Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
前回のあらすじ
風紀委員会が便利屋の捕獲を名目に突如アビドスへ襲来。
ターキン率いる対策委員会達はロボット達と決死の抵抗作戦に出た。
しかし、風紀委員会のナンバー2「天雨アコ」の狙いは、便利屋ではなくターキンだった。
衝撃の事実の前に尚も抵抗を試みるアビドスと便利屋だったが、突如としてゲヘナ風紀委員長
「空崎ヒナ」の登場、更に本来キヴォトスには存在しない航空機「ベルチバード」が現れ事態は更なる展開を迎えていた……!❙
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「馬鹿なそんな……ありえない…………!!」
「何でこの空に…ベルチバードがッ!!!!」
ベルチバード
それは彼の故郷、アメリカ合衆国の軍が先行生産していたVTOL機。
戦前に製造されたモデルは「VB-01」と呼ばれる輸送機であり、アンカレッジの戦線の維持に大きく貢献した。
その機体は最終戦争後に
そんなVB-01はアパラチアでも航空無人機「ベルチボット」として雄大な山脈が広がる大空を駆けていた。
だからこそ異常だった。理解できなかった。
そのベルチバードが今、アビドスの空を飛んでいるこの状況を。
『アコ、今どこ?』
『わ、私ですか?私は……そ、その……えっと……げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです!風紀委員会のメンバーとパトロールを……。<嘘>』
アコは自分の行いを隠ぺいするため何とか誤魔化そうとしている。
「思いっきり嘘じゃん!」
「やっぱり、行政官の独断行動だったみたいですね……。」
『そ、それより委員長はどうしてこんな時間に……出張中だったのでは?』
『さっき帰ってきた。』
『そ、そうでしたか……!その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして……後ほどまたご連絡いたします!い、今はちょっと立て込んでいまして……!』
『他の学園の自治区で、委員会メンバーを独断で運用したことの処理にか?』ザザッ…
『げっ!?』
更に通信が増えた、しかし明らかにおかしい。
その声は…低い男の声だった。到底この世界の生徒の声ではない。
男が話した後、上空を飛行していたベルチバードが高度を下げながらこちらに接近した。
そうしてゆっくりと着地し、厚さ50mmはあろうかという重厚な扉が開いた。
そこからは姿を顕したのはヒナ本人と……
「E」のシンボルが刻まれた軍服姿の男だった。
彼の身に着けるガスマスクが軍服姿と相まって異様な威圧感を周囲に漂わせていた。
『えっ…。』
「っ!?」
「え、あれっ!?」
「!?」
便利屋も、対策委員会も、風紀委員会すらも驚いていた。
だが一番驚いて、いや……驚愕していたのは
「―――――――――――ッ!?!?!?!?!?」
ターキンだった。
「!!」
『……え、』
『えええええええっ!?』
「い、い、い、委員長!?」
「そ、そそ、それに【ペスコフ先生】!?い、一体いつから!?」
「……嘘…だろ…………?」
薬の幻覚作用か、はたまたついに脳が壊れたか、そんな理由付けでもしないとターキンは自分が身を置いている状況の整合性が取れないと思い、混乱していた。
だっておかしいじゃないか…!!
