Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
治安機関を刺激しないよう交戦を避けその場から撤退した一行はブラックマーケットの中心街へと来ていた。
「~~~♪」
「はあ………しんど。」
ここに来るまで実に14㎞とそこそこ歩いため、皆顔に疲れが出始めていた。
顔色一つ変えずに口笛を吹くこの男以外は。
「結構歩きましたよね。」
「これはさすがに、おじさんも参ったなー。腰も膝も悲鳴をあげてるよー。」
「えっ……ホシノさんはおいくつなのですか……?」
「ほぼ同年代っ!」
「ヒフミ、真に受けてはいけない。」
「は、はぁ……。」
経験者は語るというやつだ。
「それにしても……。」
「なんで先生は平気そうなの。」
彼の故郷ウェスト・バージニア州はとても広大で、高低差がある山岳地帯だ。そんな険しい地形の地域を時には十数キロある荷物を背負って銃をぶっ放しながら駆け回っていたので平坦な市街地の移動くらいでは汗一つかかない。
「故郷じゃバーベル数本持ち帰るために登山なんてこともよくあったなぁ……。」*1
懐かしいなぁ……と遠くを見つめながら突然語られた脳筋スカベンジャーなエピソードに周りは愕然とする。
「えぇ………。(困惑)」
生徒達はキヴォトス人もびっくりな彼のそのタフさに驚き、ノノミは寧ろ親近感を覚えていた……。
何を隠そう彼女もまた300kgとか平然と持ち上げてしまう程のたくましい生徒の一人なのだ。
「私もよく買い物でダンベルを40個ほど買う時があるんです!」
「良かったら幾つか譲っても……。」
「なるほど君はストレングスの女神だったのか。」
「クリスティーナだお♧」
重量級な会話に周りはついていけなかった。
「たまに先生がインテリなのか脳筋なのかわからなくなる…。」
「筋肉は知識と同じだ、あればあるほどいい。」グッ
時として、膨大な質量とエネルギーは問題に対する最も効果的な解決方法の一つになりえる。
Vault-tec大学名誉教授 ハンマーカール・ベンチプレス氏の日誌より抜粋*2
「ストレングス万歳!」
「万歳です☆」
そんなSTR15なやり取りをしていると、ノノミが通りに目を向けた。
「あっ!」
「あそこにたい焼き屋さんがありますよ!」
彼女が指さした先には少し古ぼけた、移動式のたい焼きの屋台があった。
「あれ、ホントだー。こんなとこに屋台があるなんてね。」
「あそこでちょっとひと休みしましょうか。たい焼き、私がご馳走します!」
「えっ!?ノノミ先輩、またあのカード使うの!?」
「先生の大人のカードもあるよ〜。」
「ばっちこーい!」スッ
彼はキヴォトスに来た当初、ピップボーイのMISCにいつの間にか登録されていた"大人のカード"を取り出した。
カードの口座にはまとまったお金が幾らか入っている。
しれっとこの世界の超重要アイテムの『大人のカード』が登場しているが、活躍の場は今のところ………ない。
「すいませんうち現金しか扱ってないので。」
「あれ、そうなんですか……。」
「あちゃー、キャッシュレスの思わぬ欠点だね。」
「勝ったなガハハ!」サッ
彼は勝ち誇った様子で懐から現金が入った財布を取り出した。
「ぐぬぬ、参りました…。」
「たい焼き奢るのに勝ち負けって……。」
「ま、ただでたい焼き食べられるならおじさんは何でもいいんだけどねー。」
そういうことでたい焼きは彼が奢ることになった。
「まいどあり〜!」
こうして近くの公園のベンチに腰掛け、焼きたてのたい焼きを皆で頬張った。
「おいしい!」
「いやぁ、ちょうど甘いモノが欲しかったところだったんだー。」
「これがジュンコ婆さんが言ってたTAIYAKI……餡子の優しい甘さが寂れた荒野に降った雨の様に心に染みる…。」
「おお、まともな食レポ。」
「アヤネの分も買っておこう。私達だけですまない。」
画面越しのアヤネにそう申し訳なさそういうと、
「あはは。大丈夫ですよ先生。私はここでお菓子とかつまんでますし……。」
とはにかんで言っていた。
「しばしのブレイクタイムだねー。」
たい焼きを一頻り堪能した後、ヒフミはブラックマーケットの不審な動きに頭を捻らせていた。
「うーん……。」
「ここまで情報がないなんて……妙ですね。」
「何が?」
「お探しの戦車の情報……。絶対どこかにある筈なのに、探しても探しても出てきませんね……。」
「販売ルート、保管記録……すべて何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします。」
「いくらここを牛耳ってる企業でもここまで徹底してブラックマーケットを統制することは不可能なはず……。」
「そんなに異常なことなのか?」
「異常というよりかは……普通ここまでやりますか?という感じですね……。」
「ここに集まってる企業は、ある意味開き直って悪さをしていますから、逆に変に隠したりしないんです。」
(だとすれば何者か裏から手を回して隠蔽してる可能性が……?)
