Fallout76 -once in a blue archive-   作:egguimen

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ドンパチです。


Make mad your self

 

 

プツン……

 

 

 

銀行内の照明が突如として消えた。

 

そしてそれは、シロコ達による銀行強盗作戦が開始を告げるものだった。

 

 

「な、何事ですか?停電!?」

「い、一体誰が!?パソコンの電源も落ちてるじゃないか!」

 

突然のトラブルに見舞われ、銀行内に動揺が走る。

しかし奴らはまだ知らない。ここから更なるパニックが巻き起こることを。

 

ダダダダダダダダッ!

ドガシャンッ!

 

暗闇の中、響く銃声と金属質な破壊音を聞いたアルは咄嗟に身を屈める。

 

「じゅ、銃声っ!?」

 

 

ダダダッ!

 

 

「うわっ!ああああっ!」

 

 

バリリリリッ

 

 

「あばばばばばっ!」

 

「なっ、何が起きて……うああっ!!」

 

銀行のセキュリティは強盗によって抵抗する間もなく破壊され、エントランスの暗闇に沈んだ…。

 

そして電力が復旧した次の瞬間、紙袋とヘルメットと覆面で顔を隠した集団が、ドドン!っと中央に立ち尽くしていた。

次の瞬間拳銃を上に向けて2発放ったあと、漆黒の覆面を被った大男が気迫ある声で凄む。

 

「銀行強盗だ、全員床に伏せて武器を捨てろッ!!」

 

男の声からにじみ出る怒気、その指示を無視すればどうなるか…想像するだけで身が震える。

その様子を見たセリカは…

 

(いや、こうして一緒に強盗してる私も私だけど……先生やけノリノリじゃない?)

 

っと若干引いていた。

 

「な、何なんだこいつら!?」

 

「ほら、いう通りにしてないと撃つよ!」

 

「言うことを聞かないと、痛い目に会いますよ☆」

 

「あ、あはは……みなさん、ケガしちゃいけないので……伏せててくださいね……。」

 

ヒフミはかぶっていた紙袋に持ち前のお人好しが滲んでいた。

 

事態は正に混沌を極めていた。

このブラックマーケットの中枢、闇銀行が…襲撃されることなどありえないのだ。

 

 

この異常を極めた状況下、便利屋も厄介事に巻き込まれるより先に息を潜める事を選んだ。

 

 

「ぎ、銀行強盗!?」

 

アルの近くにいた審査官はすぐさま

 

「非常事態発生!非常事態発生!」

 

審査官は喚くが、ターキンが詰め寄り無情な現実を突きつけた。

 

「無駄だ。銀行の外部への緊急通報システムとセキュリティシステムは我々が掌握した。」

「助けは期待するな。」

「次その型落ちスピーカーのしゃがれた音で騒ぎ立ててみろ、貴様のバラしてスクラップボックスに押し込んでやるからな!」

 

「ひ、ひいっ!」

 

審査官は思った、この機械の体に排泄器官がなくて良かったと。

 

それはそうと覆面水着団の強盗は着々と進んでいた。

 

「ほら、そこ!!伏せてってば!下手に動くとあの世行きだよ!?」

 

「みなさん、お願いだからジッとしててください……あうう……。」

 

当然と言うべきか、銀行内はパニック状態だった。しかし、これも彼らの計画のうちだった。

 

「銀行内の支配権は手に入れた、これからフェーズ2に入る。」

 

「りょーかい、それじゃリーダーのファウストさん!指示を願う!」

 

っとホシノは突然ヒフミをリーダーにしてしまった。

とんだ無茶ぶりをされたな……とターキンは彼女に同情した。

 

「えっ!?えっ!?ファウストって、わ、私ですか?リーダーですか?私が!?」

 

ノノミもそれに乗っかり始めた。

 

「リーダーです!ボスです!ちなみに私は……。」

「覆面水着団のクリスティーナだお♣︎」

 

「まだ諦めてなかったのか、それ。」

 

「うわ、何それ!いつから覆面水着団なんて名前になったの!?それにダサすぎだし!」

 

強盗の真っ最中なこともあってかセリカのツッコミは切れ味が増していた。

 

それにしても覆面水着団か…

 

「水着……持って来た方が良かったか?」

 

「絶対にやめて!」

 

「うへ、ファウストさんの言うことは絶対だよー?言うこと聞かないとこの黒ずくめの人が痛い目に合わせちゃうぞー?」

 

「そうだぞー?従わないとバラバラにしちゃうぞー?…っておい!」バッ

 

ヒフミはホシノの無茶ぶりにもうお手上げだった。

 

「あう……リーダーになっちゃいました……これじゃあ、ティーパーティーの名に泥を塗る羽目に……。」

 

「バレなきゃ問題ないさ、それに言ったろ?責任は私が取る。」

 

「そ、そうですね…か、覚悟決めます……!」

 

別にそこまでしろとは言ってない。

 

この混沌とした事態を物陰から傍観していたムツキは強盗達に既視感を覚える。

 

「あれ……アイツら…。」

 

それはカヨコも同様だった。

 

「あ……アビドス?」

 

「だよね、アビドスの子達じゃん。」

 

「……ここで何やってるんだろ?覆面までしちゃって。」

 

ハルカも咄嗟にショットガンを手に取る。

 

「ねっ、狙いは私達でしょうか!?それなら返り討ちにしちゃいましょうか!?」

 