こんなところに…………………
蘇る己の死に際の記憶―――
神よ、どうして……。
…嗚呼、すまない部下よ……それにペスコフ………グーンズ…オズワルド……エドワード………。
もっと一緒にいたかったのに……。俺は、先に…逝くようだ…………。
……故郷を…た………の………………む………。
言葉にはできなかった。だが、俺はそう願っていた。
神に届きはしなかったようだが……。
「アコ。」
「これは一体、どういう状況だ……!」
ペスコフと呼ばれた男は、声に怒気を滲ませアコを問い詰める。
この状況で、アヤネだけが冷静に相手を分析していた。
『ゲヘナの風紀委員会…空崎ヒナ。』
『シャーレの顧問の一人…ペスコフ・"イーグルマン"・ダーランド先生。』
『外見情報も一致します、間違いなく本人のようです。』
軍服に印された星に囲まれた『E』のシンボル、ペスコフという名。
それが意味することは一つ。彼がターキンの親友……
『エンクレイヴの将軍 ペスコフ・ダーランド』だということだ。
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2103年1月25日
ペスコフはホワイト・スプリングの裏で奇妙な扉を発見した。
そこは、アメリカの正当な後継者と語る秘密組織
『エンクレイヴ』がいたバンカーだった。
彼がそこに来る頃にはそのVault-tec製のバンカー内に人間はいなかった。
そこにはバンカーを維持するために作業に奔走するロボット達と、それらを統括するAI[MODUS]がいた。
その遭遇をきっかけに、彼は後にミサイルサイロを発見、確保に至り。
焦土作戦の司令官になった。
焦土作戦の後、彼はMODUSのサポートを受けながら25年もの間、戦争が生み出した地獄を生き延びた人々を支援するプロジェクトを立ち上げた。
曰く「アメリカの後継者であれば、かの民主主義国家の意思を継ぐのであれば…我らはその主権たる国民に奉仕すべし。過去の過ちの清算と共に。」と…。
結果、アパラチア支部は今後数百年経ってもでもありえないであろう
善良なエンクレイヴとして認識されるようになった。
今、アパラチアの市民が彼について聞かれたらこう答えるだろう。
真の
これが、ペスコフ将軍と呼ばれた男の過去だ。
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「………――――――――ッ!!!!」
ターキンは力一杯に目を閉じ自分の歯を砕きかねないほど噛み締め、首を左右に振る。
どうしてもこれを現実と受け止められなかった。
男は彼に気づいてはいない。彼は今、目の前の生徒を指導していた。
『そ、その……これは、素行の悪い生徒達を捕まえようと……。』
「便利屋68のこと?どこにいるの?今はシャーレとアビドスと、対峙してるように見えるけど?」
『え、便利屋ならそこに……。』
アコは咄嗟に便利屋達を最後に見た場所に視線を向けるが、そこには何もなく忽然としていた。
もう尻尾を巻いて逃げていた。
『い、いつの間に逃げたのですか!?さ、さっきまでそこにいたはず……!』
「そんなことはいい。そもそもお前が狙っていたのはここに駐在しているシャーレ顧問の身柄の確保だろ。」
「いかにもお前の考えそうな事だ。全く……。」
『………ッ!!』
『と、とにかく説明を……』
「いや結構、もう粗方把握した。」
「ええ、察するにゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除。そういう政治的な活動の一環ってところね。」
「だろうな。」
『……。』
「いいかアコ、お前は風紀委員会だ。」
「お前たちの仕事は学園内の風紀を正す事。政治絡みの案件は不安だろうが万魔殿の生徒達に任せておくものだ。」
「それに一言いえば、私が代わりに出向いてやれただろう。同じシャーレ同士なら円滑に交渉もできたはずだ。」
「余計な問題を増やすな。ただでさえ問題だらけなんだ。」
『は、はい……。すみません先生……。』
「詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎してなさい、アコ。」
「反省文のテンプレートの場所はもう知っているな?」
『……はい。』ピッ
アコは落ち込んだ表情を最後に通話を終了した。
「………。」
「はぁ……全くアコのやつめ……、まだ顔も合わせていない同僚に迷惑をかけるとは……本当に…あの子なりの気遣いだと言うのは理解できるんだがな…空回りは何とかならんものか。」
「「「……。」」」
緊迫した状況で、生徒達は黙って互いを見つめていた。
「じゃあ、あらためてやろうか。」
先に沈黙を破ったのはシロコだった。同時に決戦の火蓋も破ろうとしていたが。
慌ててアヤネが止めに入る。
『ま、待ってください!ゲヘナの風紀委員長と言ったら、キヴォトスでも匹敵する人物を見つけるのが難しいほどの、強者の中の強者ですよ!』
「まあ待ってくれ。狼の子…シロコと言ったか。こちらに戦う意思はない。」
「ここは冷静に、話会おう。いいな?」
『ほら、そうやってすぐ戦おうとするから、逆に相手に諭されちゃってるじゃないですか。』
先まで臨戦態勢、喧嘩上等だったシロコもそう言われると流石にバツが悪くなった。
「……ご、ごめん。」
「確か例の先生もここにいるんだろ?どこに……」
男は視線を巡らせるとある一点に止まり、言葉を失った。
「………………ッ!?!?!?」
「………先生?」
「はっ!!」
ヒナの呼びかける声で我に返った。
「……ヒナ、少しだけ時間をくれ。頼む。」
「え、何を―」
ザッ、ザッ、
「ちょ、どこに!」
生徒達の疑問を余所に男は歩みを進める。
自分を見つめ呆然と立ち尽くす、彼の下へ。
「……………!!」
ターキンは男が近づいてようやくはっとした。
男は前置きもなく問う。
「……名前は?」
「……ターキン、ターキン・マクスウェル・ゴッドフレイ。」
「出身は?」
「ウェストバージニア州…Vault76…。」
……やっぱり、お前なのか?
