三十話
一日、『豊穣の女主人』の手伝いをしたベル・クラネル。彼はヘディンとヘグニによる鍛錬を伴ったダンジョン探索によって追い込まれた心身を回復させるために二日の休日を取っていたのだ。
そして、夜明けとなって今日が始まったこの日、冒険者としてまたダンジョン探索をする。まだLV.4に【ランクアップ】した事による『心身のズレ』の調整をしていないのもあるので、それも含めてだ。
「それじゃあ、行ってきますね。ミア母さん、シルさん、クロエさん、リューさん、ルノアさん、アーニャさん」
起床すると身支度を整え、開店の準備を手伝った後にベルはダンジョンに向かうため、主神であるヘスティア、同じ団員でサポーターであるリリルカを伴ってまずは装備をするべく、自分たちの本拠に帰るのをミアにシル、クロエにリューにルノアとアーニャから見送りされていた。
「ああ、行ってらっしゃい。また手伝い頼んだよ」
「気をつけて、行ってきてくださいね」
「またね、ベル」
「昨日はありがとうございました」
「ダンジョン、気をつけてね」
「頑張れニャ」
「はい、ありがとうございます」
温かい言葉をかけられながら、ベルは店を去って行き【ヘスティア・ファミリア】の廃教会へ……。
「では、行ってきますね。ヘスティア様」
「うん、行ってらっしゃい。ベル君もリリルカ君も気をつけるんだよ」
『はい』
そうして、ダンジョンに行くための装備をするとヘスティアに見送られながらベル達は本拠を去って行き、回復薬の調達のために【ミアハ・ファミリア】の本拠兼店舗である『青の薬舗』へと向かう。
「沢山のお買い上げ、ありがとう。ダンジョン頑張ってね」
「はい、ナァーザさん」
「それと暇な時で良いから、色んな女装して欲しいな。昨日のあれ、本当に良く似合っていたからね」
ナァーザはベル達が要求するだけの回復薬を持ってくるとベルの頭を撫で回しながら、声をかけた。そして頷いたベルに女装について頼む。
「う、そ、それは……」
「してくれたら私もいっぱい、ベルが喜ぶことしてあげるから、ね」
「う、わ、分かりました」
「ありがとう、やっぱりベルは良い子だね」
ナァーザの要求に応じるとナァーザはベルの額に口づけし、微笑んだ。
そうして今回は久々に契約鍛冶師であるヴェルフとダンジョン探索をする事になっているのでギルド本部へ向かえば……。
『うおおお、凄ぇぇぇっ!! LV.6が三人誕生したぁぁぁぁっ!!』
中に居た冒険者達が大騒ぎしていた。オラリオの冒険者達においては中々、上る事が出来ない強者の座へと君臨した者が三人も現れたのだから当然と言える。
『流石は【ロキ・ファミリア】だぜ』
そんな冒険者達の賛辞の声を受けているのは……。
「アイズさん、ティオナさん、ティオネさん。LV.6への【ランクアップ】おめでとうございます。やっぱり、流石ですね」
【ロキ・ファミリア】の主力陣であるアイズにティオナとティオネの三人である。
彼女たちはダンジョン探索にて37階層にいる『階層主』であるウダイオスを相手に激闘を繰り広げ、制した結果LV.6へと【ランクアップ】したのだ。
因みに付き添いとしてレフィーヤも居た。
「ありがとう、ベル。でも私達が【ランクアップ】したのはベルのお陰だよ。それとベルもLV.4への【ランクアップ】おめでとう」
「私からもありがとうとおめでとう。ベルの【ランクアップ】期間、凄く早いから私達も頑張ったんだ」
「あんたの勇姿に負けていられなくなっちゃったのよ」
「本当にあの時のアイズさん達、凄かったですからね」
それぞれ、ベルに対し頭を撫でながらベルに応じるアイズ達、レフィーヤは当時、ウダイオスと戦うアイズ達の様子を思い返しながら苦笑した。
「……っていうか聞いたよ。ベルは【フレイヤ・ファミリア】の【黒妖の魔剣】と【白妖の魔杖】に【女神の黄金】とダンジョンに数日間も探索してたって……私達の誘い、断ったのにどういう事なのっ!?」
「ふあうあぁぁ、は、話しますから落ち着いてくださいぃぃっ!!」
ティオナは思い出したとばかりにベルへ詰め寄りながら顔をもみくちゃにしつつ、【フレイヤ・ファミリア】とダンジョン探索していた事について問い詰めた。
「というか、あのお二人とダンジョン探索するってベル、本当貴方何者なんですか……」
レフィーヤは同じエルフであるのもあって有名な二人の魔法剣士とダンジョン探索出来るベルの存在に驚いていたが。
「ダンジョン探索している間、ヘスティア様の身をフレイヤ様が本拠で保護してくれていたんですよ」
「だったら、私達もヘスティア様を保護したら良いの?」
「でも、それは迷惑じゃ」
「そんなの気にしないよ。だったら、そろそろ遠征も近いし一緒に行こう。いや、一緒にってくれなきゃ、許さないよ、ベル」
「う、わ、分かりました」
「うん、素直で良い子……じゃあ、決まりだね。ところで明日はダンジョン探索はする?」
「はい、そのつもりですよ」
「じゃあ、明日は私達とダンジョン探索しよう」
「はい、分かりました」
こうして翌日、ベルはアイズ達とダンジョン探索をする事が決まった。
「じゃあ、また明日ね」
「色々とごめんね、それと明日、楽しみにしてる」
「馬鹿ティオナが勝手にごめんなさい。その分、ちゃんと可愛がってあげるわ」
「ふふ、これからもよろしくおねがいしますね」
そうして、それぞれ軽く口づけしたり、頭を撫でたりしながらアイズ達は去って行った。
「相変わらず、可愛がられっぷりが凄いな。ベル」
「うん、ありがたい事にね」
終わった事で様子を見ていたヴェルフがベルへと声をかけた。
「それじゃあ、エイナさん。行ってきますね」
「うん、行ってらっしゃい」
そうして、ダンジョンに行く事をアドバイザーであるエイナへ告げに行けば、微笑まれながら頭を撫でられ送り出されたのだった……。
二
ダンジョンの中層域にして『大樹の迷宮』内を縦横無尽にして自由自在に駆け跳ね回りながら紫紺のサーベルと銀の短剣による壮絶にして猛烈なる斬閃の軌跡を空間中に刻みつけていく斬舞を踊り、モンスターを屠っていくは白兎。
「【
斬舞を踊ったかと思えば、短剣を奇術の如く瞬時に鞘へ納めると自らが扱う炎を性質変化するための起動鍵を唱えて魔法を発動。
本来ならば無詠唱魔法に詠唱を加えるという手間がある分の恩恵は……。
『ウギャアアアアッ!!』
「良し、中々いける」
ベルの手から放たれた炎雷はベルの思う通りに拡散して放たれる。他にも追尾性を有したり、連射性能が強化や威力を重視した者になったり、曲がったり、連射性能が高くなったり、果ては付与まで出来ると性質変化は自由自在なものであった。
自らがLV.4になった事で得た能力とそれによって強くなった事をベルは喜ぶ。
「ったく、男子三日会わざればなんとやらどころじゃねえだろ。飛躍すら超えてるぜ」
「ヘディン様たちに鍛えられたのもありますが、なによりベル様ですからね」
ヴェルフは改めてベルの成長ぶりに驚愕し、そして喜ぶと同じようにリリルカもベルの成長ぶりを喜んだのであった……。