兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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原作一巻&SO一巻
八話


 

 多種多様なモンスターの中で最強と呼ばれる種族は何かと言われればそれはやはり、『(ドラゴン)』だ。

 

 当然だが、ダンジョンで生まれるモンスターの中でも竜種はそのどれもが強大な戦闘能力を誇っている。そして、ダンジョンの『上層域』でもドラゴンは産出される。

 

 体高は約一五〇Ⅽ、体長は四Mを越す小竜にして琥珀色の鱗に長い尻尾、鋭利な爪、無数の牙を有し四足で地を這う『インファント・ドラゴン』だ。

 

 産出される階層は11、12階層であるが希少種なために絶対数は少ない。

 

 ダンジョンで生まれるモンスターの中には特定階層で産出されるモンスターの王族、『迷宮の孤王(モンスターレックス)』であり、『階層主』がいるが『インファント・ドラゴン』は事実上の上層域の階層主として冒険者の世界では認定されている。

 

「グオオオオッ!!」

 

「はあああっ!!」

 

 そんな『インファント・ドラゴン』の強大な暴威に対し、自由自在に駆け跳ねる事で翻弄しつつ、短剣と大型のバトルナイフの斬舞による武威で対抗する者がいた。

 

「(僕は英雄になるっ!!)」

 

 昔から英雄譚に憧れ、そして英雄譚のお約束であるドラゴン退治を成し遂げようと意思を激しく燃やし、炉神の眷属に相応しく、意志の熱を原動力とするベル・クラネルだ。

 

「(それにこいつより遥かに強いクロエさんにルノアさんもそして、リューさんに鍛えてもらっているんだから負けられない。ヘスティア様、僕に力をくださいっ!!)」

 

 インファント・ドラゴンと戦う中でベルは目の前の相手より遥かに隔絶した能力を有しているクロエ達に鍛錬してもらっているがゆえに絶対に勝利を成し遂げようという意思をも燃やしているし、なにより常日頃より自らの主神であるヘスティアに相応しい英雄になろうとしている。

 

 ヘスティアがその『聖火』で邪悪より人々を守護するなら、自分は『聖火』で邪悪を抹殺する事を決めているのだ。よって、ヘスティアへの愛情を燃やしそれをも原動力の熱に変えている。

 

 ベルの意志は『神の恩恵』を超克し、そして愛情の丈が大きければ大きい程早熟効果が上昇する【スキル】も又、その領域を上昇させ続け……。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

「グオオオッ!?」

 

 ベルはインファント・ドラゴンから勝機を掴み始めたところで瞬間移動させたと見間違うほどの高速納剣で短剣を鞘に納めながら空いた左手より炎雷を三発同時射撃(バースト)し、その爆発的な威力にインファント・ドラゴンは身を焼かれながら大きく体勢を崩す。

 

「はああっ!!」

 

 そして、その隙に瞬時にインファント・ドラゴンへと駆け跳ね鞘から短剣を抜きながらの一閃と、既に持っているバトルナイフによる一閃を放ち、インファント・ドラゴンを斬滅したのだった。

 

「ふう、思ったよりてこずったな。流石は上層域の階層主だ」

 

「そんな相手に勝つんですから、流石ですよベル様。相変わらず、素晴らしい勇姿でした」

 

「ありがとう、リリ」

 

 冒険者となって半月、ベルは12階層にてインファント・ドラゴンに勝利し魔石とドロップアイテムを回収しながらサポーターであるリリルカと会話を交わし、微笑み合った。

 

 そうして、バベル地下1階へ帰還を始めていたが……。

 

 

 

『ブモオオオッ!!』

 

 5階層を進んでいると後ろの方から怒涛の如く、猛進して地面を揺らし、更にモンスターの咆哮も響いた。

 

「なんだ」

 

「嫌な予感しかしませんが……」

 

 様子を見ようと待ち構えれば……。

 

「ブモァァァッ!!」

 

 筋肉質な体に赤胴色の体皮、頭部には太く鋭い角を有する牛頭人体にして中層域のモンスターの中でも上から数えた方が早い戦闘能力を誇っている『ミノタウロス』の数体が猛進していたのだ。

 

「ミノタウロスッ!? ベ、ベル様逃げましょうっ!!」

 

「いや、今逃げたら上の階層にいる冒険者が危ない……ここで倒すっ!!」

 

「なっ、幾らベル様でも「リリ、僕を信じて」……はい」

 

 リリとそうした会話を交わすと短剣とバトルナイフを抜き……。

 

「(きっと、これが僕にとっての英雄になるための試練……)」

 

 ベルは5階層より上の冒険者たちを守るため、そしてミノタウロスを倒す事こそ自分が英雄になるための試練だと認識し、意志を激しく燃やす。

 

 そうしてその意思はかつて古代の英雄が神の恩恵無しで自らの限界を超え続けたそれを成せる域に達してまだ増大。それに呼応し『神の恩恵』も又、所持者であるベルを超克させようと熱を上げ続けた。

