るろうに伸一 ー仮想現実剣客浪漫譚ー 作:SS好きのヨーソロー
僕の目の前には、現在紫髪の美少女が立っている。というのも先ほど、SAOから帰還できていない血盟騎士団副団長であり、閃光という名で親しまれたというアスナという女性のことを呟いた際に反応されたのだ。
「アスナがなんだって?」
かなり強い反応を示している。年もあまり極端に離れているわけではなさそうだ。もしかしたらアスナさんの知り合いの方だろうか?
とりあえず黙り続けるわけにもいかない。ここは話すしかないだろう。
「騒がしくしたのならばすいません。実はSAOというゲームにてキリトという名で活躍していた桐ヶ谷和人という少年からアスナさんという方についてご説明を受けていたところです。
勝手の発言失礼しますが、貴女はアスナさんの知り合いの方でしょうか?」
「・・・ええ、私は彼女の親友だったの」
その話をする彼女は少し寂しげだ。というのも親友だった、という部分を強調していた。
何か過去に抱えているのだろうか?
気にはなるが、とりあえず情報を知る必要があるな。
「そうでしたか。失礼ですがまだ戻らなくても平気ですか?もしも可能ならばそのアスナという方についてお話願いたいのですが・・・」
「・・・ええ、構わないわよ」
了承してくださった紫髪の方にお礼と共に頭を下げ、まずは自動販売機に行った。
「せっかくのお話を聞く機会ですし、簡単な礼代わりに飲み物を。何か飲みたいものはありますか?」
「そうね、ならミルクティーをもらえるかしら」
「わかりました。少しお待ちください」
自動販売機にてまずミルクティーを買うと差し出す。ついでに自分はコカ・コーラを買ったところだった。やはりこれがなければ始まらないからな。
二つ買うと、ミルクティーを差し出しベンチへと腰掛けた。
「ありがとう。・・・でも良かったの?」
「えぇ、構いませんよ。アスナさんという方に対する情報を得れるのならばありがたい限りだ」
「・・・それなら、キリトの方が適しているんじゃないかしら?」
「確かに、和人君からも聞けるだろうが・・・同姓の方からお話を聞かせてもらえるなら聞きたいものなのさ」
「・・・・・・そう」
やはり、やけに心苦しそうな顔をしている。いったいなぜだろうか。
「・・・無理に嫌なことを聞きたいわけではないですよ。事実ソードアート・オンラインはデスゲームと伺っている。話したくないこともあるでしょう。
しかし、なぜそうも苦しそうな顔をしているのですか?」
その質問に、目の前の女性は苦笑いで答えたのだった。
「・・・私ね、明日奈のこと・・・見捨てたのよ」
そう話す彼女は、なんとも心苦しそうな顔をしていた。
「・・・それはゲームの中でかい?」
「えぇ、私は明日奈が襲われた時・・・怖くて逃げてしまった。
死にたくないと思った、親友が死んだところを見たくなかった。
だから・・・フレンドから消して、1人逃げたの。
あの子にとっては初めてのゲームだったのに、初めての経験だったのに・・・」
少し身体が震えていた。身体が震えているということはトラウマを抱いているということ。相当心に傷を負ったのだろう。
「・・・なるほど、確かに友人想いでは無いのかもしれないけど多少仕方がないところもあるんじゃ無いかな」
自分がそういうと、相手はキョトンとした顔になっていた。
「・・・まず名前を述べていなかったかな。僕は長田伸一というよ」
「・・・兎沢深澄。ソードアート・オンラインではミトと名乗っていたわ」
「では兎沢さんだね。兎沢さん、確かに友人想いではない行動なのかもしれないけど捉え方を考えてみよう。
親友だから、必ず自分の命を犠牲にしてまで助けるべきかな?
勿論親友だ。親友を助けるというのは良き行いであると思うけど、それは自分の危険を顧みず行うべきなのかな。
確かにそういう展開はライトノベルや漫画で格好いいシーンがあるね。
けどリアルの人間がそれに近しいことをできるかとは限らないだろう?自分が死ぬことがあるかもしれない。その状態で覚悟を決めるのは難しい話だよ。
・・・こんな男に言われてもうざったいだけかもだけどさ」
そういうと、相手は笑っていた。
「・・・優しいのね、あなた」
「僕は優しくないさ。思ったことを述べただけに過ぎんよ。
それでね、その明日奈さんが今こちらに戻って来れていないらしいんだ。理由は不明なのだけどね、妙なことにニュースでは無事全員が救われたという話を聞いている。だからこそ明日奈さんが戻って来れていないのが異常事態なんだ。
僕はキリトこと和人くんのために行動をしたいと考えている。
兎沢さん、もしも過去に未練があるなら・・・一緒に動かないかい?
