「まさか、お前が零奈だったとはな。全然、分からなかったぜ...」
「私の方も最初は君の正体に全く気づかなかったんだから、お互い様だよ。」
よくもまぁ、こんな嘘がペラペラと口から出てくるものだと五月は自分で思った。...が、今になって後戻りするつもりはない。
「零奈...いや、五月。お前に聞きたいんだが...俺の正体に気づいたのはいつなんだ?」
「それは、家庭教師初日に風太郎君が二乃に睡眠薬で眠らされて私がタクシーの送迎に付き添った時かな。あの時にたまたま興味本位で君の生徒手帳の中身を見たら例の写真が入ってたから...」
あの時は姉達によって半ば押し付けられたような役目だったが、皮肉にもそれが今になって五月にとって零奈としての偽りの経歴を作る上での重要なアドバンテージとなっている。
「...なるほど、その時だったのか。確かにあの後、お前の俺に対する態度が多少は緩和された気はしたな...てっきり、俺の家庭事情を知ったからとばかり思っていたんだが...」
もちろん、実際はその通りなのだ。上杉家の複雑な家庭事情を知った上でらいはと仲良くなれたからこそ、五月は上杉風太郎という人物の本当の人柄について知る事ができたのだから...
「だが、何でその後もしばらくは俺の家庭教師に非協力的だったんだ?やっぱり、初対面時に俺がお前に『太るぞ。』と言ったのを根に持ってたのか?」
「当たり前じゃないですか!!女の子に向かってそんな発言はNGです!!!」
思わず、敬語口調に戻ってしまうくらいに憤慨した五月だったが、仮に姉達がこの風太郎の発言を知っても『事実だ』と彼を擁護しそうなのはここだけの話だ。
「それは...すまん。」
「まぁ、それもあるんだけど...一番の理由はあなたと関わる事で私が5年前に京都で会った子だということを悟られないためかな。」
「なっ!?...ちなみに訳を聞かせてもらっても構わないか?」
まぁ、それに関しては風太郎が気になるのも無理はないだろう。
「だって!私は風太郎君との約束を何一つ守れなかったんだよ!?助けようと思っていたお母さんは亡くなっちゃったし!...」
「五月...」
「それに勉強の方も全然ダメだった!!どれだけ頑張っても要領が悪いせいで成績は伸びなくて!...同じ姉妹でも一花は演技、二乃は料理、三玖は戦国武将、四葉は運動と得意分野があるからまだ良いのに!私は...私は!それすらもないんだもん!そんな私が必要とされる人間?そんなわけないじゃん!!私なんか...」
零奈として悲痛な思いを演じていただけのはずの五月だったが、気づけば無意識に彼女の瞳からは堪えんばかりの涙が浮かんでいた。
単に演技に熱が入ってしまったのか...はたまた、得意分野の件については零奈に関係なく、自分でも前から気にしていた事なのだからだろうか?
「でも!お見舞いに行った時に分かった!!風太郎君はあの時の思い出を未だに覚えていた事を!!だから、いっそのこと私との思い出は忘れてもらった方が良いと思ってボートに...」
「五月...もういい。もういいから...それ以上は言う必要はないぞ。」
「ううっ!風太郎君...」
見かねた風太郎が五月の肩に片手を置きながら、もう片方の手で五月の瞳の涙を拭う。まさか、彼がこんな紳士的な行動をしてくれるとは夢にも思ってもなかったので五月は心の中でドキドキして酷く興奮していた...
「五月...あのな、あの時の約束を守れなかったのは俺も同じなんだ。」
「えっ?いやいや!そんな事ないよ!だって風太郎君は私なんかと違って勉強ができるようになってたよね?」
「いや、違うな...俺は確かに勉強は人一倍できるようになったがそれだけの人間だ。俺は勉強以外の全ては捨ててきてしまった...運動神経ゼロにファッションにも無頓着、友人も作らなかったし、ましてや人付き合いそのものが苦手だったんだ...そんな俺が必要とされる人間とは到底言えないだろう?お前と俺は似た者同士なんだよ。」
そんな風に風太郎は五月に優しく問いかける。彼の話が続いていく内に五月もさっきまでの興奮が収まったのか、最後の方には黙って静かに彼の話を聞いていた。
「...俺はな?あの日、お前に会えた事で救われたんだよ!もしも、お前に出会えていなかったなら...本当にろくでもない人生を歩んできただろうな!だからよ...これ以上、自分を責めるのはやめろ!!この際だから言うが、お前を必要としている人間は他でもない...俺自身なんだよ!!!」
「ふっ!?...風太郎君!?」
もはや、告白も同然の事を言われた五月の心拍数が上がり、自然と体が熱くなっていった。なお、五月自身には分からなかったが恥ずかしさのあまりに顔も赤くなっていたに違いない。
「あっ、わっ...悪い!今のはな...」
風太郎の方もそんな五月の様子を見て、我に帰ったらしい...咄嗟に五月から顔を反らして頭を掻きながら、動揺していて上手い言い訳を考えている様子だった。
「風太郎君...」
「五月、済まない。変な事を言ってしまったな...」
「違うの...私、嬉しいの!私を必要としてくれる人間がいて、それが風太郎君だって事が!!」
「五月...」
五月の言葉に風太郎はホッとした様子を見せる。どうやら、さっきの発言で気持ち悪がられてると勘違いしていたようだった。それと同時に風太郎の胸の鼓動も大きくなっている気がした...
「上杉風太郎君。改めて私とお友達として...いいえ、友達以上の関係になっていただけませんか?」
「あぁ、もちろんだ。あの時、俺はお前に救われた...だから、今度は俺が五月を助ける番だ!俺が家庭教師として...いや、友人としてお前の力になってやるよ!!」
「風太郎君!」
こうして、風太郎と五月...二人の仲は急速に深まっていった...
しかし、二人は気づいていなかった...
(あれっ?上杉さんと五月だよね!?...えっ?しかも、五月が変装を解いてる?どういう事!?)
陸上部のお手伝いでランニングをしていた四葉に途中から一部始終を見られていた事を...
デートを尾行していたのは?
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元祖闇堕ち...中野一花
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最大の協力者!中野二乃
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現在、空気...中野三玖
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最大のライバル!?中野四葉
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将来の義妹!?上杉らいは
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不良キャラ、前田
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風太郎のライバル!?武田祐輔