(あちゃ~...やっぱり、こうなっちゃうよね...)
風太郎のためにとバレンタインのチョコ作りに悪戦苦闘している様子の三玖を一花は申し訳なさそうに見守っていた。これまでに彼女が作っていたバレンタインのチョコはどれも焦げてドクロマークが浮かび上がってばかり。とてもじゃないが、ちゃんとしたチョコには程遠いものだった。
本当なら、一花が密かに二乃に頼んで三玖のチョコ作りに協力して貰うという選択肢もあったのだが今の一花は過去の償いのために四葉の恋を応援すると決めたばかり。三玖の助太刀をしてあげる程の心の余裕はなかったのだ。
それでもだ。こうして、三玖のチョコ作りを見守っているのは長女としての姉心なのだろうか...
「なんだ?お前...大丈夫?」
「フータロー君!?なっ...なんで!?」
こっそり、三玖の様子を見守っていたのが風太郎にバレそうになり、一花は驚いて腕をケガしてしまった。幸いにも風太郎には気づかれていない。
「俺か?四葉が参考書を家に忘れたって言うから俺が取りに...」
「あっ!その参考書ってこれの事じゃないかな?ほらっ!」
「おっ...ありがとうな。」
以前のタマ子ちゃんの件もあってこれ以上、自らの風太郎に恥ずかしいところを見せたくなかった一花はたまたま手に持っていた参考書を半ば強引に手渡すと風太郎はそのまま、一花に礼を言って立ち去っていった。
(はぁ...これ以上は好きになっちゃいけないのに...これだとあの頃の二の舞だよ...)
一花も少なからず、風太郎に好意を抱いているが彼に告白などするつもりはない。あくまで自分は四葉と風太郎が結ばれるための手助けをすべきなのだ。
(三玖...ごめんね!)
一花の視線の先にはまたも失敗して焦げてしまったチョコの前で一人、涙を流す三玖の姿が映し出されていたのだった。
・・・・・
(五月...頑張りなさいよ!)
二乃は学年末試験に向けて頑張っている末っ子にエールを送っていた。
テスト勉強の時や息抜きの遊園地に行った時の五月の様子で彼女が今回の学年末試験でも姉妹で一番の成績を出して風太郎に良いところを見せて距離を縮めようとしている...と二乃は確信していた。だったら、それを手助けしてあげるのが協力者である自分の役目だ。
「もしも、私もあいつに惚れていたなら...その時の私はどうしていたのかしら?ひょっとすると、他の姉妹を蹴落としてたりして...」
とある別の世界線では二乃は姉妹喧嘩の一件で風太郎への好意を自覚してそれが後に愛の暴走機関車へと繋がってしまうのだが、この世界では五月の風太郎に対する好意を知った事や喧嘩のお詫びの気持ちもあって、あくまで自分が好意を持っていたのは【風太郎】ではなく【キンタロー】なのだと割り切ってしまっている。そのため、今の二乃には風太郎に対する恋愛感情はない。
むしろ、末っ子の淡い初恋を全力で応援するつもりでいるのだ。
そんな二乃だが、最近ではとある考えが頭に浮かんでいた。
(年が明けてかしら。四葉がやけに風太郎にグイグイきてるような...まさか、四葉も?)
三玖のみならず、四葉も五月の恋のライバルになりうるとしたら...そう思うと気が気でない二乃は学年末試験が終わり次第、改めて五月と今後に向けて作戦会議を開こうと思ったのだった...
・・・・・
「まただ...また失敗...」
三玖は一人、バレンタインに風太郎にあげる予定のチョコ作りに悪戦苦闘していた。今、三玖の目の前にある完成したチョコも焦げてドクロマークが浮かび上がってばかり。とても食べられる物ではない。
「...何で!?何でっ!?何でなのっ!?」
これまでにいくつもチョコを作ったが、いずれも失敗ばかり。この調子では風太郎が喜ぶようなチョコは作れないだろう。三玖は焦っており、同時に悔しさのあまりに目から涙がポロポロと溢れ落ちて焦げたチョコに降りかかる。
(ううっ...!やっぱり、私には無理だったんだ...私なんかじゃ二乃のように上手く料理はできないんだ...)
結局、その後も三玖は納得のいくチョコを作る事はできなかった...そして、最終的に風太郎には市販のチョコをあげる事になった。風太郎にチョコを渡せたとはいえ、この事は三玖の心にダメージを与えていた。
しかし、三玖に対する残酷な仕打ちはこれで終わりではなかった...
それは学年末試験の結果の発表日。
(手作りのチョコは無理だったけどテスト勉強は十分に頑張れたつもり...前回は五月に越えられたけど今回は姉妹で一番に返り咲いてみせるよ!)
前回は負けたとはいえ、元々は姉妹の中で一番成績が良かった自分ならばテスト勉強を頑張れば巻き返しは十分に可能なはずだ。
三玖はそう意気込んでいたのだが...結果は残酷なものだった。
(嘘...五月にまた負けた...それに四葉と一花にまでっ...!?そんな...)
五月に完敗したのみならず、四葉と一花にまで自らの総合点を越えられてしまい、三玖は成績面で姉妹四番手にまで転落してしまった。辛うじて二乃には勝ったものの、姉妹一番を目指してテスト勉強を頑張ってきた三玖がそれで喜べるはずがない。
風太郎や他の姉妹達の前では何とか笑顔を取り繕っていたが自分の部屋に入るなり、ベットで横になった三玖の目からは涙が溢れていた。
「私、どうすれば...」
今回の結果で数少ない自らの取り柄と言えた成績の良さすらも他の姉妹達に奪われて落ち込む三玖が無意識に部屋中を見渡すとある物が目に入った。
「あっ...」
それは
この時、三玖の頭の中で一瞬...ほんの一瞬だけ、とんでもない考えが頭に浮かんでしまった。この方法を使えば崖っぷちからの一発逆転も夢ではないだろう。
「いっそのこと...いや!それは絶対にダメ!それだけはやっちゃいけないよね...」
しかし、その方法が姉妹達の中で越えてはいけないレッドラインを越えてしまうと察していた三玖は残っていた理性で欲を抑え込んだのだった...
そう...この時点では。
五月の行動による最大の被害者は?
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過去の行いを自覚させられた一花
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恋愛レース脱落並びに利用される二乃
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メンタルをボロボロにさせられた三玖
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風太郎との過去を乗っ取られた四葉
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四葉との過去を乗っ取られた風太郎