失敗するのが人間なら、やり直しをするのも人間だから。
前に進むことができると思うよ。・・・兎沢さんはどうしたい?」
しばらくすると、兎沢さんはまっすぐこちらを見つめた。
「・・・私も。私も動きたい。親友を、助けたい」
やはり、兎沢さんはいい人だ。僕はそう思ったのだった。
その後連絡先を交換し、すでに1ヶ月が経っていた。
僕は今、桐ヶ谷邸にお邪魔してしまっている。
「・・・・・・そこまで!ただいまの試合、引き分け!」
朝から剣道場にお邪魔しているのだ。
「また引き分けかぁ・・・。和人君はやっぱりとても強い、一筋縄じゃいかないなぁ・・・」
「ありがとう、けど伸一だってすごいぜ。・・・1ヶ月くらいしか経ってないのにめちゃくちゃ強いし。才能あったんじゃないか?」
にっ、と笑う和人くん。しかしそれは違う。
「僕に才能はないよ。ただ強くなりたいから無理矢理鍛錬ばっかしてただけさ。・・・しかし、それにしたら未だに成果を出せないのはいかがなものかと・・・」
そう言い続けると、直葉ちゃんからデコピンを食らった。
「伸一の悪い癖よ?自覚しないのもいけない事だと気付きなさいって」
「・・・ははっ、善処するよ」
苦笑いしてしまう。自身の力のなさについ自己否定に走ってしまうところは師匠達からも指摘されていた。
「そうだぜ、極度の謙遜は返って侮辱になるからな」
そのセリフを聞いて、つい笑ってしまう。
「な、なんだよ伸一!」
「いやすまないすまない。・・・僕の師匠のような人にも同じ事を言われたよ」
「へぇ?そんな人がいるんだな。どんな人なんだ?」
和人くんが気になっている様子だ
「・・・うん、きっと僕らの誰も敵わない。多分君より強い人だよ」
「お兄ちゃんより強いって・・・相当じゃない?」
「あぁ。・・・あの人は・・・あの人たちは、修羅の如く険しい道を突き進んできた人達だからね。道標みたいなものさ」
「そっか・・・いつか会ってみたいもんだぜ」
「ふふ、その時は自慢の友人と紹介しなければならないね」
ニコリと微笑むと、ちょうど女性。桐ヶ谷和人くんのお母様が声をかけてきた。
「真一くん、和人、お疲れ様。朝ごはんの用意ができたからシャワーでも浴びてきなさいよ」
「おはようございます翠さん。わかりました、そうしてきます」
「おはよう母さん、浴びてくるよ」
というわけで2人でシャワーを浴びることになった。
衣服を脱げば、洗濯に入れる。
「毎回服を借りてしまってるよなぁ」
そう、練習用にと服を借りているのだ。ありがたいことこの上ないが・・・
「あはは、母さん第二の息子って言ってたからいいんじゃないか?」
「その場合和人くんはお兄ちゃんってことになるのかい?」
「うっわ、むず痒いなそれ、なんか慣れないよ」
「僕だって慣れんよ。・・・というかどうした和人くん。こっちを見てるが・・・・・・まさか、そっちの趣味が?」
友人のとんでもない?趣味に反応すると怒られた。
「ち、ちがうってバカ!そんなんじゃないってば!」
「あはは、わかってるわかってる。でも目線を感じたからね。真面目にどうした、何かついてるかい?」
「ああ、いや・・・伸一、筋肉ついてるよなぁって」
そう言われて自分の身体を見る。ふむ、確かに筋肉はついている。しかしまあ当然のようなものだ。筋肉がないと強くなどなれないのだから。それに師匠らと鍛えるからこそ、やはり肉体は強化される。
「そうかもしれないが、君だって筋肉ついているではないか。それに君は顔もいい、羨ましい限りだよ」
そう苦笑いしながら浴室に入った。
「・・・・・・伸一はもう少し自覚しろっつーの」
少年のつぶやきは、誰に届くこともなく消えた。
「あ、もうご飯できてるわよー」
「ありがとうございます、翠さん。お皿など出しますね」
「偉いわねぇ伸一くん、ありがとう。ほら和人も動く!」
「わかってるわかってる。・・・伸一、パス」
「ほい、これ」
朝、シャワーから出ると焼き魚の良い香り、それから味噌汁の香りが鼻と腹を刺激する。
