兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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五十八話

 

 『深層域』の58階層にて『ヴァルガング・ドラゴン』や『イル・ワイヴァーン』、57階層から襲撃してきた芋虫型の怪物の群れを倒しつつ、57階層の連絡路へと避難したベルにティオナ、ティオネにベートと彼らを救援に来たガレスは別行動する事となったフィン達と合流を果たした。

 

 そうして、【ロキ・ファミリア】にとっては59階層の探索をする事となり、皆は休憩をする事となり……。

 

『うりうり』

 

「あうう、や、やあぁ……」

 

 ベルが勝手に58階層へと飛び降りた事で心配したというのを口実に遠征が終わった後は好きに弄るのを約束させながら、今も色々と弄っていた。

 

 頬を突いたり、抱き締めたり、擽ったりなどいろいろな方法によってだ。

 

 

 

 

「……」

 

「団長、どうしたんですか?」

 

 そんな中でフィンは59階層の連絡路を観察しており、ティオネはフィンに質問する。

 

「確か、【ゼウス・ファミリア】が残した記録によれば、59階層から先は『氷河の領域』だという……」

 

「は、はい。至るところに氷河湖の水流が流れ、極寒の冷気が体の動きを鈍らせると……」

 

「もしかして、そんな階層なのに全く冷気が漂ってこないのがおかしいって事ですか?」

 

「ああ、そういう事だよベル」

 

 弄られながらフィン達の話を聞いていたベルが指摘してみるとフィンは笑みを浮かべてそう言った。

 

『えらいえらい』

 

「やぅぅ」

 

 ベルは更に女性陣から弄られていった。

 

 

 

 何かを予感しながら、ベル達は59階層へと進んでいく。

 

 

 

 

「蒸し暑い……」

 

 道中、寒いどころか蒸し暑い空気が漂ってきた。

 

「密林?」

 

 そして、59階層へと踏み入れば氷河の領域という名はどこへやら、58階層の規模を超える広大なルームには緑一色に染まった樹や蔦が生えている。

 

 連絡路直前の空間に密生する背の高い樹林、地面には蒼い草原と毒々しい極彩色の小輪を揺らす花々、閉鎖空間である階層の壁面、遥か彼方の四方は緑壁がそびえ、大きさの異なった無数の蕾が垂れ下がっているという光景、59階層は密林だった。

 

「24階層の食糧庫みたいだ」

 

 ベルは59階層の状態が以前、食人花を育てる場所になっていたようなそれと似ていたのでそう、評する。

 

「そうだね」

 

 アイズもまた、ベルの意見に頷く。

 

 そうして、皆で進んでいくと……。

 

「なに、あれ……」

 

「『宝玉』の女体型か」

 

「寄生したのは……『タイタン・アルム』なのか?」

 

 密林の光景が消えて樹林が姿を消し、灰色の大地が広がる大空間。密林から荒野と見紛う階層になったその中心には夥しい量の芋虫型と食人花のモンスターがいた。

 

 その量は吐き気を催す程であり、怪物たちが囲んでいるのは巨大植物の下半身を持つ女体型である。

 

 唖然とするティオナに頬に皺を寄せるガレスの横でリヴェリアがとあるモンスターの名を口にした。

 

 その名は巨大植物のモンスターであり、同胞だろうが冒険者だろうが手当たり次第捕食する『死体の王花』である。

 

 巨大植物の女体型に芋虫型は口腔から舌のような器官を伸ばし、先端にある『魔石』を差し出しており、食人花も巨大な顎を開いて口内にある魔石を露出させていた。

 

 

 

「(不味いっ!!)」

 

 ベルは魔石を捧げ、灰となっているモンスターのそれが女体型の周囲に塩塊のように膨大に積み重なっているのを見てやばい事になるのを察知し……。

 

「【聖炎降臨(フローガ)】――【ファイアボルト】」

 

 すぐさま全力以上の精神力を注ぎながら『怪物特攻』の性質を有した極大の炎雷を放つ。

 

『――――!!』

 

 ベルが放った炎雷は巨大植物の女体型も魔石を捧げていた食人花や芋虫型の全てをも断末魔の悲鳴すらも上げさせるごとなく浄滅したのである。

 

「ま、間に合った……う、うぅん」

 

 精神力を使い果たした事でベルの意識は眠りに落ちていくのであった……。

 

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