学年別トーナメント大会の翌日。教室に着くとクラスの至る所で女子達が落ち込んでいた。何事かと戸惑ったが耳を澄ますと「優勝・・・チャンスが・・・」とか「交際がパァ・・・」とか聞こえてくるし泣いている奴もいた。そう言えば"優勝すると織斑と交際出来る"みたいな噂があったな。大会が中止になったからソレが無くなったからで落ち込んでいるのか・・・平和だな。当の本人は教室の後ろの方で篠ノ之とオルコットで雑談している。知らない間に自分が景品になっているなんて思いもしないだろうな。
「あ、アッキーだ。おはよ~」
「おはよう布仏さん」
布仏さんはいつも通り元気そうだ。良かった。
「なんか皆暗いけどなんかあったの?」
「ん~アッキーには内緒だよ~」
「内緒なの?」
「うん、女の子は秘密だらけだから~」
一応知ってはいるが秘密ならそうしておこう。
「大会は中止になっちゃったね」
「うん、でも後で一回戦分の試合は皆やるんだって~」
「え?そうなの?」
知らんかった。そうなのか・・・
「なんかデータ取りがどうたらこうたらとか~」
「成る程・・・」
「皆も練習頑張ったしね~」
確かに言われてみればそうだよな。稼働データの収集もそうだが何より授業で習ったISの操縦を実戦で試す機会でもあるんだから全て無しとはいかないよな。でもなんで布仏さんは知っているんだろう?俺だけ聞かされていないだけか?まぁいい。やるとしたら後で日程くらいは貰えるだろう。
「布仏さんもやるのかな?」
「うん、やるよ~」
「そうか、応援するよ」
「う~、アッキーに見られると緊張しちゃうよ~」
「大丈夫だよ。練習した通りにやれば出来るよ」
「・・・アッキーあのね。その"練習した通り"が難しいんだよ?」
「え?」
布仏さんからいつもの感じが消えた。アドバイスしたつもりだったが気に障ってしまったかな?
「アッキーも毎日頑張って練習して試合とかで勝っているけど皆がそれを出来るとは思っちゃダメだよ?」
「え?・・・あ、うん・・・」
「それだけアッキーは凄いんだよ?分かった?」
「えっと・・・その、ごめんよ布仏さん・・・」
布仏さんの言う通りだ。確かに俺はクラス代表戦や学年別トーナメント戦で代表候補生や専用機持ちと互角・・・とは言えない程度に戦った。クラス対抗戦での乱入者やボーデヴィッヒとのトラブルでも何とか凌いできた。失敗や反省点も多かったがこうして五体満足なのは運と周りの人の支えがあっての事だが俺の今までの積み重ねでもあるだろう。多くの時間を訓練や勉強に使っているからね。だが自分がやってきた事、出来た事が人に出来ると決めつけてはいけない。人によって積み重ねて来たものは違うのだから。俺だって出来ないことの方が多い。言われるまで気づかなかった。少しISが動かせるようになって増長していたのだろうな・・・傲慢だな。
「うんうん、ちゃんと謝れて偉いよ~」
「う、うん」
「アッキーの素直さに免じてカフェでスペシャルチョコレートパフェとガトーショコラで手を打とうじゃないか~」
「ありがと・・・え?」
あれ?なんか要求されたような気か・・・気のせいではないな。この学園カフェがあるけど学食と違って高いんだよなぁ・・・遠方から来り留学出来る程の金持向けなんだろうけど学生相手にアコギな事やってんなと思う。一応俺はモルゲンレーテ社の社員で給料も出てはいるが学生の身分で大金を持つのは良くないからエリカさんに預かってもらい金は小遣い制なんだよな・・・でもまぁいいか。布仏さんが言ってくれなければ自分の傲慢さに気づかなかったからね。お礼にはいいかもしれない。
「皆さんおはようございます・・・」
「あ、先生だ。アッキーまたね~」
「おう」
山田先生が来たから話は終わりだ。SHRが始まるから席に着く。ん?なんか山田先生が戸惑ったような顔をしているがどうしたんだろう?
