るろうに伸一 ー仮想現実剣客浪漫譚ー   作:SS好きのヨーソロー

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第三話 下劣な男、その名は須郷伸之

 

 

 

 

問題が起きた。

それは、予想を遥かに超えたことだった。

 

内部に入ってきた須郷伸之、それはアスナこと結城明日奈を狙う下劣な男だったのだ。

そして、僕たち子供が病室に残った瞬間、その本性をヤツは曝け出した。

 

話を簡単にまとめてみよう。

 

現在、結城明日奈さんはナーヴギアを接続したまま目が覚めることがない。ゲームクリアをしているにも関わらず、そしてナーヴギアによるバッテリーのオーバーヒートでの現実でのゲームオーバーも起きていないのにである。

そしてその問題に一枚噛んでいるのが須郷伸之なのだ。

須郷は結城明日奈を自分のものにする為に結城彰三氏に接触し信頼を勝ち取る。

そうして結城明日奈さんが目覚めないのをサポートし、結城明日奈さんのためにと動いて結婚に取り付けたらしい。

 

全くもって卑怯なことを思いつくものだ、確かに身動きの取れない状態の人間に優しくすれば身内からの信頼は勝ち取るに決まっている。よく考えたものだ。だがもちろん穢らわしいことこの上無い。

 

須郷さんは和人くんと僕を見て嘲笑した。子供に何ができるのかと。

全くもって気色が悪く、嫌悪感を抱くことは簡単だった。

 

須郷伸之はその後津々浦々と僕たちに対する下卑た発言を続ける。

自分の経歴を棚に上げてひたすらに僕らを蔑む。

マウントの取り合いと言ってもいいのだろうか。

力を持たぬものを見下し、自分を棚に上げて、ただひたすらにその鬱憤を晴らす様子はここまでくるともはや滑稽にすら思える。

 

「ははは!明日奈ちゃんを自分のものにしたと思った君は滑稽だったよ和人くん!いやキリトくんの方が良かったかね?」

「っ・・・・・・・・・」

和人くんが睨みつける。無理もない、大切な人をこんな手で奪われてしまっているのだ。怒らない方が不可能というものである。

「はははは!!凄むな凄むな!怖いぞ?んふふふ。

横の子は誰くんかなァ???」

ニヤニヤと下卑た笑いをこちらに向けてくる。次の標的は僕なのだろう。

「・・・僕は長田伸一と言います。和人くんとはここ最近知り合った仲でして。SAOには未参加でした」

「あひゃひゃひゃ!こりゃ滑稽!まさかSAOにすら参加していないとは!どうしてこんなところに来たのかなぁ?残念だったねぇ!キリトくんの無様な姿を見てしまったねぇ???」

にぃっ、と口角を釣り上げ煽り続ける。

下の立場と思っているからの悪手なのだろう。笑いそうになるが我慢だ。

 

「当然です。彼は単なるゲームプレイヤーにすぎません。貴方のような方と比べるのも烏滸がましいでしょう」

「・・・しん、いち?」

和人くんが目を見開きこちらを見つめる。

「へぇ???君は僕の良さがわかるってことかなぁ?」

「えぇ、もちろんです須郷さん。少なくとも貴方はレクトプログレスの重役では?」

ニコリとも微笑む。

その瞬間須郷さんの笑みが少し固った。

 

「・・・レクトプログレス?」

和人くんが頭を傾げる。

「・・・どうしてわかったんだい?」

須郷さんも流石に驚いたのか苦笑いをしている。

「和人くん、レクトプログレスってのは簡単に言うと結城彰三氏の勤めるレクトの子会社だよ。家電製品の部品とかも作ったりしているはずだよ。

須郷さん、僕がなぜ貴方がレクトプログレスの人間だと思ったか。それは貴方と彰三氏の親密度です。

貴方は彰三氏からかなりの好評を受けている。

そのことから彰三氏と近い立ち位置だと推測できる。

そして子会社の人だと彰三氏は述べました。

子会社で彰三氏が詳しく親しい関係にあるのはレクトプログレスだと言う判断に、そしてその中で婚約という形に至る結果から推察するに貴方がレクトプログレスの重役であるという判断になりました。・・・お間違えは?」

僕の推察、と言うよりも邪推に仮定のオンパレード理屈で述べると相手は笑っていた。

 

「君は素晴らしい!君のような聡明な子は大好きさ!」

「いえいえ、彼みたいに馬鹿なことは考えませんよ」

「はっはっは!そうだよなぁ!!ALOでも同じような奴らがうじゃうじゃいる!クリアできないのにいい気味さ!」

「ふふ、貴方もなかなかですね。エリートって人はこう言うことを言うのですね、さすがです」

「そうだろうそうだろう!君に免じて今日は帰ってやるさ!ははは!自分の立場を理解しろよ黒の剣士くん!」

 

