わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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お魚と石の謎 4

「どうだった、クレール?」

 

 六日目。

 祠へのお祈りを続けつつ、並行してフィジカルの強い組に湖へ潜ってもらった。

 今日の目的は太陽石の採取──だけではなく、湖の中の様子を観察することだ。

 水中で長い時間を過ごすなんて普通はできない。

 神様の加護で潜って、切れたらまたお祈りして、魔力がなくなったらリゼットに魔法をかけてもらって、観察を続けてもらった結果、

 

「うん。水の中で魚の鱗がぽろぽろ落ちてくのが見えたよ」

 

 鱗は底に堆積していく。

 湖だからどこかに流れていくってこともないはずなのだけれど。

 

「古い鱗は湖底に溜まっていますの?」

「ううん。単に地面に埋もれちゃってる可能性もあるけど……」

「シルヴィアさん。これって、そういうことなんじゃないですか?」

「やっぱりイズもそう思う?」

「はい。さすがにここまで来れば他にないかなって」

 

 つまり、こういうことだ。

 

「レイユフィッシュの鱗が湖の底に溜まって、それが集まることで太陽石になるんだよ」

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 街の代官に事情を伝えると、彼は「そんなまさか」と驚愕した。

 予想が正しければ、レイユフィッシュの乱獲が太陽石の産出量を下げていることになるからだ。

 二兎を追おうとするとどっちも中途半端になる。

 けれど、信憑性はある。

 

 神殿に残っていた伝承。

 祠に隠されていた神の奇跡。

 レイユフィッシュを捕るようになった時期と太陽石が減り始めた時期が重なること。

 

「この件は陛下に報告させていただきます。……構いませんね?」

 

 マルグリットが宣言すると、肩を落としての「仕方ありません」。

 報告を受けた国王がどう判断するかはわからない。おそらく追加調査が行われて経緯が確定するのだろうけれど、下手に隠し立てすれば信用を下げてクビになるかもしれない。

 街の産業を発展させようとしていただけなのだし、大人しく協力しておいたほうが彼にとっても得策だろう。

 

「やれやれ。これからこの街はどうなるんだろうね」

 

 残りの太陽石は明日一日みんなで頑張れば集まりそうだ。

 肩の荷が下りたシルヴィアたちは宿に戻って話をする。

 ため息をついて首を振ったのは頭だ。

 

「因果関係がはっきりすればレイユフィッシュを増やすことになるんじゃないかな?」

「魚が多いほど太陽石が増えるのですもの。漁は下火になるでしょうね」

「祠へのお祈りも復活してほしいものです。もしかするとまだ他に神のご加護があるかもしれません」

 

 昔のレイユ湖は今よりも輝いていたらしい。

 太陽の光を効率的に集め、レイユフィッシュに供給する仕組みが祈りによって再稼働する可能性はある。

 そのためには聖職者だけでなく、街の人たちにもお祈りをしてもらわなければ。

 

「わたしとアンジェ様だけじゃ長い間もたせるのは無理だもんね」

 

 一ヶ月くらい滞在して毎日ふらふらになるまで祈れば別だろうけれど、そんなことをしていたら夏休みが終わってしまう。

 

「その土地の生活はその土地の人間で完結できないと。そうでないといちいち聖女や魔法使いに頼ることになってしまう」

 

 地元民目線に近いサラも頷いて笑った。

 

「もしかすると、いろんなところにこういう遺物があるのかな?」

「古いものだもんね。けっこう使われずに残ってたりするんじゃない?」

 

 それらを復活させられたら人々の生活も少し楽になるかもしれない。

 

「この分だと他の遺物の復活も『銀百合』に任されそうですわね」

「いいじゃない。ボクたちにも役目ができて」

 

 商人や冒険者と連携して各地に赴くのなら噂を集めるのにもちょうどいい。

 新たな目標というか展望が開けてきた感じだ。

 と。

 

「なんだよ。面白くねえな」

 

 隅で干し肉をかじりながら話を聞いていた男性騎士A──どっちだっけ? まあ、クレールの明るさに絆されてないほうだ──が吐き捨てる。

 

