「・・・づき君、秋月君、起きてください」
誰かの声が聞こえる・・・薄っすら目を開けるとぼやけた視界に緑色となんか盛り上がったものが見える・・・緑で盛り上がったもの?・・・山か?なんで山が?・・・
「山が喋った・・・」
「え!?・・・あの、秋月君?」
「ん?・・・」
眼を開け視界が戻る。目に前には山田先生が居た。そうだ寝てたんだ俺。今何時だ?・・・時計を見ると六時くらいか・・・大分寝たな。
「おはようございます山田先生。すいません、寝ぼけてたみたいで・・・」
「もうすぐ夕食ですよ。ずっと寝ていたのですか?」
「はい、寝てました」
「え?・・・とにかく遅れないように」
「はい」
汗かいたからシャワーでも浴びて浴衣に着替えてから行くか。よく寝たな・・・IS学園に入学して以来こんなにも穏やかな気分になった事があっただろうか?・・・言っても仕方ないか。
浴衣に着替え宴会場に着くと既に皆食べ始めていたので空ていたところに座る。夕食は刺身や海産物が多いな。恐らくいいものなんだろうけど味を感じない身としては少し残念だが仕方がない。特に誰かと話す事も無いし静かに食って部屋に戻ろう。
「あ!セシリアが織斑君に食べさせてもらってる!」
「卑怯者!!」
「ズルイ!インチキ!イカサマ!」
「ずるくありませんわ!席が隣の特権です!」
「「「それがずるいって!!」」」」
・・・なんか何処かから騒がしい声が聞こえて来るが気にしない事にする。
食い終わり部屋に戻ろうとしたら―――
「秋月、なんで来なかったんだよ。皆待っていたんだぜ」
「ん?」
織斑が絡んで来た。なんかちょっと怒ってる気がするが"行く"とは言っていないので怒るのは筋違いだ。それに"皆が待っていた"とか言うが誰が俺の事を待つのだろうか?居ないだろそんな奴。
「部屋で寝ていたんだ。それに俺は行くとは言っていないぞ」
「はぁ?だって部屋に入る時に―――」
「俺が言ったのは"行く"ではなく"行くとしたら"だ。マニュアルだって読み終わってない。ちゃんと聞いていたか?」
「なんだよそれ・・・」
俺の話を聞いて織斑が呆れたような態度を取っているがそれは話を聞いていないお前が悪い。
「じゃあさ、風呂でも行こうぜ。ここの温泉―――」
「シャワー浴びたから俺はいい。部屋でマニュアル読まなきゃだから」
「はぁ~・・・またそれかよ・・・」
「ん?」
なんか文句あるのかな?・・・最近思うんだけどコイツは俺を勝手に"友達"だと思ってねぇか?その気のない俺にとっては迷惑なんだが・・・学園が休みになる度に遊びに誘ってくるのはそのせいか?織斑の陰から凰が出て来た。
「"また"ってどゆこと?」
「なんか明日のテストで使う奴のマニュアルを読むからって旅館に着いてから部屋に籠ってたんだよコイツ。海にも来ないし、しかもこの後もだってさ。」
「え、そうなの?」
「そうなんだよ」
「アンタさぁ・・・」
凰が俺の方を向いた。
「真面目なのはいい事だけどさ・・・もうちょっと余裕を持ちなさいよ。ずっと気を張ってたら疲れちゃうし楽しくないわよ?見ているコッチだって息苦しくなるわ」
凰が言うことは正しくなにも間違えてはいない。俺の方がおかしいのは分かっている。授業の一環とは言え友達と一緒に普段では行けない場所に旅行に来ているみたいな一面もあるしそれを楽しむべきなんだろう。
だがこれが俺にとっての最善の道なんだ。ISなんかに関わってしまった以上ある一定の実力を持たなければならない。じゃなきゃ今頃モルモットだったかもしれない。モルゲンレーテ社だって企業だ。いくら俺の父さんが設立に携わっていてもそれだけでは俺を雇うだけの意味にはならないから"ISのパイロットとしての価値"を示し続けるしかないんだ。実際にバスターのパイロットは何人か候補が居たからな・・・彼女らを差し置いてパイロットになれたのはいいがそれが何時まで続くかは分からないからね。少しでも向上するようにしなくてはならない。
勿論俺の事情なんかどうでもいい。こんな話をしたところで他の奴の"楽しい時間"を奪うだけに過ぎない。それは誰も望まないことなんだ。俺だってなにかを楽しんでいる時に"今世界中には大変な人達が沢山居るのに不謹慎だぞ"なんて言われたら嫌だからね。しかし意図しなかった事とはいえ人を不快にしてしまった事は謝るべきか。
「すまなかった。不快な思いをさせてしまったようだ」
「え?いや、その・・・」
「悪い事をしたのは分かっている。本当にすまない」
「えっと・・・」
「織斑もすまなかったよ。誤解させたようで」
「いや、えっと・・・」
二人の歯切れが悪いな。まぁ謝罪されるとは思っていないだろうからね。
「俺は部屋に戻るよ。じゃあな」
俺は部屋へと戻る。去り際に後ろから"なんなんだよアイツ"って聞こえたが気にしない事にする。さて戻ったらマニュアルでも読み直すかな。臨海学校前に殆ど読んでしまったけどね・・・