下界に住まうヒューマンや獣人に
下界の人々と生活するために自らの『全能』を封じるという制限を設け、その代わりに下界の人々に『
『神の恩恵』は刻んだ者当人の努力次第で幾らでもその『器』を高め、超人へと変えていくほどの効力を有している。未だ凶悪な怪物であるモンスターの脅威に晒されている下界の者たちにとってはありがたいものであった。
そうして神と人による組織、【ファミリア】は誕生し幾つもの派閥が下界で居を有していった。
この時代こそは『神時代』。更にこの『神時代』の縮図こそモンスターの総本山にして魔窟であるダンジョンを有している『迷宮都市オラリオ』だ。
古代において、突如ダンジョンと呼ばれる未だ、全容が知れない地下世界への出入り口たる大穴が生まれた。そうしてモンスターは下界へ侵略を始めたが古代の英雄達の活躍により、大穴へと押し返し、神の協力あって現在、その大穴にオラリオの代表的建造物が白亜の巨塔であるバベルで蓋をしたのだ。
しかして神の眷属たちはダンジョンに興味を示す。まずモンスターは体内に魔力を有する魔石を核として有しており、これは重要資源として使える。
更に魔石を取ったり、破壊する事で消滅するモンスターはしかし、力を特に残している部位を残す。それは武具や防具、薬などの原料となる『ドロップアイテム』だ。
モンスターを倒す事で稼ぎを得る事が出来、ダンジョンにしかない植物や鉱物などの資源も又、色んな用途に使えたり稼ぎになる。
ダンジョンを進めば進む程に文字通り、生きているダンジョンの壁から産出されるモンスターの数は増え、産出までの間隔は短くなり、更に産出されるモンスター自体も強大になり、環境も厳しくなっていくなど命がけの世界になるがしかし、それを踏まえてもダンジョン探索は旨みがある。
こうしてダンジョンを探索する『冒険者』は生まれた。もっとも絶対のルールとして神の眷属でなければ冒険者になれないが……。
「良し、僕も冒険者になるぞー」
とある山奥の村でそう決意を掲げたのは身長165Ⅽのヒューマンであり、処女雪の如く白い短髪に深紅の瞳と子兎を連想させる見た目の14才の少年、ベル・クラネルだ。
彼は物心つく前に両親を失っており、代わりに育ての親となった祖父と暮らしてきた。そうして、祖父に色んな英雄譚を読み聞かせられた事で英雄に憧れていき、オラリオで活躍した、又は今も活躍する英雄たちの活躍が綴られた『
そうして祖父に鍛えられつつ、ダンジョンへと押し返されるそれから逃れて下界の各地に散らばっているモンスターの子孫による襲撃から村を守るという実戦も積んでいった。
しかし、14歳になったある日……急に祖父は『お前の物語を始めろ』という置き手紙を残して祖父は消えた。そうしてベルはオラリオに行く事を決め……。
「うぅ……僕が弱そうだからって……酷いよぉ」
オラリオに居を有している幾つかの派閥、【ファミリア】に入団しようとしたが見た目は子兎なベルは拒まれ続け、そうして持ってきた金も少なくなっていきオラリオに来て6日後には宿も取れない程のなけなしとなっていった。
見た目で判断されるという辛い現実に打ちのめされ、腹も空いてきた事で弱弱しく歩き、人気のない場所で壁を背に蹲り、涙すら流していた。
「こんなところで泣いて……どうしたんだい?」
そんな時、声をかけられる。
「き、君は?」
艶のある黒い長髪をツインテールにしたベルより背の低い身長ながらグラマラスなスタイルを有する美少女にベルは戸惑う。
「ボクかい、ボクの名前はヘスティアさ……ほら、男の子が泣いてちゃ駄目だぜ」
「あ……ありがとうございます……っ」
ベルはヘスティアに涙を指で拭い優しく微笑みかけられた事で堪らず、ヘスティアに抱き着いてまた泣き始めた。彼の精神は色々と限界でそんな時、優しさという温かさを与えられたためである。