「待って、あれ見て。」

 

カヨコが指さす先でターキンが銀行のカウンターに立ち上がり辺りを一望していた。

 

「あれもしかして先生?」

 

「流石にあの格好(消防服)で強盗には入らなかったみたいだね。」

 

「っていうかアルちゃん、すっごく目輝いてない?」

 

そしてカウンターで仁王立ちをする彼は状況をコントロールすべくこの場のすべての人間に目的を告げる。

 

「我々は銀行強盗だ。ここには明確な目的を持って侵入している。」

「何の問題もなく目的を果たすことができれば、諸君の身の安全を保障することを約束しよう。」

「しかし、抵抗することがあればどうなるか……。」

「犯罪者の命を保証するほど、この世界は甘くはない事は貴様らはみ出し者がよく知っている筈だ。」

 

彼が吐く脅迫の言葉は、どこか自虐的だった。

 

「ブルー。」

 

シロコの事だ。ここで生徒の名を口にするわけにはいかない為、その場のノリでとりあえず色で呼ぶことになった。

 

シロコはブルー、セリカはレッド、ホシノはピンク、アヤネはイエローといった所だ。

 

ノノミは既に自分のコードネームがあったようだが。

しかし…クリスティーナとはな……。

 

こんな感じで所々粗が目立つのもある種の愛嬌と言えるだろう。え、言えない?……すまない。

そろそろメンタス控えないとダメだな……。

 

「ん、今の聞こえたでしょ?さあ、大人しくこれに…。」

 

シロコはターキンの呼びかけに頷き審査官にバッグを渡す。

 

「わっわかりました!なんでも差し上げます!!」

「現金でも債権でも金塊でもいくらでも持って行ってください!」

 

「そ、そうじゃなくて…銀行の集金記録を……。」

 

審査官は保身のため半狂乱に陥りながらバッグに集金記録の他に金をどんどんつめていく。

それはもう必死の形相だった。こいつほんとにロボットか?とすら思えた。

 

「ど、どうぞ!これでもかと詰め込みました!どうか命だけは!!」

 

そしてパンパンに詰めこまれたカバンをシロコに渡した。

 

「あ、あの……うーん……。」

 

その一部始終をアルはじっと羨望と尊敬の眼差しで見つめていた。

 

(や、ヤバーイ!!この人たち何なの!?ブラックマーケットの銀行を襲うなんて!)

(しかも凄い手際の良さ!超プロフェッショナルじゃない!)

(ただ強盗とは思えないほどの統率!これじゃ特殊部隊よ!)

 

だったら加わればいいだろ!(コ〇ンドー感)

 

(ここまで5分も経ってない、まるでこの為だけに生まれたような筋金入りのアウトローだわ!)

(そうよ!これこそ正に私が憧れてきたアウトローそのものよ!)

(うわぁ……痺れるぅ!感動で涙が出ちゃいそう!)

 

陸八魔アルは胸の内で目の前の憧れの存在に歓喜し、涙すら浮かべていた。

彼女にとってその姿は正に教会に現れたイエスキリスト、メッカからアッラー、寺から仏陀、棚から牡丹餅(これは違う)だった。

 

「ブルー、例のブツは手に入れたか?」

 

「ん、ここに。」

 

それにしてもこのブルーという呼び方、妙な既視感があってむず痒くなる……。

まあ、それはそれとして――

 

「……この鞄なんか随分とたくさん詰まってないか?」

 

「気のせい。さあ、早く行こ。」

 

「わかった…では諸君。我々の目的は果たした、撤収!」

 

「りょうかーい。皆逃げるよー!」

 

「それでは皆さんアディオ~ス☆」

 

「け、ケガ人もいないみたいですし……し、失礼しました!」

 

タタタタタ……。

 

生徒達が外に出たのを確認するとターキンは振り返り、宣言する。

 

「よく聞け!ブラックマーケットはいずれこのダイハーズが手に入れる!」

「ではさらば!」

 

そう告げるとコートを靡かせ颯爽と銀行内からその姿を消した。

それを確認すると銀行員は液晶を真っ赤にしてスピーカーでぎゃんぎゃんと吠える。

 

「や、奴らを捕まえろ!道路を封鎖!マーケットガードに通報!」

「絶対に一人も逃がすな!!」

 

逃走中、アヤネが無線が入る。

 

『進路上に多数の兵力を確認マーケットガードです!気を付けてください!』

 

「了解。皆、戦闘に備えろ!」

 

「うへぇ、道路にバリケードまで設置しちゃって、こりゃ相当本気みたいだね。」

 

「ブラックマーケットの信用にも関わりますからね、向こうも躍起になってるんだと思います……。」

 

「犯罪者囲って何が信用だ……。」

 

そんな事を言っているうちに黒塗りのオートマタとヘルメット姿の少女達が迫っていた。

マーケットガード達だ。

 

「容疑者を発見!交戦する!」

 

前列にシールドを備えた重装兵を並べこちらににじり寄る。

そしてその隙間から歩兵達が銃撃する。

 

ターキン達は路上のバリケードに隠れ、銃弾を凌いだ。

 

「シールド!?…撃ち返しても無駄だな。」

「それならこっちにも考えがある。」

 

