「織斑君、クラス代表決定おめでとう!!」
「「「おめでとー!!」」」
パチパチパチパチパチパチ
クラス代表戦の翌日の放課後、一年一組が食堂の一部に集まって織斑のクラス代表の就任を祝っている。当の本人は納得していないようだ。
「なんで俺がクラス代表なんだよ?俺は秋月にもオルコットさんにも勝てなかったのに・・・」
「俺は辞退したよ。代表って器じゃないしな」
それにIS関連の勉強に訓練、モルゲンレーテ社でのデータ収集等あるから今の俺にクラス代表をやっている余裕はない。
「私も辞退しましたわ。大人げなく怒った事を反省しまして一夏さんにクラス代表を譲る事にしましたの。それと・・・私の事はセシリアと呼んで下さい。」
オルコットの目が変わった。これは"アレ"だな。なにとは言わないが"アレ"だな。俺と織斑が戦った後、機体の修理が終わったオルコットが織斑と戦った。結果はオルコットが勝ったが織斑は惜しいところまで行けていたらしい。試合の様子は直接見ていないので後から聞いた話だが。その戦いで見る目が変わったのだろう。
「・・・」
織斑の隣に座っている篠ノ之が不機嫌そうな顔をしている。織斑が他の女と仲良くしているのが気に食わないようだな。コイツらは幼馴染で家族ぐるみの付き合いがある。なぜそんなことを知っているかって?食堂で飯を食っているとよく織斑が相席してきて聞いてもいないのに教えてくるからだよ。織斑は気づいていないようだが篠ノ之も″アレ"だよな。アイツはいつか刺されるんじゃないか?
「いや~セシリア分かってるねぇ~」
「そうだよね~せっかく男子が居るんだから持ち上げないとね~」
「そうそう」
クラスの女子達は口々に言う。やっぱり物珍しさで推薦したのでは?と思うがまぁいいか。人気者がクラス代表になった方がいい。クラス代表戦での織斑の評価は良く。
"素人とは思えない程上手"
"代表候補生相手に善戦していてすごい"
"男らしく正々堂々としていてかっこいい"
等の声が上がっている。一方俺の方は大方好評だが・・・
"専用機持ちで勝てる実力があるのにハンデを求めた卑怯者"
"引き撃ちばかりしていてズルい"
"動けない相手を撃つのはさすがに引く"
と陰口が一部あるようだが気にはしない。確かに俺はオルコットに勝った。それは休む暇すら削りひたすら練習したり情報収集に事を欠かなかったからだ。しかしいくらやっても実際に戦うまでは相手の実力なんて分かるはずがなくましてやオルコット自身がハンデを付けてもいいと言っていたのにな・・・何事においても結果が全てだがその背景は誰も見ない。よくある話だが俺には何も言う資格はない。何故なら俺も同じで人の背景など見ないだろうからね。
「はいはーい、新聞部でーす。今回戦った選手の方の写真いいかなー?」
いつの間にか新聞部を名乗る女子生徒が居た。首元のリボンが黄色だから二年生かな?
「注目の専用機持ちのスリーショットをお願いねぇー」
仕方がなく立ち上がり織斑を真ん中に俺とオルコットが左右から寄る。オルコットが織斑に付こうとするので篠ノ之が更に不機嫌になっている。
「それじゃ撮るよー、はーい」
パシャッ
「何故全員入っていますのー!?」
撮る瞬間に女子生徒が何人か入って来たのでスリーショットとはならなかった。面倒だから今のうちに抜けよう。そう思い食堂の出口へ行こうとすると・・・
「あ、待てよ秋月。試合中に言おうと思っていたことなんだけどさ・・・」
織斑に呼び止められた。試合中に?なんだっけなぁ・・・?