男は質問を繰り返すと、ゆっくりと現実を確かめる。
「……………ヘルメットを、外してくれるか。」
「………。」コクッ
ターキンは頷き、震える手でヘルメットにそっと手をかける。
そうして現れる。素顔。
焼かれ…斬られ…えぐられ…撃たれ…折られ…
そうした戦闘の積み重ねからできた。数多の傷跡に塗れた顔。
痛ましくも、そこには貫かれた意思が刻まれている。
もうはや疑う余地もなく、彼だと確信した。
「……。」スッ
男も同様に帽子を脱ぎ、マスクをゆっくりと外す。
現れたのは、右目に大きな傷跡を抱えた顔。
眼帯はない、目の前の友の処置のおかげで失明を免れたのだ。
頭には茶髪の整えられたポンパドール、彼と同じく眼に青い瞳を持った男だ。
ターキンもまた、確信に迫りつつある。
そして尋ねた。
「名前は…。」
「ペスコフ・ダーランド。お前と同じ…レジデントだ。」
「……久しいな。友よ。」
「ッ!!!!!」
その言葉を聞き、彼は膝から崩れ落ちた。
「あっ…ああぁ……ああっ……!!」
やっぱり、お前なのか。
どれだけ
友がそこにいるという事実、それは同時に彼が故郷で亡くなった事を意味していた。
それは同時には彼に二つの感情を抱かせた。
一つは、純粋な再会を喜ぶ気持ち。
二つは、友の死を憂う悲しみだった。
昂る二つ思いが混ざり、溶け合い、彼の情緒を混濁させる。
そこに偶然か必然か、ペスコフはとどめを刺すような真実を告げる。
「オズワルドも、エドワードも、グーンズも……ここにいる。」
「……――――――ッ!!!」
そしてフラッシュバックする、友との記憶。
「やったな相棒!ついにデスクローを仕留めた!」
エドワードは笑顔で抱えた奴の首を俺に向ける。
「いつも人の心配ばかりだなターキン。偶には同じくらい自分を労わってやれよ。ほら、今日は俺が払ってやる。」
そう言ってオズワルドはACのカジノのバーで俺にカクテルを奢った。
「悪いな、わざわざ技術データの回収に付き合ってもらって。」
真夏の日差しが照りける中、綺麗な水を俺に差しだしたグーンズ。
「いつか必ず、綺麗な故郷を見よう。ターキン。」
ブルーリッジの頂上で、ペスコフと俺は叶わぬ約束を交わした。
全部俺にとって、かけがえのないもの。
灰に埋もれた世界で過ごした、青春だった。
あの日、もう会えないと思った。望んでもいけないと…本当はどこかで思ってた。
「ううっ……くぅっ……!!」
ポタッ……。
生温いしずくが、頬を伝い落ちる。
「ターキン、ずっとお前に言いたかった事がある。」
ペスコフは視線を落とし、声を絞り出す。
「お前の両親が亡くなったあの日、お前は凄く辛かった筈だ。」
「きっと、人生で一番辛かったことだろう……。」
今こそ、友に歩みを寄せる。
「なのに……なのに………………!!!」
片膝を突いて、使える言葉を絞り出す。
伝えなければ…ならぬことだから。
「傍に居てやれなくて、すまなかった………………ッ!!!!」
ギウゥ………ッ!!