彼はDEMOLITON EXPERT(5)とGRENADIER(2)を装備するとインベントリからMk-19 自動擲弾銃(オートグレネードランチャー)を取り出し、銃身を上に向けて12発撃ち放った。更に射撃に伴いこの武器のレジェンダリー効果、『ツーショット』が発動。弾は空中で2つに分裂し、計24発がブラックマーケットの宙を舞った。

 

空高く打ち上げられた40mm榴弾は運動エネルギーを徐々に失い落下運動に切り替わる。

結果、榴弾の軌道は弧を描き、オートマタが並ぶ前線へと降り注ぐそれは正に……。

 

ヒュ―──ッ……

 

DEATH FROM ABOVE!!!(死が降るぞ)

 

 

ドッカアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

榴弾の雨は着弾と同時に閃光と爆音を轟かせ、巻き起こる爆風は破壊された残骸を四方八方にまき散らし、それが更なる破壊を誘発させる。そしてあっという間にマーケットガードのシールドを主軸とした陣形は脆くも崩れ去った。

 

「道は開けた!派手に行くぞ!」

 

(アロナ、援護を頼む。)

(ガッテンです!)

 

ターキンは10mmサブマシンガン2丁に持ち替え、パルクールでバリケードを飛び越えるとその勢いのまま歩兵達に10mm弾の嵐を浴びせた。

 

相手もこれを迎撃しようと小銃を撃ち続けるが、弾道が曲がり、銃がジャムを起こし、サイトがずれたりと様々な不測の事態に見舞われ返り討ち。戦場の主導権をあっさりと握られた。

 

「ハァッハハハハハハァ!このダイハーズは誰にも止められんぞ!」

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!!

 

からは邪悪な高笑いをしながらひたすらラン・アンド・ガンで敵をバンバン、ガンガン撃ちまくる。

 

「なんか先生いつもよりいきいきしてない?」

 

「相手がロボットになるとああなるんだね。」

 

「いつの間にかダイハーズなんて名乗っちゃってるし!」

「ちょっとかっこいいのはなんなの!?」

 

「とにかく私達も続かないと!」

 

この勢いに乗じて対策委員会も恨みをぶつけるように存分にマーケットガードを蹴散らす。

 

「次は君達の出番だ!」

 

「こっちも暴れたくてうずうずしてたの!やってやろうじゃない!」

 

『レッドちゃん、援護するね!』

 

そして後方で待機していたチンピラの部隊は二人の強襲を受けることになった。

 

ドガアアアアアアアアアアン!!!

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!

 

アヤネのカーゴボットによる絨毯爆撃で統制が乱されている間にセリカの精確かつ激しい銃撃が次々に仕留めていく。

フルオート射撃の発砲から次弾が薬室に送られるまでのごくわずかな時間で素早く標的を切り替えるその能力はもう人力V.A.T.S.だった。

 

カチッ

 

「弾切れ!」

 

『任せて!』

 

短く会話を済ませるとアヤネは二つ目のモニターを開き、ドローンで補給物資をセリカの下に投下する。

 

一つ操作するだけでも相応の技量が求められるドローンだが、これをカーゴボットと同時に運用できるほどの腕をアヤネは持っていた。

ドローンが実際に戦場を飛び回る現代で彼女の様な兵士が居たらどれほど恐ろしく心強いか想像に難くはない。

まさに縁の下の力持ちだ。

 

「さーて、おじさんも人肌脱ぎますかー。」

 

「ん、私も手伝う。」

 

場面は変わり、他の戦場ではシロコとホシノのツーマンセルが展開され、ペイントレインが如くシールドで敵を轢き飛ばし、取りこぼした相手もショットガンとアサルトライフルで丁寧に処理していく光景があった。

 

 

ドゴォォッ!

 

 

ダダダダダダダダダダッ!!

 

ズドドドドドドォン!!

 

しかしそれも長くは続かない。

 

正面に2体の盾持ちが現れ更に奥の歩道橋からマーケットガード4体がこちらをロケットランチャーで狙っていた。

だがしかし…

 

「ん、そうは問屋が卸さない。」

 

ドッカアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

シロコのドローンで歩道橋を敵諸共爆破した。

 

「よっ!」バッ

 

ゴシャアァッ! 

 

それとほぼ同時か、ホシノは目の前の自身の倍近くある相手2人にに対して片方に自身の盾を踏み台にかかと落としをお見舞いし、

 

ㇳッ

 

「隙あり~!」

 

ガシッ…

 

それを更に踏み台にもう片方に飛び移ると…

 

ズドドドドォン!!!

 

そのまま頭にショットガンを叩きこんで仕留めた。

 

二人の姿は正に獲物を狩る狼とハヤブサだった。

 

 

その一方で、ガードと必死の逃走劇を繰り広げる者がいた。

 

「あいつがリーダーだ!仕留めろー!」

 

「はわわわ!?こ、来ないでくださいぃ~!!」バッ

 

ヒフミは咄嗟にペロロ様のデコイを投げる。

 

ボンッ!

 

「うわッなんだこのキモい鳥!?」

 

ピキッ

 

このつい漏れ出てしまった言葉がノノミの琴線に触れた。

 

「モモフレンズを悪く言う人はお仕置きです!」

 

バババババババババババババババババババッ!!

 

次の瞬間、デコイに気を取られたマーケットガードは機銃掃射という名のお仕置きを受けることになった。

 

結果としてヒフミとノノミも意外なコンビネーションを発揮していた。

 

 

この数々の戦果…最早、覆面水着団は向かうところ敵なしだった。

 

 

 

「ドラァ!」ドカッ!

