臨海学校から二週間程が経過し今日は一学期の終業式。昨日退院し久しぶりの登校になる。怪我は治り特に問題はないが入院中は学園の奴らは面会謝絶だから誰も来ないので穏やかに過ごせて良かったからこのままでいいんじゃないかなっと思ってしまったよ。勿論それはダメなのは分かってるよ。おっと教室に着いたな。
「おはよー」
「え?」
「秋月君だ」
「退学したんじゃなかったの?」
ザワザワ
教室が騒がしくなる。そうだよな・・・何の説明もなく二週間も居なかったんだからな。変な噂も流れているが・・・まぁいいか。それより面倒なのが―――
「秋月!久しぶりだな!」
「よう・・・」
やっぱり来るよな・・・織斑とは同じクラスだから顔を合わせるのは仕方ないけどいいものじゃないなぁ。いっそ違うクラスに行きたいよ・・・まぁ無理だけどな。
「入院したって聞いて心配したよ。もう大丈夫なのか?」
「平気だ」
「戻ってこれてよかった。なぁ箒」
「ああ、そうだな」
「・・・」
なんか妙にテンション高いな。明日から夏休みだからか?こっちはいろいろ大変だったのにな・・・いや、コイツはそれを知らない。ならそれでいいだろう。
「皆さんおはようございます。SHRを始めますよ」
山田先生が教室に入って来た。席に着くか。
「秋月、終業式が終わったら中庭の木陰の所で皆で集まるから来いよ」
「ん?・・・ああ、行くよ」
「絶対だぞ」
「分かった」
やれやれ・・・退院してから早々に面倒事ばかりだな・・・
ー昼休みー
終業式が終わり中庭へ来た。広い木陰の所に俺と織斑、篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒが集まっている。丁度昼飯時だが意外と涼しいとはいえ外じゃなくてもいい気がするなぁ・・・しかしなんだろう?織斑と篠ノ之の間に凰とオルコットが陣取って隣席させないように見えるけどナニかあったのかな?まぁいいか。どうでも。
「それでは秋月の無事を祝福しよう」
「「「「「退院おめでと~」」」」」
「・・・」
なんだこりゃ?退院祝いの席なのか?その為にわざわざ集まったのか?誰かが退院したら宴を開くのが常識なのか?・・・考えるのはやめよう。頭痛くなってきた。
「秋月が海に墜ちたって聞いた時は焦ったよ。直ぐに助けに行こうとしたら千冬姉から戻れって言われてさ・・・どうなるかと思ったけど無事で良かったよ」
「ああ、心配掛けたな・・・」
「なぁ皆もそう思うよな?」
「ああ、そうだな」
「ええ・・・そうですわね」
「うん・・・」
「無事で良かったよ・・・」
「うむ、同感だ」
なんか空気が重いな・・・どうしたんだろう?
「その・・・あ、秋月」
「ん?」
「お前には二度も助けられた。ありがとう」
「ん・・・えっと・・・」
篠ノ之が俺を方を見て言った。まさか礼を言われるとはな
「それとすまなかった。お前の言う通りで私は未熟だった。それで―――」
「それは違う」
「え?」
「確かに篠ノ之は経験不足かもしれないけど
「そうか・・・?」
「俺の方こそすまなかった。頭ごなしに篠ノ之の実力を疑ってしまって」
「いや、その・・・なんだ。私は気にしていない・・・」
「そうか」
空気が重かったのは気まずかったのか。
「あのさ・・・秋月」
「ん?」
「あたしの方もさ、悪かったわ。あんな事言って・・・アンタは決して臆病者じゃないわ」
「凰・・・」
「私からもお詫び申し上げますわ。秋月さんに怪我を負わせてしまい申し訳ありません」
「僕からも御免なさい。秋月君のお陰で僕達は軽症で済んだよ」
「すまなかった。お前には迷惑を掛けた」
・・・なんて返したらいいか戸惑うな。まさか謝れるとは思わなかったなぁ。
「なぁ秋月、皆も謝っているんだし許すよな?」
「えっと・・・ああ、そうだな。済んだことだから気にしないでくれ」
「でもあたし達―――」
「あれは俺が勝手にしゃしゃり出て勝手に墜ちただけだから気に病むことはない」
