ーsideラウラー
「作戦完了っと言いたいところだがお前達は待機命令を破り独断で行動した。これは重大な違反だ。学園に帰ったら反省文の提出と懲罰用の特別訓練をやってもらうぞ。いいな?」
「「「「「はい・・・」」」」」
福音の暴走を止めた我々は旅館に帰還し教官に報告した。処分は覚悟はしていたが教官はいろいろと便宜を図ってくれたようでこれくらいで済んでよかった。だがまだ問題は残っている。それは―――
「千冬姉、それより秋月が―――」
「織斑先生だ。秋月の方は教員達で救出中だ。心配するな」
囮となった秋月は福音に撃墜され行方不明となった。すぐに捜索をしようとしたがエネルギーがなく損傷している機体もあり二次遭難の危険性があるため帰還するしかなかった。幸い救難信号が出ているためすぐ救助されるだろうが心配だ。本来なら"全員"でここに戻りたかったがそれは叶わなかった。
「あ、あの織斑先生。もうその辺で・・・怪我人も居ますし・・・」
「ああ、そうだな。山田先生、後は頼む」
「はい、じゃあ診断しましょう。あっ!男女別ですからね織斑君!」
「えっ?あ、はい・・・」
山田教諭のフォローが入り話は一旦区切りがついたな。とりあえず旅館に戻って休もう・・・
ーside一夏ー
「ねぇ、結局何があったの?」
「教えてよー」
「ダメ。聞いたらいろいろ制限がつくんだよ?いいの?」
「それは困るけど・・・」
「じゃあこの話はおしまい」
「「ええ~」」
診断が終わり宴会場で夕食時。俺達は軽症で済んでよかった。人当たりがいいからかシャルから今日の事を聞けると思って周辺に自室待機だった皆が集まって質問攻めしているけどシャルは頑なに答えなかった。責任感が強いから人選ミスだな・・・これ以上質問しても何も出ないからか席に戻っていく。性別を明かしたばかりの時はギクシャクしていたのに今ではすっかりシャルもクラスに馴染んでいい事だな。俺はこの何気ない日常を守りたい。
「ねぇ、おりむ~」
「ん?」
のほほんさんが俺の方に来た。シャルがダメなら次は俺から聞こうとしているのかな?変な事を言わないようにしないと・・・
「のほほんさん、悪いけど―――」
「アッキーは?」
「え・・・?」
「アッキーが居ないけど・・・どこ?」
「えっと・・・」
まさか秋月の事を聞いてくるなんて思わなかった。"撃墜されて海に墜ちた"なんて言えないし・・・どうしよう?
「えっと・・・のほほんさん、アイツはその・・・」
「うん」
「えっと・・・」
「言えないの?」
「えっと・・・ごめん」
「ふ~ん・・・わかった」
そう言ってのほほんさんは席に戻っていった。なんかさっきの感じはいつもと違う気がする・・・秋月の事が心配なんだろうな・・・無事ならいいけど。
ーside勝輝ー
まったく・・・今日は散々な一日だった。テストに持ち込んだジェグスを失いバスターは中破、俺も怪我するし・・・どうしてこうなるんだろう?そもそも
ガラッ
「ん?」
「あれ~?起きてるじゃん」
襖が開いて部屋に入って来たのは篠ノ之博士だった。今まで何処に居たんだ?・・・てか何しに来たんだろう・・・大方察するが。
「篠ノ之博士、何用ですか?止めを刺しにですか?」
「ん~?何でそう思うのかな?」
「おっと、これは失礼しました。誰も見舞いに来ないので冗談を言いたくなりましてね」
「ん~それもいいけど・・・ちーちゃんが居るからやめとくよ」
「そうですか・・・」
やっぱりな。この人にとっては妹と織斑姉弟以外はどうでもいい存在だがあいつ以外でISに乗れる男の俺は気に食わないだろうな・・・なんで敵ばっかり増えるんだろう?そんなに悪い事したか俺・・・したかもな。枕元にある呼び出しボタンを押して先生に追い払ってもらおう。
「ねぇ、少年」
「ん?」
「あるところに天才が居ました」
「はい?」
篠ノ之博士は急に話し出した。一体なんだ?
