Fallout76 -once in a blue archive-   作:egguimen

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お待たせいたしましたカイザーバチボコリンチ編です。
アビドス編もいよいよ終盤、書いてる自分も楽しみになってきました。


Destroy the kaiser scum

 

自身の身の上を生徒達に明かし、いざ砂漠へと向かおうと準備を進めていた頃。

 

「うーん、ビームフォーカサーかジャイロ補助レンズか……。」

「………やっぱりビームスプリッターにしよう。集団を効率的に抹殺できる。」

 

「……先生。今少しいい?」

 

倉庫で、レーザーガンの改造をしているとシロコがやってきた。

しかしどこか浮かない顔をしている。

 

「シロコ、構わないが…どうした?」

 

「ん、出発する前に、ちょっと時間が欲しい。」

「……相談したいことが…」

 

そういう彼女はいつになく真剣な表情をしている。

もしかしたら先のホシノとの一件かもしれない。

 

「わかった。」

 

しかし生徒の相談を薄暗い作業場で聞くわけにもいかないため、場所を移すために彼女についていった。

場所は、例の教室。

長く使われていないであろう黒板があって、埃が被った机が生徒数より多く並んだ寂れた教室…。

 

「……。」

 

「……それで話と言うのは「これ。」

「…これは?」

 

渡されたのは折りたたまれた一枚の紙。

 

「……ホシノ先輩のバッグに入ってた…。」

 

「ふむ……。」ペラッ

 

「……ッ!!!?」

 

シロコから渡された紙の内容は、とても受け入れがたいものだった……

だが同時に理解した…あの時シロコがホシノに掴みかかった訳を……。

長く苦楽を共にしてきた者の鞄からこんなものが見つかってしまったら、問い詰めたくもなるもの無理はないだろう。

 

紙に書かれていたのは……

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

【退会・退部届】

 

対策委員会 小鳥遊ホシノ

 

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

「この書類は……。」

 

「………ん。」

 

「書かれてる通りの意味だと思う。」

 

「先生以外には誰にも見せてないし、言ってもないけど……そもそもバッグを漁った自体、ホシノ先輩にはバレてる気がする。」

 

「どうやって気づいた?」

 

「……ホシノ先輩があそこまで長い時間席を外すなんてこと、今までに無かった。」

「それに風紀委員会がやってきて大騒ぎになっても、先輩が来ないなんて。」

「それがどうしても引っかかったの……。」

 

「だから鞄を……?」

 

「ん……。」

「ごめん……悪いことなのは分かってる。ホシノ先輩からはもちろん、生徒として、先生にも怒られても仕方ない。」

 

「………。」

 

ホシノ……君は一体どうして…。

彼女達を置いて………どこに行くつもりなんだ。

君が居なければ……彼女達は………。

ホシノ…君は何を抱えてるんだ………。

 

二人の中には、また新しい疑問が生まれていた。

 

「……まだ、分かっていない事も多い。」

「バッグを無断で漁ったことについては、反省してるならそれでいい。」

「とにかく、このことは一旦秘密だ。いいな?」

 

「……うん。分かった。」

「先生も分かってると思うけど…ホシノ先輩、何か隠し事してる。」

「そうみたいだな……。」

 

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

気がかりなことができたが、その為にもターキン達はアビドス砂漠へと向かった。

 

 

ザザッ

『ここまでは列車で来ることができましたが、ここからの移動手段は徒歩しかありません。』

『少し進めばもうアビドス砂漠……このアビドスにおける砂漠化が進む前から、元々砂漠だった場所です。』

『普段から壊れたドローンや警備ロボット、オートマタ等が徘徊しているので、危険な場所なのですが…』

 

「それなんだが……。」

 

『?』

 

「さっき、駅のホームでホロテープを拾ったんだが……まあ聞いてくれてた方が早い。」

 

彼はそう言いながらピップボーイにホロテープを入れ、再生する。

 

ガチャ……ピピピッ

 

『あーあー、よし。しっかり録音できてるみたいだな。』

 

この声……俺にはとても聞き覚えのある声だ。

 

『もしこのテープを見つけて再生してる人間がいるなら、お前だろ……ターキン。』

『俺の事覚えてるか?まあ覚えてるよな、相棒。』

 

よく覚えてるよ。忘れるはずがない。

 

『エドワードだ。エドワード・エイシス。』

 

エドワード・ディエゴ・エイシス

 

代々ヒスパニックの家系で、テキサスにルーツがある。

父親が西海岸腕利きの保安官で、元対テロ特殊部隊員だという。

その腕をVault-tecに買われ、Vault76の警備になった。

 

