わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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第四章 騎士団始動編(14歳〜)
人材確保にも苦労がある 1


 この世界では神様が「その人に向いている職業」を教えてくれる。

 言わば天職が誰にでもわかるというのはいいことなのだけれど、弊害もなくはない。例えば転職希望者が少なくなりがちということだ。

 いや、ダジャレではなく。

 

「では、一人ずつ名前と得意なこと、やりたいことなどを教えていただけますか?」

 

 五歳でみんなが受ける『神託』によって『戦略家』の才を見出された少女、シルヴィア・トーはその日、面接官をしていた。

 生まれた時は平民だった彼女だけれど、国から『準男爵』の地位を与えられて出世、その後『男爵』に昇格して正式な貴族の仲間入りをした。

 その過程で神殿からも認められ、かなり高位にあたる巫女の衣を授かった。これでもまだ十四才なのだけれど、思い返してみてもかなり波乱万丈な人生を送っている。

 さて。

 シルヴィアが纏っているのは白が七割を占める巫女の衣だ。白の割合が多いほど高位を表す。隣に座っているのはドレスを纏った金髪の少女。

 この国の第六王女イリス。神託によって商人になることが定められ、将来は伯爵の地位で商いをする予定の、これまたなかなかに珍しい経歴の持ち主である。

 

 現時点ではまだ王族であり、下々の者が軽々しく近づくことを許されない相手とこうして並んでいるのにはいろいろわけがあって。

 話すと長くなるので簡単に言えば、シルヴィアは仲間たちと「女だけの騎士団」を作ることが決まっており、イリスが興す新しい商会と協力関係を結ぶと約束しているのだ。

 今日はその、イリスの商会のための人材募集が行われている。シルヴィアも「せっかくだから」とそこへ面接官として呼ばれた。

 

『シルヴィア様の人を見る目は確かですし、良い人材がいればそちらでスカウトしていただいても構いませんよ?』

 

 持ちつ持たれつ、win-winの提案である。

 

 人が神様から与えられるものはもう一つあって、十歳になると儀式を経て『恩恵』と呼ばれる特殊スキルを得ることができる。

 シルヴィアの場合は『百合恋愛戦略SLGの主人公』。

 なにそれ? と言いたいのはシルヴィアも同じなのだけれど、恩恵の多くはどういうわけかゲームになぞらえられている。

 そして、その効果は確かなもの。

 女の子の好感度を上げて仲間にし、女の子だけの部隊で戦果を挙げる──そんなゲーム設定によく似た経歴をシルヴィアはたどりつつある。

 正直なところ、男の子より女の子のほうが好きなのでそれ自体は問題ないというかむしろ嬉しいのだけれど……それはともかく。

 

 第六王女イリスの恩恵は『商会経営SLGの主人公』。

 その能力の一環としてイリスは他者の才能を見分けることができる。食品・人事・輸送などといったおおまかなステータスごとに1から100までの数値で向き不向きがわかる。

 ちょうどシルヴィアも騎士団用のサポートスタッフや自分自身のメイドを探していたのでちょうどいい。イリスのお墨付きがあれば「向いていない子を雇ってお互い損をする」可能性も少ない。

 

 というわけで。

 シルヴィアたちの前には総勢十名ほどの人が椅子に座らされ、どこか緊張した様子を見せていた。

 シルヴィアは銀髪青目。

 着飾ると平民には見えない、と、知り合いの公爵令嬢からもお墨付きをもらっている容姿は巫女の衣の印象もあってどこか神秘的。

 さらに隣に王女様がいるとなれば固くなるのもある意味当然か。

 

 思いながら、各自の自己紹介を聞いていく。

 二人の手元には応募者の簡単な情報が書かれた用紙。そこに自分なりのメモを書き込んでいく。ついでに「商人」「職人」「メイド」などいくつかの項目について十点満点で採点できるようになっている。

 シルヴィアの提案も取り入れて決められた面接方式だ。

 

