「ここだな」
生徒会室から出てボーデヴィッヒが入院している医務室まで来た。もうすっかり日が暮れているなぁ。事前に織斑先生には面会の許可を得ている。話によると意識はあり後遺症も特にないみたいだ。
コンコンコン
「開いている。入れ」
中からボーデヴィッヒの声が聞こえる。起きていたか。
「失礼する」
医務室に入りボーデヴィッヒの様子を見る。見た目は何ともなさそうだな。
「・・・貴様か」
「よう、調子はどうだ?」
「ああ、問題ない。明日には授業にも出られる」
「そうか・・・それは良かった」
「貴様が見舞いに来るとは思わなかった」
「そうか?一応ペアだから心配するさ」
「そうか・・・噂とは大分違うな・・・」
「噂?」
ああ、校内で広まっている奴か。細かい内容は知らないが俺の事を"ロクでもない奴"だというものか。
「冷めた奴だと思っていたが違うようだな」
「そりゃねぇ・・・」
「・・・すまなかった。今日のトーナメント戦の事とこの間の事・・・」
「ん?」
ボーデヴィッヒは俯きながら言った。まさか謝罪されるとは思わなかった。なんて返そうか戸惑う。
「いや、俺の方こそすまなかった。この間はそちらの機体を・・・」
「その件はいい。あの時の行動は貴様が正しい」
「そうか・・・俺も今日の事を責める気はない。無事で良かったよ」
「そうか・・・」
「「・・・」」
会話が続かない。沈黙が気まずい・・・なら聞きそびれた事を聞くか。
「なぁ聞きたい事があるんだが」
「なんだ?」
「試合前に言っていた事なんだけどさ。教官―――織斑先生の事だと思うが先生が手にするはずだった"栄光"ってなんなんだ?」
「ん・・・それは・・・」
ボーデヴィッヒの歯切れが悪い。聞いちゃまずい事だったか?
「すまないが私から言う事は出来ない・・・」
「言えない事なのか?」
「すまない・・・」
"言いたくない"ではなく"言えない"か。なるほど・・・
「いや、言えないならいい。俺も変な事聞いてしまった。忘れてくれ」
「ああ・・・」
「とにかく無事で良かった。これからもクラスメイトとしてよろしく」
「ああ・・・よろしく」
ボーデヴィッヒの表情が和らぐ。来た時の無愛想な感じはなくなったような気がする。とにかく無事で何よりだ。
「それじゃ俺は戻るよ。お大事に」
「ああ・・・」
俺は医務室を出た。歩きながら先程の会話の内容を思い出す。ボーデヴィッヒが言っていた織斑先生の栄光とは恐らく"第二回モンド・グロッソ"大会の事だろう。第一回で優勝した織斑先生は第二回でも決勝戦まで勝ち進んでいた。連覇を期待されていたが試合開始直前になって棄権した。理由に関して公式の発表はなく大会運営や関係者からもまったく語られていない。今でもネットとかで議論されているが謎のままだ。
実態は決勝戦の当日に織斑が何者かに誘拐されてしまい織斑先生は棄権して提供された情報の元に織斑の救出に向かったようだ。織斑は無事だったが犯人に関しては何も分からなかったらしい。情報提供したのはドイツ軍の関係者だったらしく見返りに織斑先生はIS部隊の教官としてドイツに赴任していたがその時にボーデヴィッヒと出会っていたのだろうな。ボーデヴィッヒが織斑先生を慕っているが故に織斑の事で大会連覇を逃したのが許せなかったのだろう。勿論それは織斑の所為ではないのはボーデヴィッヒも理解しているだろう。しかし大切な人の事になれば理屈では収まらない事もある。
大切な人には輝いていて欲しい幸せになって欲しいと願う事は誰にでもある。俺もそうだ・・・"先生"はお元気だろうか?俺がISの適性が発覚した"あの日"以来会っていないが幸せである事を祈ろう。
・・・ちなみに一般公開もされず軍人であるボーデヴィッヒが口止めされているだろう情報を何故知っているかと言うとモルゲンレーテ社でエリカさんから聞いたからだ。一体何処からこんな情報を集めてくるんだろうか?やっぱ俺とんでもない奴等と契約したなまったく・・・