兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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五十一話

 

 【ロキ・ファミリア】に【ヘファイストス・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】による派閥連合の『遠征』。

 

 一同の探索域は『深層域』へと達した。

 

 その始点である37階層こと『白宮殿』を踏破し、現在はうだるような蒸し暑さが立ち込める44階層へと進んだ。この階層では燃えるような朱の色が辺り一帯の地面を埋めつくしている。

 

 視界にまとわりつく壁面はところどころが罅割れ黒ずんでいて、あたかも炭化したかのようである。刻まれた亀裂の中でうっすらと輝く赤い光がその炭色の壁の中で存在感を放っていた。

 

 この階層に初めて辿り着いた者はまるで火山の腹の中に放り込まれたような錯覚さえ催すだろう。

 

 そんな44階層では岩石のモンスターである『フレイムロック』の群れが立ちはだかっていた。

 

 当然、その数も能力も『深層域』であるがゆえに強大だ。

 

 

 

「やああっ!!」

 

 初めて探索する階層であるが故、そして【ロキ・ファミリア】の探索に同行させてもらっている立場だからこそベルは遊撃を務め、同じく戦っているアイズにティオナ、ティオネとベート、椿達、前衛陣の支援をするため動いていた。

 

「うん、やっぱり彼は良い」

 

 そんなベルの立ち回りを見てフィンは満足げに呟く。

 

 

 

 無論、支援の上手さもあるが……。

 

 

 

「私も頑張る」

 

「ベルのおかげで戦いやすいしね」

 

「痒い所に手を届けてくれるものね」

 

「負けてられるかよ」

 

「ベル坊は本当に良い男だ」

 

 ベルの勇姿にアイズ、ティオナ、ティオネにベート、椿たちが触発され戦意を増し、動いていく。戦闘において士気を上げる存在がいるときほど、ありがたい事は無い。

 

 そうして、44階層もそれより先の階層も踏破していき……。

 

 

 

 一本の草木すらない荒れ果てた広大かつ単一の階層で石や砂など全てが赤茶色に染まった茫漠たる大空間の『大荒野(モイトラ)』。

 

 この『大荒野』があるのは49階層である。

 

『オオオオ!!』

 

 この階層にて産出されるのは山羊のようにねじれ曲がった二本の大角、首から上には膨れ上がった馬面とでも言うべき醜悪な顔面、真っ赤な眼球を持ち、大のヒューマンすらやすやすと超す巨体を有する『フォモール』だ。

 

 しかもこの階層では『フォモール』が階層を埋め尽くすほどの膨大な数で立ちはだかるし、これに加えて階層主の『バロール』も相手する事になるのだ。

 

 今回、バロールはこの『遠征』以前に倒されており、次産期間がまだ来ていないので立ちはだかる事は無かった。

 

「【聖火降臨(フローガ)――ファイア・ボルト】!!」

 

 ベルは立ちはだかる『フォモール』の大群に対し、【スキル】発動の詠唱をする事で【ファイア・ボルト】の性質を変えながら精神力の大半を使って魔法を発動した。

 

 超巨大の炎雷が幾多もの閃光となって大量の『フォモール』を呑み込んでいく。

 

『はああっ!!』

 

 そうして戦況を掴み取るとベルも含めて冒険者達はそれぞれの戦舞や魔法によって一気に『フォモール』を殲滅していったのであった……。

 

 

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