 

バッタァァン!

 

「まだまだ暴れたりねぇぞ雑魚共がァ――――ッ!」

 

ダダダダダダダダッ!

 

「落ちろカトンボ!」ピンッ

 

バリリリリリリッ!!

 

やってきた兵員輸送車の脇を蹴り倒して中にトンプソン・サブマシンガンをぶち込み、背後からドローンが来ればパルス・グレネードを投げて空中で爆発させ墜落させる。

 

「ク、クソォ!」

 

ヤケになった重装のオートマタが殴り掛かるが、

 

「しゃらくせぇんだよデカブツがぁ!!」バッ

 

ドゴォッ!!

 

その鉄拳を身を屈めて躱し、ガラ空きになった顎めがけて渾身の右アッパーをぶち込む。

 

「ぐぇっ!?」

 

ガッシャアアアアアアアアアアアアン!!

 

一撃でノックアウト、1ラウンドK.O.勝ちだった。

 

しかしそれだけでは終わらせず今度は倒れた所に腕十字固めをかける。

 

メギギギギ…!!

 

人なら既に関節が外れているだろう、実際このオートマタも彼の馬鹿力によって接合部が既に外れている。

 

「この腕は頂いてくぞ…フンッ!」

 

バギャァ!!

 

 

 

 

「―――ッガアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」

 

 

 

 

 

鈍い破壊音と共にデカブツの腕は引きちぎられた。

剝き出しになり火花を散らす配線は血飛沫をあげる血管のようで、絶叫が周囲に伝播する。

その惨たらしい有様は確実に敵の戦意を削いでいた。

 

極めつけには千切った腕にMARVグレネードを掴ませ遠心力をかけてバリケードで待ち構えていた敵達に投げ込んだ。

 

ドッカアアアアアアアン!!!

 

その様子を暗い部屋でモニター越しに見つめる者達がいた。

 

 

「まるで悪魔だ……。」

 

『報告!ブラックマーケットの包囲網、次々に突破されています!』

 

「何ィ!?」

 

「我々の主戦力をどんどん制圧しています!」

 

「早く増援を送るんだ!」

 

「待ってください指令!これ以上戦力を投入すれば今後の治安維持に関わります!」

 

「だったら他にどうしろと!黙ってこのまま奴らが逃げるのを眺めていろと言うのか!?」

 

「それは…。」

 

「ぐぬぬぬ……!」

「…………やむをえん…アレを使うしかない!」

 

「大至急ゴリアテを作戦エリアに投入しろ!」

 

「正気ですか!アレはまだテストも済んでない試験機ですよ!?」

 

「もう他に手はない!やれ!」

 

マーケットガードにも信用がある。その信用を守るためにも、何としてでも奴らは捕まえなけらばならなかった。

 

『な、何か巨大な兵力が接近中!!』

 

無線からアヤネの動揺する声が聞こえる。

 

「ああ、ここからでも見える……でかいな。」

 

「なななな何アレェ!?」

 

「おっきいですねー……。」

 

対策委員会の前に現れたのは、二足歩行兵器……ゴリアテ。

大口径の多銃身機関砲二門と巨大なレーザー砲を備えた歩く重戦車…。

その姿は巨人の兵士を名を冠するに相応しかった。

 

しかし幸運なことに、この兵器はまだ試作機、運用試験も実施しておらず完全ぶっつけ本番での実践投入だった。

戦場を経験したことがない相手など、奴からすれば格好の獲物に過ぎない。

 

「わわわわっど、どうしましょう!?」

 

「ん、やるしかない!」

 

「うへぇ、これはまた厄介なのが来ちゃったなー……。」

 

「散開しろ!一網打尽にされるぞ!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!

 

皆が一斉に散り散りに駆け出した直後、直径20mm以上は確実と思われる大口径の機関砲による一掃射撃が始まった。

その弾幕は周囲の物体をすべて破壊つくしてしまう程強力だった。装甲車を遮蔽物にしていても長くは持たないだろう。

生徒の身が危ない。

 

早期の決着が望ましい。

 

「アロナ、まだいけるか?」

 

『す、すみません……先生…。』ハァ…

『少し、つ、疲れてしまい……ました…………。』ハァ…ハァ……

 

「アロナ…!」

「……わかった…休んでてくれ。…ありがとう。」

 

彼はこれまでの助けに感謝し、そっと電源を落とした。

 

どうやら戦闘でかなり無理をしていたようだ……。いや、俺がそうさせてしまった…。

よく考えれば、あんな奇跡が立て続けに連発するような現象を何も消耗することなく発生させられるわけがないのだ。

今回は彼女に頼り過ぎてしまった。………申し訳ない。

 

グッ

 

己の不甲斐なさで、手に力がこもる。

 

パワーアーマーも使えない……。

アロナに力を使わせるのも彼女の身が危ない……。

 

切れるカードは限られている…

 

 

 

……だが安心してほしい、彼はVault居住者だ。

 

 

 

 

 

「使うしかないか。」

 

「?」

 

何のことが理解できずきょとん顔の生徒達の頭上に疑問符が浮かぶ。

そんな事を彼は気にも留めず懐から二本の中身が異なる注射器を取り出した。

 