「あっさり解決しやがって。これじゃお前らが有能みたいじゃねえか」

「あら。実力を実績で示するのは当然ではありませんこと?」

「それが面白くねえって言ってるんだよ」

 

 もう一人が「おい、それくらいにしておけ」と窘めるも彼は止まらず、

 

「そうだ。お前らの手柄、俺達がもらっておいてやるよ」

「は?」

「そんなことが通るとお思いですの?」

 

 侯爵令嬢(ラシェル)公爵令嬢(エリザベート)がドスの効いた声をだした。

 クレールは黙ったままシルヴィアをちらり。

 暗に「殴っていい?」と尋ねられたので「絶対駄目」と訴える。

 

「別にいいだろ。俺達の指導があったからこそ今回の件が解決したんだ」

 

 いや、二人ともほんとに監視しかしてなかったじゃん。

 邪魔をしてこなかっただけマシではあるけれど。

 

「馬鹿ね。そういう横暴を防ぐために私たちが同行しているのよ」

 

 マルグリットで冷笑と共に一蹴。

 事の経緯は三通(シルヴィアたち、男性騎士、マルグリット)の報告書から総合的に判断されることだろう。

 騎士は「ははっ」と得意そうに笑って、

 

「ちゃんと認められるといいな? お前達の手柄だって」

「これで認められないようなら、わたくしは既存の騎士団と距離を取ったことを心底誇りに思いますわ」

 

 そろそろ都から野盗を移送するための馬車も来る。

 シルヴィアたちは残りの太陽石確保も兼ねて湖で泳ぐことにした。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「女の子用の水着って肌を出さないのが主流なんだよね、ちょっと不思議」

「なにが不思議なんですの? 嫁入り前の娘が殿方に肌を晒すわけがないでしょうに」

「そうなんだけど、男子用とのギャップがね」

 

 本当は前世とのギャップである。

 ゴムも無いので、透けにくい素材で作られた薄手の着衣がこの国での水着。

 健全ではあるけれど、いまいち可愛くない。

 

「男性用の水着はほとんど下着なんですよね」

 

 ぶっちゃけ素材以外は海パンと変わらない。

 

「あの二人もこうして見るとなかなかいい身体をしているのよね……」

「あら。マルグリット様も男性に興味がおありなのですね?」

「人を変態みたいに言わないで。私だって、任務のために女を捨ててきただけで、機会があれば……」

「ふうん、そうなんだ」

「なによサラ、なんだか不満そうに」

「別に。なんでもないわ」

 

 男性との交際についてぼやくマルグリットと、ぷいっと顔を背けるサラ。

 へー、なるほど、そういうことなんだ、と思っているとクレールからつんつんされて、

 

「なんかいいね、ああいうの」

「うーん、このままだとサラさんが報われないような……」

 

 ともあれ、みんなでお祈りして水の中へ。

 

「わ、冷たくて気持ちいい!」

 

 なんだかんだ泳ぐのは楽しい。

 水中呼吸のおかげで溺れる心配もほとんどない。

 夏の暑いなか外で活動していたのもあって格別の気持ちよさだった。

 

「そうだ。みんなで石をいくつ取れるか競争しようよ!」

「そんなクレールが勝ちそうな競争」

「いい度胸ですわ。勝った者は負けた全員からご褒美があるということでよろしくて?」

「エリザベート様まで乗り気になるんですか……⁉︎」

 

 勝てる気がしないシルヴィアは同じく自信なさげなイザベルと顔を見合わせた。

 

「いいわ。そういうことなら付き合ってあげる」

「私だって負けないんだから」

「面白そうな事始めるじゃねえか。俺にも褒美はあるんだろうな?」

「そういう事なら参加させてもらおう」

 

 なんで男性陣までノリノリなのか。

 

「あの、わたくしは不参加ということで……」

「そうですね。リゼット様、アンジェ様、イズ。あっちでのんびり遊泳でも」

 

 エリザベートたちがたっぷり採ってくれたので太陽石は必要な分だけしっかり集まった。

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