ベル・クラネルは【ヘルメス・ファミリア】に【イシュタル・ファミリア】が満月の日に行う儀式について情報を聞いてみた。
するとヘルメスは詳しく知っていた。というより、彼も関わっていたのだ。
『殺生石』という魔導具を満月の日に専用の設備を用意して使用すれば狐人の魔法の力を第三者に与える魔道具になるのだ。ただし、狐人の身体から魂を抜き取り、抜け殻としてしまうが……。
そのままの『殺生石』を肉体に注入すれば、魂を奪われた狐人は目を覚まして肉体が無事なら何事もなく生きていける。
しかし、『殺生石』は砕ける物でその砕けた欠片一つ一つが魔法の発動装置となる上に効果はオリジナルと変わらないし、詠唱も必要ないと禁忌が故に性能は絶大である。
砕けた破片が紛失及び壊れた場合、意思に魂を移された器、つまり狐人の抜け殻は元通りにはならない。残った破片をかき集めて魂を戻したとしても赤子も同然の人形か、廃人になってしまう。
どのみち、これを許すわけにはいかないと春姫を救う決意をベルは更に固めたのだ。
更に満月の日が近づくまでに情報収集していると気になる情報があった。
【イシュタル・ファミリア】は以前まで実力を偽っていると言われていた。当時、【イシュタル・ファミリア】と敵対していた複数の派閥が糾弾したのだ。
ギルドに報告されている公式のLV.より遥かに団員達の力が上回っていると……。
あまりに多いのでギルドは調査を入れ、女神イシュタルは主だった戦闘娼婦の【ステイタス】を全て見せてギルドだけに戦力の実態を開示した。
その結果、偽りは無かった。そしてイシュタルは訴えた派閥とギルドに『言いがかりを押し付けられた』と罰則と罰金を要求したのである。
この要求は派閥もギルドも呑まずを得ず、ギルドはこの件で【イシュタル・ファミリア】に強く出る事が出来なくなった。そして、罰則で弱体化した敵対派閥を【イシュタル・ファミリア】は全て壊滅させて敵対派閥の主神も送還したという事が過去にあったのだ。
この事と『殺生石』の事から春姫が使う魔法であり、『妖術』にベルは察しがついた。
そう、疑似的にLV.を上昇させるものではないかと……ヘディンにもこの件を根拠として言ったうえで相談してみると……。
「愚兎にしては上出来な考えだ。大分、核心をついていると思うぞ」
「ありがとうございます」
ヘディンはベルの意見に対し、賛同を示した。疑似的にLV.を上昇させる魔法が本当にあるなら、中々に規格外だがだからといって、文字通り、道具にされていい道理も無い。
ベルはともかく、満月の日を待ちながら着実に救出の準備に励んでいったのであった……。