一本はMed-X

強力な鎮痛剤で鎮痛作用と副次の覚醒作用で痛覚と痛みに対する恐怖を鈍らせる。

 

そして本命のもう一本……サイコバフ。

サイコとバファウトの混合薬。

バファウトはSTRとENDにボーナスを得る効果を持った所謂ステロイド剤。

つまり筋肉強制製造機だ。所詮は偽りの筋肉だが例え偽物でも戦場では役には立つ。

 

サイコは以前にも紹介した軍が開発した戦闘用薬物で、戦闘中の死に対する恐怖や不安を消し去り、より敵に確実かつ致命的なダメージを与える残虐な攻撃を何の罪悪感もなく行えるようになる。

 

その二つの薬物を合成し、更に強力にした薬物こそがサイコバフだ。

 

これは使用者を狂暴なキル・マシーンに変貌させてしまう危険極まりない薬物だ。

よってその効果の反動も凄まじい物になることはもはや言うまでもないだろう。正気を保つには使用者の相当な根気が求められる。

 

「フンッ!」プスッ

 

彼は意を決して首に注射器を打ち込む。

 

ドクン…!ドクン…!

 

急激な心拍の増加と体温上昇に胸を焼かれるような激しい痛みを覚える。

 

薬の効果が表れ始めたのだ。

手袋とコートの間から僅かに見える生の腕からは血管どころか筋線維まで浮かび上がり、サングラスの下から覗かせる目は吹き出しそうな勢いで血走っている。

 

「ぐぅ……ッ!」

 

「ううぅ……うぉおあぁ……!!」

 

「ぐぎぎぁぁ……あああぁ……ッ!」

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

解き放たれた怪物の悍ましい咆哮は敵味方問わず周囲を震え上がらせた。

ゴリアテのパイロットもその禍々しい異様な光景に操縦桿を握る手が震えている。

 

「ひぃっ!」

 

"ソレ"と戦わされると知ったパイロットは自分の頸に死神に鎌の刃先を当てられたような感覚に動揺する。

 

そして狼狽する敵する姿を好機と見たターキンは手斧(ハンドアックス)を取り出し、地面を蹴り土煙を巻き上げながら激走。

 

「うわあああああああ!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!

 

ゴリアテは恐怖で照準もままならぬまま機関砲を乱射する。

 

しかし狙ってすらいない弾丸が当たるわけがない。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという言葉があるが例外が存在する…彼だ。

もはやアロナの防衛システムがなくとも、最早被弾の確率は0%に限りなく近いものとなっていた。

 

ダッ!―――――

 

ゴリアテの攻撃を抜けるとターキンは手斧を片手に素早い足運びで右へ急旋回。

 

ガッシャアアン!!

 

「ぐぇえ!」

 

ゴシャアァ!!

 

「がはぁ!?」

 

グシャアア!!

 

「うんぬ!」

 

脇の有象無象を蹴散らしながら背後を取る。

 

「貰ったあああああッ!!」

 

バッ!!

 

次の瞬間飛び上がったかと思えば、手斧を振り上げ、エネルギーを供給しているであろう配管にしがみついた。

そこからはもう凄まじいものだった。

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!!

 

振り上げ、叩き、そしてまた振り上げては叩く……。

 

「うわぁっ!は、離れろおおおおお!!」

 

ドガッ!バキッ!メキッ!ドゴォッ!

 

「カハァッ!」ドパッ

 

パイロットは必死になり期待を揺らし、振り落とそうするがターキンは供給管が千切れるその瞬間までずっと振り上げては叩くその動作を、力を一切緩めることなく繰り返す。

揺られた衝撃で体をゴリアテの装甲に激しく打ち付けられ体が血を吐こうと、漏れ出た電気で体を焼かれようと、一心不乱に斧を振るった。

 

 

「ぜい、どに……手は…だざぜないいいいいいい!!!!!!」

 

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!!!

 

 

明らかに正気の人間がとる行動ではない……。

 

その場にいた全ての人々が彼に恐怖した。

シロコ達の表情は十人十色であったが、その誰もに「怖い」と言う感情が張り付いていた。

 

「これでトドメだあああああああああああああああ!!!」

 

叫びながらターキンは最後の一撃を振り放つ

 

ザンッ!

 

ゴリアテのエネルギー供給管は大動脈を切り裂かれた人間の様に、そっと事切れた。

機能停止…抵抗も虚しく、その巨躯は地に伏せた。

 

「さあて……まだ俺とやるか?」プスプスッ

 

黒煙を体から出しながらマーケットガードに問いかける。

 

「俺はまだやれるぜ……?地獄を見せてやる。」

 

その姿は悪魔、完全に悪魔だった。

 

【これ以上戦っても負けるのは間違いなく我々だ。】

 

マーケット側の全員がそう思い、撤退を決意…そこから逃げた。

 

「よし。ガードも片付いたし、さっさとここからトンズラしちまおう。」

 

「「「う、うん」」」

 

ターキンもといダイハーズは呆気にとられる生徒達を連れ、鉄と硝煙が焦げた匂いを漂わせるブラックマーケットを後にした。

 

「ふう……。」

 

セリカ達は覆面を外して一息つく。

 

「もうこれ外していいよね?息苦しいんだけど。」

 

「そうだねーあれだけ派手にやったら流石にもう……。」

 

「まさかあのマーケットガードの包囲網を突破してしまうとは…。」

 

