兎は炉神に想いを捧ぐ   作:自堕落無力

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九十三話

 

 下界において特に多くの人や亜人、神々が集っている大都市であり、迷宮都市のオラリオ。

 

 その都市内でも特に賑やかで雑多な南のメインストリートの第五区画の中心にあるはこの都市内で頂点と言っても相違ない権威と勢力を有する最大派閥の【フレイヤ・ファミリア】の本拠である『戦いの野』だ。

 

 その中の神室内、つまりはフレイヤの部屋に朝日が差し込む。

 

 

 

「ん……うぅ……」

 

「あら、起きたみたいね」

 

「寝顔も本当に可愛らしいなぁ」

 

「ああ、オリオンは本当に私達を虜にするな」

 

「ですねぇ、今も可愛らしいですし」

 

「全くどこまでも卑しい兎ですね」

 

「とか言って貴女も随分と嬉しそうじゃないですか、ヘルン。しかし、遠征前にこれは良い癒しですよぉ」

 

 起き上がろうとしているベルに対し、頭を撫でたり、身体を擽ったり、摩ったりなど思い思いに愛でるのはフレイヤにヘスティアとアルテミス、リリルカとヘルンにヘイズである。

 

 

 

「ふぅ……おはようございますぅ」

 

 ともかく、ベルは気持ち良さそうに起きて挨拶しながらも……。

 

「(とうとう、この日が来てしまった。本当、頑張らないと)」

 

 今日、この日よりベルは【フレイヤ・ファミリア】の遠征に同行する事になる。

 

 そう、普段から実質的な殺し合いである『洗礼』を繰り広げている同じ派閥としての絆など無いこの【ファミリア】でだ。

 

 しかも自分は彼等が寵愛を得ようとしているフレイヤから寵愛を与えられているのでもの凄く敵視されている。

 

 

 

 戦士としての敬意はもたれこそすれ、それはそれであり、これはこれという感じだ。

 

 ましてやこの【フレイヤ・ファミリア】はLV.8になろうと『深層域』の階層主であるバロールを倒そうとしたオッタルの妨害をした事で個人としては寡黙で口数少ないとはいえ、思考的には常識人よりなオッタルを激怒させた事で遠征中なのに『洗礼』を繰り広げ、『遠征』を失敗させた事でフレイヤに溜息を吐かせた前科がある。

 

 それ以来、ダンジョンではなるべく『洗礼』のような事を避けるようになったとは言うが、禁止ではないから不安だ。

 

 無論、一人一人戦士としての誇りがあるので不意打ちなどはしてこない。安心感はある。もっとも堂々と襲われる可能性は大いにあるが……。

 

 とはいえ、事前に昨日、フレイヤが『神命』として絶対に味方同士で争わないように言ったので不安要素は減っている。

 

 フレイヤの命は【フレイヤ・ファミリア】の団員達にとっては絶対だ。しかし、警戒はしておいた方が良いのは確実なのでベルは不安がりながらもなんとか遠征をやり遂げようと決意する。

 

 

 

 そうして……。

 

 

 

「それじゃあ、行ってきますヘスティア様、フレイヤ様、アルテミス様、ヘルンさん」

 

『いってらっしゃい』

 

 ベルは遠征のためにバベルのある中央広場へと向かう前に見送るヘスティアにフレイヤとアルテミス、ヘルン達に声をかけ、彼女たちの言葉を受けながら移動を開始するのであった……。

 

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