わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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ピンチはチャンスでチャンスはピンチ 1

 波乱の夏休みが終わってから数ヶ月が経った。

 

 

 第六王女イリスはシルヴィアに恩恵を知らされてからより精力的に活動を行っている。

 

『あなたは経営シミュレーションゲームの主人公キャラクターだ』

 

 内容としてはだいたい予想通り。

 シルヴィアの母やマリーのそれに比べるとイリスのものは範囲が大きい。店舗を建設して複数所有したり、雇用しているスタッフを割り当てたり、交易で利益を得たりといった要素が含まれる。

 母たちを下においてイリスが指揮していれば安泰なのでは?

 イリスの力には相手のステータスを見るものも含まれていた。

 シルヴィアのステータス確認能力と違い、見られるのは商売向けのものだ。戦闘能力は『武力』の一項目にまとめられている。

 

「シルヴィア様の武力は『23』ですね」

「最大値が100ですから、むしろ高かったほうかもしれませんね」

 

 ステータスウィンドウは恩恵の内容を教え、自覚してもらったことで表示できるようになったものだ。

 その内容も神文字、つまりは日本語だったので、各項目の並び方と数字の読み方だけレクチャーした。

 

「特別ですよ? イリス様ならこれだけでも解読できるようになってしまうかもしれませんし」

「ええ。これはいつか恩を返さなくてはなりませんね」

 

 教えた甲斐は十分にあって、適材を適所に配置するのが簡単になった。

 イリスはいくつかの家や工房を用意して部下に作業をさせている。さらに人材を募集し、自ら面接を行うことも。

 

「お金がどんどん出ていってると思うんですけど、大丈夫ですか?」

「構いません。これは初期投資です。お金というものは使うべき時にまとめて使うべきだと私は考えています」

 

 松竹梅なら梅、奮発しても竹を選んでしまいがちなシルヴィアには耳の痛い話だった。

 

「それに、シルヴィア様もいろいろと仕入れていらっしゃるでしょう?」

「ええ、まあ。わたしのも初期投資かもしれません」

 

 マリーの父親や他の商人に頼んで珍しい食材や薬草を仕入れてもらっているのだ。

 特に狙っているのは珍味や秘薬とされていない、あまりこの辺りでは需要のない品。そういうものに価値を見いだせればどーんと儲かるかもしれない。

 さらに知っているレシピをいろいろ教えたりした結果、母の料理・お菓子とマリーの薬草茶も徐々に話題を呼びつつある。

 

 

 『銀百合』関係の仕事は上級騎士学校で忙しいエリザベートに代わってリゼット、アンジェを中心に進めてもらい、シルヴィアが空き時間や放課後に手伝うという形になった。

 エリザベートには承認の必要な案件などをまとめて処理してもらう形。

 

「これですわ。本来、団長とはこういう役割だと思うのです」

「でもエリザベート。騎士団長は騎士団で最強だったよ?」

「脳筋は黙っていなさい。あの方はいろいろと特別というか別格だったでしょう」

 

 シルヴィアたちにも良くしてくれていた騎士団長は予定されていた任期を終えて引退。

 副団長が団長に昇格し、あらたな副団長は彼の息がかかった者になった。

 これによって一部騎士からの女性騎士への風当たりはさらに悪化。住居を騎士団本部から離れた場所に置かれたのもあって反感が溜まり始めている。

 

「こうなったら新しい騎士団で思いっきり暴れてやる」

「ねえ、まだ始められないの?」

 

 敵が攻撃してくればしてくるだけ『銀百合』への期待は高まっていく。

 

「とりあえず建物の設計図と敷地内の見取り図が最優先かな。必要な材料の見積もりも出してもらわないといけないし、大工さんたちが人を集める時間もあるし」

「参考になりそうな建物の設計図は暇を見て調べてあります」

「さすがリゼット様」

 