「っていうか先生なんか焦げ臭くない?」

 

「配管切断しようとしたら漏電して少し感電しただけだ、大丈夫。」

 

「それ大丈夫じゃないよね!?」

 

「痛くないの?」

 

「鎮痛剤を打ったから暫くは…。」

 

「あれはいくらなんでも捨て身過ぎですよ?」

 

「治るとわかってるとつい…。」

 

「それだけじゃない、さっきの先生、急に叫びだしたりしてまるで別人みたいだった。」

「一体自分の体に何したの?」

 

「……薬を打った。強力な薬を…。」

 

「それって薬物を使ったってこと?」

 

「そうだな、危険な薬物だ。生徒にはまず打たせないような…な。」

 

「でも自分には使うんだ?」

 

ホシノの鋭い一言が一つ一つ彼に突き刺さる。

 

「……生徒を守る義務がある以上、自身が怪我することは簡単に避けられることじゃない。だが、それも覚悟の上だ。」

「心配しなくとも薬の1本や2本じゃ死にはしないさ。」

 

「それはそうだろうけど、でも……」

 

「依存症か?大丈夫、カードがある。」

「ほら。」スッ

 

彼が見せたPERKカードにはこう記載されている。

 

ENDURANCE

 

PERK:CHEM RESISTANT(2)

 

薬物中毒に対し完全な免疫を得る。

 

「うへ、こんなのなのまであるんだ。」

 

「な?じゃあ私の話はこれでおしまい!さ、鞄を確認しよう。」

 

「うへ?……あっ、そいえば、そうだったね…。」

「……。」

 

彼は何とか説得し話題を切り替え、気まずい場を退けた。

 

「そういえばシロコ先輩は取らないの?その覆面、邪魔じゃない?」

 

セリカの問いにシロコはブンブンと首を振る。余程気に入ったらしい。

 

「うへ、天職感じちゃったといか、もはや魂の一部みたいになっちゃって脱ぎたくないのかな。」

 

「先輩はアビドスに来て正解だわ…もし他校だったら何をしでかしてたか……。」

 

「そ、そうかな……。」

 

「いい友達に恵まれてたわけだな、よかったじゃないか。」

 

「……うん。」

 

「わぁ☆BFFですね!」*1

 

余談だが、この後アヤネも覆面を被ったままだったことに気づいて慌てて脱いだ。

こうして無事に対策委員会及び阿慈谷ヒフミは無事にブラックマーケットを脱出した。

 

『ここまでくればもう安全です。皆さんお疲れ様でした。』

 

「やったー!大成功!」

 

セリカは大はやしゃぎだった。

 

「まさか、ブラックマーケットの闇銀行を襲ってしまうとは……ふう。」

 

「ヒフミもありがとう。巻き込んでしまったのは申し訳なかったが……君のブラックマーケットの知識が役に立った。この礼は必ず。」

 

「いえいえそんな、私も不良達から助けてもらった訳ですし……お互いさまという事で。」

 

「それよりもシロコちゃん、ちゃんと集金記録は貰ったよね?」

 

「うん、このバッグの中に……。」

 

「なんかそのバッグ、パンパンになってないか?」

 

ジジジジジ……

 

バッグのジッパーをおろすと……

 

「WOW!」

 

中にあったのは大量の紙幣だった。

 

「暫く尻拭きには困らなそうだな。」

 

「うっそでしょシロコ先輩現金盗んじゃったの!?」

 

「いや書類はちゃんとある、お金は銀行員が勘違いして勝手に……。」

 

「書類抜きでこの重さ……紙幣一枚を約1グラムとして……。」

「ざっと数えても一億以上だな。」

 

「うへーほんとに5分で一億稼いじゃった。」

 

皆がその状況に呆然としていた。一人を除いて。

 

「やったー!何ぼーっとしてるの!早く運ぶわよ!」

 

「………。」

 

『ちょ、ちょっと待ってください。そのお金何に使うつもりですか!?』

 

「アヤネちゃん、なんで?借金を返さなくちゃ!」

 

『そんな事したら本当に犯罪だよ、セリカちゃん!』

 

「は、犯罪だから何よ!元々は私達が汗水たらして稼いだお金なんだよ!それが闇銀行に流れてったんだよ!」

 

「それに、放っておいたら犯罪者の武器や兵器に変わってたかもしれない!悪人のお金を盗んで何が悪いの!?」

 

「私もセリカちゃんに賛成です!犯罪者の資金ですし、私達が正しく使った方がいいと思います。」

 

暫くして、ターキンが口を開く。

 

「正しく使うとは……果たしてどう使う事だろう。」

 

「この金で借金を返すのか?君達の借金はもとから犯罪者の資金にされていた。」

「これも借金に使えば、またそこに帰っていくだけじゃないか。」

 

「そ、それは…。」

 

「それにもっと重大なことがある……が、これはホシノに言ってもらった方がいいな。」

「頼む。」

 

「ありがと先生。」

「所で……シロコちゃんはさ、このお金をどうすればいいと思う?」

 

シロコの答えは端から決まっていた。

 

「自分の意見なんて言うまでもない、ホシノ先輩が反対するだろうから。」

 

「うん、シロコちゃんもわかってくれてるみたいでよかった。」

「…それでね、今私に必要なのは書類だけ。お金じゃない。」

「今回は悪人の資金だからいいとして、次はどうする?その次は?」

 

