るろうに伸一 ー仮想現実剣客浪漫譚ー 作:SS好きのヨーソロー
第一章 出会い、黒の剣士
妖精戯曲<フェアリィ・ダンス>編 一章 出会い、黒の剣士
第一章 出会い、黒の剣士
「・・・伸一、お主は相当強くなった。お主は様々な力を吸収する素質があったようでござるな」
「ったく、お前はすげえな・・・俺も負けてられねえ!」
「ありがとうございます、緋村師匠。
弥彦くんの方こそ。君が前向きにやるところを見て背中を押されたのだもん」
あれから、半年の時間が過ぎた。
その半年間で神谷活心流をまず習い、そこから剣術を用いて他の人たちと戦うことで経験を積み重ねていった。
そのおかげで、僕はかなり強くなることができたのだ。
弥彦くんは僕をいいふうに言ってくれるが、こちらからすれば弥彦くんも努力を忘れずに鍛錬に打ち明けるところがあり、憧れていたくらいだ。
「まあ、いつでも帰ってこれるだろうし好きな時に帰ってらっしゃい。どーせ鍛錬するんでしょ?ここは第二の家だから!」
神谷師匠の温かい言葉に目尻が熱くなる。
「・・・ありがとうございますみなさん。じゃあ、僕は一旦帰りますね」
そう言い、頭を下げると玉石を入れたお守りを握る。
そして眩い光の後、僕はまたもや意識を手放したのだった。
次に目が覚めたのは、元の自分の家の庭。
「・・・・・・驚いたな。時間が進んでいないのか」
どうやら時間の流れが止まっていたようだ。嬉しい誤算でもある。
これならひたすらに鍛錬の時間が確保できるではないか。
予想外の利点に、つい微笑む。
明治の修羅達と過ごした半年は自分自身の自信につながった。
来る前の、あの無力感も多少はマシになっている。
「ふっ・・・僕も、きっと多少は力になれるだろう」
くぁあ、とあくびをして久しぶりに現代の空気を吸う。
いい気分転換だ。このまま散歩をするのも良いだろう。
そう考え着替えると僕は街へと向かおうと歩き出す。
見慣れた道路も、半年ぶりとなると若干懐かしみを感じる。
しかし実時間は経っていないという事実。
面白おかしくてつい笑いそうになる。
歩いてしばらく、場所は僕の学校のクラスメート桐ヶ谷直葉ちゃんの自宅付近に近づいていた。
やはりいつも思うが、桐ヶ谷邸は大きい。
剣道をしているのでそのような剣道場がある、とは以前に雑談話で聞いたことがあったがこれほどまでとは・・・。
全くすごいものだな、と考えているとちょうど偶々桐ヶ谷さんが玄関から出てきており、僕を見かけると驚いた反応になる。
「わっ!?な、長田くん!?」
「やぁ桐ヶ谷さん。奇遇だね」
「え、えぇ・・・でもあんた家こっちじゃなかったよね?・・・まさか」
ジトー、とまるで怪しいものを見るようにスマホを取り出す桐ヶ谷さん。
「いやいや待て待て、流石に理不尽にも程があるぞ・・・。偶々だよ偶々。
散歩をしようと思って歩いていたんだ、ほんの偶然だよ」
「・・・ほんとー?ならいいんだけどさ」
やれやれ、とため息を吐いてスマホをポケットに入れる桐ヶ谷さん。
いやその反応もやめて欲しいんだけどね?ため息吐きたいのはこっちの方である。
「・・・はは、相変わらずだな。
・・・そういえば、桐ヶ谷さんはこれから出かけるのかい?」
ふと思った疑問を問いかける。
すると、若干顔に嬉しさや喜びが滲み出てきた。
「えへへ、うん。お兄ちゃんが今日退院するんだ」
「あぁ、そう言えば君のお兄さんは確かSAOに囚われていたのだっけ?」
「うん、そうだよ。・・・リハビリをしててようやく退院できるようになったの!」
SAOとは、ソードアート・オンラインのことである。
ナーヴギアというVR機器を用いることで脳波を読み取りまるで本当にゲームの世界にいるかのような体験ができるVRMMORPGという新しいジャンルを生み出した次世代のゲーム・・・だったのだが、製作者茅場晶彦の思惑により強制的にログアウトができないようになりゲームの中に監禁、そのゲーム内でHPがゼロになる等のことがあった際脳波に衝撃を与えて現実世界でも死ぬという狂気的な事件が起きたのだった。
その事件の生還者、そしてクリアに尽力した攻略組の一員だと聞いている。
まあ、聞いていると言ってもプレイヤー本人もあまり語らないようだ。