 

「勝負だっ!!」

 

「ブモォォッ!!」

 

 ベルはミノタウロスの群れへと駆け跳ね、ミノタウロスの群れも立ち塞がったベルを排除すべく猛進の勢いを上げるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンから帰還しようとしていた【ファミリア】がいた。オラリオにおいて頂点に近い勢力を有する最大派閥こと【ロキ・ファミリア】である。

 

 しかし、帰還最中に一つのミスを犯した。17階層にて遭遇したミノタウロスを蹴散らしていた時、その実力差に恐れをなしたミノタウロスの群れの半数による逃亡を許してしまった。

 

 しかもその逃亡先は上層、凄い勢いで進むミノタウロスは次々と上へ上へと階層を移動していったのだ。

 

「(早く、早く倒さないと……)」

 

「(なんだって、厄介なっ!!)」

 

 【ロキ・ファミリア】の幹部にして長い金髪に金の瞳、美しく整った容姿の女性剣士であるアイズ・ヴァレンシュタインは同じ派閥内でも随一の速度を誇る灰色の毛並みの狼人(ウェアウルフ)の男、ベート・ローガと共にミノタウロスの群れを追って討伐していき……そして、5階層に到達すると……。

 

「フゥゥゥ……」

 

 ミノタウロスは四つん這いとなって、次に行う全力の突撃態勢のために力を溜める。

 

 その体には幾つもの刺し傷や切り傷があり、周囲を見れば他のミノタウロスの死体も数匹転がっていた。

 

「来い」

 

 突撃態勢を取ったミノタウロスに対し、ベル・クラネルも又、突撃を受け止めようとする体勢になる。しかし、彼の身体はぼろぼろでライトアーマーらしき残骸を纏っているだけで彼の武器らしき、短剣とバトルナイフは別の方へと転がってしまっている。

 

 絶体絶命だ。

 

 

 

「いけな「止めんじゃねえ、アイズ!!」ベートさん……」

 

「あの兎野郎は男を賭けている。それにダンジョンで得物を横取りするのはルール違反だ。ああなっている以上、俺らはもう、手を出せねぇよ」

 

「……」

 

 アイズの手出しを許さないと言葉だけでなく、態度で語るベートにアイズは様子を見る事にし……。

 

 

「ブモオオオッ!!」

 

 そうしてミノタウロスがベルへと全力の突撃をした。

 

「おおおおおおおおッ!!」

 

「ブムッ!?」

 

 その突撃に対し、ベルは角を両手で掴んで突撃を抑え込む。

 

「でやああああああああっ!!」

 

 直後にベルは跳ねる力を蹴りに変換。全力全霊の凄まじき蹴り上げがミノタウロスが大きく、仰け反る程の威力を発揮し……。

 

「【ファイアボルト】ォォォォォォォォォォォッ!!」

 

 右手をミノタウロスの顔へと突き出し、左手で腕を固定しながら至近距離にて炎雷を六発同時射撃をし、その爆発はミノタウロスの顔面を爆砕した。

 

「勝ちやがった……」

 

「凄い、まるで英雄みたいに……」

 

ベルの勝利にベートは驚愕の呟きを発し、アイズはベルの勇姿に英雄を連想した。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 そんな中、ベルは倒れ伏したミノタウロスの死体を見ながら高等回復薬を取り出し、たどたどしい動きでそれを飲むと次に【ミアハ・ファミリア】が新開発した体力と精神力を回復させる『二属性回復薬(デュアル・ポーション)』を幾つか飲んだ。

 

「ベル様、お疲れ様です」

 

「あの……すみません、実は」

 

 そうしてリリルカがベルへと駆けだしたところでアイズが事情の説明にかかり、改めてベルの本拠を訪れ、自分たちの尻拭いをさせたお詫びと礼について話をする事を約束したのだった。

 

 因みにアイズは口下手なのでベートがぶっきらぼうながらもそんな形の話をしたのであった。

 

 こうして、ベルが本拠に戻った後……。

 

 

 

「おめでとう、ベル君。【ランクアップ】だ」

 

「ありがとうございます、ヘスティア様」

 

 

ベル・クラネル

 

LV.2

 

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

『EX』という前代未聞のアビリティの熟練度が【ランクアップ】した事で初期数値に一新されながら、潜在値(エクストラポイント)になった。

 

 そして、【ランクアップ】した事で発現可能となった発展アビリティから加護と思われる『幸運』を発現し……。

 

≪スキル≫

英雄求道(アルゴノゥト)

能動的行動(アクティブアクション)に対するチャージ実行権。

能力(ステイタス)の常時限界解除(リミット・オフ)

・窮地時、全能力(ステイタス)の超高補正。

 

 新しい【スキル】も発現するのであった……。

 

 

 

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