兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

11 / 111
十話

 

 朝日が昇り始めた時間帯――『豊穣の女主人』の中庭で二つの影が舞い踊っていた。

 

「やああっ!!」

 

 影の一つは中庭を自由自在に駆け跳ねながら二振りの刃を潰した鍛錬用の片手剣を振るい、壮絶なる刃の乱閃を繰り出すのはベル・クラネル。

 

「はっ!!」

 

 もう一つの影にしてベルの乱閃を流麗なる風の舞と共に木刀を振るう事で捌くのはベルの鍛錬相手を務めるリュー・リオンであった。

 

 ベルはLV.2に【ランクアップ】したが、リューはLV.4なためにまだまだ実力差は隔絶している。実際、ベルの身体はぼろぼろで息も切らせているがリューは平静であり、余裕もあるようだった。

 

 

 

 しかして……。

 

 

 

「っあああああっ!!」

 

「くうっ!!」

 

 自身の剣閃が捌かれている中、今まで気合と根性によって全力以上の全力を絞り出し続けたベルが更に爆発的に力を絞り出し、限界以上の力を発揮した事で放った剣閃がリューの木刀を跳ね除け……。

 

「やあっ!!」

 

「うくっ!!」

 

 生じた間隙にすかさず、ベルは更に限界を超えた力を絞り出しながら、強烈なる蹴撃を捻じ込み、リューに蹴撃を炸裂させて吹っ飛ばした。とはいえ、リューもベルの蹴りが炸裂する瞬間に後ろに後退する事で衝撃を逃したが……。

 

「はぁ、はぁ……やっぱり、リューさんは強いや」

 

 ベルは大きく息を切らせながら地面へと片膝を突く。

 

「いえ、クラネルさんは十分によくやっていますよ。私に掠らせるどころか一撃当てるなんて……どんどん強くなっていきますね」

 

「リューさん達の教えのお陰ですよ」

 

「教えが良いとしても……結局は教えを受ける者の努力が無ければ意味がありません。だから、クラネルさん自身の努力の成果です、もっと自分を褒めて良いんですよ」

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

「あふ、んぅぅ……」

 

 リューはベルに近づきながら、会話をすると優しく微笑みながら彼の頭を優しく撫で回し、ベルを心地良さで満たしてやった。

 

 因みに彼女はエルフとしての潔癖性が強く、自分が認めた者……礼を上げるならシルにしか手を触れる事を許さず、客やクロエたちですら自分の手に触れる者を本能的に投げ飛ばしたりするのだが……ベルに対しては自分から触れる事が出来たり、触れられたりするのを拒まないのであった……。

 

 

 そうして、リューとの鍛錬を終えた後、『豊穣の女主人』の開店の準備を手伝って一旦、自分の本拠へ戻れば……。

 

「お、噂をすれば帰ってきた。お帰り、ベル君」

 

 廃教会の敷地でヘスティアが出迎え……。

 

「おはよう、ベル。お邪魔させてもらってるよ」

 

「おはよう、ベル。いきなり来てごめんね」

 

「おはようございます……すみません、お邪魔して」

 

 傍に居た【ロキ・ファミリア】の主力陣であるティオナは笑顔でベルに挨拶し、アイズ、レフィーヤはそれぞれ気まずそうにしたり、苦笑しながらベルに挨拶した。

 

 なんでもベルの事を気にしていたティオナが【ヘスティア・ファミリア】の本拠へと出かけたのを不思議に思い、アイズとレフィーヤが尾行した事でこうなったとか……。

 

 そして、ティオナは自分もベルの冒険者としての実力が見たいからベルとダンジョン探索をしたいからと【ヘスティア・ファミリア】の本拠に来たとの事。

 

「まあ、僕としては別に構わないですけど……ティオナさんは良いんですか? 深層域への遠征から帰還したばかりですけど」

 

「うん、それは大丈夫だよ。むしろ遠征では武器溶かされちゃったせいで暴れ足りないから、元気有り余ってるんだ。心配してくれてありがとう」

 

「いえいえ……んぅ……」

 

 ティオナはベルの質問に答えながら、優しく頭を撫で回し始める。

 

「私達はサポーターとして邪魔にならないようにするよ」

 

「押し掛けてしまったわけですし、それくらいさせてください」

 

 アイズとレフィーヤもベルに対し、頭に顔を優しく触ったり刺激したりして彼が心地良くなるように接した。

 

 

 ともかく、そうしてベルは新しいライトアーマーに新しい武装である二振りの片手剣を装備したりして準備をし、リリルカとヴェルフの二人とティオナ達を連れてダンジョン探索に向かった。

 

 その後、上層域において最後の階層である12階層にて……。

 

「はああああっ!!」

 

 立ち振る舞いとしてはヴェルフが【ランクアップ】出来るように彼の援護やリリルカの護衛を務める遊撃員としてベルは縦横無尽に駆け跳ねていた。

 

 そして、豚頭で恰幅の良い体格、大型のモンスターで怪力を誇る『オーク』や狡賢く、群れでの行動を得意とする小悪魔のモンスターの『インプ』、蝙蝠で鋭い牙に集中力を乱す怪音波を武器とする『バッドバット』、頑丈な硬度を誇るアルマジロのモンスターが『ハード・アーマード』、筋肉質で白い体毛、銀色に輝く頭髪が背を流れている『シルバーバック』らを相手に二振りの片手剣による壮絶なる剣閃の猛撃によって切り刻み、あるいは穿ち貫く。

 

 更に時折、超速の納剣で片手を空けてはLV.2に【ランクアップ】した事で威力も速度も上がった炎雷を無詠唱で放つ【ファイアボルト】を使用。そうして戦闘状況を制しながら、剣を納めた鞘から納剣と同等、あるいはそれ以上の抜剣をして二刀流による乱閃の舞を披露し続ける。

