Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
ということでお待たせしました。
初めてのアンケートでしたがあの選択肢の投票数がトップだったのは個人的に少し意外でしたね。
それでは本編どうぞ!
前回のあらすじ
ねずみ講かバスジャックか、あるいは銀行強盗かアイドルか………
それはもう滅茶苦茶な4択がターキンに迫っていた。
えぇ……。
「この中から…選ばないといけないのか……。」
「せ、先生…別に無理に決めなくても…。」
これまで生きてきて、選択を迫られた瞬間は数えきれないほどあった。
そして、その数々の選択をしてきた結果、今の俺がいる。
しかし今回、彼は突き付けられた選択を選ばなかった。
彼が選んだのは、
「………。」バッ
パリーンッ!
選択からの逃走だった。
彼はブルーデビルの遠吠えを聞いた時のような恐慌状態に陥った。
目の焦点は定まらず、口が狂ったくるみ割り人形ようにガタガタと震え、滝のような冷や汗をかいていた。
「勘弁してくれぇえええええーーーーー!!!!」
そんな状態だった彼は両手を高く上げるなり委員会室の窓に向かって走り出し、そして教室の窓に向かって腕をクロスさせながら勢いよくダイブして突き破ったのだ。
「「「えええええ!?」」」
生徒達は困惑した、いくらなんでもあそこまでするものなのかと。
「ちょ、ちょっと先生狂ちゃったじゃんどーすんの!?」
「そんなに嫌だったんだ、強盗…。」
その場にいた全員が呆気にとられる中、最初に我に返ったのはセリカだった。
シロコの方はというと、強盗をあれ程嫌がられたのかと思い耳を垂らしてシュンとなっていた。絶対にそれだけではないはずなのに。
「ちょ、ちょっとホシノ先輩どうするんですか、先生おかしくなっちゃったじゃないですか!」
「うへー、ちょっと無茶振りしすぎたかな……悪いことしちゃったなー。」
「とにかく、早く探しに行こう。」
一方その頃ターキンは……。
「どりゃあ!!」
ガッシャーーーーーン!!!
先程逃げた勢いに任せて偶然路上で遭遇した暴走オートマタの集団を素手でボコボコに張り倒していた。
「次はてめえだ!」
ガシッ
彼はオートマタの一体の首根っこを掴みそのまま持ち上げると、そのまま歩道にあったコンクリートバリアにその頭部を叩きつけた。
「フンッ!」
ゴシャアッ
鈍く砕ける音とともにオートマタの顔面代わりの液晶画面がバリアの角にめり込んでいく。これが人間だったらタダでは済まないだろう。
「………。」
ブチブチブチ…ガッ!
彼は慣れたような手つきで壊れたオートマタの頭部を引きちぎると、ダクトテープでそれにフラグ地雷を張り付けた。
「プレイボール!」
空元気に完全にその身を任せた彼はその生首爆弾を向かいの敵に投げつけた。
ドオオオオオオンッ!!
「ストライク!!バッター
もう滅茶苦茶である。
そもそもなんでこんなハチャメチャな状況が繰り広げられているのかというと、これは気が動転したままだというのもあるが、主な原因は彼が自身に憤りを覚えいたからだった。
あんなもう収拾のつかない状況で起きた事に自分を責めるのも酷だとは思うものの、彼には元からそういう嫌いがあったのだ。
幾ら荒唐無稽で出鱈目な選択肢しかなかったとはいえ、生徒に選択を求められたにも関わらず動揺があったとはいえそれでも己はそれをあろうことか投げ出してしまった。それが我慢ならないほどにに情けなく思えて仕方がなかった。
「クソッ」
「クソッ!」
「クソォッ!!」
「クソッたれがあ!!!」
叫ぶ度、オートマタを力強く殴りつけた。
その拳はすさまじく、素手なのにも関わずパワーフィスト並みの攻撃力を出していた。
オートマタの頭部はもう原型がない。
「はぁ……はぁ……。」
肩で息をしながら、自身の冷静さを取り戻そうと振り上げた手をゆっくりと降ろす。
「………シロコ達になんて言おう。」
項垂れながら頭を抱えていると後ろから声がする。
「見つけた!」
声がした先にはセリカがこちらを指さして背後に呼びかける姿があった。
「皆…。」
俺は言い淀んだ。あの失態の後、無様を晒してどう声をかけた物か……と。
合わせる顔もない状況で、生徒たちは口々に言った。
「先生ったらもう、心配したんだから!」
「強盗…そんなに嫌だった……?」
耳が垂れ下がったシロコの問いかけに、少し悩んだが[嘘]を吐いても仕方ないので正直に答えることにした。
「嫌というか……教師としてはまあ、あまり好ましい案ではない…よな。」
「ん……。」
「でもまあ、状況次第なら…目を瞑るかもしれない。よっぽどであれば。」
「ん、今の発言撤回しないでね。言質取ったから。」
そう言って彼女は懐からボイスレコーダーを見せてきた。