その父親はVaultにいる時、放射線の被曝による末期癌で亡くなった。

リアクターのダクトから侵入した発光ラッドローチに噛まれたのが原因らしい…。

そのため息子である彼が父の遺志を受け継ぐことを決意した。

 

父の生前のしごきの甲斐あってVaultを出るころにはどのレジテントにも負けない早撃ちスキルを体得するまでに成長していた。

ウェイストランドでは形見のレンジャーアーマーを身に纏い、その射撃術を活かしてアパラチアのあちこちをドンパチと暴れまわった。

 

焦土作戦後、更なるスキルとロマンを追い求め西部へと旅に出たらしく。

色んな師匠に出会ったんだとか。

 

中には風変わりなグールのガンマンもいたんだとか……

名前をクーパー・ハワードというらしい。

 

そんなこんなでガンマンとしてより一層その腕を上げた彼は入植者達の保安官としてスプルーズ・ノブ周辺を中心に活動していた。ある時はピッツバーグのファナティックのイカレ野郎共にビッグアイアン6連発をぶち込み、ACのマフィア共を投げ縄で縛り上げた。

 

彼はカウボーイを自称しているが馬には乗らない。

彼が乗るのは、かつてテキサスの街角で見つけたバイクだ。

見つけた街の名前にちなんで「ダラス」と呼んでいる。

 

バイクを乗り回しながらSSAの引き金を引き金を引く姿は正に世紀末のカウボーイといったところ。

 

しかしアパラチアの人々からはバイカーギャングが起源のブラッド・イーグルと間違われることがあり…それが原因で彼は奴らを心底嫌っている。

 

俺もあの性根が腐った連中が大嫌いだが……。

彼は視界に入ったら条件反射で即座に鉛弾を喰らわせるほどだった。

 

そんな彼は「ロマンチスト」を自称しているような世紀末には似つかわしくないお気楽な奴だった。

そんな奴だからこそ、救われたこともあるのだが……。

 

彼がアビドスに来ていた理由と言うのが……

 

『本当はお前と直接会って話したかったんだが、今はシャーレの方で立て込んだ用事があるんだ。』

『今日は偶然暇を見つけたからダラスに乗って来たのさ。』

『しかし砂漠ってのはいいよな、モハビを思い出すよ。』

『まあ、その懐かしさを感じたくてここに来たんだがな。』

『あっそうそう、なんでこのテープを録音してるのかだが……。』

『ここ、やばいロボットとか不良達がいるだろ?それについてなんだが………。』

 

「まさか……!!」

 

 

 

 

 

『全部壊してとっ捕まえた。』

 

 

 

 

 

「「「「は?????」」」」

 

「やっぱり……。」

 

 

 

『そんなわけだからその先に用があるならそのまま行っても大丈夫だぞ!』

『今親指立ててるんだけどわかる?わかるわけないかw録音だもんな!』

『ってこで俺が伝えたいことは以上だ。』

『ちなみにメッセージ終了後5秒以内に破棄しないとこのテープは爆発するぞ。』

 

「「「?!?!?!?」」」

 

 

『………なーんちゃって!ハハハハ!!』

『今のビビったろ?まんまと引っかかったな!ガハハ!』

『じゃあな相棒!近い内にまた会おうぜ!』

『……もうくたばんなよ。』

 

 

…当たり前だ相棒。

 

 

以上がテープに記録された彼の言葉だ。

 

「はあ……相変わらずだったな。」

 

「あれを言う為だけに1分45秒使うなんて、呆れるというかなんというか……。」

 

「なんでしっかり数えてるんだ。」

 

『あはは…ペスコフ先生とは打って変わってかなり陽気な人みたいですね……。』

 

「その分さっきの通り、人騒がせな奴だがな……。」

 

「うへ~、先生の友達は皆一癖か二癖はあるねぇ。」

 

「おまけに皆いいやつだしな。」

 

という事で談笑も挟みつつ最初の関門だったはずの地帯は何の苦も無く突破した。

その道中のやり取りだが……セリカは何やら気がかりな事があったらしい。

 

「うーん……。」

 

「どうした?セリカ、上の空みたいだが…。」

 

「ん?ああ、少し変だなぁと思って。」

 

「エドワードが?まあ否定はしないが……。」

 

「いやいやそっちじゃなくて!」

 

彼女が気にしていたのはカイザーに関する情報をくれたヒナについてだった。

 

「ほら……よく考えると、あの情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。」

「それってなんかおかしくない?」

 

