兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

39 / 112
三十八話

 ベルが24階層にある北の食糧庫を塞ぐ緑色の肉壁の内部で赤髪の女と戦っている中、他の者達は奥深くに移動していた。

 

 肉壁はなんと食糧庫にそのまま繋がっていた。食糧庫は大空洞に特大の『石英(クォーツ)』が立つ場所であり、その赤水晶の大主柱(はしら)はモンスターにとって栄養価の高い液体を生む。

 

 そんな大主柱には毒々しい極採色の花頭を三輪咲かせた超大型の食人花が大長躯から派生した蔦に似た触手を大主柱の表面にくまなく行き届かせていて水晶の液体を吸い出していた。

 

 それは大空洞の壁や天井、地面に伸びて緑色の肉壁を作り上げている巨大花の体と密接に繋がっている。栄養価の高い液体を元に成長し、緑壁を作り上げていたのである。

 

 更に三体の巨大花が巻き付いた大主柱の根元には雌の胎児を内包した緑色の球体が取り付いていた。

 

 大空洞には他にも無数の通路口があって、出入り口付近には大型の黒檻があり、中は食人花のモンスターが入れられていた。

 

 大空洞の肉壁から食人花が間欠的に生み出されていたのである。

 

 またモンスターだけでなく、白骨の鎧兜で顔を隠していた長身の男にしてフィルヴィスが『死妖精』と呼ばれるようになった原因、邪神とその眷属たちによる連合派閥こと『闇派閥(イヴィルス)』が27階層にて当時の有力派閥の冒険者を纏めて罠にかけ、モンスターや階層主を巻き込んで味方も敵も関係ない地獄絵図となった事件である『27階層の悪夢』の首謀者ことオリヴァス・アクト他闇派閥の残党の集団がいた。

 

 オリヴァスは死んだはずだったのだが、魔石を胸に埋め込んだ状態で生きていた。とはいえ、LV.6のアイズとティオナにティオネの3人の力と連携は絶対的であり、雌の胎児を刺激しないようアイズは魔法を使わない状態だったがそれでもオリヴァスを追い詰め、部下だろう者達も食人花も片付けていった。

 

「お、おのれぇぇ」

 

 倒れつつ、アイズ達を睨むオリヴァス。

 

 そんな時……。

 

『っ!?』

 

 突如、壁を崩壊させながら、炎の豪閃が飛び出し雌の胎児の元へと炎に包まれた何かが落ちる。

 

「まさか、レヴィスか!?」

 

 驚くオリヴァス……しかして、まだ事態は動く。

 

「この鐘の音は……」

 

「ベルだ」

 

 大鐘楼の音を響かせながら、ベルが穴の開いた壁の所から飛び出す。手に持っている片手剣は巨大な炎の刃の輝きを纏っており……。

 

 

 

 

「聖火の英斬ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 ベルが聖炎による絶撃を放てば、オリヴァスは雌の胎児を守ろうと飛び出したが……そのまま切り裂かれると共に雌の胎児らや食人花などの一切の邪悪とまとめて斬撃と共に爆炎に呑み込まれたのであった。

 

「……これで終わりだと良いけど……うっ」

 

「お疲れ様、ベル……寝てて良いよ」

 

「えへへ、今回も格好良かったよベル」

 

「ありがとうございます、アイズさん。ティオナさん……」

 

 

 ベルが倒れようとしたところでアイズとティオナが抱き留めながら声をかけるとベルは礼を言って、眠りにつく。

 

「あれがベル・クラネルの……彼は英雄なんだな」

 

「ええ、そうですよ」

 

 ベルの勇姿と武威にフィルヴィスは敬意を込めて呟き、レフィーヤが同意するのであった……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。