わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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人材確保にも苦労がある 5

「陛下。このたびはご足労いただき、誠にありがとうございます」

「うむ。我も新たな騎士団の本拠をこの目で確認しておきたかったのでな」

 

 スリスやアンとの出会いから時間を進めて──。

 その日、シルヴィアは朝から緊張でふらふらになりそうだった。

 とうとう完成した『銀百合』騎士団の本拠地。

 そこへこの国で一番偉い人、すなわち国王が来ることになったからだ。

 しかも、

 

「父上。何もこれほど早く視察しなくとも」

「何を言う。早い方が良いであろう」

 

 出資者であり半分身内扱いのクロヴィス第五王子、イリス第六王女と同時に。

 この時点で王族が三人。

 いやまあ、都の中を移動するだけなのでほぼ危険はないのだけれど、こうなると護衛もかなりの数が必要になる。

 ついでに視察してやろうと他にも何名か王族や国の重鎮が訪れており──視察なのか歓迎式典なのかわからない有り様である。

 ちなみに護衛の騎士はすべて女性が動員された。女性騎士の話になぜ男性騎士が動かなければならないのか、という理屈である。さもありなん。

 まあ、兵士も動員されているし、そっちは男性も含まれているので女性ばかりというわけではないのだけれど。

 

「悪いな、シルヴィア・トー。父上は時折こうして面白がる事があるのだ」

「いいえ。一度にお迎えするほうが準備も楽ですから」

 

 その分、その一度が死にそうになるだけで。

 

「けれど、ちょうど良かったのではありませんこと?」

 

 正規の女性騎士は護衛に動員されているのもあり、シルヴィアやリゼットと一緒に代表者顔をしているエリザベートが笑って言う。

 

「騎士の皆さまにも下見をしていただけましたし」

「それはそうかもしれませんね。早く荷物を入れたい、部屋を見せろと言われておりましたから」

 

 視察が済めば人や物を入れても問題なくなる。

 ここを乗り切れば大きな関門を突破だ。

 

「公爵令嬢。このあたりはどのような役割になっている?」

「ええ、陛下。そちらは──」

「シルヴィア様? 建設費の見積もりと実費の差異なのですけれど、詳しく説明をいただけます?」

「はい、イリス様。それはですね……」

「リゼット。訓練場がさすがに広すぎないか。俺もここを使いたいくらいだぞ」

「お戯れを。殿下がお一人で見えられては『愛人を探しているのか』と邪推されかねませんよ?」

 

 シルヴィアたちは説明、案内、歓待に全力を注いだ。

 そのお陰か、大きなトラブルもなく視察は進んで──。

 最後に貴賓用の応接間にて偉い人たちにお茶を楽しんでいただき「なんとか終わったか」と胸をなでおろしていると、

 

「うむ。誠に有意義な視察であった」

「恐縮でございます、陛下」

「『銀百合』発足を正式に認めよう。して、活動開始はいつにする? 明日か? 一週間後か?」

 

 無茶を言わないで欲しい。

 

「はい、陛下。まず騎士寮への女性騎士の入寮を行い、不足している備品の納入を受けてからになりますので……どんなに早くとも一月はかかるかと」

「では一月後だな」

 

 無茶振りがすごい。

 なんとか最低限の猶予は確保したものの、なんと「一ヶ月後から活動を始めろ」と言われてしまった。

 代わりに護衛中の女性騎士からは「一ヶ月でこっちに移れるの!?」と歓声が上がる。国王はこれにどこか得意げな笑みだ。

 さすが奥さん十人いる権力者は違う。まだ女の子囲うつもりなのかさすがクロヴィスの父親──じゃなくて。

 

 

 

 

 

「陛下には『銀百合』を早く立ち上げさせたい理由がおありなのかもしれませんわね」

 

 城までお見送りをして、今日のお礼をしっかりと挨拶して、それからようやく本拠に戻ってきて。

 さっき使った会議室に身内だけで集まってしみじみと息を吐いた。

 

「理由って、たとえば?」

「そんなの決まってるよ。今の騎士団よりもボクたちのほうが信用できるってことでしょ?」

 