「……ああ。」

 

「いくら風紀委員長とはいえ、どうして他の学園の生徒が、うちの自治区のことをそこまで知ってたわけ?」

 

『うーん、あくまで推測に過ぎないけど……ゲヘナの風紀委員会はかなり情報収集能力に長けてるって聞いたことが……。』

『だから、アビドスみたいな小規模な学校では考えられないような情報網を持っている、とか?』

 

「ま、そういうこともあるのかもね~。」

 

「だな……。」

 

ましてや風紀委員はこの都市における大臣や首脳幹部といった様な位置づけだろうから、把握している情報は全て集約されているだろう。

アヤネもそれについては思うところがあったようで、当時のアコの言動を思い返してあの時の自分の判断に疑問を抱いた。

 

「でもあの時の風紀委員会には、明らかに審判行為と取れる言動が多々あった。あそこがアビドスの所持している自治区だったかどうかは、そんなに重要じゃない。」

 

シロコのいう事にも一理ある。なので俺も付け加える形で彼女に言う。

 

「それに、彼女達の目的は私の確保にあった。そうである以上、こちらがどう動いても風紀委員会との衝突は避けられなかったと思う。」

「さらに言えば当時は柴大将という一市民が怪我をする事態にもなっていた。」

「君は学校の存続のみならず、そこで暮らす人達を守る判断をしたんだ。」

「並大抵の決断じゃない。十分によくやっていた。」

 

それが俺の彼女に対する当時の評価だ。

 

「ん、先生に同意する。」

「あの時のアヤネの判断は間違ってない。」

 

『シロコ先輩、先生……。そうですね、ありがとうございます。』

『ですが……あの行政官は私たちの知らなかった事実を知っていた。少なくともその可能性がある、そう考えるのが妥当かもしれません。』

『そうなると、ゲヘナの風紀委員長が私たちの知らないことを知っているとしても、何もおかしくありません。』

 

「まあ、私みたいに連邦捜査部「シャーレ」なんて露骨なのがあるくらいだ。ゲヘナやトリニティの様な規模の学園なら諜報活動を専門とする部活があってもおかしくはない。」

 

『それもそうですね。』

 

「ま、行ってみたらそれも含めて、きっと色々分かるでしょ。セリカちゃんが言ってた通り、直接この目で確かめれば早いんだしさ~。」

 

「じゃ、引き続き進むとしよっか~?」

 

「ああ、そうだな。」

 

「先生…なんだか楽しみしてない?」

 

「ん?いやぁ何でもないさ……」

「ただ………」

 

「………?」

 

「君達を苦しめてきたあの[生徒の教育に悪いため規制]にこの斧を振り下ろせると思うと……な。」

「ふ、ふひ、くひひひひ……。」

 

彼はスパイクがついた消火斧を手に取るとサイコをキメたレイダーの様な醜悪な笑みをマスクの下に零した。

 

「oh…。」

 

「い、今普通に生きてたら聞かないような酷い罵詈雑言を聞いた気が……。」

 

「この後の展開想像しておじさんなんだか怖くなってきたよ?」

 

心配ご無用、ただ救いがたい鉄くずが有効活用できる鉄くずになるだけなので。

 

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

暫く進んでいくと、ターキンは目の前に広がる景色に既視感を覚えた。

 

デデン……【放棄された砂漠】チーン [XP 0050]

 

「ここが捨てられた砂漠……。」

 

「砂だらけの市街地に行ったことはありましたが、ここから先は私も初めてです…。」

 

「どこかと思ったらここか、久しいな。砂埃も相変わらず。」

 

「ほんとにね~、この景色も。」

 

「ん?二人ともここに来たことがあるの?」

 

「うん、前に生徒会の仕事で何度かね~。」

 

「私は少し前に地理を把握しようと思ってアビドスを歩き回ってた時にだな。」

 

「まさか全部歩いたの…?」

 

「まさか!流石に危険地帯は避けたさ、弾が勿体ないし。」

 

「心配するとこそこ!?」

 

「そうそう、確かもう少し進んだ先で話してたんだよね~。」

 

「ああ。」

 

「実はねぇ?あそこにはなんとかつてのアビドスの砂祭りが開かれてたオアシスが!」

 

「え、オアシス?こんなところに?」

 

「うん、まあ今は全部干上がっちゃったんだけどね~。」

「元々はそんじょそこらの湖より広くって、船を浮かべられるくらいだったとか。」

 

「そんな話もあったなぁ。」

 

「先生のところにも似たような場所があるんだよねぇ~。」

 