そっと、しかし力強く、両腕で彼を抱きしめた。
「ペスコフ…………ッ!!」
もう、堪えきれない。
「…っううぅぅぅぁぁぁああああああああああああああああああ………………!!!」
ターキンは泣いた。
「父さん…母さん………。」
あの日から、俺の涙腺は消えてしまったと思ってた。
「あああぁ………………ああっ………うぅぅぅっ…!!!」
大の男が、人目も憚らず泣いた。
吐き出さずにはいられなかった。
嬉しさと、悲しさと、希望と、絶望と、ぐちゃぐちゃになった感情が…
今まで必死に押し殺してきた、己の人生で感じてたものの全てが今日、溢れ出した。
「ああああ………………ううっ……あぁぁああああっ………!!!」
ペスコフもまた、彼を抱く手を震わせていた。
「ううっ……くぅっ………ううぅう………!!!」
それを見つめる生徒達は、その光景が不思議でしょうがなかった。
「ちょ、なんで二人して泣いて…………!」
シロコは便利屋と初めて会った時のラーメン屋での会話を思い出す。
「そういえば、先生が前に紫関で「友だちにはもう会えない」って……でも。」
「え、もしかしてまさか!?」
「ペスコフ先生は、ターキン先生の友人……という事ですか!?」
「まあ、そゆことなんだろうねー。」
「ってホシノ先輩いつの間に!?」
「うへー、いやいやつい昼寝が長引いちゃってー<嘘>」
「…ごめんね?」
「はぁ……しっかりしてくださいよ全く。」
あえて真実は語らなかった。知れば、その子達がどうなるか……。
「……先生、とっくに立ち直ってるように振舞っていましたけど……。」
「ん……本当は凄く、寂しかったんだね……。」
「「「………………。」」」
セリカは、自分が彼に助けられた日に交わした言葉を思い出す。
「独り……か。やっぱり、辛いのかな……。」
「ああ、辛いさ、とっても……。だから、君達にはそんな辛さを知って欲しくない。」
いつも生徒の為に頑張って、戦っている先生は、偶に無敵とすら思えた。
でも、そんな先生にも辛いことだってあった。
むしろ、だから先生は強かったんだと思う。
「先生はもう……辛くないのかな?」
ふと、そんな言葉から自身から出てきた。
生徒達は恩人の抱えていた孤独を知らぬ間に見ていた。
そして、その荷が下りた瞬間を見てただ、静かに祝福していた。
いつか自分たちもそうなるのだろうか、できることなら、そうならないことを今は祈るしかない。
「うへ………。」
小鳥遊ホシノは後輩達と共に彼らの再開の瞬間を黙って見ていた。
「そっか、先生は………逢えたんだね。」
「………ッ!」ギュッ…
彼女は心底嫌悪し、己を恨んだ。
あの先生が大事な人に再会できて良かったと思うのと裏腹に、
なし得なかった羨望ゆえに、醜く嫉妬を抱えていること、「ずるい」と思ってしまっていた自分に。
「……先輩。」
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ペスコフとターキンは一頻り泣いた後…
「……ふふっ」
「……くくっ」
「「だーっはっはっはっはっ!!!」」
「「「「!?!?!?!?」」」」
そりゃもうありえんくらい笑っていた。
「はははっ!…いやぁ、なんだ…色々思うことはあるが……。」
「また会えて嬉しいよ、ペスコフ!」
「全く同感だ!ターキン。」
「それにしても、びっくりだねー。まさか先生の友達がもう一人のシャーレの先生だったなんて。」
「ホシノ、来てたのか。」
「うん、ついさっきね。」
「そうだ!折角だし皆に紹介しよう。」
「ペスコフ。」クイクイ
「ん?」
彼は手招きをしてペスコフを呼ぶ。
「皆、彼が俺の親友の一人、ペスコフだ。」
「彼は見ての通り根っからの軍人だ。故郷じゃ"将軍"なんて呼ばれてる。」
「そんでもって仏頂面の堅物だ。」
「一言余計だバカ。」ペシッ
