春姫が『殺生石』にその魂を封じられる儀式が行われる満月の日をベルは待っていた。無論、春姫を救出するためである。
「オリオン、今夜は満月だぞ」
月を事物として司るが故に月が浮かぶ空模様には敏感なアルテミスが空を見上げながらそう言った。
「ありがとうございます、アルテミス様」
アルテミスに礼を言い、ベルは【フレイヤ・ファミリア】のオッタル達と共に襲撃の準備をしていく。
ベル達が襲撃するのは歓楽街にある【イシュタル・ファミリア】の本拠、『
広大な砂漠にそびえる王宮を彷彿させるほどの威容、金に輝く外装が豪華な宮殿で正面の大扉の上に
そうして、満月が浮かぶ夜空……。
「【聖火降臨《フローガ》】――【ファイア・ボルト】!!」
歓楽街近くまで接近したベル・クラネルは炎雷を【スキル】で変化させると纏いつつ、背中で翼に変化させて伸ばすとそのまま、空中へと飛び上がり始めたのであった。
そうして、ベルは『女主の神娼殿』の別館屋上に空中庭園で春姫に戦闘娼婦、広大な平面状の庭園に隙間なく石版が敷き詰められているのを空中より、目撃したしアイシャを始め、戦闘娼婦の強者が並んでいるのも見た。
「ふっ!!」
ベルはそうして、儀式場となっている空中庭園に急降下すると……。
「はああっ!!」
そのまま浮遊と跳躍を合わせた変則的な機動と二刀の片手剣による舞いを組み合わせた戦技を披露すると『戦闘娼婦』を蹴散らしていく。
「ゲゲゲ、何者だいお前ぇぇっ!!」
【イシュタル・ファミリア】の女団長で黒髪のおかっぱ頭で二Mを超える巨女で身長とは不釣り合いな短い腕と短い脚、筋肉の塊でずんぐりとしている体型の醜いヒキガエルのようなアマゾネスのフリュネ・ジャミールが襲い掛かってきたが……。
「しっ!!」
「ギギィッ!!」
ベルは二刀を振るって切り裂き、フリュネを倒した。
「春姫さん、貴女を助けに来ました」
「く、クラネル様……わ、私は……」
春姫に声をかければ、嬉しそうにしながらも惑っていた。
「連れていかせると思うかい?」
ベルに対し、アイシャが笑みを浮かべそれを好戦的な物に変えながら言う。
「連れていきます。僕がそうしたいと思うから……春姫さん、すみませんが僕が貴女を勝手に助けるんです。だから、拒否は許しません」
「あ、ぁぅぅ……」
春姫に対して再度強く言う。
「ん……へ、【フレイヤ・ファミリア】も連れて来たのかい、こりゃイシュタル様も終わりだね」
「はい、後腐れの無いように襲撃する事にもしていますので」
「そうかい、じゃあ最後に……」
「ええ、どうぞ」
そうして、アイシャは建前としてベルにぶつかり、ベルは本気で打ち倒した。
「ベル様……私は娼婦、英雄にとって破滅の存在なのに良いのですか?」
春姫は情事前の愛撫をベルにされている間にある程度、会話をしており英雄譚が好きという共通の趣味が合った。その中で娼婦にまつわる話をしたのだ。
「それはあくまで英雄譚の事です。現実は違いますよ……」
そうして、ベルは春姫を連れながら『女主の神娼殿』での襲撃に加わり、そうしてフレイヤが逃げ惑うイシュタルを階段から落とすような形で送還し、【イシュタル・ファミリア】は壊滅したのであった……。