無理強いして聞くものでもないし、無事に帰って来てくれたことが何よりらしい。
「桐ヶ谷さん、もしご迷惑でなければ僕も病院に行ってもいいかな」
「え、長田くんが?」
「あぁ、君のお兄さんがどんな人なのか気になってさ。
あ、もちろん家族の・・・兄妹の時間を邪魔することになるから無理にとは言わないのだけど」
「うーん、いいわよ別に。
もう母さんと何回もお見舞いに行ってるし」
「そっかぁ、ありがとう桐ヶ谷さん。
もし大丈夫ならお見舞いの品として何か買いたいのだけど、お兄さんは何か食べれないものはあるかい?」
「特にはないと思うわ。甘いのも普通に好んで食べるし」
「そっか、じゃあちょうどいい。病院の近くにバウムクーヘンの店があったよね」
「あ、うん!あそこの美味しいわよね!」
そういえば病院の近くにうまいバウムクーヘンの店があるはずだ。反応を見るに悪くはないだろう。
「君も気に入ってるならよかった、三人で開けよう」
「え、いいの?」
「もちろんだとも。僕のお願いを聞いてくれたし、何よりこういうのはみんなで食べるとさらに美味しいだろ?」
「えへへ、そうね。じゃあいきましょ!」
ということでバウムクーヘンを購入しそしてお兄さんが入院している病院に到着した。
受付の人に目的と氏名を述べ、手続きを済ませる。
差し入れの許可もいただき、そのまま病室へと入った。
「・・・スグ、きてくれたのか」
そこには、優しげに微笑む黒髪の少年がいた。
「うん、きたよお兄ちゃん」
「いつもありがとう。・・・・・・スグ、横にいる男の子は?」
「あぁ、紹介するわ。この子は私のクラスメートの長田伸一くん。
長田くん、この人は私の兄の桐ヶ谷和人よ」
「初めまして。ご紹介に預かりました長田伸一です。桐ヶ谷さんとは中学のクラスメートでよくお話をさせてもらってたんです。お兄さんのことは以前から少し聞いていまして。退院すると聞いて挨拶をしたいなと思ってきました。
急に訪問してしまい申し訳ないです」
そう言いながら頭を下げるが、目の前の少年はなんら不愉快な感じではなさそうだ。
「顔を上げてくれ長田くん。気にしてないさ、ありがとうな」
「いえいえ。・・・桐ヶ谷くん、食事とかはできますか?」
「あぁ、できるよ。って言っても病院食は薄くて薄くて・・・」
「ああ・・・わかります。塩分足りませんよね。
実はさっきお見舞いとしてバウムクーヘンを買ってきたんです」
「・・・あ、それってあそこの・・・、懐かしいな」
「おっと、桐ヶ谷くんもご存知でしたか。ちょうどよかった。3人で食べようって話になったんですよ。食べましょう」
「うん、ありがとうな!」
そう優しげに微笑む少年、その姿はどこにでもいる男の子、の雰囲気であった。
「うん、やっぱり美味しいなぁ・・・」
「うん、そうよねお兄ちゃん!」
「僕もここのバウムクーヘンは特にお気に入りで。よく息抜きにコーヒーを飲みながら食べるんです」
「・・・こ、コーヒー」
コーヒーの単語を聞いて顔を顰めた桐ヶ谷くん。はて、何かあるのだろうか?
「・・・お兄ちゃん、コーヒー飲めないのよ」
「うぐっ・・・い、言わないでくれよスグ」
「あぁ、なんだそういうことか。・・・珍しくもないでしょ。事実コーヒーは苦いですし。苦手な人も多いと思いますよ?」
「・・・でも君は飲むんだな」
「まぁ、僕のところは家族がコーヒー好きですから。両親ともコーヒーを好んで飲むんです。そこの息子ですから好きになるのも変ではないですよ。
桐ヶ谷くんはどんな飲み物が好きなんですか?」
「え?俺?俺はなぁ・・・・・・ジュース・・・コーラとか、炭酸だろ?あとは・・・オレンジジュースとかかな」
オレンジジュースか。
うん、オレンジジュース・・・か。
「な、なんだよ!?」
「・・・いえ、すいません。思ったよりも可愛らしいなと思いまして」
「うぐぐぐ・・・・・・わかってるから言わないでくれよ・・・!!」
「あははは、すいませんすいません」
そんな他愛無い話をしていると桐ヶ谷さんが笑っていた。
「ん?桐ヶ谷さん、どうかしたのかい?」
「あぁごめんなさい・・・2人とも思ったよりも仲良くて・・・!」
ぷくくく、と笑ってる。お兄ちゃんが可哀想だからやめて差し上げなさい。
「・・・あぁ、俺も長田くんとは仲良くなれそうだな!