「でも・・・」
「それに・・・俺は居なかったしな」
「え?・・・それってどうゆう―――」
「それはそのうち分かるよ。兎に角この話は終わりにしよう。誰が聞いているか分からないからね」
「えっと・・・うん」
「ただ・・・」
俺は織斑の方を向き目を見て言う。
「最後にお前に聞いておきたい事がある」
「なんだよ?」
「直接見たわけではないが福音との戦闘中に密漁船を庇ったみたいだが何故だ?」
「何故って・・・それは見捨てられなかったからだ」
「それは何故だ?」
「えっと、俺達には力があるからだ。力を持つ者は相応の義務があってそれは弱い奴を守ることなんだ。たとえそれが犯罪者であったとしても」
「・・・成る程」
「そんな事聞いてどうしたんだ?」
「いや・・・ただ聞きたかっただけさ」
大層立派なお考えをお持ちの様だな・・・もし福音が市街地で暴走したら密漁船に乗っていた以上の人が犠牲になるとか考えなかったんだろうか?自分の力の使い道が正しいかを疑わないのだろうか?それにコイツにとって篠ノ之達は大切じゃないのかよ。赤の他人を守って大切な人を危険に晒す意味が分からん。以前学年別トーナメント戦の後に危惧していた"人を巻き込み最悪の事態を起こす"事が現実に起きてしまったな。やっぱりコイツとは関わらない事が一番だなと改めて思う。
本当はもう少し早く退院できたがコイツの顔をみるとぶん殴りそうになるので時間を空けて落ち着くために伸ばした。俺が何か言ったところでコイツは理解しないだろうからこのままでいいだろう。
ふと時計を見ると昼休みが終わる時間だった。今日はもう授業はないが織斑先生に呼ばれているので行かなきゃだ。立ち上がり皆に言う。
「悪いが俺はこの辺で失礼するよ」
「え?どうしたんだ?」
「織斑先生に呼ばれているんだ。じゃあな」
「待てよ秋月」
「ん?」
行こうとしたら織斑に呼び止められた。なんだよ・・・
「なんだ?」
「もう夏休みだからさ時間あるだろ?一緒に遊ぼうぜ」
なんだそんな事か・・・確かに時間はあるけど・・・
「それは難しいな」
「なんでだよ?」
「怪我は治ったけどまだ通院しなきゃいけないしバスターも壊れちまったから今後の身の振り方を考えなければならないからな」
「そうなのか」
「まぁ・・・都合が良かったら俺から連絡するよ」
「おう、約束だぞ」
「じゃあな」
誰が連絡するか・・・まったく。冗談じゃないよ・・・取り合えず織斑先生の所に行くかぁ・・・面倒だなぁ。
「呼ばれた理由は分かるか?」
「福・・・失礼しました。臨海学校の件と入院中の補習の事だと思いますが」
織斑先生に呼ばれ職員室ではなく面談室だった。
「ここは私とお前しか居ないし周りには聞こえない。そこまで気にするな。」
「はぁ・・・」
成る程。密談するならもってこいの場所だな。そこまで大袈裟でもないか。
「ます福音の件だが良くやってくれた。お前の奮闘であいつらは無事だ。しかし・・・」
「今回の経緯は伺っています。その・・・大変でしたね」
「ああ・・・だがお前の方は・・・」
「仕方ないと思いますよ。大国の要求を拒絶出来ただけでも御の字ですから」
「そうか・・・」
何の事かと言うと今回の福音の暴走事件・・・通称"福音事件"の事だ。結論から言うと俺は"出撃していない"事になった。何故そんな事になったか順を追って説明しよう。
まず事件終了後に米国政府が"日本側の対応が遅いせいでパイロットが長時間にわたり身体的、精神的に負荷を掛け危険な状態に晒した"との理由で"損害賠償"としてモルゲンレーテ社にバスターとパイロットである俺の身柄の引き渡しを要求して来た。しかも日本政府とIS学園にもモルゲンレーテ社に圧力を掛けるように言ってきた。IS学園は沈黙していたが日本政府の方は"米国との国際問題に発展させないためにも要求を呑んでみてはどうか"と提案してきた。まったく自分達の庭で他国の兵器が暴走している時には何もしなかったクセにこんな時だけ出て来るなんてどうかしてるよ・・・