翠さんにはこのように、いつも世話になってしまっているのだ。本当に頭が上がらない。
「でもさー、ほんとうにお兄ちゃんと伸一仲良いよねえ。すぐに馴染んでるもん」
椅子に座った直葉ちゃんがそう述べる。
「ふふ、そうねぇ。2人ともほんと息子って感じがするわ」
翠さんもにこやかに微笑んでいる。
「な、なんだよ2人とも・・・」
和人くんも少し気恥ずかしそうだ。
「わかる和人くん。少しばかり気恥ずかしいな、これ」
かく言う僕も、恥ずかしかったりする。
「・・・しかし、いつも思うが翠さんの料理うまいな」
「そうか?確かにうまいけど意識してなかったな」
「そりゃあ、家族としたら食べ慣れてるだろうしね」
「あ、でもでもそれで言ったら伸一のところの唐揚げ美味しかったよねぇ」
「そうねぇ、お父さんも喜んでたわ。またお礼がしたいから言っておいてね」
「ありがとうございます、父も母も喜びますよ」
食事中。他愛無い会話。
家族間で仲がいいからこそ、よくこのようにお裾分けをしていた。
「あ、俺前おばさんから聞いたぜ。きんぴらごぼうめっちゃ気に入ってた、って」
「あぁ、ピリ辛なのがご飯に合ってね」
「ふふ、じゃあまた作ってあげないとね」
「はい、ありがとうございます」
平穏な時間。朝から心地よいものだ。
「いやぁ、食った食った。やっぱ鮭といえば米だよなぁ」
「あぁ、やはり永久機関だよな」
たくさん食べてしまった。本当によく世話になる。
「ふふ、2人とも食べ盛りだものね」
「よし!じゃあ伸一。さっさと皿洗っていこうぜ」
「ん、そうだな」
「和人が自分から・・・」
「お兄ちゃんが自分から・・・」
「う、うるさいなぁ!?いいだろー?!」
「ほんと、踏んだり蹴ったりだぜ・・・」
「ハハっ、まあいいじゃんか」
「そーだけどよー」
ぶーぶー、と項垂れる自分の友人に笑いながら街を歩く。
今日は結城明日奈さんのお見舞いだ。
「・・・しかしながら、僕も行っていいのかねえ。僕は全くの無関係みたいなものだが」
そう、言うなれば部外者だ。関係ない、それも男が女性のお見舞いに行っていいものなのだろうか。普通なら気持ち悪がられるし通報されかねない。なんなら和人くんにぶっ飛ばされてもおかしくないレベルなのだが・・・・・・
そう考えると、デコに軽く衝撃が走る。
「いたっ・・・和人くん、何をするんだい」
デコをさする。犯人は和人くん。デコピンをお見舞いしてくれたのだ。
「何するんだいじゃないぞ伸一。またお前自虐的になってただろ」
ムッスー、という顔になる。というかなんでわかるんだ君は。特定スキルが高すぎやしないか?
「なんでわかるんだよ君、心の中を読むのは反則だぜ・・・?」
「ばーか、伸一がわかりやすいからだよ。それに伸一には本当に世話になったんだ。だから明日奈には紹介したいんだよ」
そう微笑む和人くん。やはり彼には敵わない。
「ふっ・・・・・・そうか。僕もできるならば結城さんにはご挨拶をしたいと思っていたところなんだよ。可能ならばSAO時代のこと、聞いてみたいしね?」
自分も微笑みを宿し話す。
きっと、良い方なのだろうな。
やがて病院に到着して和人くんが手続きを行う。
病室につき、中へと入る。
「やぁ、アスナ。・・・今日も来たよ。
あれからもうしばらく経ったんだけどさ、色々あって大変なんだ。
あ・・・紹介するよ、こいつは長田伸一って言って・・・俺の妹の直葉のクラスメートなんだ。
こいつ、めちゃくちゃ剣が強いんだぜ?俺といつもいい勝負するんだ・・・」
そう微笑む和人くん。
それと同時にドアが開かれた。
そこに入ってきたのはみたことのある人。
結城彰三さんだ。・・・レクトという会社のCEOであったと記憶する。
それとメガネの男性が1人。
・確か・・・名前は須郷伸之という人だっただろうか?
レクトプログレス、レクトの子会社の人だと思う。
ALO関連で見かけたことがあるからだ。
お二人は和人くんとお話をしていた。
そうして、結城彰三さんがごご退室されてから問題が起きたのだ。
そして・・・須郷伸之という存在を、知ることとなる。