「全く…いきなり奇声を発して両手を上げて窓から飛び出した時は気でも狂ったのかと思ったわ……。」
「いやまあ、うん…概ねそういう認識で合ってる。」
「実際パニックになってた訳だからな……。」
「まあ気持ちはわからないでもないけどアレがアレだったわけだし……。」
「あんな案の中から選べと言われたものだから正常な思考ができなくなってしまった。」
「歩み寄っておいてだけど、そこまで言う!?」
「それはそれでショック。」
「アイドル……別にそこまで変じゃないはずなんですが…。」
「案自体はな…しかし………"センス"がな…色々。」
「そんなぁ先生まで酷いです…!」
「すまない…。」
「まあ、ネーミングセンスくらいその気になれば改善できるさ。」
……………多分。
「そ、そうですね。頑張ります!」
「うへー先生ほんとにごめんよー。」
「まさかあそこまで取り乱すとはおじさん思ってなくてさー。」
「こちらこそ……決められなくてすまなかった。」
「我ながら…哀れな姿を晒した…。」
しおらしくなる俺の姿に皆は神妙な面持ちになった。
一方で、何やらただならぬ様子のアヤネは突然俺に凄んだ。
「あれは決めなくていいです!」
「とはいえ…………。」
「ん?」
「校舎の窓をいきなり壊さないで下さい!」
「あっ……。」
これを皮切りにアヤネのフラストレーションは一気に炸裂した。
「それに皆さんも!何なんですかあの無茶苦茶な……。」
「「「はい………。」」」
こうして、アヤネのお説教を皆で受けることになった。
小一時間くらい。
「いやぁー、悪かったってば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」
「怒ってません……。」
アヤネはそう言うが、その頬が確かに膨れていた。
「はい、お口拭いて。はい、よくできましたねー☆」
「んっ、赤ちゃんじゃありませんからっ。」
「…なんでもいいけどさ。なんでまたウチに来たの?」
アヤネのお叱りを受けた一同は、彼女の機嫌を直すため紫関ラーメンへと訪れていた。
セリカの方は現在バイトのシフトの真っ最中である。
「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」
「ふぁい。」もごもご…。
シロコが自身の器に盛られているチャーシューを箸でつまみ上げると、それをアヤネの口に運び、彼女はそれをそのまま頬張った。
俺はそのなんともかわいらしい掛け合いを肴に日本酒という酒を嗜んでいた。大将によると学園都市の外からこっそり仕入れた代物だそうで。あまり大っぴらには出せないそうな。
その上普段の客層が殆ど学生だったりで提供は滅多にないが今日は特別にと勧められた。
「うん、実に美味い酒だ。」
「気に入った。」
「そりゃよかった。一人で楽しんでもよかったんだが、同じ話ができる相手がいた方がもっと楽しいだろ?」
「それとついで教えるとこいつをアテに呑むとこれがよく合うんだよ、どうだ?」
大将はそう言って後ろのお品書きに書かれた一品を指さす。
「ほう、ならそれも頂こうか。」
「毎度あり!」
「先生ってもしや結構酒好き?」
「そうだな。よく嗜んでる、飲みすぎには気を付けてるがな。」
ウェイストランドじゃ酒が数少ない娯楽ということもあり、彼も中々の酒好きだった。
それに彼がアパラチアにいた時は、暇を見つけては消防署の地下室でヌカ・シャインやハイボルテージ・ヘフェなどの酒を密造していた。ところがそれをエンクレイヴの将軍である友人に見つかる度に没収されていた。あわれである。
そんな平和な時間が一転するように、紫関ラーメンの戸がガラリと音を立て開いた。
そこには、ショットガンを抱えた内気そうな子が一人、悶々と立ち尽くしていた。
「………。」
「あ…あのう………。」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
少女はセリカの質問に質問で返す。
「……こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」
「一番安いのは……」
「580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
「ん?」
鳥兜色の髪の少女はセリカに礼を一言告げると一度店の外に出た。ぼやけてはっきりとわからなかったが、外に連れがいたようだ。
その様子を何気なく見ていた俺は日本酒をちびちびと味わっていた。酒うめえ。
すると、話し終えたのか再び戸が開く。
そこにはさっきの少女と他に3人の少女の姿があった。
一人は黒と白の髪のいかにもヘビメタ好きといった印象を受けるパーカーを着た赤目の少女。
