アサルトリリィ IGNITED   作:Yutazou.S

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 超お久しぶりです。書き溜めはないけど新作です。
 少し前から作ってあったオリリィちゃんのお話です。
 基本的にアニメや舞台、ラスバレの裏であったお話としているので、原作改変は基本的にしません。





Prologue -火種-

 

 

 

 ヒュージと呼ばれる謎の生命体が突如出現して、既に半世紀程。マギという超常の力によって暴虐の限りを尽くす彼らの侵攻により、人類は滅亡の危機に瀕していた。毒を以て毒を制すように、ヒュージに対抗するには人類もマギを利用するほかなかった。

 長年のマギ研究の末、技術の忰を結集し開発された決戦兵器「Counter Huge ARMs」──通称CHARM(チャーム)。CHARMとマギは10代の女性に高い反応を示し、CHARMを携えヒュージと戦う少女たちは、「リリィ」と呼ばれ英雄視されていく。

 

 リリィ──それは、ヒュージに唯一対抗できる、人類最後の希望。

 

 

   ◎

 

 

「ふいーっ……意外と駅から遠かったな」

 

 スラリとした長身痩躯の少女が、鎌倉のとある学院の正門前に立つ。紺色の髪を短く結び、金色の瞳は正門の奥に鎮座する校舎を見据えていた。中性的な顔立ちは、スカートを履いていなければ体格も手伝い、一見すれば男性に間違われそうだ。

 

 少女の名は、諏訪有俐(すわゆうり)リリィ養成機関(ガーデン)の中でも名門中の名門校、私立百合ヶ丘(ゆりがおか)女学院の新入生だ。この日は入学式で、彼女はリリィになるために都内から鎌倉府までやってきた。

 

「アタシも本当に、リリィになるんだ……いまだに実感沸かないな」

 呟きつつ、胸の高鳴りを感じる。待ち望んでいた時が来たとあれば、自然と心が弾むのも無理はない。周りには、有俐と同じ制服に身を包んだ新入生と思しき少女たちが、三々五々に正門を通り校舎へ歩いていく。

「よし……そろそろ行くか。待ってろよ、ヒュージ共……!」

 彼女たちに倣い、有俐は校舎へ向けて、リリィとしての第一歩を踏み出した。

 

 

   ◎

 

 

 入学式当日は、慌ただしい1日だった。

 聞くところによると、未経験者の新入生が、校内から逃走した生体標本のヒュージを熟練のリリィ2名と共に討伐したらしい。しかもその新入生は、()()()()()だったというのだ。

 

「先越されちゃったなぁ……」

「何言ってるの、普通未経験者がいきなり実戦に出れるわけないでしょ?」

 有俐が寮の自室のベッドで呟くと、深緑の髪をハーフアップにしたルームメイトの少女が返す。

 

 百合ヶ丘は全寮制で、1部屋につき2名で生活するのが原則だ。加えて、有俐のような外部からの新入生には、学院での生活に不慣れな者への補助として生徒会役員がルームメイトに割り当てられる。

 つまり、有俐のルームメイトである彼女は、生徒会役員なのである。

 

「そうはいうけど……入学からヒュージ撃破までの最短記録とか、立てたいだろ?」

「その記録、たぶんないこともないと思うけど、きっと上には上がいるわよ」

「だとしてもだよ。まあ、今日立てられた記録には誰も勝てないだろうけどな……ところで天下井(あまがい)、何読んでるんだ?」

 天下井、と呼ばれた少女──天下井明羽(あまがいあきは)は手にした紙を有俐に見せた。

「週刊リリィ新聞号外。例の新入生のこと、ちょっと気になってね」

 あなたも読む? と差し出された誌面を受け取り、有俐もリリィ新聞へと視線を移した。

 

 編集者は二川二水(ふたがわふみ)──こちらも補欠合格の新入生であるようだ。入学初日にも関わらずこんな学生新聞を刷ったらしい。

(その割にはクオリティ高いな、これ……)

 半日弱で作ったとは思えないほどの作り込みとその行動力に感心しつつ、内容を読み込んでいく。

 大きく取り上げられているリリィは3名。いずれも今回のヒュージ討伐に貢献した者だ。

 新入生の楓・J・(かえでジョアン)ヌーベル。フランス出身のハーフで、有名CHARMメーカー「グランギニョル」の総帥令嬢。自身も中等部から名を馳せる実力者らしい。……何故かもう1人の新入生にべったりくっついていたのは、気のせいではないだろう。

 2年生の白井夢結(しらいゆゆ)。かつて、無敗を誇った伝説のレギオン「アールヴヘイム」に所属していたが、現在はたった1人でヒュージと戦い続けている孤高のリリィ。確か、長い桃髪のリリィに喧嘩を売られていた。