「えっと・・・今日はですね転校生というか、その・・・お入りください」
山田先生の濁したような言葉の後に一人の女子生徒が教室に入って来た。アレ?コイツは・・・
「シャルロット・デュノアです。皆さん改めてよろしくお願いします」
「「「えー!?」」」
クラス中が騒然とした雰囲気に包まれた。嘘だろ・・・
「デュノア君て女の子なの?」
「美少年だと思ってたのに・・・」
「あれ?でも織斑君て同室だったよね!」
「そう言えば昨日は男子が大浴場使ってたわよね!?」
そう言えばそうだったな。週に二回で使用日を設けるとかなんとか言ってたな。俺はシャワーで十分だから使うつもりはないので織斑に誘われたが断った。どうやら正しい判断だったようだな。
「え?・・・てことはまさか・・・」
「噓でしょ・・・」
「まさか秋月君も?・・・」
一体ナニを想像しているのやら・・・思春期は怖いねぇ。てかなんで俺にまで飛び火してるの?何かある度に俺の悪い噂が出来るのは流石にウンザリするな。そんなに悪い事したか俺?・・・したかもな。まぁここで否定したところで火に油を注ぐだけだから実害が出るまではほっとくのが一番だ。根拠のない噂なんてものは所詮他人の妄想でしかなくそんなものに付き合う必要はないのだからね。横目で織斑を見ると固まっていた・・・なんか怪しいがナニかあっても俺には関係ないからいいか。
「皆さん静かに授業を始めますよ。デュノアさんは前と同じ席へ」
「はい」
山田先生が治めデュノアは席に戻り一時間目の授業が始まった。今はいいがこの後の休み時間が問題だな。
ー休み時間ー
「一夏どうゆうことだ!!」
「説明を求めますわ!!」
・・・やっぱりな。休み時間になった途端に篠ノ之とオルコットが織斑に詰め寄っていた。
「どうゆうことだって言われても・・・」
「男なら言い訳するなぁ!!」
「そうですわ!!一体どこまでの事をされたのですの!?」
「どこまでって・・・なにが?」
「なにがって・・・それは・・・その・・・」
オルコットの返答が曖昧になって来た。どいつもこいつも思春期だな。やれやれ。
バンッ!!
「一夏ァァァ!!」
突然教室のドアが破られ凰が入って織斑の襟を掴んだ。凄い剣幕だ。
「ど、どうしたんだよ鈴?」
「どうしたもこうしたもないわよバカ!!アンタ女と同室でしかも一緒にお風呂までは入ったんですって!?」
「ご、誤解だ鈴。これには訳が・・・」
「
「鈴・・・面白くないぞそれ」
「アンタって奴はぁ!!」
凰が拳を上げた。流石にマズいか?
ガンッ!!
「痛った~!!」
鈍い音が響き凰が拳を抑えている。どうやらいつも間にか居たボーデヴィッヒがISを部分展開して防いだようだな。ISを収容しボーデヴィッヒが織斑の方を向いた。そして―――
チュッ
織斑の唇を奪った。
「え?・・・え!?」
「お前を私の嫁にする!これは決定事項だ!異論は認めん!」
困惑する織斑にボーデヴィッヒは言った。痛みに悶えていた凰が立ち上がりボーデヴィッヒに迫った。
「アンタどうゆうつもりよ!?」
「日本では気に入った相手を"嫁にする"というのが習わしだと聞いた。だから一夏は私の嫁だ」
なんだそりゃ?・・・一体何が起きているんだか理解が追い付かないよ。
「ふざけるな!!そんなの認めるか!!」
「そうですわ!!」
「アンタなんかに一夏は絶対渡さないわよ!!」
「一夏・・・ちょっと話しようか?」
ボーデヴィッヒの発言に篠ノ之、オルコット、凰、デュノアが反応して収拾がつかないよ。なんか織斑がこっちを見ているが助ける義理も義務もないのでほっとく。
「騒がしいぞお前ら!!」
「「「「「「!?」」」」」」
織斑先生の登場で騒ぎが一瞬にして収まった。織斑先生が織斑を睨みながらゆっくり迫る。なんて威圧感だ。
「織斑・・・お前が原因か?」
「ち、千冬姉、これには訳が・・・」
バン!!
「痛ってぇ!?」
「学校では織斑先生だ」
織斑先生は織斑の頭を出席簿で叩いた。
「騒いだ罰だ。お前達には放課後に奉仕活動をやってもらう」
「「「「「「はい・・・」」」」」」
こうなっては逆らえないだろうな。やれやれ・・・やっと静かになったな。
久しぶりの長文・・・疲れた。