「そうなんですか?気になりますね☆」

 

「そう、サマーズビルって言う町に大きなダム湖があったんだ。」

「その名もサマーズビル湖。」

「まあ、その湖もダムが壊れて無くなったんだがな。」

「なんでも最終戦争後に非常事態政府を設立した生存者達を襲撃したレイダー達が盗み出した小型戦術核爆弾でダムを吹っ飛ばしたらしい。」

「そんな事があったものだから湖は当然干上がってしまっていて、私が来た時にはスーパーミュータントが残った廃船や港の小屋を中央に集めて「ニュー・ギャド」って集落をつくってたよ。皆殺しにしたけど。」

 

「ほえ~そんな背景があったんだぁ。」

 

「レイダーって…思い切ったことするんですね…。まるで容赦がないです。」

 

「これっぽちもないなぁ…。元々の事の始まりは捕まったレイダーのリーダーの恋人が殺されたと勘違いしたから…らしい。」

「まあ、捕まってた恋人もただじゃ済まなかっただろうな…。ダムで隔てられた隣のチャールストンがいまだ水浸しになるくらいの大事件だったし。」

 

「勘違いって言うのが余計に救いがないわね…。」

 

『勘違いから町一つが水で流される……何というか無茶苦茶ですね。』

 

「つくづくそう思うよ。」

 

「なんかしれっと皆殺しにしてたけどそのスーパーミュータントって何よ?」

 

「彼らは人間が高濃度の強制進化ウイルス…通称FEVに感染することで変異した元人間だ。」

 

「「「………!!」」」ゾゾゾッ

 

それを聞いた生徒達は毛が逆立つような感覚に襲われた。

 

「戦前、ウェストテックという企業の研究で生まれた緑の怪物達だ。背丈は普通の人間より一回りくらい大きくて、性格は野蛮で粗暴、戦いが大好きで、同族以外は全部殺そうとする危険な連中だ。」

 

「まあミュータント自体がほとんどが危険極まりない存在だが……。(ボソッ」

 

「そんな映画にしか出てこなさそうな怪物が現実に……。」

 

「あいつらは獰猛な生物兵器で、おまけにパワーアーマーとも渡り合えるくらいのフィジカルを兼ね備えてる。」

「まあ頭は進化するどころか退化してたがな、ハハハ!」

 

「そんな恐ろしい奴らを先生一人で……?」

 

「少し骨が折れた(物理)がな。」

 

「先生の方がスーパーなミュータントなんじゃ?」

 

「実際放射能で突然変異してるレジデントもいたぞ。」

「下半身がカンガルーになってたり。頭が人よりでかかったり……。」

 

「ツッコんだら余計に怖い情報出てきた!」

 

「少なくとも私はまだ人間だ。……平均的には。」

(たまに傷のせいでグールと間違えられそうになるが…。)

 

彼は自分の事だけ話していても規格外さが露見するだけだったので閑話休題とした。

 

「今度はこのオアシスについて聞きたいな。」

 

「あ~、そういえばどこまで話してたっけ?」

 

「確か砂祭りがどうって…。」

 

「砂祭り…そういえば昔にあったらしいな。」

 

「ん、私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りで、すごい数の人が集まってるっ十て。」

 

「そっ、別の学校からもそのお祭り見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前の事だけど。」

 

「へえ、今となってはこんな光景になっちゃってるけど、ここでそんなすごいお祭りが……?」

 

「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ~。その時はこんな砂埃もなかったし。」

「ところでアヤネちゃん、まだ目的地は遠そう?」

 

『ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少し時間が掛りそうです。』

『見たところ、この辺りは特に何もなさそうですが……敵の姿もありませんし。』

『とりあえず、万が一を考え警戒しながら前進してください。』

 

「了解。」

 

アヤネの言う通り、周囲を警戒しながら目的地まで進んでいると、廃線に横たわる列車たちの残骸が無数に転がっている地帯に入った。

 

デデン…【アビドス鉄道跡地】チーン [XP 0050]

 

「放棄された線路と車両がそこら中に……。」

「いいジャンクが見つかるかも。」

 

「?」

 

「ちょっと寄り道しよう。」ザッザッ

 

「ちょっとこんな所で寄り道って……待ってってば!!」

 

ターキンは一つの車両に目をつけそこへっと向かった。

 

「この車両、他のと比べて状態がいい。」

 

「そう?あんまり変わらない気がするけど……。」

 

「もしかしたら使えるジャンクがあるかも。」

 

「うへ~、まるで宝さがしみたいだね。」

 

「ホシノ先輩、やけに乗り気ですね。」

 

「ん~、そうかなぁ?」

 

「では早速乗車……ってうわやっべ!!?」

 

バッ、ドサッ!!

