兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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六十一話

 

 現在はオラリオの西メインストリートで営業している『豊穣の女主人』で働いている店員の一人、リュー・リオン。

 

 彼女は元冒険者で【アストレア・ファミリア】という正義と秩序を司り、【ガネーシャ・ファミリア】とは別に独自で都市の治安維持に努めていた派閥の眷属であったという。

 

 そうした派閥の方針が故に当時、オラリオに蔓延り、悪の限りを尽くしていた『闇派閥』と戦っていた。

 

 だが、そんな『闇派閥』にダンジョンで罠に嵌められてしまい、リュー以外の団員は全滅、遺体を回収する事も出来ず、リューは仲間たちが好きであった『安全階層』である18階層に仲間たちの遺品を埋めて墓を作ったという。

 

 その後、リューはアストレアに全てを伝えて懇願する事でオラリオから去ってもらい、そうしてリューは『闇派閥』へと復讐を開始したのだ。

 

 それはもう執拗に、執念深く、苛烈に、容赦なく、残虐に己が身を焦がす激情と憎悪に任せて闇派閥や闇派閥に与する者、関係を持った者などとことんやり、ギルドの要注意人物一覧(ブラックリスト)にも載って、冒険者としては絶対に活動出来ない事にもなったのだ。

 

 そうして、復讐の果てに力尽き倒れようとしたところをシルに拾われ、以後は『豊穣の女主人』で生活する事になったのだという。

 

 

 

「ベル、本当の私はとっても罪「そんな事無いですッ!!」っ……」

 

 リューの自嘲をベルは叫んで否定する。

 

「仲間を殺されてその復讐をするのは当たり前の事です。僕だって例えば、リリがヴェルフが、皆さんがモンスターにやられれば必ず、仇を討ちますよ。それが罪だというなら、僕だって罪人です。それに今までリューさんは僕を本気で鍛えてくれていますし、優しくしてくれていますし、愛してくれています」

 

 ベルはリューにそう、自分の言葉を必死ともいえる様子で伝える。

 

 

 

「リューさん、僕にとって貴女は大事な人で大好きな人です。だから、それ以上自分を卑下したりするのは止めてください」

 

「……貴方がそう言うのなら、止めましょう……そして、嬉しい言葉をありがとうございます、ベル」

 

「はい」

 

 リューへと自分の想いを伝えれば、リューは微笑み、そうしてベルの頭を優しく撫で回した。

 

「ふ、うう……」

 

 ベルはそれに蕩けつつ……そうして、18階層の森林地帯において狭い木々のトンネルを潜った先にある木の一部を紐で結ばれ、作られた幾つもの十字の墓の元へとリューと共に向かい、そうしてリューと一緒に彼女が持っていた白い花を添えていった。

 

「(アリーゼさん、輝夜さん、ライラさん、ノインさん、ネーゼさん、アスタさん、イスカさん、リャーナさん、セルティさん、マリューさん……どうか安らかに)」

 

 名前は教えてもらったが、姿は知らないリューの仲間で【アストレア・ファミリア】の眷属たちだった者の墓に対し、リューと共にベルは冥福を祈ったのであった……。

 

 

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