 シルヴィアは前世にて日本で暮らしていた記憶を持つ転生者だ。

 ゲーマーと名乗れるほどの腕もないのに暇さえあればゲームをしていた凡人だったけれど、人並みにバイトをしたこともある。

 書類選考からの面接という流れもその時の経験によるものである。

 ただ。

 

 ──すごい人材が都合よく見つかったりはしないよね。

 

 イリスの商会はまだ出来上がってもいない新興。さらに言えばトップが箱入りのお嬢様である。本気で商いをやりたいと思う者が来る可能性は低い。

 来るとすれば他の職で上手くいっていない者、大手に雇ってもらえるほどの才能がない者。

 それでもひとまず全員の自己紹介を聞き終えて、

 

「では、皆さま。恩恵を見せていただけますか?」

 

 イリスが(応募者にとっては)急に無茶振りをした。

 当然、相手の反応は困惑。

 

「恩恵?」

「そんな事をして何の意味があるんだ?」

 

 恩恵は誰にでも与えられる。

 自分がどんな力を授かったかは神様の文字で表され、任意に眼前へと表示可能なのだけれど──この文字が曲者。

 どういうわけか日本語なのである。

 異世界に日本語を使える者はいないので、恩恵を使いこなせるかどうかは試行錯誤と運による。当然、イリスが見てもなにもわからない。

 それでも、

 

「あら。商売をしていれば聖職者、あるいは敬虔な信仰をお持ちの方と交渉をする機会があるかもしれないでしょう?」

 

 まだ商人経験がないはずの王女はさらりと言ってのけた。

 

「自身が神を信じるかは自由です。ですが、価値観の異なる者を前にした時、あらかさまに嫌悪を示していてはいい商売などできません。意図がわからなくとも、自分に不利益がないのなら利用するべきです」

 

 これは全くの嘘ではないものの大部分が方便。

 ()()()()()()()()シルヴィアに彼らの才能を判断してもらうための策だ。

 なお、シルヴィアに日本語がわかるのは「そういう恩恵を持っているから」ということになっている。

 

「そういうことなら……」

 

 納得して応じる者、あらかさまに渋りつつ動く者、ここでの対応も採点基準だということには慣れていないと気付けないかもしれない。

 さて。

 シルヴィアは「ただのお手伝いです」という顔をしながらそれぞれの恩恵を読み取っていく。詳しく読んでいる時間はないので流し読みだけれど、ひとまずそれで十分だ。

 そうして見てもやっぱり恩恵はヘンテコなものが多い。

 商売に役立ちそうなのは一人か二人。

 簡潔に結果をメモしつつ内心で判断して──シルヴィアは一人の女性に目を留めた。

 

 黒髪に濃い紫色の瞳。

 年齢は十八歳。事前情報と自己紹介によると現在の職業は──夜の街で異性を相手にする仕事。

 

『地味な見た目でしょ? あんまり客がつかなくて、もう辞めようかなって。それで雇ってくれるところを探してるの』

 

 職業に貴賤をつけるのはよくないけれど。

 身体を売る仕事につく人間まで神託で決まってしまうというのは少し理不尽だ。同じ女として、自分がそうなっていたかもしれないと思わざるをえない。

 神様に選んでもらった仕事から離れてでもやり直したい。そう思う人がいても無理はない。

 

 彼女の恩恵は。

 

「…………」

 

 ちらっと見ただけでは理解しづらい内容に、思わずじっくり見てしまった。

 

「…………」

 

 おかげで当人から「この子なんなの?」みたいな顔をされたうえ、隣りにいるイリスからも小さく咳払いをされてしまった。

 慌てて我に返り、書類に評価をつける。

 

『メイド 10点』

 

 隣に手渡すと、イリスは一目してから頷いて。

 

「今から名前を呼んだ三名は残ってもらえるかしら?」

 

 面接会に参加させてもらった甲斐はあったかもしれない。

 商会の仕事ではないけれど、彼女に「メイドにならないか」と打診してみることにした。

 

 これは、進級を控えた春に魔族ティーアを打倒する以前。

 騎士団の準備を進めていた頃の話である。

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