暁闇の空の下、『豊穣の女主人』の中庭を縦横無尽に動き回りながら、衝突しあるいは逃げ、あるいは交差し合う複数の影は流麗なる舞を披露しているが、その舞は武技を教わる者ならば誰もが圧倒される程の技と駆け引きを内包している戦舞である。
「ふっ!!」
「しいっ!!」
「せいやあっ!!」
「ニャァァァッ!!」
戦舞を披露している影は全員がLV.4に到達した神の眷属だ。
ベル・クラネルがどちらも刃を潰したサーベルと短剣を振るい、それに対抗しているリューが木剣を振るい、クロエが暗剣を振るい、ルノアが拳を振るい、最近になって混じりだしたアーニャが穂先を布で覆った槍を振るう。
なんとベルが一人で四人を相手取っているのである。
そして……。
「(ベル……【フレイヤ・ファミリア】とも鍛錬しているとは聞いていますが、これ程までに……)」
「(ますます強くなってるわね……)」
「(本当に限界を知らない子だ)」
「(あの洗礼を耐え抜いてるだけはあるニャ……間違いなく、ベルは兄様と同じ勇士……)」
死闘を潜り抜け、限界を超えてきた経験を幾多も積んでいる事が窺い知れ、その成果によって磨き抜かれてきた技と駆け引きで四人を相手に接戦を繰り広げているベルに対しリューたちは驚愕。
特に元【フレイヤ・ファミリア】の団員であったからこそ、アーニャはベルから洗礼を潜り抜ける勇士の資質を感じ取った。
ともかく、ベル達は朝日が昇る中、手合わせを行い……。
「皆―、ベルさーん。もうそろそろ終わりだよ」
シルの声によって鍛錬を終えたのだった。
「ベル、貴方はどこまでも強さを飛躍させますね」
「まったくよ、びっくりしちゃった」
「英雄になるためにどれだけ頑張ってんだか……」
「とりあえず褒めてやるニャ」
「今日も格好良かったですよ、ベルさん」
「あふ、くん……うあああっ!!」
浴室にてリューたちによって身を洗われながら可愛がられ、愛されてベルは蕩かされたのであった。
その後は『豊穣の女主人』の開店準備を手伝い、そうして本拠である廃教会に戻る。
「んちゅ、ふちゅ……それじゃあ今日も頑張ってね、ベル君、リリルカ君」
「ふあぅぅ……はい、ヘスティア様」
「行ってきます」
準備をするとベルはヘスティアに抱き締められ、口づけされながら見送られ、ギルド本部へとリリルカの二人と共に向かった。
今日は【ロキ・ファミリア】のアイズにティオナとティオネ、レフィーヤとダンジョン探索する事になっていて集合場所をギルド本部にしたのだ。
そうして向かっている途中……。
「ベルさん、ちょっとこちらに」
「アミッドさん?」
【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院の方からアミッドに手招きされたので応じると……。
「私からLV.4になったベルさんへのお祝いです」
「え、でもこれ……」
物陰の方へと向かえばアミッドに回復薬の中でも最高の『エリクサー』一本を渡されたので流石にベルは戸惑う。
「良いんです、ちょっと数を間違えて余分に作ってしまっただけですから……それにベルさんは誰かが危ないとそれが自分にとって危険でも向かっていってしまうんですから。是非とも使ってください」
「分かりました。有難くいただきます」
「はい、そうしてください。では、気をつけて、んちゅ」
「はう……」
ベルはアミッドに口づけされ、微笑まれながら見送られる。
そうしてギルド本部へ向かえば……。
「おはよう、ベル。今日はよろしくね」
「おはよう」
「おはよう、よろしくね」
「おはようございます」
ティオナ達がベルを出迎え、挨拶をする。
「よう」
ヴェルフも又、挨拶をし……。
「あんたは相変わらず色んな奴を集めるねぇ、私も人の事は言えないけどさ」
「アイシャさん、お久しぶりです」
「ああ、久しぶり」
アイシャが苦笑しながらベルへと近づき、声をかける。
こうしてアイシャも加えてダンジョン探索に行こうとした時……。
「……」
ふと自分を手招きする男が居たので自分を指差し、確認を取って向かってみれば……。
「そんなに大所帯ならよ、24階層に行ってくれないか? 実は今、その階層でモンスターが凄い群れを成していてよ。危険地帯になってんだ……ギルドにも依頼を出したんだが何故か依頼書も貼ってねぇし」
「分かりました。そういう事なら行ってみます」
「悪いな、報酬はちゃんと出すからよ」
モンスターの群れが異常な数になっている24階層に行ってほしいと言われたので引き受け……。
「そういう事なので24階層に行きましょう」
24階層を目的にする事を告げると……。
「すまない、私は【ディオニュソス・ファミリア】のフィルヴィス・シャリアと言う。私も24階層の状態を気にしているんだ。同行させてもらえないだろうか?」
濡れ羽色の長髪であり、純白の肌色に純白の司祭服の如き戦闘衣を纏ったエルフの冒険者が声をかけてきた。
「断る理由も無いですし、良いですよ。僕は【ヘスティア・ファミリア】の団長、ベル・クラネルと言います。よろしくお願いしますね」
「っ!! う、うむ……申し出を受けていただき感謝する」
純粋で可愛らしい笑みと共にベルが自己紹介すればフィルヴィスは顔を赤らめ、目を背けながら感謝を告げるのであった。
こうしてベルは予定していたメンバーより二人、数を増やしてダンジョン探索をする事になったのであった……。