「わっと、ふふ、よっぽど辛い目に遭ったんだね。良いよ、今は目いっぱい泣きな……温めてあげるからさ」
ヘスティアは女神であり、彼女が司る事物は炎であり、居場所を守る光にして嘆願者に救いの手を差し伸べ、傷ついた迷い子を迎える炉の如き不滅の炎。
その役割をヘスティアは果たすため、ベルを抱き締めながら落ち着かせるため、背中を摩り、頭を撫で、『大丈夫、大丈夫』と優しく温かい言葉を送るのであった。
その後……。
「是非、僕をヘスティア様の【ファミリア】に入らせてください」
「それは嬉しいけど、ボクの【ファミリア】は出来たばかりでベル君で最初になるぜ?」
「それで良いです」
ベルは眷属勧誘中であったヘスティアに自ら立候補し、ヘスティアの眷属になった。
「(ヘスティア様に相応しい眷属に、英雄になろう)」
ヘスティアに対し、恩義からの忠誠だけでなく、恋心も抱いたベルはそれを捧げる事を誓ったのだ。
ベル・クラネル
LV.1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
≪魔法≫
【】
≪スキル≫
【
・早熟する。
・
・
「(なんて可愛いんだい、ベル君)」
「え、ちょ、へ、ヘスティア様ぁっ!?」
『神の恩恵』は背中に刻まれる物であり、刻んだ者の【ステイタス】を神々による言語、【
その中で発現した者の精神状態や本質が元となり、それに通ずる補助効果を与える【スキル】を見てヘスティアは愛おしくなり、ベルを後ろから抱き締め、ベルは狼狽する。
「これから、よろしくねベル君」
「はい、ヘスティア様」
ベルに発現した【スキル】はレアなもので絶対、他の神々にちょっかいを出される物なのでそれをベルにも隠す事に決めながら、二人で頑張っていこうと誓い合ったのだった……。
二
オラリオの中央に建造されている天にも届こうという程に高く、長大な白亜の巨塔、バベル。
その地下一階にダンジョンへと通じる出入り口たる『穴』はあり、ヘスティアの眷属になったベルはギルドというオラリオ全体の管轄に冒険者の登録や支援もしているギルドに冒険者登録をし、アドバイザーとなった受付嬢からほぼ一日かけてのダンジョンについての過酷な指導を受けさせられる事になった。
心から自分を想っての事だというのが伝わり、実際ダンジョンについての知識は必要なので頑張ってついていった事によるものである。流石にほぼ一日かけてというのはベルのアドバイザーになった受付嬢も予想外で、それについては謝られたりしたが……。
ともかく、それから二日後にはベルは冒険者としてダンジョンへと挑んでおり、そのダンジョンの六階層……。
「はあっ!!」
ギルドから支給されたライトアーマーや魔石袋にバックパック、武器としては刀身二〇Ⅽの短刀という装備の元……ベルは見た目通り兎の如く駆け跳ねながら右手に持った短刀による斬撃と刺突、空いた左手と両足による打撃を織り交ぜた連撃が本質の闘舞によって次々と新人冒険者にとっては鬼門となる強敵にして影を人にしたようなモンスターである『ウォーシャドウ』を屠っていった。
しかし、魔石を回収し、ドロップアイテムを回収している最中、壁から新手にして複数のウォーシャドウが産出される。
「勝負だ」
怖気づかず、そしてヘスティアへの想いを原動力として燃やしながらベルはウォーシャドウへと駆け跳ねて挑んでいったのだった……。
そうして夜近くの夕刻――人気のない路地裏深くにある崩れかけた廃教会にして【ヘスティア・ファミリア】の本拠の中をベルは進み、祭壇の先にある小部屋へと入り、一番奥の本棚の裏にある階段を下って地下室のドアを開ける。
「ヘスティア様、ただいま」
「おかえり、ベル君っ!!」
ベルの言葉が終わる前にヘスティアは笑顔を浮かべながら彼へと抱き着いて出迎えるのであった……。