「例えば、あそこのビル。あれがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です。」
「闇銀行?」
(これまた安直な名前が飛び出してきたな。)
開き直るにしてもこれじゃあ捕まえてくださいと言っているようなものだ。
「ブラックマーケットで最も大きな銀行のひとつです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです。」
「横領、強盗、誘拐などなど、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられてまた他の犯罪に使われる……。」
「まさに負のスパイラルだな。」
「……そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか。」
「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです……。」
「………。」
「酷い!連邦生徒会は一体なにやってんの?」
連邦生徒会長を探してます。
「理由はいろいろあるんだろうけどねー、どこもそれなりの事情があるだろうからさ。」
「現実は思った以上に汚れているんだね。私たちはアビドスばかりに気を取られすぎて、外このことをあまりにも知らなすぎたかも……。」
「………。」
「アロナ、記録は取ってるか?」
『ばっちりです。ブラックマーケット内の動き、全て記録してます!』
このブラックマーケットの情報はできる限り集めておいた方がいい。
今後シャーレの活動していく上で、ブラックマーケットの存在は必ず障害になる……。
そんな時だった。
アヤネから突如として連絡が入った。
『お取り込み中失礼します!現在そちらに武装した集団が接近しています!』
「なんだと?」
「気づかれた様子はありませんが……まずは身を潜めた方が良いと思います……。」
『う、うわあっ!?あれは、マーケットガードです!』
慌てるヒフミは全身黒く塗装されたオートマタの集団を指さした。
それにノノミが尋ねた。
「マーケットガード?」
「先程お話しした、ここの治安機関でも最上位の組織です!」
「なら急いだ方がいいね、行こう!」
直ぐに建物の物陰に身を隠した。
幸いマーケットガード達には気づかれなかった。
そして、その物陰から様子を伺うためヒフミが顔を覗かせた。
「あれは何でしょう……?パトロール?護衛中のようですが……。」
「トラックを護送してる……現金輸送車だね。」
「あれ……あっちは……。」
ノノミがもう一つのトラックを凝視する。
「闇銀行に入りましたね?」
「どれどれ……。」ヒョコ
ターキンが物陰から目を凝らし、注意深く観察する。
トラックが闇銀行の前へ止まると。
見覚えのあるカイザーローンの銀行員がそこから降りてきた。
「今月の集金です。」
相手はマーケットガードだった。
「ご苦労様、早かったな。では、こちらの集金確認書類にサインを。」
「はい。」
銀行はやけに慣れた手つきでさらさらと書類にサインをしていた。
ロボットに慣れがあるかはわからないが……。
「見てください……あの人……。」
「あれ……?な、何で!?あいつは毎月うちに来て利息を受け取ってるあの銀行員……?」
「あれ、ホントだ。」
「えっ!?ええっ……?」
皆、戸惑っていた。当然だろう、自分達が苦労して稼いだお金がブラックマーケットに流れているその瞬間を目撃してしまったのだから。
「いいでしょう。」
「では、失礼します。」
銀行員はそのままトラックの中にあった現金の入っているであろう荷物を降ろして。そのままどこかへ走り去った。
「さあ、開けてくれ。今月分の現金だ。」
ガードは荷物の中身を取り出し、銀行内へと持って行った。
「これはたまげたな……。」
「……どういうこと?」
「ほ、本当ですね!車もカイザーローンのものです!」
『今日の午前中に、利息を払った時のあの車と同じようですが……なぜそれがブラックマーケットに……!?』
「か、カイザーローンですか!?」
ヒフミはカイザーローンへの借金に驚愕する。
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンと言えば…かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です……。」
「有名な……?マズいところなの?」
