兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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三十六話

 

 

 24階層で発生した異常な数のモンスターの群れの発生はこの階層に3つある『食糧庫』のうち、北にある食糧庫周辺の通路を緑色の肉壁が塞いでいたからだった。

 

 食糧庫には腹を空かせたモンスターが階層中から集まる。しかし、この食糧庫に入れないため、モンスターの群れは別の食糧庫に向かった。

 

 階層中から北部に集まった飢えた怪物の群れが南に向かう大移動により、途中にある全ての道を縦断し、元から南西と南東の食糧庫へ向かう群れと合体し、結果的に冒険者が利用する正規ルートにも押し寄せて溢れ返る事になった。

 

 それが異常な数のモンスターの群れが誕生した真相であったのだ。

 

 ベル達はそのまま、緑色の肉壁を調査する事にし、花の花弁が折り重なったような『門』、『口』のような器官を破壊して中へと入る。口は修復機能を有しており、ベル達は状況的には閉じ込められた。

 

 とりあえず、生物の中を連想させるような壁の内部を探れば食人花の群れに襲われ、交戦する中で狙ったようにアイズに柱が放たれて彼女を包囲しようとしたのに気づいたベルは無理やり介入してアイズを包囲から脱出させた代わりに自分が包囲され、孤立させられてしまった。

 

 すると少し前にリヴィラの街で起こった事件の首謀者でアイズに襲い掛かった赤髪の女がベルの元へと現れた。そして、彼女は生物から切り取った血肉をそのまま鋳型に流し込んだかのような不気味な外見で紅の剣身と柄だけという天然武器のようなそれをもってベルへと襲い掛かる。

 

 

 女は暴威を体現した凶暴にして荒々しい剣捌きと獰猛な拳蹴を織り交ぜて繰り出す。

 

「ふっ!!」

 

 それに対しベルは母親譲りの魔法が鳴らす鐘音に導かれるように動く。それにより、ベルは幻惑であり、幽鬼の威を有しそれに兎が駆け跳ねるが如き、機動が加わる事で空間全てを己の庭が如く、縦横無尽に自由自在に舞い踊る存在となった。

 

 それによる勢いを加えて披露されるは短剣と片手剣による凄烈にして鋭く流麗な剣捌きであり、しかも二つの剣はリーチが違うのもあって対峙する相手をかく乱させる。

 

「なッ、くううッ!!」

 

 女はベルの戦舞に対応できず、翻弄され始める。

 

「ふざけた兎がぁッ!!」

 

 更に暴威を増しながら押し切ろうと試みるも……。

 

「しいっ!!」

 

「ぐがっ!?」

 

 力を入れるために大きく予備態勢、隙を生じさせた事で女はその隙を衝かれて切り刻まれる。もっともすぐに体勢を立て直し反撃する事でベルを自分の間合いから引き離したが……。

 

 

 

 

「(これも師匠とヘグニさんのお陰だな)」

 

 

 

 少し前にダンジョンにてヘディンとヘグニに徹底的に鍛えられた事で強敵との戦闘、死線を何度も経験した結果、戦闘に対する順応能力を磨かれたがゆえにベルは本来、自分より遥かに強い存在に対して巧く戦う事が出来るようになっていた。

 

 二人のエルフに感謝しつつ……。

 

「いくぞっ!!」

 

「調子に乗るなあっ!!」

 

 ベルは自分から攻めかかり、女は怒りながら対応するため動くのであった……。

 

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