 シルヴィアたちの三歳先輩にして、いちばん仲の良い正規騎士──槍使いのラシェル・アランブールがあっけらかんと笑う。

 その内容はあんまり洒落になっていないというか、笑えないのだけれど。

 

「あながちありえない話でもないのが困ったものね」

「騎士団長の人気、だいぶ落ちてきているもの」

 

 いろいろあって仲良くなった上級女性騎士のマルグリットとサラも苦笑と共に肩をすくめた。

 

「ボクたち女は『どうせもうすぐ上司じゃなくなる奴』を無理して立てようと思わないし。この時点で支持率何割か落ちるでしょ?」

「騎士団内での支持率を考えた場合、女性派閥をまるごと切り捨てれば『見かけ上の支持率』は回復するわ。これも狙いの一つかもしれない」

 

 それは果たして国王の狙いなのか騎士団長の狙いなのか。

 けれど、国を守る騎士団が荒れているのも好ましくはない。

 男女でいがみあうのもほどほどにして、さっさと別々になってもらったほうがいいのだろう。シルヴィアたちだってそのほうがやりやすい。

 

「それにしても一ヶ月後かあ……」

「いよいよもって余裕がなくなってきましたわね」

「うーん。あたしも早く任務につきたくなってきちゃった。上級学校中退しちゃだめかな?」

「クレールさん、それじゃ騎士の位を得られませんから……」

 

 とにかく早く準備を終えなくては。

 どうせ一ヶ月が過ぎたらぽんぽん任務が飛んでくるに決まっている。騎士の数は慢性的に不足気味。女性騎士を遊ばせておく余裕なんてないのだ。

 

「今まではいろんなところで分散してたけど、拠点だけで手続きを完結できるように整えないとね」

「そうですわね。……リゼット様、本格的にこちらへお住まいを移していただけますか?」

「ええ、そのつもりで荷作りと運搬の手配を始めております。アンジェ様、引き続きお手伝いいただけますか?」

「はい。聖職者には大した荷物もありませんし、最低限の生活環境があれば十分です」

 

 騎士団長であるエリザベートと顧問戦略家であるシルヴィアはまだ学生の身。

 ひとまずは代理としてリゼット、その補佐としてアンジェに頑張ってもらう。

 

「アンにもようやく本格的な仕事を頼めそうです」

「スリスには毎日本拠と学校を往復して報告を受けてもらいますね」

「……あの、シルヴィア? エリザベート? リゼット様? ボク(ラシェル)が正規騎士で副団長なのって覚えてるよね?」

「え」

「あ」

 

 そういえばそうだった。

 

「……まさかほんとに忘れてたの?」

「そ、そんなわけないじゃないですか。ただラシェル先輩も実働部隊だったので」

「その通りですわ。ラシェル先輩には訓練の指揮を取り、人材の管理をお願いしなくてはなりません」

 

 誰にどんな能力があって今なんの仕事を受け持っているか、舞い込んできた仕事に適しているのが誰か、現場レベルで詳しく知っている人間ももちろん必要になる。

 これは騎士たちと接する時間が長くないとなかなか難しいのでラシェルが適任である。

 すると彼女は「了解」と苦笑して、

 

「マルグリット様たちと協力してやってみるよ。それでいいでしょ?」

「ええ。私たちにも異論はないわ」

「裏方が充実してくれればその分、任務に集中できるしね」

 

 騎士団本拠の警備に関してはひとまず兵士を借りられる。

 借りられるというか、有事には騎士の下につく兵士たちは普段街の見回りや門番、施設の警備などを行っているので騎士団の守りも仕事のうちなのだ。

 食事はしばらく自炊か外食か保存食でなんとかしてもらうとして。シルヴィアの両親をはじめとするスタッフも急かさず適宜入れていこう。

 

「後は……本格的に追加スタッフを確保しないとだね」

 

 あまり大量に雇ってもいてもらう場所がなかったので今までは控えていた。

 

「特に下働きや雑用のできる人が多めにほしいな」

「なるほど。シルヴィア、出番ですわね」

「シルヴィア様、よろしくお願いいたします」

「なんでみんなわたしがなんとかする前提なの? ……それはまあ、わたしも頑張るつもりだったけど」

 

 とりあえず、前々からあたりをつけていたところへ話を持っていってみることにした。

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