なぁ長田くん、俺とスグの名前分かりづらいだろうし、俺のことは和人、とでも呼んでくれよ。あと年上つっても一個上しか変わんねえし、タメでいいぜ?」
「・・・ふむ、君がそういうならそうするよ。
和人、僕のことも気軽に伸一とでも呼んでおくれ」
「おう!わかったぜ伸一!」
「・・・はぁ。伸一、私も下の名前でいいわ。なんだかんだ居ること多いし」
「そっか、ありがとう直葉ちゃん」
というわけで、2人と仲良くなることができたのだった。
「じゃあ私そろそろ行くね!」
「あぁ、ありがとな直葉!」
直葉ちゃんはそろそろ剣道の練習があるようだ。
「伸一はどうする?」
「僕はまだ残るよ。少し和人くんと話したいことがあるんだ」
「そう、じゃあまた学校でね!」
「あぁ、バイバイ」
手を振り見送った。
「そんでどうしたんだ?話したいことって」
「・・・単刀直入に伺うぞ。君、何があった?」
「・・・えっと、何があったってのは」
「言葉のままさ。何かあっただろう」
「そ、そりゃSAOに閉じ込められてたから」
「それなら今は脱出しているじゃないか、自覚しているかわからないが、君の顔は今相当焦燥しているぞ。
直葉ちゃんには気が付かせないように意識しているかもしれないが、終始心ここに在らずという感じだ。
別に君から無理やり話を聞こうとか、そういうわけでは無いけども明らかだったから心配になったんだ。
君は僕に仲良くなれると言ってくれた。僕だって君とは仲良くなれそうだ。
だからこそ、友人の君が何か抱えているのであれば話くらいは聞きたい。そういうことかな」
流石に初手から調子に乗りすぎただろうか?つい心配になったが、それは杞憂だったようだ。
目の前には、涙を流す少年がいたのだから。
「う、うぅ・・・うあぁぁ・・・!!」
無理矢理にでも堪えていたのだろう。一度泣き出すと止まらない。涙はさらに勢いを増して溢れ出していた。
そう、彼は何かを相当抱え込んでいる。そういうことだ。
「・・・大丈夫、一度涙を流して落ち着かせるんだ。リラックス・・・リラックスして。ほら・・・ゆっくり」
和人くんを抱きしめ、背中をさする。
しばらくすると、様子が落ち着いた。そしてゆっくり口を開いたのだ。
「・・・ありがとう。実は・・・俺の大切な人、結城明日奈って人が、目を覚ましていないんだ」
「結城明日奈さんか・・・もしや、その方はSAOで?」
「あぁ。向こうで血盟騎士団ってギルドに所属してた。副団長だったんだ。
俺の、最愛の人なんだ」
辛そうに語る和人くん。なんとも心が痛くなる話だ。
「ありがとう和人くん。僕に相談してくれて。
・・・しかし、君が戻れて彼女が戻らないというのも変な話だな。何か理由があるのかもしれない。
和人くん、僕も何かあれば君の手助けをしたいのだが良いだろうか?」
「良いのか・・・?迷惑をかけることになるけど・・・」
「僕と仲良くできるかもしれないと言ってくれたのは君自身だろう?
お節介かもしれないが、君の役に立てるなら嬉しいことこの上ない。むしろ僕を役に立てて欲しい」
「そっか・・・じゃあこれからよろしく頼むよ伸一!」
にっ、と微笑む和人くん。
その笑顔が眩しくて、あったかかった。
だからこそ、僕は彼のために何かをしたい。そう思えるのであった・・・・・・
「しかし・・・いまだに帰らぬ人、か。
そんなものがあれば普通ニュースになるはずだが・・・一体どういうことだ?」
彼と別れてから、自分は深く思考の海に潜っていた。
よくよく考えればおかしな話である。
というのもニュースだ。連日SAOクリアの話が放送され、現在生還者は無事全員目を覚ましたという話。
その理屈から言えば結城さんは本来は死んでいる。しかし、彼女と和人くんは例外だそうだ。
まず、元凶である茅場晶彦/ヒースクリフ。それからキリトを守るためにアスナが盾となる。
消滅したアスナの武器を手に、キリトはヒースクリフを打ち破り、その後SAOを上空から見守り消滅した。
そう、ケースが特殊であるのだ。
「・・・ふむ。血盟騎士団副団長アスナさん・・・か」
その思考は、突如遮られた。
「・・・アスナがなんだって?」
紫色の髪の、美人な女性によって。