わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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でたらめにはでたらめで返そう 2

 ゼリエの能力は一日ごとに一点ずつ増えるポイントを消費して魔物を生み出すものだ。

 一点につきゴブリン一匹。

 シルヴィアのメイドになってからの約一年で溜まったポイントをすべて消費したとして、生み出されるゴブリンは()()()()()

 

「なにそれ!? ちょっと反則気味じゃない? そんなことするなら殺しちゃう──っと!?」

「あら、あなたの相手はわたくしたちですわよ?」

「魔族相手なら手加減はいらないよね?」

「ああもう鬱陶しい! 人間のくせにちょこまかと!」

 

 ゴブリンはオークに比べると体格も力も小さい。

 けれど、その数は馬鹿にできない。ゼリエが「オークを殺せ」と指示すれば同士討ちが起きることもない。

 オーク一体につき二、三体でかかれば対抗することも十分に可能だ。

 それに、ぶっちゃけ単なる足止め程度でも構わない。

 

「一匹たりとも逃がしません……!」

 

 ──スキル『ピアシングアロー』。

 

 短時間に限り、矢に貫通力を持たせるイザベルの能力。

 「一弓入魂」と神の文字(漢字)で彫られたエルフの柔弓が鋭い矢を放ち、その矢じりが敵の心臓を貫けば、矢はそのまま突き抜けて後ろのオークを襲う。

 さらに。

 

 ──スキル『ラピッドアロー』。

 

 時限式スキルの重ねがけで効果は跳ね上がる。

 人間の限界を超えているのではないか、という速度で放たれる矢が全て敵を貫通し、撃墜数を面白いように稼いでいく。

 

「うわ、これじゃイザベルに活躍を持っていかれそう。……ボクももっと頑張らないとね!」

 

 ──『無双モード』発動。

 

 ラシェルの勢いが増し、周囲のオークをばったばったとなぎ倒し始める。

 吹っ飛んだオークの一体が近くにいたマルグリットに向かうも、

 

「危ないわ……ねっ!」

 

 ホームラン。

 踊るように振り抜かれたハンマーがごっ! っとヒットし、オークの巨体がひしゃげながら仲間に突っ込んでいく。

 

「ああ、一体ずつ潰すよりこっちのほうが早いかしら」

 

 慣れてきたマルグリットはそのまま他の敵もハンマーでふっとばし、さらには空いた手でオークを掴み、敵陣に向かって放り投げる。

 これで恩恵が倉庫番って詐欺では……?

 ピンクの悪魔と敵対する某大王様をイメージしながら、シルヴィアは複雑な気持ちになった。

 ともあれ。

 

 ──戦術コマンド『警戒』。

 

 味方の回避率を上げ、被クリティカル率を低下させるコマンドを発動させる。みんなの注意力が上がり、敵から攻撃をもらう可能性が下がる。

 ついでにゴブリンたちもオークの攻撃をひょいっと避ける率が上がった気がする。

 

「イザベル様、替えの矢筒です」

「ありがとうございます。そこに置いておいてください……っ」

 

 手を止めず矢を放ち続けるイザベルと、彼女に予備の矢を運ぶアンジェ。

 武器が折れたり矢が足りなくなった時のために荷運び用の馬車にいろいろ載せてここまで引いてきておいたのだ。なお、馬は生徒たちと行かせたので引いたのはマルグリットである。

 

「さあ、わたくしたちもそろそろ行きますわよ!」

 

 宣言と共にエリザベートの剣が燃え上がる。

 魔族の身体は魔力によって守られており致命傷を受けづらいものの、魔法付与を受けた剣──物理と魔法の二重攻撃なら話は別。

 クレールはクレールで「防御なんて上からぶった斬ればいい」とばかりに怪力でティーアの身体を斬り飛ばす。

 

「うーん……じゃあ、こういうのはどう!?」

 

 少女のお尻から蠍のような尾が生え、それが伸びながらクレールたちを迂回──シルヴィアを襲おうとしたそれをしなやかな鞭が叩き落とす。

 

「私がなんのために残っていると思うの?」

「よし、じゃあわたしたちも」

 

 聖なる光を要塞の窓に飛ばして敵の予備戦力を撃破していく。

 すぐに戦況がひっくり返るほどではない。

 イザベルのスキルも切れ、撃墜スピードも落ちた。それでも、こちらの戦力が減っていない(ゴブリンを除く)のに対してオークたちはどんどん数を減らしている。

 少女魔族がなにを企んでいたかは知らないけれど、十年以上の準備が大きく後退したのは間違いない。

 一体敵を倒せば、その敵に殺されるはずだった誰かが助かる。

 