「その天才は大事な妹の為に専用機を作りデビューさせたいと思いました。そこへ偶然にも何処かでISの暴走事件が起きました。将来のお婿さんと一緒にそれを止める晴れ舞台となりました・・・」
「はぁ・・・」
「いろいろあったけど最終的には二人の活躍で見事暴走を食い止め皆を守りました。めでたしめでたし・・・って行きたかったんだけどね」
「・・・」
成る程・・・物語風にしているが疑問が確信に変わった。今回の騒動は全て彼女が仕組んだ事だな。篠ノ之の専用機と福音の暴走・・・どうりでタイミングが良すぎる訳だ。まぁ・・・彼女にとっては福音を織斑と篠ノ之が仕留めて終わりにしたかったんだろうけどそこは織斑が予想外の行動をしたから崩れたんだろうなぁ・・・
「少年。今の話はどう?」
「・・・どうとは?」
「感想を聞かせてよ」
「そうですね・・・」
篠ノ之博士は人を小ばかにした様な目で言ってきた。恐らく話を聞いた俺の反応を見たいんだろうな・・・めんどくさい事になるから余り言いたくないが・・・
「もしその天才殿が全てを仕組んだことなら・・・」
「うん」
「詰まらない事をしたなと思います」
「はぁ?」
俺の感想を聞いた彼女からさっきまで余裕そうな顔が消えた。多分予想外な答えだったんだろう。今の状況では失言だろうが構うか。この際ハッキリと言わせてもらうか。
「"妹の為"だとしても普通に渡せばいいのでは?と思いますしわざわざ危険な目に遭わせる必要があるのでしょうか?」
「・・・」
「仮に喜んでいたとしても"第四世代機"なんか渡されたら嫌でも世界中から注目を浴びますよ・・・いい意味でも悪い意味でも。それから守ってあげられるのでしょうか?もし"後は知らない"なんて考えだったら相当無責任ですね。本当に妹の事を大切に思っているのでしょうか?」
「・・・」
「技術や知識があっても"その先"を見通せずどんな影響が出るかもお構いなし・・・何より"それを持って何とするか"という"意志"を感じない・・・だから詰まらない人ですねその天才殿は・・・」
「へぇ・・・」
彼女は笑っている様に見えるが目は笑っていない。寧ろ怒りを感じる。きっと心の中で"お前如きが"とでも思っているのだろう・・・流石に殺されるか?
「君もそうゆう事言うんだ・・・アイツと同じで・・・」
"アイツ"?誰だろう・・・彼女との会話を思い出す限りでは父さんの事か?
「まぁいいや。君はアイツに繋がりそうだからまだ生かしといてあげるよ・・・あと、これ渡しといて」
彼女はメモ用紙を渡して来た。なんか随分古い感じするなぁ・・・一体何が書いてあるんだろう?・・・何かの図面とその横にあるのは丸に三つの扇状のものが付いたマーク・・・これってまさか・・・
「核・・・?」
「会ったら伝えてよ。"ゴミ渡してくんなよ"って・・・」
「・・・」
「それじゃ、また会おうね」
「二度と来るな」
「バイバイ~」
彼女はそう言い残し窓から飛んで行った。ここ何階だっけ?・・・まぁいいか。呼び出しボタンを押して山田先生に来てもらい頼みごとをした。
ー翌朝ー
日が昇り始めた頃に俺と織斑先生は旅館の玄関前に居た。そこへ一台の車が来て旅館の車寄せの所に停まった。本来なら今日は朝食を取ってからバスで学園に帰る予定だが"病院に行くから迎えを呼んで欲しい"と頼んだのでモルゲンレーテ社に連絡してもらった。篠ノ之博士に渡されたメモを早くエリカさん達に渡したいし何よりあいつらの顔を見たくないからな・・・布仏さんに会えないのは残念だが仕方がない。車から人が下りて来た。
「モルゲンレーテ社の者です。秋月君を迎えに来ました」
「ご苦労様です。担任の織斑です」
迎えに来てくれたのはモルゲンレーテ社でテストパイロットを務めている"アサギ・コードウェル"さん。俺の先輩でIS操縦の教官でありバスターのパイロット候補だった人だ。厳しくも面倒見がいいから信用出来る人だが・・・まさか彼女が来てくれるとは思わなかった。
「織斑先生。早朝から付き添ってくれてありがとうございます」
「気にするな」
「ではまた後で」
「ああ、落ち着いたら連絡しろ」
「はい」
車の助手席に乗る。アサギさんは何か話している様だが・・・何を話しているんだろう?よく聞こえないな。ん?戻って来たか。
「お待たせ。行こうか」
「はい、まずはモルゲンレーテ社の方へお願いします」
「え?病院じゃないの?」
「エリカさんに渡したい物がありますので・・・」
「わかった」
車は走り出し旅館が少しずつ遠くなっていく・・・いろいろあって疲れたな・・・あ、何を話していたか聞いてみるか。
「あの、アサギさん」
「ん?なに?」
「さっき先生と何を話していたんですか?」
「ああ、シモンズ主任の伝言を伝えただけ」
「伝言?」
「そう。"今回の件ですがある程度は此方でも把握しています。後で協議の場を設けましょう"ってね」
「そうですか・・・」
耳が早いな。流石エリカさんだ・・・いや、モルゲンレーテ社の方か?今回の件はまだ終わらないな・・・いろいろと話し合いがあるだろう・・・今は考えないでおこう。傷が疼く。