「あ、いえ……カイザーグループ自体は犯罪を起こしてはいません……。」
「しかし合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振舞っている多角化企業で……。」
ヤクザ風に言い換えるなら「サツに足がつかねえように巧妙なやり口で阿漕な商売してしのぎをあげる胡散くせぇ連中」ってことである。
特にヤクザ風にする意味はないが作者がやりたかっただけである。蛇足ですまない。
それにしてもわざわざ人口の殆どが学生を占めるでこんな真似をするとは世も末だ。
「カイザーは私たちのトリニティの区域にもかなり進出しているのですが、生徒たちへの悪影響を考慮し、ティーパーティーでも目を光らせています。」
「お茶会がどうかしたのか?」
「"ティーパーティー"、トリニティの生徒会組織の名称です。」
「トリニティのティーパーティー……ああ駄洒落か!」
「そんなわけない……。」
「もう先生
「おっとこりゃ一本…いや
「い、いやこれはちが……ああ、もうっ!」
ふざけるターキンに対しセリカはそっぽを向いてしまう。
「あーあ、セリカすねちゃった。」
そんな漫才を後目にホシノの目つきは鋭くなっていた。
「ふーん……あのトリニティの生徒会が、ね。」
「ところでアビドスのみなさんの借金とはもしかして……カイザーローンから融資を……?」
「借りたのは私たちじゃないんですけどね……。」
「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっき入ってった現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください。』
少しの間無線越しにカタカタとPCのタイプ音が聞こえた。
「……ダメですね。全てのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません。」
「アロナ?」
「だろうねー。」
「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり……。」
「足がつかないようにする為……だろうな。」
「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた……?」
「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供してたってこと!?」
セリカは皆の図星を突くことになった。
皆が頭を抱える中、ヒフミはあることを思いつく。
しかしその閃きが、ある生徒にとんでもないことを決意させてしまうことになるとは、知りもしなかっただろう。
「……あ!さっきサインしてた集金確認の書類……。それを見れば証拠になりませんか?」
「おお、そりゃナイスアイデアだねー、ヒフミちゃん。」
「あはは……でも考えてみたら、書類は銀行の中ですし……無理ですね。」
「ブラックマーケットでも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると……。それにあれだけの数のマーケットガードが目を光らせてますし……。」
「それ以外に輸送車の集金ルートを確認する方法は……。ええっと……うーん……。」
「うん、他に方法はないよ。」
「えっ?」
「ホシノ先輩、これは例の方法しか。」
「なるほど、あれかー。あれなのかあー。」
「……ええっ?」
「あ……!!そうですね、あの方法なら!」
「何?どういうこと?……まさか、あれ?まさか私が思ってるあの方法じゃないよね?」
「あれかぁ………参ったな……。」
「………。」フンスッ
「う、嘘っ!?本気であれやるの!?」
「残された方法はたったひとつ。」
「ズバリその方法とは。」
シロコは覆面を被り、現状最も現実的でありながら衝撃的なその方法を伝える。
「銀行を襲う。」
「はいっ!?」
「だよねー、そういう展開になるよねー。」
「この脚本もうちょっとマシなのなかったのか?」*3
「はいいいっ!!??」
ヒフミは自身の耳が疑わしくてしようがなかった。
何せ目の前の同年代の少女があろうことか闇銀行で強盗しようと突飛な事を言い出したのだ。
更には他の面々も呆れこそすれ止めることはおろか、その作戦に乗ろうとしていた。
それが余計に事情を知らない彼女の困惑に拍車をかけた。
それを差し置いてノノミとホシノも覆面を被り、アビドス組は銀行を襲撃する準備万端であった。