「……。」

 

セリカは返す言葉が見つからなかった。

 

「こんな方法に慣れちゃうと……ゆくゆくは、きっと同じことを平気でするようになるよ。」

 

「「……。」」

 

シロコはターキンと黙って彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「そしたら、この先またピンチになった時……「仕方ないよね」とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う。」

「うへ~、おじさんとしてはかわいい後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー。」

「そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ。」

「こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってる燦然と輝くゴールドカードに頼ってたはずー。」

 

「ああ、そういえば持ってるんだったな。」

 

「はい……私もそう提案しましたが、ホシノ先輩が反対されて……。」

 

いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済しなきゃ、アビドスはアビドスじゃなくなってしまう…。

彼女達はそう考えていた。

 

「うへ、そういう事。」

 

「だから、このお金は置いてくよ。頂くのは必要な書類だけ、これ委員長の命令だよー。」

 

「…あーもう!勿体ない!もどかしい!意味わかんない!こんな大金を捨てる!?皆変な所で真面目なんだから!」

 

とかなんとか言いつつもセリカも委員長の命令には従った。

 

「ん、委員長としての命令なら。」

 

シロコは強盗ができただけで満足したようだ。それはそれでどうかと思うが。

 

「皆さんの事情はよく知りませんが…このお金を持ってたら他のトラブルに巻き込まれるかもしれませんし、その方がいいかもしれませんね。」

「災いの種…みたいなものでしょうから。」

 

「という訳で、この鞄は私が責任を持って処理しておこう。」

 

「ほい、頼んだよー。」

 

鞄を抱えながら思う。

 

なんと殊勝な心掛けだろうか…。普通、人間とは追い詰められた時ほど…どこまでも貪欲で、本来もつ邪悪さが露見するもの…。理性という善が意味をなさなくなる。

だがこの子達はどうだろう、仲間にどこまでも誠実で、純粋で………ガラス細工のように透き通っていて、それゆえに日の光が直に触れてくるようだ。

 

それは黄金よりも眩しかった…。

 

やはり子供というのは、希望の光を持っている。それは黄金よりも宝石よりも眩くて、何よりも尊く。

価値に変えられない。

 

窮地の中で、本当に大切な物を見据えている…。大人でもそれができる者は極めて少ない。

それができる君達の先生でいることができて俺はとても嬉しいよ…。

 

そんな思いも胸に抱える中、遠くから人の気配をPERで察知。直後にアヤネから連絡がくる。

 

『「何者かがこちらに接近している!」ます!』

 

見事にハモった。

 

「新手の追手?」

 

『いえ、どうやらあの時の便利屋のようです。敵意はないみたいですが…。』

『なんであんなに目がキラキラしてるんでしょう?』

 

「とりあえず顔を隠しておいた方が良さそうだな。」

 

そして全員覆面を被った頃、便利屋達の人影がはっきりし始め、嬉々とした様子で声をかけられる。

 

「はあ、ふう……待って!」

 

強盗団を引き留めるアルの息は既にかなりあがっていた。

が、そんなのお構いなしにシロコが睨みつける。

 

「あ、おぉ落ち着いて!…私は敵じゃないから!」

 

セリカもなぜ便利屋がここにいるのか…と疑い眉を顰める。

 

「いいだろう。話くらいは聞いてやるから…とりあえず息を整えろ。」

 

「わ、わかったわ……ふぅ…。」

 

「落ち着いたか?」

 

「ええ、おかげさまで…ありがとう。」

 

「それで、何の用だ?」

 

「あ、あの…大した事ではないのだけれど…。」

 

「あの銀行の襲撃……とっても凄かった!ブラックマーケットの闇銀行を5分も経たずに攻略して見事に撤収!マーケットガードの包囲網も物ともせずにあっさりと返り討ちにして振り切るなんて…今までにないくらいとんでもないアウトローっぷりだった!」

 

「……!?」

 

「特に黒づくめのあなた!外から来たんでしょうけど、ヘイローも無いのにガードの攻撃に臆することもなく戦場を駆け抜ける姿!勇敢で!大胆で!何よりも自由だったわ!」

「真のアウトローは死すら恐れないってことを感じさせられたわ!」

 

良く回る舌から出てくる称賛の数々にシロコ達は困惑する。

 

「正直、凄く衝撃的だったというか…このご時世にあんなことができるなんて……感動的というか…。」

 

アルは自分の気持ちを伝えるべく語彙を模索しながら言葉を紡ぎ続ける。

 

「わ、私も頑張るわ!法律や規則になんか縛られない、本当の意味で自由な魂!そんなアウトローになりたいから!」

 

アルは自分の言いたいことを話し終えると決意の籠った満足げな表情を浮かべた。

しかし彼女達からしたら今日が初犯の銀行強盗の直後でこんな事を言われてもしょうがなかった。

 

だがターキンはそれにとても感心を抱いていた。

 

世紀末、法が存在しないために無法が常態化した世界。そんな世界だからアウトローの知り合いなんてのもそこにはよくいた。

皆最期はあっけなかったが、最期まで何にも縛られず自由だった。

だから、彼は彼女のその志に共感した。

 

「……自由へ求め、自ら苦難の道を選ぶその心意気…。」

「結構!実に結構だ!気に入った!」

「若きアウトローよ!私は君の行く末を楽しみにしている!」

 

「……ッ!!」パァァァァ

 