 王子がお金を出してくれるのをいいことに騎士団の建物はちょっと豪華に設計してしまった。

 成金的な意味合いじゃなくて、将来人が増えても対応できるように広く丈夫に作ったりとかそういうところだ。

 

 

 いろんな伝手を使って募集した新しいメイド、騎士団のお手伝いも研修中。

 最初のうちはまだまだ活躍してもらうのは難しいけれど、慣れてくればある程度仕事を任せられるようになるはずだ。

 自分たちの将来的な負担を減らすため、と、ゼリエたちが頑張ってくれている。

 

 

 授業や社交のほうも相変わらず忙しい。

 けれど、一足飛びに公爵や国王と謁見したり、少し遠出をして自分の目で他の土地を見たのはいい勉強になった。

 礼儀作法のコツをつかめるようになってきたし、歴史や地理の勉強にも熱が入るようになったのだ。

 『銀百合』は案の定、生徒たちの間でもこれでもかと話題になっていて、リゼットが忙しくて食堂に来られないことも多いぶん、シルヴィアはあちこちひっぱりだこだった。

 王子クロヴィスと王女イリスから目をかけられ、公爵令嬢リゼットと仲良くしているのだからある意味当然である。

 お茶を飲んだり、質問に当たり障りない範囲で答えたり。おかげで仲良くなれた生徒もいたし、逆に要注意だと認識した生徒もいた。

 

 

 冬休みはまたいろいろな手続きに追われて。

 春が近づいてくると進級も間近。なんだかあと二年、学校が残っているということのほうが実感が湧かなくなりつつあるけれど、

 

「ねえ、シルヴィア? あたしたちの遠征訓練についてこない?」

「へ?」

「上級騎士学校にも遠征訓練があるんです。学年ごとに別の場所で」

 

 より本格的な訓練として正規騎士の指導のもと、実際に魔物討伐を行うらしい。

 

「それ、わたしがついていって大丈夫なの?」

「問題ありませんわ。今年から遠征の担当が『銀百合』になったのはあなたも知っているでしょう?」

「あ、うん」

 

 実はそういうことになったのだ。

 元副団長の現騎士団長があれやこれや理由をつけて「手が回らない」と言い出したため、女性騎士だけで実施することになった。

 要するにエリザベートたちを指導するのはマルグリットたちということだ。

 

「こちらの管轄で行うのですから、多少の便宜を図るのは難しくありません。戦略家見習いに経験を積ませるため同行させる、とか」

「じゃあ、手に入った素材をうちが確保したりもできそう?」

「ええ。……まあ、あいにく相手がオークになりそうなのであまり期待はできませんけれど」

 

 オークとは二足歩行するゴツい豚のような魔物だ。

 繁殖意欲が旺盛で、知的種族の雌を襲う習性がある。コミュニケーションがとれるほどの知能はないものの、ある程度の頭はあり、人里を離れた平原などにちょっとした家を構えて集落を作ったりする。

 シルヴィアの脳内では「オラオラ系の三匹の子豚」になっているけれど、たぶんそんなには間違っていない。

 

「じゃあアンジェ様も呼べたりするかな?」

「治療のために聖職者に同行してもらうことは今までにもあったそうなので大丈夫だと思います」

 

 こうなるとリゼットも連れていけそうだけれど、本人に打診したところ「わたくしは居残りさせてくださいませ」と微笑まれた。

 

「荒事には不慣れですし、手続きのわかる者が残っていたほうがいいでしょう?」

「すみません、リゼットさま。いろいろと大変なところを押し付けてしまって」

「いいえ。騎士団のためには後進とのつながりを持っておくのも重要でしょう?」

 

 そうなのだ。

 上級騎士学校の生徒が在学中に出会う騎士が全て女性になる、ということは、後進とのコネを『銀百合』が独占できるということ。

 そんな提案を向こうからしてくれるなんて、正直、カモがネギをしょってやってきたのでは? と思わなくもない。

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