兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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三十七話

 

 

 24階層――飢えたモンスターが腹を満たすためにある補給所のような場所である『食糧庫』。

 

 この階層には3つほどある中、北の食糧庫周辺の通路を塞ぐ緑色の肉壁の内部にてベルは『リヴィラの街』でアイズを襲っていて、食人花の怪物の群れをも操っていたという赤髪の女と戦闘を繰り広げていた。

 

 そうして、結構な手傷を追わせたので有利になると思われたが……。

 

「おおっ!!」

 

「(再生するのか……)」

 

 女が暴威を振るう中でその傷口は煙を上げるようにして修復される。どうやら再生能力を有しているようだった。

 

 そうして女は勝機を取り返さんと爆発的な勢いの如く、攻めかかって来た。

 

「おおっ!!」

 

 少しの手傷すら無視して圧倒的に押し切ると決めたようで女は更に長剣を振るい回り、拳に蹴りを激しく繰り出していく。

 

 ベルはなんとかそれを駆け跳ね、舞い踊りながら回避し、片手剣と短剣にて捌く事で対応していく。

 

「お前の動きにはもう慣れたぞっ!!」

 

 再生能力があるからとむしろ、特攻するため防御を捨てての女の攻撃はベルに反撃させる暇を与えない。だが、しかし……。

 

「それを言うなら、こっちもだっ!!」

 

「なっ、があっ!?」

 

 女の動きを見切ったベルはそれに対応しながら、更に左の短剣と右の片手剣を奇術の如く入れ替えて今までの斬舞の質を変えた。これにより、女の調子を狂わさせる。

 

 慣れた筈の左の剣のリーチと右の剣のリーチが一瞬にして変化するのだから無理もない。

 

 単純だが、それ故に女は嵌ってしまった。

 

 

 

「づぐ、う、あああっ!!」

 

 ベルは短剣と片手剣を奇術の如く、左と右で何度も入れ替え、あるいは入れ替えると見せかけては斬閃乱舞を変幻自在なものへと変化させつつ、女を切り刻んでいき……。

 

「ここだあっ!!」

 

 執念深く隙を伺っていた女はベルが斬撃を繰り出そうとする予備態勢を見抜き、すかさず動いたが……踏み込んでくるはずのベルの動きが止まる。

 

「(しまっ!?)」

 

 繰り出した振り下ろしは当然、ベルに当たる直前にて空振り、女の剣は地面を砕く。

 

「はああっ!!」

 

 前のめりとなっている女の腹部をベルは片手剣を横薙ぎ一閃する。

 

「うぐあああっ!!」

 

 深々と剣閃が女の腹部を切り裂く。そして更に……。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

「がああああぁぁぁ……」

 

 ベルが短剣を納めて空にしていた左手を女へと向け、瞬間的に二十近くの炎雷を放つ事で女を呑み込み、炎雷はそのまま驀進し続け、ベルの視界から消える。

 

「ふっ!!」

 

 ベルは【ミアハ・ファミリア】特製の【高等二属性回復薬】を取り出し、飲みながら炎雷が進んだ跡を超速にて追っていったのであった……。

 

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