「あいてっ!」
そう、ターキンは身内を前にするとふざけ始めるのだ。
というかこっちが彼の素である。
「コホン…どうも、では改めて…ペスコフ・イーグルマン・ダーランドだ。よろしく頼む。」
「ターキンの言う通り、彼とは幼いころからの付き合いで私からすれば…もう一人の家族みたいなものだ。」
「ペスコフ……。」
ターキンはその言葉にじーんと目頭が熱くなるのを感じた。
「あら~☆お二人は幼馴染だったんですね!」
「というか、俺の友人は全員幼いころからの付き合いだけどな。」
(なんせVAULT育ちだし。)
「そうだな。」
「ペスコフ先生…普段より機嫌がいい。」
(いつも朝に見かけた時に聴く第一声が「ばっかもおおおおん!!!!」なのに。)
ゲヘナ生からの印象は正に某葛飾署の部長のようだった。
「そうだ、ペスコフにも生徒を紹介しよう。」
「この子はホシノ。唯一の3年生だ。」
「うへ、よろしくね。ペスコフ先生。」
「少し怠け者なところがあるが、彼女なりにしっかりと先輩の役割は果たしてるよ。」
「その場の立ち回りが上手い子だ。」
「なるほど。まあ無理に頑張りすぎるよりはいいだろう。」
「お前も少し見習うところがあるかもな?人助けとなると5轍くらいするし。」
「ま、まあそうかもな……ははは(汗」
「うへ、お人好しは筋金入りだったか~…。」
そのまま生徒の紹介を続けていく。
「この子がシロコ。普段は落ち着きのあるいい子なんだが……」
「あえて言うなら放射性同位体のような子だ。」
「……ほう。」
ペスコフはその一言で何となく察した。
(ん、何言ってるかわからないけど絶対いいことじゃない…。)
「2年の砂狼シロコ、よろしくね。ペスコフ先生。」
「ああ。」
「そしてこの子がノノミ、少しおてんばなところがあるが後輩の面倒見もいいし気配りもできるお嬢様だ。」
「十六夜ノノミです☆よろしくお願いしますね!」
「ああ、よろしく。」
「ターキン先生にはいつも助けて貰ってるんです。」
「…彼らしいな。」
「この子とそこの通話中の子はその二人の後輩、セリカとアヤネだ。」
「く、黒見セリカ……です。」
「よろしく。」
「「……。」」
(あーもう!やっぱり無理!なんかぎこちない空気になっちゃう!!)
「ちなみに彼女は所謂ツンデレというやつだ。」
「ちょ、ちょっと先生!?」
「……なるほど?」
「なに余計なこと教えてんのよバカァ!」ブンッ
ゴシャアッ!!!
「ブベラッ!?」[CRITICAL]
セリカは赤面しながら強烈な右フックをターキンの下顎に見舞った。
「あっ!」
「うむ、腰の入ったいいパンチだ!中々に筋がいい。」
ペスコフはそれをみて感心していた。
「ふぇ、へーふぇいにひょうはふぃへふぁいへふひふはっふふぉふふぇ、あふぉはふふぁへふぁ」
[訳:れ、冷静に評価してないでスティムパックをくれ、顎が砕けた。]
「わーったから変に動かすな…ほら。」プスッ
「あふん。」
スティムパック、一家に一本いかがだろうか。
「ふう、助かった。」
「ご、ごめん先生……。」
「気にするな、こいつ元から気を抜くとデリカシーがない発言をする嫌いがあるんだ。」
「ううっ……。」
返す言葉もない。
そんな事を思っているとペスコフの声色が変わる。
「………さて、茶番はこの辺にしよう。」
「そうだな……。」
「うん。流石にのんびりお話してる場合じゃないよねー。」
「………。」
ホシノとヒナ、ペスコフがそろった所でようやくこの事態を収拾することになった。
「それじゃ全員そろったみたいだし、ヤろっか?」ニコッ
「まままままってままtてまてたmtままっがわあばばばばbbbbb」ガタガタ
「先生テンパりすぎじゃん?」
「まあまあ、落ち着いてくれ。ホシノ委員長。」
「もうこちらに交戦の意思はない。」
「………。」
「………。」