「なんだよ?」
「オルッ・・・セシリアが地面に落ちた時にお前が撃った事だよ」
ああ、あの時の。そういえば何か言おうとしていたなぁ。
「それがどうした?」
「いくら何でもあれは流石に酷いんじゃないか?」
それは俺も思ったが規定上問題はなかったから別にいいと思うけどなぁ・・・。てか大勢の人前で言うことなのかそれ?さっきまでの楽しそうな雰囲気が白けてんぞ。
「そうか?俺はルール違反はしていないし勝てるチャンスあれば誰だって撃つよ」
「でもアレは流石に・・・」
「お前の言いたいことは分かる。勝った方が正義とは言わないがこれは勝負だ。勝敗が存在する以上それが決まるまで戦わなければならない。俺はあの時撃ったのは間違いだったとは思っていないよ。お前はどうなんだ?身動きが取れないからって攻撃を躊躇って負けたらなんて言うんだ?」
「それは・・・」
「スポーツマンシップを大事にするのは大変素晴らしい事だがそう言っていられない時もあるんじゃないかな?」
「・・・」
「言いたい事はそれだけか?他になければ俺は帰る」
言い返すと織斑は歯切れが悪くなる。反論されるとは思ってなかったのか?せっかくのおめでたい雰囲気が完全に冷めてしまったのでさっさと部屋に帰ろう。俺は踵を返して食堂の出口へ向かう。去り際に「なんなのアイツ」「感じ悪っ」って聞こえたが気にはしない。
「ふぅ・・・」
食堂から出て寮の道中の通路にある自販機でジュースを買って一息つく。祝賀会の席では飲食物に一切手を付けていなかったんだよな。他人が居る前では好きに飲み食いが出来ないもんでね。こうして一人静かに過ごしている方が楽でいい。
「あの、秋月さん」
「ん?」
声がした方を向くとオルコットが居た。何故ここに?試合の件で文句でも言いに来たのか?
「何か用か?」
「先週の事でまだ貴方に謝罪をしていなかったので・・・」
先週?・・・ああ、教室で織斑と言い合いになった時の件かぁ・・・。たしか「文化的にも後進な国」とか言っていたなぁ。
「あの時は感情的になって申し訳ありません。私は貴方の祖国に対しての非礼を・・・」
オルコットは俺に頭を下げる。この変わり様は先週の高飛車な態度を取っていた人とは思えない程だった。根はいい奴なんだろうなぁ
「いや、俺に謝る必要はないよ。別に気にしていないから」
「でも、そうゆう訳にはいきませんわ」
「この国の事はあまり知らないんだろう?それに若い学生の言う事なんて本気にする奴なんか居ないんだから気負う必要なんてないよ」
自国をバカにされたとか言って騒ぐ奴も世の中居るが俺にそこまでの愛国心はない。寧ろ今のこの国の事、特に国を運用する政府や関係者は嫌いだ。ISの適性が発覚したあの日に酷い目に遭わされ軟禁までされているからね。
「・・・」
「ん?どうした?」
オルコットが怪訝な顔をしている。変な事を言ったつもりはないが・・・なにか悪かったか?
「その、貴方の発言や他者への態度に違和感がありまして・・・」
「違和感?」
「なんと言いますか・・・出来るだけ感情を抑えている気がしまして。常に仮面を付けているみたな・・・自分自身を人に見せないように隠しているような感じがしまして・・・」
確かにな。当たり障りのない言葉を使いさっさと会話を切り上げようとすればそう見えるだろうな。
「こんな事を言うのもなんですが貴方という人がよく分からないんですの。何を望み求めているか・・・」
その言葉を聞いた瞬間胸が締め付けられる様な感じがした。俺の望み?、望みかぁ・・・。
「・・・っ帰る」
「え? あ、あの」
オルコットの言葉を遮るように少し乱暴に空き缶を捨て速足で寮の自室まで行く。扉を開け部屋に入り鍵を閉めた瞬間頬に生ぬるい物が付いていることに気づいた。手で拭うとそれは涙だった。
「俺の涙か・・・」
俺は何故泣いているのかその理由は分かる。それは"こんな場所"なんかに来たくなかったからだ。俺の望みはISなんかに関わる事無く退屈で何でもない平穏な日常の中に埋もれていたい事だった。しかしその望みが叶うことは絶対にない。外は敵だらけだし内側の人間だって味方とは限らないのだからな・・・今は力を蓄え実績を積み上げていくしかない。何時か全ての嫌なことを笑い飛ばせる日が来るまで・・・。
別に一夏が悪いとは思ってはおりません。人にはそれぞれ正義があるのだから。
オリ主と一夏との係わりを書いていると如何してもこんな感じになってしまいますがど
うかご了承ください。