そう言い帰っていく須郷さん。褒められたのが嬉しいのか、楽しそうに病室から出ていった。

 

「・・・ふ、ふふ。ふふふ・・・ふふははははは!!」

須郷が去ってからしばらく。我慢の限界を迎えた僕は思わず笑ってしまった。

ここまで耐えてきた僕は偉いだろう。

「何がおかしいんだよ伸一!?」

怒る和人くん。しかしこれを笑わずに何と言えばいいのだ。

 

「無理言うなよ和人くん、こんな滑稽な男笑うことしかできないだろう」

笑いながらスマホを突きつけると再生ボタンを押す。

そこからは先ほどの侮蔑が流されていた。

「・・・お前録音してたのか?」

「あぁ、僕らを見るなり目つきを大幅に変えた。表情筋も少し動いた。口角が少し上がっていたからおそらく笑いの感情だろう。

おそらくは明日奈さんの肉親である結城彰三氏に取り入っていることに優越感を覚えての事だ。SAOを知らぬ人間からすれば僕らなど何も力の持たぬ子供。そういう愚かな考えになるのもわからなくはないさ。

まあ、ひどく滑稽だとは思うけどね。

 

それに僕が少し煽たらすぐにこの有様だ。

・・・・・・彼は確か立場を理解しろと言っていたね」

 

すちゃ、とメガネを掛け直す。

「・・・・・・・この阿呆が。自惚れるのも大概にしろよ。

立場を理解しなければならないのは貴様の方だと言うことを重々理解しておけよ須郷伸之。

僕の友人を馬鹿にするのであればそれ相応の事は覚悟しろよ」

沸々と全身に怒りがまわる。

身体が熱くなる、腕に力が入ると軽く冷たい感覚になった。

力を入れすぎ、爪で皮膚を切ったのだろう、それで血を出してしまったようだ。

 

いかんいかん、感情的になり続けてこのままそれを突き進めてしまえば怒りに脳が支配されてまともな判断をするのが難しくなってしまう。

ここは以前聞いた言葉を思い返すことにしよう

 

 

『怒るのは大いに結構だが焦るな阿呆。焦りは余計な緊張を生み、実力を半減させる』

 

これは緋村さんたちが語っていた斎藤さんの言葉だ。

確か十本刀の宇水さんと言う方との戦いの時だったらしい。その言葉の意味が理解できる気がする。

 

怒りを力に変えるのは構わない、それは一種の強さだから。

だけど焦るのは違う。怒りに脳を完全に支配され思考が濁るのはあってはならないからだ。

 

 

常に冷静沈着に。最善を考えて動くべき。潰せる敵も潰せなくなってしまう。

目指すは完璧の勝利、こちら側が何か不利益になるわけにはいかないのだ。

 

「・・・落ち着けよ僕。勝てる試合も勝てないだろう」

そう自分に言い聞かせて僕は端末を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それで私が呼ばれたってわけね」

しばらく経った後、僕たちは近くにある公園に集まっていた。

その時僕は端末でとある人物に連絡を取っていた。それが・・・

「・・・ミト、なんだよな?」

「ええ、そうよ。貴方は・・・キリトね、見てわかったわ」

ミトこと兎沢深澄さんである。

「あぁ、目の色は違ったけどすぐに見てわかったさ。でも驚いたな、伸一がミトと交流を持っていたなんて」

「あぁ、君から明日奈さんの名前を聞いた時に彼女に出会ってね。知り合いになったんだ」

「そうだったのか・・・・・・ミト、実はアスナが・・・」

「わかってる。・・・須郷伸之だったわよね」

「・・・・・・あぁ。本当に許せない」

和人くんはプルプルと腕を揺らしていた、今でも殴りかからん勢いだ。

 

「・・・私だって許せないわよ。絶対助け出してやる」

「あぁ・・・力貸してくれるんだな」

「当然!伸一に背中押されちゃったし」

「あぁ、彼女の口からアスナさんという人の名前を聞いた時にいろいろあってね。

この人はきっと強いゲーマーだ。戦力にはもってこいだろう」

「あぁ、その通りだな。ミトがいると強いよ」

「まあ、私はブランクあるし。・・・ていうか大丈夫なの?伸一くんは」

それもごもっともの話だ。確かにここにプロが二名。僕はどちらかというとALOだけなので雑魚でしかない。

 

「大丈夫だミト。こいつは俺よりも強いさ」

「え・・・うそ。そんなに?」

和人君が自信満々に答える。いやおい待て何故君が自信満々に答えるんだ。別に僕は強くもないだろう、なんなら最弱とか名乗れそうじゃないか???