もう一人は小柄な体躯に似つかわしくないLMGと怪しげなカバンを下げた少女。この子だけ何故か背後に悪魔がいる気がする。念の為十字を切っておこう…主よ護り給え。
そしてもう一人、学生にしては妙に大人びた印象を受ける。その少女はスナイパーライフルを所持していた。
推測でしかないが、リーダー格はおそらくあのスナイパーだろう。V.A.T.S.の情報を見る限り、CHAが普通の生徒に比べ明らかに高い。
もうこれでおわかりかと思うがアル ムツキ カヨコ ハルカの便利屋メンバーのご登場である。
「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ。」
「そ、そうでしたか、さすが社長、なんでもご存知ですね………。」
「はぁ……。」
ハルカがアルに尊敬の眼差しを向ける一方、カヨコはあきれ返り溜息を吐いていた。
「4名様ですか?お席にご案内しますね。」
「んーん、どうせ1杯しか頼まないかし大丈夫。」
「1杯だけ……?でも……どうせならごゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので空いてる席も多いですし。」
「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。」
「あ、わがままついでに、箸は4膳でよろしく。優しいバイトちゃん。」
「えっ?4膳ですか?ま、まさか1杯を4人で分け合うつもり?」
「んっ!?」
俺はセリカの言葉に耳を疑い、酒を吹き出しそうになった。
「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金が無くてすみません!!」
「あ、い、いや……!その、別にそうあやまらなくても……。」
「いいえ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません……!」
「そんな事はない。」
俺は彼女からRADストームの時のシェナンドア川の濁流を思わせる程の卑下の言葉の数々を真っ向から否定した。
否定せずにはいられなかった。
「お金があろうがなかろうが人は人だ。」
かつて日本のとある人物が"天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず"という言葉を遺したそうだが、正にそうだ。もし下に人が造られているのであれば、その上にいるのは……必ず人だ。
「持たない事を嘆くことあれど恥じることはない、ましてや罪と思い込むのはもってのほかだ。」
俺の言葉にすかさずセリカが畳みかける。
「そうそう!それにお金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし!」
その天下も回りものとやらも、社会が崩壊すれば紙切れか金属クズも同然だがな。
「それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!」
「もう少し待っててね。すぐ持ってくるから。」
そうして急ぎ足て注文を伝えに行く間に、すれ違ったターキンとサムズアップを交わした。
一方その様子を見ていたカヨコは聞いた。
「……何か妙な勘違いをされてるみたいだけど?」
「まあ、私たちいつもはそんなに貧乏じゃないんだけどね。しいて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし。」
「"アルちゃん"じゃなくて社長でしょ?ムツキ室長、肩書きはちゃんと付けてよ。」
「ん?だってもう仕事終わったあとじゃん?ところで、社長のクセに社員にラーメン1杯奢れないなんて。」
「うっ………。」
痛いところをムツキに突かれたアルは渋い顔をした。
「今日の襲撃任務に投入する人員を雇うために、ほぼ全財産使っちゃったし……。」
「ふふふ。でもこうして実際ラーメンは口にできるわけでしょ?それぐらい想定内よ。」
「たったの1杯分じゃん。せめて4杯分のお金は確保しておこうよ……。」
「ぶっちゃけ、忘れてたんでしょ?ねぇ、アルちゃん。夕飯代取っておくの、忘れてたんでしょ?」
「はあ。ま、リスクは減らせた方がいいし。今回のターゲットは、ヘルメット団みたいなザコみたいには扱えないってことには同意する。」
「……ふふふ。」
「でも全財産をはたいて人を雇わなきゃいけないほど、アビドスは危険な連中なの?」
「それは……。」
「多分アルちゃんもよくわかってないと思うよ。だからビビっていっぱい雇ってるんだよ。」
「誰がビビってるって!?全部私の想定内!」
「失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して臨むわ。それが我が便利屋68のモットーよ!」