 

 

「成程、こいつは物が違うな」

 

「ベル様、やっぱり凄い……」

 

 新しくパーティとなったヴェルフはベルの実力に驚愕しながら今まで自分の作品を使ってくれ、更に彼と契約できた事を鍛冶師として喜び、リリルカは【ランクアップ】した事で一段と強くなったベルに見惚れていく。

 

「うわぁ、凄い、凄いよベル……本当に凄いっ、あれでLV.2なのっ!?」

 

「とんでもなく強いね、ベルは」

 

「無詠唱で魔法を使うなんて……本当に何者なんですか、ベル……」

 

 ベルがLV.2であるとはとても信じられない程の戦いぶりにティオナは大興奮し、アイズも又、改めてベルの実力に驚いた。

 

 レフィーヤは魔導士として無詠唱で発動し、連射もするベルの【ファイアボルト】にかなり驚愕していたが……。

 

 そして、ダンジョンの12階層を探索していたベル達だが……。

 

 

 

『た、助けてくれぇぇぇぇっ!!』

 

『グオオオオッ!!』

 

 冒険者が逃げ惑い、その後を13階層のモンスターである犬型にして口から火炎を吐き出す『ヘルハウンド』や集団戦闘に優れる兎型の『アルミラージ』等の群れが大勢追ってきていた。

 

 因みに冒険者の世界ではモンスターから退却しながら、他のパーティにモンスターを押し付けるという手段は『怪物進呈(パス・パレード)』と呼ばれている。

 

 無論、この方法はあまり勧められたものではないが生還するための緊急手段としては有効だ。ギルドもこの行為を禁止にしてはいないし、暗黙の了解としているがこれを行なった事で関係が悪くなる派閥間に介入はしない。

 

 派閥間で解決するようにという事である。

 

 ともかく、そうしてモンスターの大集団から何人かの冒険者は逃げながら、12階層内にいるだろう冒険者に向けて怪物進呈を行い……。

 

「(絶対に助けるっ!!)【ファイアボルト】ォォォォォォッ!!」

 

 ベルは冒険者達を助けるべく、意志を激しく燃やしその熱に『恩恵』を呼応させながらモンスターの群れに向かって行き、炎塊を連射して放つ。

 

「はああああっ!!」

 

 そうして縦横無尽、自由自在に駆け跳ねながら右手に持った片手剣で壮絶なる剣閃の舞を繰り出しながら、左手の拳に白き光粒を収束するチャージを開始。

 

 ここまでの探索中にした休憩中にベルはチャージ時間の最大が三分である事は把握している。

 

 そのチャージ中、強く輝いていく光粒と小鐘から大鐘楼の者へと変わっていく音……。

 

 ベルは剣閃を舞い踊らせながら、あるいはモンスターの群れの中を掻い潜り続けながらチャージを続け、三分となり……。

 

 

「【ファイアボルト】ォォォォォォォォォォォッ!!」

 

 

『グゥォァァァァァァッ!!』

 

 

 ベルから放たれた大炎雷の極閃がモンスターの全てを呑み込み、消滅させた。

 

 

 

『……う、うおおおおおっ!!』

 

 

 

 助けられた冒険者達はベルの戦い振りに感謝も含めて歓喜と賞賛の声を上げ……。

 

「間違いねぇ、本物だ」

 

 ヴェルフはベルこそ英雄だと理解する。

 

「本当にベル様はどこまで……」

 

 リリルカはベルに対し、どれだけ好きにさせるのか、どれだけ愛させるのかと思いながらも顔を赤らめ、胸を鼓動させる。

 

 

 

「ベル、君は本当に英雄なんだね。格好良いよ」

 

 冒険者達を助けるためにミノタウロスとの戦いよりもベルが凄まじい力を発揮したのを見たアイズはベルが皆を守るときこそ、本領を発揮する性質である事を把握した。

 

 そして、英雄の如き勇姿に見惚れて微笑み、賞賛する。

 

 

 

「……凄い」

 

 レフィーヤも言葉こそ少ないが彼の勇姿と武威に見惚れていた。

 

 そして、なによりティオナはと言えば……。

 

汝こそ真の戦士(ゼ・ウィーガ)……」

 

 まさに英雄譚の如き、ベルの勇姿と武威にティオナは自分のアマゾネスとしての本能がベルこそ自分が求める雄だと判断するのを感じつつ、姉であるティオネと供に旅立つまで育った島国独自の言葉で賞賛する。

 

 

 

「ベルーっ!!」

 

「ティオ……ふむっ!?」

 

 そうしてティオナはチャージの反動で片膝を突いたベルに駆け寄りながら、彼に抱き着き口づけする。

 

「ベル……私、ベルの事大好きになっちゃった。だから、女としての魅力は無いけど精一杯、愛していくからね」

 

「あ、ありがとうございます。でも、ティオナさんは十分、魅力的ですよ」

 

「本当にそう思う?」

 

「勿論」

 

「やっぱり、大好きっ!!」

 

「んむぅ……」

 

 そうして、またティオナにベルは口づけされた。

 

 

 その後、ダンジョンから本拠に戻ったティオナにアイズにレフィーヤは『遠征に行ったばかりは愚か、またベルに、あの子に迷惑をかけて』とリヴェリアに説教された。

 

 

 しかし、ティオナはベルという愛する人を得たのでご機嫌であり……。

 

「ティオネー、ティオネがフィンを愛しているように私もベルを愛しちゃった。だからキスもしたよー」

 

「なんですってぇぇっ!?」

 

 姉であるティオネに対し無自覚でマウントを取った事でフィンとキスしようとティオネが大暴走する騒動が巻き起こったりしたのだった……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。