「そんな事ないぞ、僕は50敗0勝だ」

「150戦引き分けな」

「150戦引き分け!?」

深澄さんの声が裏返った。

「あぁ、伸一が剣術教えて欲しいって言いはじめてな、俺の妹とやってたんだけど俺ともやり始めたんだよ。確かに最初は未経験だったから俺が勝つことも多かったんだけど、1ヶ月くらいでコツ掴んでそっからは全部引き分け。伸一のやつ吸収力が強いからすぐに追い抜かれるよ、本当に勘弁してほしいぜ・・・・・・」

やれやれと頭を抱える和人くん。しかしこれはあくまでも引き分けであって勝利ではないのだ。

引き分けなど敗北にも等しいじゃないか。

「はぁ、和人くん。引き分けは引き分け、勝利ではないと言っているだろう」

「・・・・・・でも貴方、未経験で。それでいてリアルなのよね・・・?ごめんなさい、見た目がおとなしめだったから」

「いや、構わないさ。別に強いわけではないしね」

僕が強くないというのは事実だ。むしろ弱いとも言えるだろう。

確かに和人くんはそうでないと否定をしてくださるが本当に弱くないのであれば一太刀くらいはあげれるはず。それなのに引き分けが150回も続けば自分が弱いと言うことくらいは嫌でも自覚するものだろう。むしろこれを受け止めて自惚れないようにするべきなのが今の自分のやるべきことであるとあっても過言ではない。

「・・・なるほどねえ」

しばらくして深澄さんがやれやれとため息を吐いた。

するとどうやら和人君を手招きで呼び込み、耳元でコソコソと話している。

 

よくよく考えると和人君は羨ましいよなぁ、あんな至近距離で話せるなんて!僕だって話したいぜ!

まぁ至近距離なんて緊張してまともに話せないけども。

 

 

 

「・・・・・・彼、もしかして自信が極端にないんじゃない?」

「そうなんだよな・・・・・・伸一の実力的には余裕で攻略組の中でも能力が秀でていると思うんだけどな。・・・ミトもあいつのこと気にかけてやってくれないか?」

「・・・仕方がないわね。彼には助けられたしそれくらいならいいわよ」

 

深澄さんと和人くんが何を話しているかはわからないが、こちらも考えねばならない。

 

思考を働かせるとすれば、やはり今重要なのは明日奈さんの所在である。

確か僕は須郷伸之の名前を知っている。それはなぜか?確かレクトプログレスの社員だからだ。

ならばそのレクトプログレスは何をしている会社だ?

 

・・・確かVRMMORPGのジャンルの一つ、ALO(アルヴヘイムオンライン)を運営していた1人だからだ。

 

・・・ALOの運営ということか。

ふむ、待てよ?もしもALOを運営するのであれば初期のプレイシミュレーションも可能だし須郷氏がプレイヤーネームを用いて経験する可能性もある・・・つまりアカウントの特定が難しい可能性もあるのか。

 

チッ、と舌打ちをした。

よくよく考えれば相手はいわば権力者に近い状態だ。

 

須郷伸之がALOの運営に携わっていると考えるとアカウントが消える可能性だって考えなければならない。

それらを考慮し動く必要があると言うことか、まあとりあえず今はALOを考慮に入れるべきだな

 

「・・・伸一?」

しばらくすると和人くんに声をかけられた。

「・・・ん?どうかしたかい和人くん」

「いや、怖い顔になってたぞ・・・」

「・・・あぁ、すまない。少し考え事をしていてね」

「・・・それってこれに関係してるか?」

和人くんがメールを見せてくる。そこには写真が写っていた。

 

「・・・・・・これは?」

「エギルっていう俺の仲間から。ALOってゲームの写真らしい」

 

その言葉を聞いて僕は苦笑いをした。

 

「・・・僕の予想通りさ。出来れば当たってほしくない予想だったけどね」

 

 

そこには、囚われた誰かが写り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、路地の中。

隠れ家的雰囲気を思わせるその店、看板にはダイシーカフェと記載されていた。

 

「・・・ここがそのエギルさんと言う方の?」

「あぁ、そうだよ。とりあえず入ろう」

クローズと書かれたドアを開けてそのまま入る和人くん。僕と深澄ちゃんも続けて入った。

 

「おぉ、遅かったな。・・・って、3人もいるのか?」

 

 

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