「そして……申し訳ない。」
『「「!?」」』
「ペスコフ…?」
「この一件は風紀委員会の一部の生徒の独断であるという事実に相違はない。」
「しかし、こんな暴挙を許してしまったのも私の監督が行き届いていなかったが為に起きてしまった事……。」
「そんな……先生は―「いいんだヒナ。」………。」
(先生、寝る間も惜しんで私の仕事を手伝ってくれてたのに……。)
「コホン…よって………風紀委員会に代わって私ペスコフ・ダーランドが正式に謝罪を表明する。」
「今回アビドス側で発生した損害に対する責任はすべて私が取る。」
「重ねてお詫びを、本当に申し訳ない…ッ!!」
彼は帽子を脱ぎ、深々と頭を下げた。
ターキンは止めなかった。もし彼と同じ立場だったなら、自分もそうしていただろうから……。
「私はペスコフの謝罪を受け入れようと思う、君達は?」
「………しかたないわね。ちゃんと紫関ラーメンの修理費払ってくれるんでしょうね?」
「…無論だ。」
「うへ~私は状況よくわかってないからとやかく言えないかもしれないけど…。」
「まあセリカちゃんがそういうなら、おじさんも許しちゃおっかな~。」
「……でも、これで一つ貸しだよ?」
「うむ、それで構わない。」
『「「……。」」』
対策委員会メンバーが全員、彼の謝罪を受け入れたことで両者の間に和解が成立した。
「…感謝する。」
「もうゲヘナの風紀委員会がここへ無断で侵入することはないと約束しよう。」
「………それでは皆、撤収準備を。」
「「………はい…。」」
風紀委員会が撤収する中で、ヒナはホシノに何やら気になる事を言っていた。
「小鳥遊ホシノ、あなた……一年生の頃から随分と変わったようね。」
「それも人違いじゃないかと思うくらいに。」
「……ん?私のこと知ってるの?」
「情報部に居た頃、各自治区の要注意生徒たちをある程度把握してたから。」
「情報部………。」
(FBIやCIAのような諜報機関か…。もしかしたら…あの情報も……。)
「特に小鳥遊ホシノ……あなたのことを忘れるはずがない。」
「あの事件の後、アビドスを去ったと思ってたけど。」
「………。」
「あの事件…?」
「……そうか、そういうことか……だからシャーレが…。」
(あの子、一体ホシノの何を知ってるんだ……?)
「まあいい、私もこの辺で失礼するから。」
「先生?」
「ああ、すぐに行こう。だがその前に………」
「ターキン。」
「何だ?」
「いつシャーレに戻って来る?」
「……正直まだわからない、アビドスの状況は知ってるだろう?」
「まあ…ある程度は………。」
「砂漠化に借金、不良の襲撃……問題は山積みだ。」
「でも少なくとも、借金の件でカタをつけるまでは……。」
「そうか……。」
「なら、それまで待とう。しかしターキン。」
「?」
「どうしようもなくなったら、必ず呼んでくれ。」
「もう…何も出来ぬままお前を失う訳にはいかない。」
その言葉を聞いて、再び俺の死に際を思い出す。
マスクの下から垣間見える、光を失ったあいつの瞳。
あんなもの……もう見たくはないな。
「ああ、わかった。…必ず頼りにする。」
「……それでは。また会える日を楽しみにしよう。」
「………。」ピシッ
撤退していく友の背を見ながら俺は最大のリスペクトを込めた敬礼で見送った。
『風紀委員会の全兵力……凄い速さでアビドスへの郊外へと消えていきました……。』
『一糸乱れぬあの統率力、指導者の力量が伺えますな。』
「それもそうだろう。俺の親友は将軍だ。」
彼の表情はガスマスクで見えないが、どこか誇らしげだった。
「もったいない、強い人と戦えるチャンスだったのに。」
「そんな某戦闘民族みたいな………。」
「シロコ先輩……。まあ私だって、勿論売られた喧嘩から逃げるようなようなことはしないけど。」
(なんで張り合ってるんだ?)
