兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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二十六話

 

 ベル・クラネルのダンジョン探索の様子を見る事とダンジョンでの指導をすると所属派閥こそ違えど実質的なベルの師匠となっているヘディンとベルがヘディンからの指導に全力で向き合っている事で応援したいとヘグニが申し出、そうしてヘイズと共にベルは数日間のダンジョン探索をする事になった。

 

 数日間もダンジョンにいるのは自分の主神であるヘスティアを一柱、残す事になるのでベルは戸惑ったがその間、ヘディンからの事前の申し出もあってフレイヤが面倒を見ると言ってくれた。

 

 ある意味、逃げ道を塞がれたようなものだがともかく、ダンジョン探索に集中できるようにはなった。

 

 そうして、始まったダンジョン探索だがヘディンとヘグニは急に姿を消したかと思うと様々なエリアからモンスターを誘導して怪物進呈よろしくベルへと向かわせ、激戦へと挑ませるし隙あれば、なんなら隙が無くても剣撃や魔法を放ってベルを常に極限状態へと追いやり、その状態で戦闘を積ませていった。

 

 しかも『鍛錬にならない』からと超絶的な感覚を有する事が出来る母親譲りの魔法の使用を禁止されているのでその分、辛い事になっている。

 

 肉体的にも精神的に追い込まれながらもまずは一日を乗り切ったかに思えたが……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

「ほああああっ!?」

 

 24階層で野営中、眠っているベルに対しヘディンが攻撃を仕掛け、ベルは間一髪反応してその場から緊急回避する事で生還した。

 

 常に窮地へと追いやられ続けた事でベルは自分に対する危機を感知する能力が身に付き、磨かれているのだ。もっと言えば、元々視線に敏感な能力も身についていてそれが磨かれているのも含まれていたりするが……。

 

「ほ、本当勘弁してくださいよ……師匠。や、休まりませんて」

 

「何を呑気な事を言っている。ここはダンジョンだ。常に敵襲や異常事態を警戒して眠らなければ、死ぬだけだ」

 

「常在戦場だよ。寝るときも意識の半分は覚醒させておかないとね。大丈夫、ベルなら出来るから」

 

 眠っているベルに対し、何度かヘディンとヘグニは襲撃を仕掛けている。zらゆる状況での対応力、警戒力を身に付けさせるためでありその一つとして就寝中も半分意識を覚醒しつづけられるようにしているのである。

 

「だからって……そもそもそんな事が出来るのって人間じゃ無くないですか?」

 

「私達は冒険者だぞ? それにお前はまだまだだが、それでも此方側という事に関しては及第点含めて認めてやる」

 

「フレイヤ様もお認めになられてるからね。だから、それにふさわしくなれるよう頑張ろう。ベルだって英雄になりたいんだろう?」

 

「それはそうですけど……いえ、頑張ります」

 

 釈然としないながらもベルは深呼吸してはっきりと告げた。

 

 

 

 

「お前の夢を果たしたいなら、生き急ぐしかない」

 

「その意気だよ」

 

 ともかく、そうして意識を半覚醒しながら就寝できるように鍛錬させられ続けながら、リリルカとヘイズが起きると朝食を取り、階層を移動した。

 

 中層域の19階層から24階層までは『大樹の迷宮』という植物の世界、その先からは下層域になり、25階層から27階層までは……。

 

 

 

「っ、す、凄い……」

 

「圧巻ですね、これは」

 

 25階層へと踏み込んだベルとリリルカはその光景に圧倒された。

 

 二人が目撃したのは『巨蒼の滝(グレート・フォール)』と呼ばれる巨大な滝壺で25階層から27階層まで瀑布が流れ落ちるものである。

 

 因みに25階層から27階層までの階層は『水の迷都(みやこ)』と呼ばれていて、大空洞の壁伝いに西へと向かい、先にある洞窟から崖内部にある迷宮に侵入、そこから円を描くように西から北(滝の裏側)、東に向かい、階層底部にある地下連絡路を目指すという進み方をする。

 

 

 

「……リリにヘイズさんもいるからまさか、この崖から飛び降りて移動しろなんて言いませんよね?」

 

()()はな」

 

「でも、飛び降りるやり方を覚えれば遠征の時とか便利なときはあるよ」

 

 ベルは希望的観測も含めて一応、質問すれば今回は滝壺を飛び降り続けてのショートカットはしないと渋々と言った感じでヘディンは良い、ヘグニは覚えれば得はあるみたいな事を言った。

 

 

「……」

 

 深く考えないようにし、25階層での探索をベルは始め……。

 

「ほう、ちょうど良い……愚兎、あれを魔法抜きで対処しろ」

 

「ベルなら出来る」

 

「は、はい……って速っ!? うああああああああああああっ!!」

 

 

 ベルはヘディンとヘグニが差し向けてくるモンスターの大群やその戦闘の最中に仕掛けてくる彼ら自身の攻撃に対処していると二人からお題を出された。

 

 それは25階層から27階層にて出現する緋燕(つばめ)のモンスターであり、名は『閃燕(イグアス)』。下層域のモンスターにおいて最速の速度をもって弾丸と化して突撃するモンスターだ。

 

 ただし、その最速と引き換えに身体自体は脆く、地面や壁など防具など少しでも硬い物体にぶつかれば肉塊になる。とはいえ、突撃をまともに受ければ嘴に貫かれてしまうが……。

 

 ともかく、ベルは大量発生して軽く二十を超えるイグアスの突撃に対し片手剣と短剣を振り続ける乱舞に限界以上の全力を込めて対抗した。

 

 因みに他の25階層を探索している冒険者達もいて、傍目から一瞬、見れば美しい白と黒の妖精の飼い兎が懸命に飼い主に対しての外敵排除に励むメルヘンな光景だが、実際は第一級冒険者二人が逃げ場を塞ぎながら、一人の冒険者に最速で突撃してくるイグアスへと挑まされているという酷い光景。

 

 

 

『(うわぁぁ……)』

 

 とはいえ、関われば自分の身が危うくなる事は確実なのでドン引きしながらも……。

 

 

 

『(頑張れ、兎)』

 

 

 

 そう、ベルを応援して何も見てない事にした。

 

 

 

「はぁ、はぁ……っづああああっ!!」

 

 

「ようやく、ましな動きになって来たな」

 

「やっぱり、ベルは鍛え甲斐がある」

 

 イグアスを剣閃乱舞で全滅させたベルはそのまま、攻撃を仕掛けてきたヘディンとヘグニのそれに先んじて対応し、窮地を切り抜けるべく動く。

 

 ヘディンとヘグニは満足げな言葉と共にベルに稽古をつけるのだった……。

 

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