 そしてもう1人の新入生──一柳梨璃(ひとつやなぎりり)。例の補欠合格者だ。どうやら他の2人について行った時点ではCHARMとの契約をしておらず、現場で略式の契約を成したという。

 

(まったく無茶しやがる……けど、度胸は大したもんだ)

 訓練もなしにヒュージと対峙し、ぶっつけ本番で立ち向かった。その事実は有俐も素直に賞賛できることだった。だが……。

「……こいつよりアタシの方が強いと思うんだけどなぁ」

 同じ未経験者でも、有俐は梨璃と違い()()()()()()()()をもらっている。自分より劣ると思っていた彼女が先にヒュージ討伐を達成したことに、子供っぽい感情ながら有俐は悔しさを感じていた。

「あなただって入学したてなんだからどんぐりの背比べでしょ、有俐さん」

「アタシも無理言えば、連れていってもらえたかな?」

「いくら言っても過去は覆らないわよ、諦めなさい」

「へいへい、わーったよ」

 明羽に窘められ、渋々口を噤む有俐。リリィ新聞号外を彼女に返して、ベッドに座り込んだ。

 

「んで? 講義は明後日からだったか?」

「えぇ。明日はクラス分けが発表されるから、その後私が校内を案内するわね」

「そっか、そん時はよろしく頼むぜ」

「ふふ、任せて」

 今日出逢ったばかりだが、既に2人は打ち解け始めていた。明羽はふと、思いついたことを口にして。

「……ああ、そうだ有俐さん。ひとつだけお願いがあるんだけど、いい?」

「ん、何だ?」

「せっかくルームメイトで共同生活するのに、苗字で呼ばれるのはよそよそしいわ。だから、『明羽』って名前で呼んでほしいの」

「あー……」

 

 言われてみればそうだ。これから少なくとも1年間は寝食を共にする相手を、苗字で呼び続けるのは如何なものだろう。そのことは有俐も理解していた。

 

「んーじゃあ、アタシのことも『有俐』って呼び捨てでいいよ。お互い遠慮しない方がいいだろ?」

「ん……わかったわ、有俐。改めて、これからよろしくね」

「おう。こちらこそ、改めてよろしくな、明羽」

 夜の帳が落ちる中、お互い名前で呼び合い、2人のリリィはふっと微笑んだ。

 

 

   ◎

 

 

 翌朝──。

 カーテンが開かれると、朝の日差しが部屋を照らす。

(……眩しい)

 思わず寝返りを打つ有俐の耳に、明羽の声が届いた。

「有俐、起きて。もう朝よ」

「んん……もうちょっとだけ……」

「子供じゃないんだから。ほら起きて!」

 無理矢理布団を剥がれ、冷えた部屋の空気が肌を刺激する。有俐は仕方なく身体を起こし、目を擦りながらルームメイトに挨拶した。

「ん……おはよ、明羽……」

「ええ、おはよう。私、生徒会の仕事で早く出るけど、着替え手伝った方がいい?」

「あぁ……まだ着慣れてないからな、頼むよ……」

 まだ少し寝ぼけた頭で答えると、有俐は少しだけ彼女の顔が緩んだように見えた。

「わかったわ。じゃあ、先に顔を洗ってきて」

「おう……」

 

 冷たい水が顔にかかれば、みるみる目が冴えてくる。濡れた顔をタオルで丁寧に拭いて、パジャマから下着に着替えた。

「ふう……悪い、待たせた」

「大丈夫。じっとしてて」

 明羽にブラウスとスカートを手早く着せられる中、有俐は昨日から気になっていたことを訊いた。

「そういや明羽。お前の制服ってアタシのと違うけど、なんでだ?」

「あぁ、これ? 私は工廠科だから、制服が違うの」

「あー、アーセナル、だったか? CHARMの整備とか開発をする学科だよな。確かに他にも着てる子を見たよ」

「そうそれ。リリィが全力で戦うためには、私たちアーセナルがしっかり支えないとね」

 そんなことを話しながら、できた、と明羽が言う。

「んっ……ありがとな」

「どういたしまして。じゃ、私はお先に」

「ああ、いってらっしゃい」

 

 部屋を後にする彼女を見送って、窓の外を眺める。晴れやかで気持ちのいい朝だ。

「さーてと……今日から頑張るか!」

 大きく伸びをしてパシンと自分の両頬を叩き、有俐は改めて気合を入れた。

 

 

 

 

 

 

 ──────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 






◎ 諏訪有俐
 イケメン系新入生リリィ。美鈴様(公式イケメン(当社比))と比較すると、何がとは言わないが平らで童顔。
 明るく振る舞っているが、何かに対し憎しみを抱いているようで──?

◎天下井明羽
 生徒会役員な工廠科。今はまだ出逢ったばかりなので、お互いのことはよく知らない。

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