「初耳だね、そんなモットー………。」
「今思いついたに決まってるよ。」
「うるさい!じゃあ今回の依頼を成功させて報酬が手に入ったら、すき焼きにするわ!だから気合い入れなさい、みんな!」
「すっ……すき焼きとはっ…!?それは一体!?」
「大人の食べ物だね、すごく高価な……。」
「う、うわあ……私なんかが食べていいものなんでしょうか?食べたらハラキリですか…?」
「ふふふ。うちみたいなスゴイ会社なら、それぐらいの贅沢はしないとね。」
「へえ〜やる気満々じゃん、アルちゃん。」
「アルちゃんじゃなくて、社長!!」
そうこうしてるうちに、セリカが彼女達が注文したラーメンを運んできた
のだが………
「はい、お待たせいたしました!お熱いのでお気をつけて!」
そこには1杯のどんぶりにはとても収まりきらない量のラーメンがドンッと置かれていた。
便利屋達は自分達の目の前にあるそのラーメンの量に度肝を抜かれた。
「ひぇっ、何これ!?ラーメン超大盛りじゃん!」
「ざっと、10人前はあるね……。」
「こ、これはオーダーミスなのでは?こんなの食べるお金、ありませんよう……。」
「いやいや、これで合ってますって。580円の柴関ラーメン並!ですよね、大将?」
「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。気にしないでくれ。」
「大将もああ言ってるんだから、遠慮しないで!それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」
俺は大将のその人情溢れる人柄に感服した。
「う、うわあ………。」
「よくわかんないけど、ラッキー!いっただきまーす!」
「……ふふふ、さすがにこれは想定外だけど、厚意に応えて、ありがたく頂かないとね。」
「食べよっ!」
ズズズズズーッ!
4人は大将に寛大な心に感謝の念を抱きながら、山盛りのラーメンを啜った。
その時、便利屋達にテスララフルを喰らったかのような衝撃が走った!
「!!」
「お、おいしいっ!」
「なかなかイケるじゃん?こんな辺ぴな場所なのに、このクオリティなんて。」
彼女達がそれはそれは美味しそうに麺をするる姿を見たノノミは笑顔で声をかける。
「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?」
ノノミはどこが誇らしげだった。
「あれ……?隣の席の……。」
「うんうん、ここのラーメンは本当に最高なんです。遠くからわざわざ来るお客さんもいるんですよ?」
「ええ、わかるわ。色んな所で色んなのを食べてきたけど、このレベルのラーメンはなかなかお目にかかれないもの。」
「えへへ……私たち、ここの常連なんです。他の学校のみなさんに食べていただけるなんて、なんか嬉しいです……。」
「その制服、ゲヘナ?遠くから来たんだね。」
そう言えばシロコの言う通り彼女達の格好にどこか見覚えがある。
チナツだ。そういえばあの子もゲヘナの生徒だったか……。
「私、こういう光景を見たことがあります。一杯のラーメン、でしたっけ……。」
「うへ〜、それは一杯のかけそばじゃない?」
そんな他愛のない会話をしている時、突如箸が止まったアルは向かいの人物を見て目をキラキラと輝かせていた。
(あの人…なんてハードボイルドな出で立ちなのかしら!!)
辛抱たまらん様子でガタッと一人立ち上がるとその人の下へとずんずんと向かう。
アウトローを志すアルが思わず目を輝かせてしまうその人とはこの店にもはや彼しかいないだろう。
「……何か用か?」
俺はキョトンとしながら、日本酒の入ったお猪口を置いて尋ねた。
「突然なんですがその……お名前をお聞きしても?」
「ターキンだ。ターキン・マクスウェル・ゴッドフレイ。」
「シャーレの先生だ。」
「それで……君は?」
「便利屋68の陸八魔アルよ!」
アルはその名を忘れまいと復唱し自身の脳に刻み付けた。
「ほえー、先生ミドルネームなんてあったんだ。」
「君らはないのか?」
「キヴォトス内でそんな文化がある地域は聞いたことがないですね。」
「そういえば、奥空アヤネとか砂狼シロコとか…和名がほとんどだな。」
そんな些細な発見に感嘆としているとアルは本題に入った。
「それでターキン先生、折り入って頼みがあるの!」
「お、おう…。」
「なんだ、その頼みって言うのは?」
「どうしたらあなたみたいな最高にクールでハードボイルドなアウトローになれるか教えて欲しいの!」
「………は?」
「その傷跡!禍々しい斧!正しく数々の修羅場を潜り抜けてきた超が付くほどのハードボイルドなアウトローだわ!」
これは果たして素直に喜んでいいのか?
