「ハンデはどれくらいつける?」
クラス中の騒めきも収まらない中で織斑は言った。確かに成り行きとはいえいきなり初心者が代表候補生と戦うんじゃ配慮は必要だと俺も思う。
「あら?早速お願いかしら?いいですわよ。少しくらい手加減しても・・・」
「いや、俺がどれくらいハンデつけたらいいのかなーと・・・」
「は?・・・」
え?今なんて言った?
「「「あはははははははは!!」」」
「え?え?」
「・・・」
一瞬沈黙しその後クラス全体に笑い声が響いた。織斑は困惑しオルコットは唖然としている。俺も意味がわからん。織斑はなぜ相手ではなく自分がハンデを背負うと言ったのだろうか?よっぽど自分の腕に自信があるのか?・・・まさか「男は女よりも強いから手加減してあげなくちゃいけない」とでも思っているのだろうか?どっちにしろ笑えない冗談だなそれは。
「織斑君、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったなんて昔の話だよ」
「もし男と女に分かれて戦争したら三日で男の負けだよ」
クラスの女子達の言っていることは間違いではない。既存の兵器ではISに攻撃を当てることすら難しく仮に当たってもシールドエネルギーによってダメージを与えることが出来ない。そんな無敵とも思えるのを扱えるのは女だけだ。そもそも技術の発展によりISが登場する前から男女の差なんてそんなに無かったような気がするが。
「何を言うかと思えば・・・なかなかのジョークでしたわ。で?ハンデはどれくらいで?」
「ハンデはいらねぇ」
「織斑君、今からでも遅くないよハンデ付けてもらったら?」
「男が一度言った事を覆せるか、ハンデはなくていい」
「さすがにそれは舐めすぎだよ」
おいおい、いくら笑いものにされたからってせっかくの機会を逃すとはな・・・。やっぱりコイツは相手が女だからって下に見てるな。差別やイジメをやっている奴と大差ないね。おっと、このままだと俺もハンデ無しで戦う事になってしまう。
「じゃあ、俺はハンデを貰おうか」
「なっ!?」
「え?」
「「「えー!?」」」
織斑、オルコット、クラスの女子達が驚く。さっき織斑にハンデを進めていたのになんで驚く?
「秋月!お前、男として恥ずかしくないのか!?」
「別に」
「なんでだよ!」
「こっちは素人なんだぜ?国を背負った代表候補生とは比較にもならんよ」
わざわざ不利な条件で戦う事もない。
「貴方は身の程をわきまえているようですわね」
「己の力を過信していないだけさ」
「確かに私は代表候補生であり専用機持ち。少しくらい手心を加えても・・・」
「そいつも専用機持ちだぞ」
俺たちのやり取りを黙って聞いていた織斑先生が言った。てかちょっとなんで言うの!?
「なっ!?」
「え!?」
「「「えー!?」」」
織斑、オルコット、クラスの女子達が驚く(二回目)。
「秋月君って専用機持ちなんだぁ」
「どんなやつ?」
「見せてぇ~」
ここで断ると煩いだろうなぁ。仕方がない。
「コレだよ」
胸元からペンダントを取り出す。待機状態の「バスター」を見せる。するとオルコットが迫ってきた。
「まさか私以外に・・・しかも男性が専用機持ちだなんて!」
「落ち着けよ」
「落ち着いていられませんわ!!機体名は!?開発はどこで!?」
少しでも情報を聞き出そうとしているのか?こうゆう事はあまり言うべきではないと思うが今後のことを考えると機体と企業名くらいは言っても問題ないだろう。IS学園に来たのは宣伝等も兼ねている。でなきゃ自社に籠って研究していた方がいい。
「コイツの名は「バスター」。開発は「モルゲンレーテ社」。日本にある企業だよ」
モルゲンレーテ社。数年前に起業したばかりの宇宙開発を目的とした研究、開発を行うベンチャー企業だ。規模はまだ小さいがあちこちから人材を集めており情報、技術力は大手企業に引けを取らないらしい。その力を買われ今ではISの開発にも参加出来ている。
