臨海学校二日目の朝。今日はISの各種装備のテストを行う。旅館のすぐ近くにかなり広い場所がありそこでやるようだ。ISスーツに着替え集合場所に行く。まずは訓練機の準備をしてから専用機の方をやる。
「アッキー、そのスーツは~?」
「モルゲンレーテ社の新型ISスーツのテストモデルだよ」
「なんか暑そうだね~」
「そうでもない」
ISスーツはISを効率的に運用するための専用衣装で体を動かした際に出る筋肉の電気信号を増幅しISに伝達している。動きやすく頑丈で破れにくいが頭部等の重要部分を保護出来ず肌の露出面積が広い。これだと"事故やトラブルが発生し機体の展開を維持出来なくなった場合、特に極限環境に放り出されたパイロットの生存率を確保するのが困難になるのでは"という指摘があった。そこでモルゲンレーテ社はフルフェイスヘルメットと全身を覆うスーツを開発し今回のテストに持ち込むことになった。一見暑そうに見えるがそこは工夫してあり温度調節機能等が備わっていて日差しの強い場所では地肌を曝していない分寧ろ快適だ。将来的には宇宙服のような機能も追加するとか。俺が着るに当たり色やデザインを候補から選んでいいと言われたので赤いのを選んだ。特に理由はないが機体に合うような気がした。
「そういえばアッキー、昨日は海に来なかったけどどうしたの?」
「ああ、昨日は部屋で昼寝していたんだよ」
「そうなの?」
「うん」
「大丈夫?風邪?」
「そうじゃないよ。今日のテストの準備で疲れが溜まっていてね」
「う~、大変だね」
"ジェグス"の件でごたついたからなぁ・・・エラーを直しても別の所で出るし原因がハードかソフトウェアなのかを解析するのに時間が掛かったり・・・シュミレーターでは順調だったが実機の方はそうは行かなかったなぁ。思い出すと頭痛がする。まぁ
「仕方ないよ。必要な事だからね。布仏さんは行ったの?」
「うん、皆と遊んだよ~」
「それは良かった」
「でもアッキーとも遊びたかったよ~」
「ん?俺なんか居なくても別に―――」
「そうじゃないよ」
布仏さんが少し怒った様な顔になった。
「"居なくていい"なんてないよ」
「え?」
「理由があるなら仕方ないけど私はアッキーと一緒に遊びたかったの」
「えっと・・・ごめんよ布仏さん」
「ごめんだけ?」
「じゃあ今度またカフェでケーキでも―――」
「それだけじゃイヤ」
「え?」
物で釣るのは通じないか・・・一体何を要求する気なんだろう?
「もう直ぐ夏休みだよね?」
「うん」
「アッキーに合わせるからさ一緒に遊ぼうよ」
「え、それでいいの?」
「うん、いいよ~」
「分かったよ。夏休みに入ったら一緒に遊ぼうか」
「うん」
布仏さんは笑いながら右手の小指を出して来たから俺も小指を出し優しく巻く。暖かく柔らかい感触が伝わってくる。誰かと指切りをしたのは初めてだ。
「約束だよ~」
「うん、約束だ」
指切りをした後はテストの準備を再開し訓練機の方が終わったら自分の方をやる。事前にモルゲンレーテ社でやっていたから今やる事はほとんどないけどね。準備が終わったら専用機持ちと他の生徒が分かれ集合した。
「それでは各班ごとに振り分けられた装備の試験を行う様に」
「「「はい」」」
「専用機持ちは専用パーツのテストだ。迅速に行え」
「あの、織斑先生」
「なんだ。オルコット」
「箒さんには専用機がないはずでは・・・」
ん?確かにそうだ。篠ノ之は専用機を持っていないはずだ。いつも織斑と一緒に居るから違和感がなくて気にも留めなかった。もしかしてあるのか専用機が?
「ああ、それはだな―――」
「ちーちゃーん!!」
織斑先生が説明しようとした時何処から声が聞こえた。声がした方を見ると此方に物凄い勢いで向かって来る奴が居た。誰だと思ったがよく見ると知っている奴だった。まさか彼女は・・・
「束・・・」
「姉さん・・・」
織斑先生と篠ノ之が小さく呟くのが聞こえ確信した。彼女はISを開発した"篠ノ之 束"博士だ。何故ここに?なんだか嫌な予感がする。