「アウトロー……か。」
「悪いがその頼みは受けられそうにないな。」
俺の返事にアルは驚きあからさまに焦りだした。
「ええ!?そ、そんなどうして…。」
「君に問題があるわけじゃない。」
「俺が別にアウトローじゃないから教えようがないってだけだ。」
「そうなの!?以下にも冷徹無慈悲なアウトローって顔なのにアウトローじゃないなんて……。」
アルは信じられないとでも言いたげだった。仕方のないこと…とは言え流石に傷ついた。
俺レスポンダーなのに……。
「おいおい…まあ、あながち間違いでもないが…これには込み入った事情があってだな…話せばながい……。」
とはいえ、こうして話しかけてくれたのにそのまま突き放すのも忍びない。
「そういえば、アウトローに関しては俺より精通してるやつが居たな……。」
「そ、それは一体誰なの!?」
「俺の親友達の一人…オズワルドってやつさ。」
「あいつはいろいろあって地元のワル達の組織の中に潜んでたことがあってな。」
「なにかとその辺には詳しかった。良くも悪くもだがな。」
オズワルド・ザルボーク13世
スコットランドのとある一族にルーツを持っていた彼は、ターキンとはVault76で青春をともにした中で、
元レイダーだ。
というのも彼は、何を想ってなのか自称するシークレットサービスの任務と言って、アパラチアでの派閥間での大規模な武力闘争を最小限にするため、レイダーが巣食うクレーターで工作員としての活動を2年行っていた。もっともこれは他組織に向けた単なる建前に過ぎず、その目的はもっと複雑なものだったと後で知ったが。
2年、Vaultで過ごした時間と比べれば遥かに短かいが、クレーターのレイダーたちと過ごす波乱に満ちたその2年は彼の人間性を歪めてしまうのに十分すぎる時間だった……。彼は幾つもの薬物依存症を患い、過度な飲酒からも抜け出せずにいた……。彼をそんな状態から正常に復帰させるのには大変な苦労があった。
正直、彼は自身にあまりにも酷な役目を課してしまっていたと思う。
それがいくら真実を突き止めるためとは言え…。
もっと早く手を差し伸べて入れば、あんなことには………。
特にアトランティックシティでの出来事以来、彼の精神状態はもう荒廃寸前だった。
パートナーだったアサルトロンの喪失は…彼の心に大きな傷を与えた。
そこから立ち直れる精神は私も見習うべきところがあった。
それももう会うことはないのだろうが…願わくば、彼の人生に幸福が見つかるよう祈っている。
親友として……。何よりVaultで暮らした家族として………。
「そのオズワルドさんにはどうやったら会えるのかしら?」
「会えない。」
「え?」
「どうして?」
「それは…今は残酷な事だったとしか言えない。」
「そう…。」
この世の理不尽をいま語ったとしても、子供には毒にしかならないだろう。
「ターキン……しっかりしろ!」
「頼む目を開けてくれ!」
エンクレイヴの将校の制服を身に着けた男のガスマスクのゴーグルの奥底で泳ぐ眼は、腹を無惨に貫かれた友の骸を見つめていた。そしてその震える声が、彼の…ペスコフの動揺を物語っていた。
「クソ、スティムでも息がもどらん……っ!」
「テスラを早くもってくるんだ!」
この場にAEDなんて医療機器はない…あるのは殺傷武器のみ。
それでもなお、命を繋げられるなら……。
「下がってろ!」
スーツの男はテスラライフルを取り出すと回路を調整し、ターキンの胸に押し当てた。
「クリア!」
ビリリッ!