「モルゲンレーテ社?・・・聞いたことがない社名ですわ」
「だろうね。まだ出来てから日が浅いからね」
「専用機と聞いて驚きましたがそんな無名の企業がでっち上げたISなど私のブルー・ティアーズの敵ではありませんね」
焦っていたオルコットは安堵したようだ。「でっち上げたIS」ねぇ。油断してくれるならありがたいし機体名を教えてくれるなら尚よし。
「それでハンデの件だが・・・」
「織斑がハンデ無しでやるんだぞ?専用機持ちでクラスの代表になるかもしれません奴がハンデなんか求めるな。オルコットも相手が素人だろうと本気でやれ」
織斑先生・・・いくら何でも強引過ぎませんかね?辞退も出来ずハンデも無しかよ。
「分かりましたわ」
「分かったよ。千冬姉」
「ちぇ、仕方ない」
「話はまとまったな。それでは勝負は来週の月曜だ。織斑、オルコット、秋月、各々準備をしておくように」
来週か。それなら少しは対策を練るための時間があるだろう。
それから午後の授業が終わり放課後に帰り支度をしていると山田先生が俺と織斑のところに来た。なんでも俺達の安全を考えて今日から学園の寮で生活しろとのことだった。IS学園は世界中から生徒が集まる関係上全寮制でしかもそこら辺のビジネスホテルなんかより内装もいいとか校内パンフレットに書いてあったな。あと二人一部屋らしいんだが織斑と俺は別の部屋らしい。織斑の方はなんとかなったが俺の方は部屋の確保が間に合わず急遽端っこの倉庫を改築した部屋を用意したらしい。恐らく織斑先生の弟だから無下には出来ないという事情がありそうだが一人で過ごせるなら寧ろありがたい。他人と一緒の部屋じゃ休まらないからね。鍵と部屋番のメモを受け取りさっさと行くか。織斑が話し掛けてきそうだったが知らん。
「ここか」
メモで確認し鍵を開け部屋に入る。中は・・・ベット、イス、机、本棚、シャワー部屋くらいか。窓もあるがテラスは無くしかもちょっと狭い。まぁいいか。どうせこの部屋に帰っても授業の復習して寝るだけだし休日はモルゲンレーテ社で泊まり込みで訓練やデータ収集等をやるからここには居ないだろうしな・・・今日は疲れたからもう休みたいが寝る前にモルゲンレーテに連絡しておこう。
≪もしもし?≫
電話を掛けると女性の声がする。
「お疲れ様ですエリカさん。秋月です」
≪秋月君、どうしたの?≫
「エリカ・シモンズ」さん。モルゲンレーテ社の技術者で俺の相談役になってくれている人。そもそも俺がなぜモルゲンレーテ社が開発したIS「バスター」のパイロットになれたのかと言うと全て彼女のおかげだった。ISの適性が発覚し政府の元で軟禁状態だった俺に彼女から接触してきた。ISのテストパイロットになってほしいと。理由を聞くと今は行方不明の俺の父親がモルゲンレーテ社の起業やISの開発に大きく貢献していたようでその恩返しのようなものらしい。俺はすぐに了承した。ずっと軟禁状態は嫌だしヘタしたら実験用のモルモットとかにされかねんからね。しかし政府をどう説得したのかは未だに分からんが聞かない方がいいだろう。とりあえず今日の出来事を話しておく。クラス代表を決める戦いに出ること、対戦相手の名前や機体の事等を伝えた。何かしらの対策を一緒に考えてもらおう。
≪分かったわ。織斑一夏とイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットについてはこっちで調べておくから週末に対策を練りましょう≫
「よろしくお願いします」
電話を切りベットに横たわり明かりを消す。今日はこのまま寝よう。疲れてシャワーを浴びる気にもならない。初日がこんなんじゃこれから先どんな厄介事が待っているのか分からんが切り抜けていくしかない。何時か心ごと休める場所に辿り着くまで・・・。
次回クラス代表戦。