何故バスターと俺が狙われたのかと言うと今回の事件で福音は凍結されるらしい。大金と最新の技術を詰め込んだ機体が使えなくなる。そうすると米国としては大赤字になってしまう。そこで福音の
勿論こんなふざけた要求飲む訳には行かないが一企業が二国政府を相手出来る程の力はない・・・だがモルゲンレーテ社は素直に従わなかった。"要求は不当なものでありこれを全面的に拒否し交渉の場を設ける事を求める。もし交渉しないなら今回の事件の内容を全世界に向けて公開する"と脅した。双方にダメージがあるやり方だが米国政府の方が負うダメージが大きいため効果があったようで交渉のテーブルに着いた。
話し合いの結果"双方共に損害賠償の請求を放棄する"ことが合意されたが米国政府の要求であるカバーストーリーが作られる事になった。曰く今回の事件は"織斑千冬の指揮の下で織斑一夏率いるIS小隊が福音に対処した"という物だ。機体は損傷したが負傷者はなしだとよ。もしモルゲンレーテ社が情報を漏らしても俺が参加してなければ全部"虚言"で済ませられるからな・・・ふざけてるよな。
そんな訳で話し合は終わった。納得いかない部分はあるが最悪の事態は避けられた・・・そう言えば今回の事件のことでモルゲンレーテ社から学園に猛抗議があったらしいが詳しくは教えてくれなかったな・・・織斑先生が少し疲れた顔をしているがエリカさんは何を言ったんだろう・・・知らない方がいいなこれは。
「改めて言うが今回の事は口外するなよ。いいな?」
「はい」
「で次は補習の話だ」
「はい」
「入院中の実技の分とお前も待機命令を破ったからな懲罰用の特別訓練をやってもらうぞ。あと反省文も提出しろ」
「え~」
マジかよ・・・たしかに待機命令を破ったけどさ・・・俺頑張ったから恩赦とかないの?聞いてみるか
「織斑先生」
「なんだ?」
「今回俺は居なかった事になっているんですから懲罰は免除とか出来ませんか?」
「ダメだ。命令違反した事実は変わらないし織斑達は懲罰を受けた。お前だけなしにすると示しがつかん」
「そんな~」
「これ以上逆らうと増やすぞ」
「すいませんでした・・・」
「よろしい。では補習の日程だが・・・」
ダメだったか・・・まぁ分かってはいたけどね。補習等は一週間もないな・・・まぁこれならいいか。やれやれ。
織斑先生との面談が終わり学生寮に帰る。疲れた・・・今日は特にな・・・帰って寝よう。
「アッキー」
「ん?」
後ろから布仏さんに声を掛けられた。今日は教室で見かけただけで話せなかったなぁ。彼女は俺に寄って来た。
「お帰りなさい」
「えっと・・・ただいま」
「心配したよアッキーが居ないからずっと・・・」
「ご、ごめんよ布仏さん。その・・・いろいろあってさ・・・」
「いろいろって?」
「その・・・ごめん。それは言えないんだ」
「もう・・・そればっかり」
「ごめん・・・」
布仏さん怒ってるのかな?どうしよう・・・
「でも約束通り戻って来たね」
「え?」
「アッキーが戻って来てくれて嬉しいよ」
「えっと・・・約束だからね」
「うん」
布仏さんは笑ってくれた。よかった・・・
「もう一つの約束憶えてる?」
「ああ、勿論だよ。夏休み一緒に遊ぼう」
「うん。一緒だよ」
「ああ、一緒だ」
帰って来て良かった。この人に会ってその笑顔が見れて・・・本当に良かった。
「布仏さん」
「ん?なに~?」
「ありがとう」
「え?どうしたの急に?」
「お礼が言いたくなったのさ」
「変なの~」
「暑くて変になったのかもしれないな・・・カフェでアイスでもどう?奢るよ」
「じゃあ、いく~」
今回の事件でいろいろあったけど少しは希望が持てそうだ・・・この先何が待っていても乗り越えられる・・・そんな気がする。
これで臨海学校編は終わりです。長かった・・・あと初めてこんなに長文を書いたなぁ・・・