「それで、結局なにがあったの?」
「説明したいところなのですが、私たちもまだ分かってないことが多く…風紀委員長は、なぜここまで来たのでしょうか?」
「そうです、分からないのは私たちも同じなんですよ!そもそもホシノ先輩はこんなタイミングまでいったいどこで……!」
「ごめんごめん。」
「まあまあ、何か事情があったんだろ。」
「多めに見よう。」
「………。」
『はあ……なんだか、さらに大事になってきている気がします。』
「そうだな……。慌ただしくて、分からないことだらけだ。」
「皆にとっても、私にとっても………。」
「そうですね、今日も色んなことがありましたし……。」
「無理せず、私たちも休憩した方がいいかもしれません。」
『はい。では今日は一旦解散して、また明日学校で状況の整理をしましょう。』
「了解だ。それじゃ………。」
(先生、あの時風紀委員長と何話してたんだろう。)
彼は歩いていく。
ザッザッザッ………。
砂とアスファルトが混じる地面を踏みしめるその背中は一つ。
だがもう………『独り』じゃない。
俺には生徒達がいる。
それに今は、『友達』もいる。
俺は備えなければならない。
ヒナの言葉が本当なら……嫌な予感がする。
それは風紀委員会が撤退していく直後の事だった。
「……ターキン先生。」
「ん?何だ?」
「そう。あなたに伝えておきたいことがある。」
「これは直接言っておいた方がいいと思って。」
「何のことだ?」
「……カイザーコーポレーションのこと、知ってる?」
グッグッ……グッ
「……知ってるも何も…その名を聞くと手が引き金を引こうと勝手に動いてしまう。」
「アビドスの借金相手、腐りきった企業倫理、俺の生徒を苦しめる元凶………!!!」
「………ッ。」
零れ落ちる殺意に当てられ、ヒナは冷や汗をかく。
「しまった、すまない!つい殺気立ってしまって……。」
「いいえ、心中お察しするわ…。」
「…本題だけど、これはまだ「万魔殿」も、ティーパーティーも知らない情報。」
「……でもあなたには知らせておいた方が良いかもしれない。」
「………。」
「アビドスの捨てられた砂漠……あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでる。」
「――ッ!?」
「カイザーが……!」
「そう。ペスコフ先生には返しても返しきれないほど大きな借りがある。」
ヒナは重度のワーカホリックだ。
見かねたペスコフは彼女の仕事を手伝い、毎度嫌がらせの様な量の仕事を押し付けるマコトの所にも怒鳴り込んだ。
そうして彼女のこれまでの苦労を褒めた。「今までよく頑張った」と。
そして叱った。「自身への過度な期待は身を亡ぼす。程々にしておけ」と。
そして、十分に休ませた。その間の仕事を肩代わりして。
ちなみにこれがきっかけで彼は「ゲヘナの鬼将軍」と言う傍迷惑な異名がついた。
しかし、ヒナはなぜ自分にそうまでしてくれるのか疑問だった。
だから思い切って聞いてみた。
「どうして……ここまでしてくれるの?」
「…友も必ず同じことをするだろうと思ったからだ。」
「……友?」
「ヤツは助けを求められたら地獄の業火にも飛び込んでしまうようなお人好しだった。」
「だから、そんな友に恥じる真似はしたくない。」
「単に君が心配なのもあるがな………まだ高校生だと言うのに…。」
「………。」
そんなペスコフのケアもあり、今のヒナは疲れが完全に取れて超ド級に絶好調、まさに「ド絶好調」だった。
「だからその友人であるあなたにも、筋を通すべきだと思ったの。」
「……そうか。」
「じゃあまた、ターキン先生。」
「ああ…。あっ、そうだ。」
「?」
「ペスコフによろしく頼む。」
「ええ、勿論。」
そんなやり取りをして、二人は別れた。
そしてターキンは今……。
「待っていろ………カイザー…!!」
その防火衣の裏は、怒りで燃え盛っていた。
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便利屋達は、事務所で荷物をまとめていた。
「はぁ……。」
「アルちゃ~ん、さっきからため息ばっかりだよ、テキパキ荷物運ぼう?」
ムツキの一言で、余計にため息が大きくなる。
「はぁぁ……。」