「さあ☆悪い銀行をやっつけるとしましょう!」
「はあ……マジで?マジなんだよね……?」
「あれでジョークを言ってるように見えるか?」
セリカは首を横に振る。
「そいうことだ…。」
「ふぅ、それなら……。」
「とことんやってやろうじゃない!!」
セリカも最初は気が乗らずにいたが、最後は吹っ切れたように覆面を被った。
「あ、うあ……?あわわ……?」
背景が宇宙になってしまうレベルの困惑の極致に立たされたヒフミはもはや人の言葉を発せられずにいた。
『………。』
『……はぁ、了解です。こうなったら止めても聞く耳を持たないでしょうし……どうにかなる、はず……。』
アビドス組は全員完全にやる気になってしまった約二名ほどやけくそになっているだけだが。
「ごめん、ヒフミ。あなた達の分の覆面は準備がない。」
「うへー、ってことはバレたら全部トリニティのせいだって言うしかないねー。」
「ええっ!?そ、そんな……覆面……何で……えっと、たがら……あ、あう……。」
もうタジタジである。
「それはかわいそうすぎます。」
ノノミはすぐさまヒフミにたい焼きの袋に視覚を確保できるように穴をあけ、それを被せた。
「あ、あうう……。」
「ん、完璧。」
「番号も振っておきました。ヒフミちゃんは5番です☆」
ちなみに1番はホシノ、2番はシロコ、3番はノノミ、そして4番がセリカだ。
「見た目はラスボス級じゃない?悪の根源だねー、親分だねー。」
もう後は銀行に押し入るだけ………だが、
「それじゃ先生……。」
「まあ待てシロコ、その前に話しておきたいことが……。」
「?」
コホン……
本来なら彼もここまで来たら勢いに任せてやっちまえの精神なのだが大事な生徒がいる手前、大人として彼も一歩引いた立場でいる必要がある。
それに何よりも、これだけは伝えておかなければならない………。
「知っての通り、これはれっきとした不法行為だ。」
「今回は連邦捜査部シャーレとしての特例中の特例であること…それを決して忘れるな。」
そう、幾らそうするに足る理由があろうと施設を強襲し物品を略奪する行為は到底認められるものではない。
これを境にしてこの子達…特にシロコが道を踏み外してしまうことがないようにする為にも、この場で楔を打っておく必要がある……。
「「「…はい!」」」
「……私が言いたいことは以上だ。」
一瞬何事かと困惑の表情を浮かべた彼女達だったが、今となってはその顔は決意に満ちていた。
(いい面構えになった。)
「それでは改めて……。」スッ
彼はフェドーラを一度外し、黒い覆面で顔を覆う。そして上からサングラスをかけて目を隠すと、再びフェドーラを被り深く一呼吸をおいた。
「諸君、銀行を襲うぞ。」バッ
サングラスがギラリと怪しい光沢を帯び、コートがはためく。
「はいっ!出発です☆」
「あ、あうう……。」
「私……もう生徒会に合わせる顔がありません!」
「心配ない、もしものことがあってもすべての責任は私が取る。」
「……は、はい。ありがとうございます。」
『ふぅ……では、水着覆面団。』
『出撃しましょうか。』
アヤネも通話越しに0の番号が書かれた覆面を被った。
「っていうか先生いつの間に目出し帽用意してたの?」
「……いつ面倒に巻き込まれてもいいように準備しておくのが私のやり方なんだ…気にするな。」
そんな中闇銀行のエントランスでは、便利屋達が融資を受けるための審査を受けていた。
「……。」
アルがまだかまだかと貧乏ゆすりをしながら待っていると。奥からロボットの銀行審査官がやってきた。
「お待たせいたしました、お客様。」
その一言があるの琴線に触れた。
「なにが「お待たせしました」よ!本当に待ったわよ!6時間も!ここで!!」
「融資の審査に、なんで半日もかかるの!?別にうちより先に人もいなさそうだったのに!」
「私の連れは待ちくたびれて、そこのソファーで寝ちゃってるし!」
アルがそう言って指さす先には受付のソファーですやすやと眠るカヨコ、ムツキ、ハルカの姿があった。
「私どもの内々の事情でして、ご了承ください。」
「……ところで、アル様。あなたはそのような態度を取れる状況ではないと思うのですが?」
審査官はアルに対し強気にでる。
それもその筈あくまでも彼女達は融資を受ける側、立場は審査官の方が上なのは火を見るよりも明らかだった。
それに気付いてかアルもしおらしくなり座り込む。
「あ、うう……。」
「我々の助けが必要なら、辛抱強くお待ちいただくことも大事かと……。」