引き金を引き、電気を流す。アーク放電で光る陰には、深部採掘用ヘルメットが鈍く映った。
「バイタルは?」
オズワルドはBOSのナイトに尋ねた。
特殊作戦用ガスマスクの下から低い唸り声がする。
「うーん……もうダメだ手の施しようがない。」
「彼はもう……。」
グーンズの発言に、レンジャーアーマーを着た男が膝から崩れ落ちた。
「そんな…相棒……。一緒にアメリカを救おうって約束したじゃねぇか………。」
「なのになんで……おれが、もっと…しっかりしてりゃあ。」
エドワードは嘆くことしかできなかった。
彼らの表情は総じて分からない。しかし、友を喪った確かな絶望が、汚染された大気に満ちていた。
もともと地獄に居るのにも関わらず、友達は更に奥深くの地獄へと叩き落とされた。
そして脳裏を電撃の様に過るヤツの言葉。
「…皆様も心の準備を、間もなくです。」
「彼曰く……"彩"は物語に不可欠だそうですから……。」
そのとても新鮮なトラウマに刻み込まれた言葉が呼び起された直後、彼らはガイガーカウンターの叫ぶ声を聴いた。
そして次の瞬間。思考も行動もとる暇さえなく、眩い閃光が視界を遮り熱が体を包んだ。
しかし、それをターキンが知ることはない。
彼はもう、
「会えなくて…寂しい?」
ホシノは確かめたかったのだろう、ふとそんな言葉を投げかけてきた。
「そうだな…寂しくなかった日なんて一日もなかった。今でさえな。」
そう呟くと彼は静かに再び酒を呷る。
彼の背からふとした時に哀愁と共に漂っていた孤独な空気、その正体は……
地獄に遺した友への無念。
不思議に思った。
姿も形も、何もかもが異なるはずなのに…彼女は彼に自分と同じ影をみた。
大切な人を…喪った影を………。
ターキンの虚ろな瞳を見てアルはいたたまれなくなった。
「ごめんなさい、辛いことを思い出させてしまって……。」
「いいんだ。友にはもう会えずとも、守るべきものがここにはある…。」
覚悟は正直、まだ出来ていない……だが立ち向かう準備はできてる。
「…時にだがアル。」
「なぜアウトローに拘るんだ?」
俺が知る限り、彼女のカリスマあればわざわざ犯罪に手を染めて生計を立てる必要はない。
それでも尚アウトローを志す意味はなんなのだろう。
その答えは、あまりにもシンプルだった。
「何者にも縛られない自由でハードボイルドなアウトローが私の夢なの。」
「その夢をかなえるためなら、なんだってやるわ!」
「なるほど……。」
それが…陸八魔アルという生徒なのか……。
まあ、余程世間に迷惑をかけないのであれば、彼女の夢を頭ごなしに否定する理由もないだろう。
それはそれとして…もう一つ気になる事がある。
「アル、大事な人はいるか。」
「ええもちろん、私の部下達。便利屋には絶対欠かせられない仲間よ!」
「そうか…大事にしろよ、修羅場に付き合ってくれる人間なんて滅多だからな。」
それは彼なりの警告だった。
彼女が身を置こうとする世界をよく知っていた。
その世界は、人の大切なものをすべて貪ろうと貪欲に蠢く。
あの
「ええ、肝に銘じておきましょう。」
「そうだよ、今頃アルちゃん一人だったら飢え死にしてたかもしれないしね~。」
「もう、余計なお世話よムツキ!」
「なるほどな……大したもんだ。」
「どうやら無用の心配だったようだ……。」
どんよりとした空気も晴れ、後には生徒達の賑やかな談笑があった。
なんて尊い時間なのだろう。
これが永遠に続くなら私は二度目の命も惜しまない。
「それにしても、こんなところで気の合う人たちに会えるなんて。これは想定外だけど、こういう予測できない出来事こそ人生の醍醐味じゃないかしら。」
「言えてるな、君みたいな底抜けに明るいアウトローなんて見たことがない。」
その平和なやり取りを訝しむ者がいた。
「ねぇ………。」
ムツキとカヨコはお互いひそひそと話し合う。
「………制服の連中……。」ヒソヒソ
「あれ、ほんとだ。」
「アルちゃんは気づいてないみたいだけど?」
「……言うべき?」
「……面白いから放っておこ。」
「………。」
そんな平和な時間もそろそろ終わりを迎え、両者は退店。
去り際に互いに励しの言葉を贈った。
「それじゃあ、気をつけてね!」
「お仕事、上手く行きますように!」
「あははっ!了解!あなた達も学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!」
「じゃあね!」
対策委員会の面々と別れたアルは今日出会った生徒達とのやり取りを思い出し、溜息と共に感傷的に呟く。
「ふう……いい人たちだったわね。」
「…………。」
カヨコはどこか気まずそうな表情をしていたが、その一方でムツキは寧ろワクワクしている様子だった。
「社長………あの子たちの制服、気づいた?」
「えっ?制服?何が?」
「アビドスだよ、あいつら。」
ムツキから告げられた事実にアルの思考は止まった。そして次の瞬間、絶句しながら叫ぶ。
「なななな、なっ、何ですってーーーーーー!!!???」
ってな訳でいかがでしたか。
まだまだ手探りで書いてますが何とか続けようと思います。
それでは今回も読んでいただきありがとうございます。
もし気に入っていただければ作者のモチベの為にお気に入り登録、感想を是非お願いします。お願いします(血涙)