が早い」

「よく言う。わざと箝口令を敷かなかっただろう。私をなし崩しに巻き込むつもりか」

「滅相もない。ただ覚悟を示したまでですわ」

「……まあ、確かに。個人的にはこのくらい思い切った策を叩きつけてやりたいところではあるな」

 

 公爵は間違いなくエリザベートのお父さんだった。

 

「だが、わかっているのか? これは既存の騎士団への宣戦布告に等しいぞ」

「別に構わないではありませんか。先方にとってこちらは『邪魔な女性騎士の引取先』。それが何でも屋を買って出ると言っているのですから願ってもないはずです」

「結果を示せなければ騎士団自体が潰されるかもしれないが?」

「結果を示せばいいのでしょう? 幸い、こちらには人材の育成に長けた者がおりますわ」

 

 ああ、聖女見習いのアンジェと貴族学校の裏番長のリゼットのことか。

 と、シルヴィアが現実逃避しようとすると公爵がばっちりこっちを見てきて、

 

「なるほど。では、未来の戦略家殿のお手並拝見といこう」

 

 なぜか味方からハードルを上げられまくっている。

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