「あ、それとお連れの方でずが、そちらでお休みになられては困ります。」
すると審査官は指をパチンッと鳴らして警備員を呼び、指示を出す。
「セキュリティ。あの浮浪者……いえ、お客様を起こして差し上げなさい。」
ガードは審査官の言葉を聞くと強引にムツキ達を叩き起こす。
「ほら、起きた起きた!」
「ムニャ……。」
「うはっ!?なになに!?」
「……!!」
「ああっ……す、すみませんっ、居眠りしてすみません!!」
「……。(汗)」
その後、審査官はパソコンの画面を凝視し審査をするにあたって便利屋について様々な質問をアルに投げかける。
「さて、では一緒にご確認を。お名前は……陸八魔アル様。ゲヘナ学園の2年生ですね。」
「現在、便利屋68の社長、ですか……この便利屋は、ペーパーカンパニーではありませんか?書類上では、財政が破綻していますが?」
審査官はLEDの眉を顰め、書類を凝視しながらアルに疑ってかかる。
闇銀行とは言え腐っても銀行、信用がない相手に無闇に融資することなどできない。
「ちゃ、ちゃんと稼いでるわよ!まだ依頼料を回収できてないだけで……。」
それでは稼げてないのと同義ではないだろうか。
そんな事を思いつつ審査官は審問を続ける。
「それと、従業員は社長を含めて4名のみですが、室長に課長、そして平社員……肩書きの無駄遣いでは?会社ごっこでもしているのですか?」
「そ、それは……か、肩書きがあった方が仕事の依頼を……。」
「あとですね、必要以上に事務所の賃貸料が高いです。財政状況に見合った物件を見つけて頂かないと。」
「ちゃ、ちゃんとしたオフィスの方が……仕事の依頼を……。」
「……。」
畳み掛けるような指摘の連続にアルも言葉が出にくくなる。
審査官もこれはどうしたものかと難しい表情を液晶に浮かべる。
「アル様。これでは、融資は難しいですね。」
「えっ、えーっ!?」
よくよく考えれば当然だろう。
「まずは、より堅実な職に就いてみてはいかがでしょうか。日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもりますが。」
もはや闇銀行にあるまじき最もなアドバイスまでされてしまう始末だ。
「は?はああ!?」
アルは思わず立ち上がるが、審査官はそれを気にも留めずに奥へ戻る。
何よムカつく……!!もう大暴れして、銀行のお金持ち出しちゃおうかしら?
……いや、それはダメね。ここからお金を持ち出せたとしても、ブラックマーケットから抜け出すのは至難の業。あちこちにマーケットガードがいるし……。
……でも、もしかすると、実は大したことない連中かもしれない。私たち4人なら、全員叩きのめして逃げ切れそうな気も……。
……はぁ、やっぱ無理。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ……。
くそっ、何よこれ、情けない……キヴォトスいちのアウトローになるって心に決めたのに。私は……。
融資だのなんだの……こんなつまらないことばかりに悩まされて……。
私が望んでいるのはこれじゃない……何事にも恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー………。
そうなりたかったのに……。
理想と現実とのギャップが彼女の背にのしかかり、押しつぶされそうになる。
「─様、アル様!」
戻ってきた審査官が彼女に呼びかける。
「わ、わわっ!?は、はい!?……えっと、何か言った?」
「残念ながら、融資の許可は降りませんでした。お力になれず申し訳ありません。」
アルに知らされた結果はやはりと言うべきか……
「え、ええっ!?」
悲報だった。
しかしこのままでは便利屋は依頼もこなせず報酬も得ることなく正真正銘の無一文、下手をすれば退学になり本当に路頭に迷いかねなくなっていた。
だからここを頼ったというのに……現実は非情であった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
そうしてアルが審査官を引き留めようとした瞬間………
プツン……
銀行内の照明が突如として消えた。
次回、マーケットガード死す!
今回も読んでいただきありがとうございます。
もし気に入っていただければお気に入り登録など是非お願いします。
ってことで次回は多分待ちに待たれているであろうドンパチ回です。
……やっぱり日常回の方が待たれてたりするのだろうか。
そこの所気になるので良ければ感想で聞かせてください。