「救うために力を振るうのは気持ちのよいものですね」

「でしょ?」

 

 かつて悪事に使った力。それを用いながらもゼリエはどこか晴れやかな表情を浮かべていた。

 

「なに、なんなの!? こんなの人間の持ってる力じゃないでしょ!?」

「これがこの子たちの力よ。人間だって恩恵を使いこなせればこれくらいはできるってこと」

 

 ティーアの怒声にヴァッフェが淡々と答える。

 

「当然でしょう? 私たち魔族だって恩恵の力で寿命や魔力を得ているの。なら、人との間に本来は差なんてないのかもしれない」

「未だにオスを排除できない劣等種のくせに!」

「だから、シルヴィアたちは可能性なのよ。人間という種を根本から変えるかもしれない、かけがえのない可能性」

「ありえない」

 

 少女の両腕がそれぞれ昆虫のそれへと変化。

 先端を鋭く硬質としての連撃をクレール、エリザベートが二人がかりで弾く。

 一瞬の隙をついて発動した『強撃』、そして必殺の連続技が腕を片方ずつ斬り飛ばし──。

 

「人間も魔物も、あたしたち魔族のおもちゃになってればいいの!」

 

 斬られた腕がトカゲの尻尾に変化。

 尻尾はさらに鷹へと変わって、

 

「シルヴィア!」

「アンジェ様!」

 

 アンジェへと向かった一匹はなんとかクレールの剣が斬り伏せる。けれど、硬直中のエリザベートは動けず。

 

「その子が鍵ってこと? なら、今のうちに殺してあげる。むかつくから」

 

 シルヴィアも咄嗟には回避動作に移れない。

 唇が反射的に聖なる守りを発動させようとするも、鷹の爪はそれよりも早く彼女の胸に届いて、

 

「させないわ。させるわけがないでしょう?」

 

 少女の服を内側から裂くようにして飛び出した複数の刃が鷹の全身を突き刺した。

 もがくも、鷹は再生できずに崩壊していく。

 単に貫いたように見えて魔力攻撃が併用されていたのだろう。

 

「ありがとう、ヴァッフェ。……でも、そこまで力回復してたんだ?」

「あなたね。一年もかけたのよ? 本気で『下着になるのが限界です』って思ってたわけ」

 

 いや、まあ、さすがにもうちょっと回復してるとは思っていたけれど。

 

「万全待ち構えたつもりでしょうけど、ゼリエに私、計算外が二つも重なったうえにシルヴィアたちの実力まで見誤ったんじゃさすがに辛いんじゃない?」

「……はっ」

 

 ヴァッフェの挑発に、けれどティーアは嘲笑で返した。

 

「笑わせないで。あんたたちくらい、あたし一人でも皆殺しにできるし」

 

 少女の下半身が蜘蛛に変化。

 お尻からは二股の尾が生え、背中には一対の大きな翼。

 両腕は無数の蛇へ。胸からは獅子の頭が突き出して。

 バッタか何かの特性まで備えているのか、跳ねるように高速移動してクレールたちに襲いかかっていく。

 

「うわ、これ……っ!」

「ちょっと、厳しいですわね……っ!?」

 

 敵の攻撃部位が多すぎる上に機動力までアップ。

 さらに見えている形状が一瞬後には変わるかもしれないとなると下手に攻撃に転じられない。かといって防御に専念しようにも、慣れてきたところでパターンを変えられる可能性がある。

 

「ああ、やだなあ。今度こそあたしたちだけでなんとかしたかったのに」

「やはり、シルヴィアとアンジェ様のお力を借りるしかありませんわね」

 

 かつて、魔族ヴァッフェを撃退したのは神聖魔法だ。

 神の力を借りるこの魔法ならば魔族の魔法防御も突破できる。

 もちろん、当てなければならないし、準備にも時間がかかるけれど。

 

「みんな、時間を稼いでくれる?」

「あはは、誰に言ってるのシルヴィア」

「死んでも生き残って間に合わせてみせますわ」

 

 ゼリエも頷き、さらなるゴブリンを生み出していく。そろそろメイドになってから得たポイントを使い切り、それ以前の残量に食い込んでいるかもしれない。

 

「わたしとアンジェ様、二人がかりの大規模神聖魔法。それで一気に全部浄化してみる」

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