「え、えっと、これはどこに運べばいいでしょうか?」
ハルカは壁に掛けられた達筆な「一日一惡」という何とも言い難い四文字が掛れた額を指す。
「ん?これ……ああ、アルちゃんが天賦の才を発揮した書道の残骸じゃん、あっちの燃えるゴミでいいよ。」
何とも意地悪な答えが返ってきた。
「捨てないでよ!!持っていくに決まってるじゃない!」
勿論アルは慌てて止めた。
「でもこれ、書道の授業の宿題で書いたやつでしょ~?ほんとに要る?」
「それにこれ、「一日一悪」ってどういう意味?」
「き、きっと10年後には10億円くらいの価値が……。」
付くわけがないだろう。
「………はぁ。」
「打っても響かないし、元気ないねぇアルちゃん……。」
「社長、どうしたの?」
「アルちゃん、事務所を引っ越すのがイヤみたい。」
「でも風紀委員に場所を知られちゃったし、任務も失敗でクライアントからも狙われるだろうし、仕方ないでしょー?」
「そういえばアビドスとの戦いも、中途半端な感じで終わっちゃったね。」
「し、仕方ないでしょ!一緒に背中を合わせて戦った人たちを今になって狙うなんて……できるわけないじゃない!」
「……はあ。」
「あのカバンのお金も、残り全部あのラーメン屋の修理代として置いてきたし。本当に社長は……。」
「う、うるさい!うるさい!」
「だって、だって………!」
「………。」
「ハードボイルドなアウトローは……私は……。」
アルはしどろもどろになってしまう。
「……はあ。」
「本当に、手のかかる社長だ。」
そう言うカヨコの表情は微かに笑顔だった。
「でもこういうのがうちのアルちゃんだもんね?一緒にいてすっごく楽しい!」
「はい、私もそう思います!アル様!わ、私、アル様がいなかったらきっと今こうして生きていないはずなので……。」
忠臣の闇は深い。
「元気出してください!私が一番尊敬しているのはアル様ですから!」
だからこそ、眩い。
「う、うるさい!わかってるわよ!!」
そうして荷物をまとめた一同はトラックに荷物を積んでいた。
「よっ………と!」
ドサッ
「これで全部です!積み終わりました!」
「じゃあどこに行く?」
「うーん……。」
「まあ、特に当てもなさそうだし、またゲヘナにもどる?」
「便利屋!ここにいたか!」
そう叫びながらこちらへと走って来る影。
「…!!」
「えっ……!?」
「オズワルド先生……!」
「えっ、あ、来てくれたんだね。」
「引っ越すって話だったからな、慌てて探したよ。」
「これを渡さないといけなかったからな。」スッ
「そ、それって……!?」
彼が差し出した手に持っていたのは重厚なジュラルミンケースだ。
「大将さんの無事は確認した。よくやってくれた。」
「これはその報酬だ。そういう依頼だったからな。」
「あっ、そういえばそんなこと頼まれてたっけ…。」
「まあそんなわけだから、是非とも受け取ってくれ。」パカッ
ケースを開くと中には大量の紙幣が入っていた。
「な、何なのこの大量の札束!?」
「これ、私達が前に拾った鞄の額より多いんじゃ……。」
「こ、これだけあればもう食べるのに困りませんね……!!」
「砲撃を受けながら人命を救ったんだ。その危険手当も込みさ。」
オズワルドの福利厚生は手厚かった。
「それじゃあ俺はこの辺で。」
「えっ、もう行っちゃうの!?」
「こっちもちょっと色々とバタバタしててね、時間が惜しいんだ。」
「でもまたいつか依頼をする時が来るかもしれないな、事業のパートナーとして……そう遠くない内に。」
「……それじゃ。」
彼は積荷にケースを置くと、そのまま歩いていく……が
「アル!」
オズワルドは去り際に彼女を名を呼ぶ
「………?」
「どこに行くは知らないが、また会おう!あのラーメンを食べに!」
「………。」
「ええっ!必ず!!」
そして、オズワルドの背を見送った便利屋68はトラックに乗りこみ路地の向こうへと消えた。
常日頃思ってたことなんんですが、文章が長いからもっと短くしようと最初は考えてたんです。でも今は投稿の頻度が頻度だからもうこれでいいやと開き直ってます。(おい)
こんなんでも読んでいただきありがとうございます。
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