ターキン……いや稀代のアウトロー、ダイハーズはそんな陸八魔アルにエールをサムズアップと共に送った。それを受け取った彼女からかつてないほどの明るい笑みがあふれる。

 

そんなリーダーを見たムツキ達も後ろで微笑む。

 

「そ、そうだ!良かったらあなた達の名前を教えて!」

 

「名前……?」

 

突然のリクエストにシロコも困った様子を見せる。

 

「そう!チーム名とか、組織の呼び名とか……今日のあなた達の雄姿を心に深く刻んでおきたいの…!」

 

ホシノはアルの盛大な勘違いに苦笑するが、ノノミもアルのそのアウトローへのひたむきな志に胸打たれ答える。

 

「……はいっ!おっしゃることは、よーくわかりました!」

「私達は人呼んで覆面水着団!」キリッ

 

「覆面水着団…!やっぱりカッコイイ!超クール!」

 

「うヘ~、本来はスクール水着に覆面が正装なんだけど、ちょっと緊急でねー。今日は覆面だけなんだー。」

 

ホシノにより妙な設定まで付け加えられた。

 

「普段はアイドルとして活動してて、夜になると怪盗に変身するんです!そして私はクリスティーナだお♧」

 

ノノミが楽しそうにポーズを決める。

 

「『だお♧』…!?きゃ、キャラも立ってる…!さ、最高…!」

 

「うへ、目には目を、歯には歯を、無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を征く。これが私らのモットーだよ!」

 

「な、なんです…ってぇ!?」

「そんなカッコいいモットーまで…!」

 

「それじゃあ、そこの黒づくめのあなたは!?」

 

「よくぞ聞いてくれた!駆け出しの便利屋よ!」

 

アルはヒーローショーを見物する子供のようなキラキラとした眼差しをターキンへと向けた。

その期待に応えるように吹き荒れた突風がコートをはためかせる。

そしてフェドーラに手を添えて胸を張って名乗る。

 

 

「私は地獄から来た男!不死身(アンデッド)のダイハーズだ!!」 ドドン!

 

 

あながち間違いではない。でもなんだろうこの東〇版スパ〇ダーマン感は。

 

「覆面水着団とは縁あって組ませてもらっている。」

「私にも彼女達の様に大事にしている言葉が昔からあってな……。」

 

 

"戦争は(war)決して(never)変わらない。(changes.)"

 

 

「これが私の道を指示してくれている。」

 

「ウォー・ネバー・チェンジーズ……その言葉…絶対に忘れないわ!」

 

この微笑ましく思うべきか少し悩む光景を……

 

ムツキは「アルちゃんってばすごくはしゃいじゃってるー!あはは!」と

カヨコは「はぁ、全く社長ってば……。」と

ハルカは「アル様が幸せならOKです。」と

 

そんな感じで眺めていた。

 

 

「アル、君と話し合うことができて良かった。」

「だが我々も急いでるので、この辺で失礼させてもらおう。」

 

「それでは、アディオ~ス☆」

 

そうして覆面水着団とダイハーズは颯爽とビル街の彼方へと姿を消した。

それを見届けたアルは……。

 

「よし、あなた達の言葉……魂に刻むわ!私も頑張る!」

 

一連の出来事を見たカヨコは真実を伝えるべきか悩んだが、ムツキが面白がって暫く内緒にされた。

 

「あの、あ、アル様……この鞄…。」

 

ハルカは彼女達が置いていった一億の現金が詰められた鞄を指さした。

更にそこには走り書きされたメモが残されていた。

 

 

君達の活躍に期待して、ささやかな投資をさせてほしい。

 

-by DIEHARDS-

 

「こ、これって、私達の為に置いていったって事よね?」

 

「ほんとだ、メモまである。」

 

「それにこの鞄結構重いよ?中に何が入ってるんだろ。」

 

好奇心に駆られ中を開けると、大量の札束が便利屋達の目に映った。

それに思わず素っ頓狂な驚声を上げる。

 

「ひょええ!?」

 

「こ、これって!!」

 

「……もしかして、これでもう食事を抜かなくても…。」

 

一方その頃学校まで戻ったノノミ達は……

 

「……あれ?現金の鞄は?」

 

「いらないだろうし、置いていったぞ。」

 

「えーっ!」

 

「念のために便利屋達が拾うようにメモを残しておいた。」グッ  

 

「まあいいんじゃない?元から捨てるつもりだったんだしさ。」

「それに拾ってくれる子がいるなら万々歳じゃん?気にしない気にしない。」

 

「うう……もったいない…。全くもう、皆お人よしなんだから!」

 

「ん、それにしても……先生、迫真の演技だったね。」

 

「もしかして演劇の経験があったり?」

 

「あ、アレはその……昔、ロールプレイングに凝ってた時期があって…。」

 

この後、結局便利屋には正体がバレたしアルは凄くショックを受けた。

*1
BFF:ベスト・フレンド・フォーエバーの略




対策委員会編第一章もそろそろ後半………のはず。

正直ダイハーズとか厨二過ぎて恥ずかしいとか思いながら書いてました。
でもやっぱりカッコいいと思ったのでそのままにしました。

元ネタは勿論76のレイダーグループの一つ『ダイハーズ』です。
リーダーが女性なんですよ、いいよね(語彙力の突然死)

今回も読んでいただきありがとうございます。
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