兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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五十四話

 

 日が昇る訳も無く、暮れる事も無い迷宮の『深層域』である安全階層が50階層。

 

 時間を知る術は冒険者が持ち込む時計だけであり、その針は明朝の到来を告げていた。

 

 「それじゃあ行ってくるよ、リリ、ヴェルフ」

 

「はい、頑張ってくださいベル様。ですが、無理はしないように」

 

「しっかりな、ベル」

 

 サポーターであるリリルカと鍛冶契約をしているヴェルフに声をかけ、ベルは未到達階層の探索へと挑む精鋭パーティであるフィン達の元へと向かった。

 

 

 

「出発する」

 

 そうして、この階層にて精鋭パーティの帰りを待つ多くの冒険者達に見送られながら、【ロキ・ファミリア】の団長である総勢十四名は野営地を発つ。

 

 精鋭パーティの配置としてはベートとティオネ、ティオナが前衛、中衛にはアイズとフィンにベルと椿、後衛にはリヴェリアとガレス、この各配置に武器と道具を所持するサポーターが二名ずつ加わったものになる。

 

 一同は灰の大樹林を抜け、階層西端の壁面に空いた大穴へと向かう。

 

 それは50階層と51階層を繋ぐ連絡路であり、険しい坂となっている。

 

 崖と同義の急斜面を見下ろせば、階下には既に幾つものモンスターの眼光が闇に浮かび上がっていた。

 

 

 

「行け、ベート、ティオネ、ティオナ!!」

 

 パーティ一同は静かに武器を構え、長槍を構えるフィンが指示を告げる。

 

 狂暴な狼人と獰猛な女戦士の姉妹が超速で急斜面を駆け下り、残りの一団が続く。

 

『はあああっ!!』

 

 安全階層を抜けて早々発生したモンスター達との交戦はベートの銀靴とティオネの二刀の湾短刀、ティオナの大剣が踊ればそれで終了した。

 

 51階層から57階層まではダンジョンの基本に立ち返るが如く迷宮構造になっていて、黒鉛色のダンジョンの組成は平面の天井と壁面を描き、錯綜し合う画一的な通路が広間と広間の間を繋いでいるのだ。

 

 

 

『ガアアッ!!』

 

 深層域が故に黒い犀のモンスターである『ブラックライノス』や巨大な蜘蛛である『デフォルミス・スパイダー』が横道や十字路の先や天井や壁面から、あらゆる方向から大量の群れとして襲い掛かって来た。

 

「ふしッ!!」

 

 ベルは≪神の片手剣≫と≪サーベル・ローラン≫の二刀流による剣舞によってモンスターを斬滅していった。

 

「ふふ、やはりベルがいると素材の出が違うな」

 

「ちょ、椿さん。あまり勝手に動かないでください」

 

 椿は素材の獲得に余念が無いのは変わらず、一応、パーティの進行に支障が出ない範囲を意識しているようだが勝手に動き回っていた。

 

 

 

 そのフォローにベルは勤しむ。

 

「来た、新種!!」

 

 進んでいると腐食液を有し、吐き出しもする芋虫型の怪物が群れとして現れる。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 ≪神の片手剣≫を素早く鞘に納めつつ、空いたその手で炎雷を幾つか超速連射する。

 

 そうして、ベルの魔法が幾つかの芋虫を爆砕し……。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

「アイズ、よこせ」

 

 隊列を変更、女戦士の姉妹はアイズと入れ替わって後ろへと素早く移動しそうしてアイズは魔法によって風を纏いながら、その風を魔法吸収の効果を有するベートの銀靴にも分け与えるとベートは更に不壊属性の双剣である≪デュアル・ローラン≫を引き抜き、アイズとベートは芋虫型の怪物に突撃する。

 

 そうして風の斬舞と風を纏った蹴りに双剣による戦舞が披露されるごとに芋虫型の怪物は鏖殺していった。

 

 「【ウィン・フィンブルヴェトル】」

 

 ダメ押しとばかりにリヴェリアが後衛で魔法を平行詠唱にて完成させ、三条の吹雪によって迷宮ごと前方のモンスターを凍結させ、一直線に伸びる通路の最奥の突き当りまで蒼氷の世界に変えたのだった。

 

 

 

「皆さん、やっぱり凄いですね」

 

「僕たちに十分、ついていける君も凄いよベル」

 

「ああ、良くやったぞベル」

 

「良い感じに動けるなんて凄いね」

 

「本当、やりやすくしてくれてありがとう」

 

「上手だったわ」

 

「相変わらず、良く状況を見ているなベル坊は」

 

 ベルの言葉にフィンにリヴェリア、アイズにティオナとティオネ、椿が声をかけつつ褒めるのであった……。

 

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