 

彼は慌てて入口から飛び退いた。

 

「うわ!?」

 

「!?」

 

「うへ、急にどうしちゃったのさ先生?ゴキブリでもいた?」

 

「入口の足元よく見てみろ。」

 

「………これは!?」

 

彼が慌てて後ろにダイブした理由、それは足元に張られたピアノ線にあった。

ピアノ線を辿るとそこには、4つのフラググレネードがピンを指す穴に通された形でつるされていた。

 

「まさか……。」

 

「ここにいた連中が仕掛けたんだろう。古典的なブービートラップだ。」

「皆下がってろ、解除する。」

 

「……大丈夫なの?」

 

「慣れてる。」

 

前は敵が仕掛けた罠を解除してそれをくすねてたものだ。

 

「………。」ガサガサッ…。

 

カチッ……チーン[XP0100]

 

「よぉし、グレネードゲット♪」

 

「解除から十秒も経ってないんだけど!?」

 

「すごい早業ですね。」

 

「罠も罠とわかれば大した脅威じゃない。」

「爆発物は危険な分、安全装置もしっかりと機能するように設計されてるし、解除はそんなに難しくない。」

 

その後彼はネジやギア、鉄に弾薬もたんまり手に入れた。どうやら不良達の倉庫代わりにされていたらしい。

彼は上機嫌で生徒達と歩みを進めた。

 

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

鉄道跡を抜けて暫く進めると、ホシノが手を横に出して皆の足を止める。

彼女は正面をずっと鋭い瞳で睨んでいる。砂埃の向こうに何かを見つけたようだ。

 

「………。」

 

「ふむ、ドローンにオートマタか……。」

 

「距離は?」

 

「そう遠くない。砂埃でよく見えてないけど。」

「この辺り、なんでかこういうのが良く集まるんだよね。」

 

『……っ!?』

『皆さん、前方に何かあります!砂埃が舞っていて姿はまだはっきりと見えないのですが…。』

『巨大な町……いえ工場、或いは駐屯地……?』

『と、とにかく、ものすごい大きな施設のようなものが……?』

 

「……こんなところに施設?何かの見間違いじゃなくて?」

「今のところ、こっちからは干からびたオアシスしか見えてないけど……。」

 

「アヤネが見間違えるとは思えない。とりあえず目視で確認できる所まで進もう。」

「向こうに奴らを無視して迂回できそうな通路がある。あそこから行こう。」

 

平坦な地形から吹く強風で砂埃が舞い視界が妨げられる中恐る恐る入る…

砂埃が晴れた視界に広がる光景はアヤネの言う通りだった。

 

「こんなの……前にはなかった…。」

 

「………。」

 

「何これ……。」

 

「この張り巡らされてる有刺鉄線、優に数キロメートル先までありそう……。」

 

「何かの採掘施設のようだが……この辺に鉱脈はなかったはずだ…。」

 

施設の存在に呆気に取られたが、ピップボーイがターキンに差し迫った脅威を知らせた。

 

[FIELD STATUS :DANGER]

 

危険を知らせる警告と同時にレーダーに多数の敵性反応が確認された。

 

「12時の方向に敵複数、遮蔽物へ!!」

 

「「「「……!!」」」」

 

一目散に目の前の物資箱やバリケードを背に隠れた次の瞬間、

 

ダダダダダダダダダダッ!!

 

「侵入者を確認!」

 

「捕らえろ、逃がすな!!」

 

「警備兵か……。」

 

『所属不明のオートマタが攻撃を仕掛けています!』

 

遮蔽物の隙間から彼女達が見た敵の姿は、迷彩柄のオートマタの兵士。

モニターには所属を示すシンボルらしきものが確認できるが、激しい銃撃で確認しているどころではない。

とにもかくにもこの状況を打開する必要がある。

 

「返り討ちにしてやる。」スチャッ

 

 

ピンッ…バァアン!

 

「ぐあぁ!?目が!!」

 

先ず閃光弾で先頭の兵士の視界を奪う。

 

「ぶち殺してやる…!!」

 

ゴガシャアアアン!!

 

ターキンは殺意を隠すこともせず消火斧の一撃を兵士の脳天に見舞った。

 

そして始まった…始まってしまった。

ターキン、怒りの大立ち回りが………!!

 

「てめーら全員スクラップにしてやらあああ!!!」

 

ドガッ!ゴアシャアッ!!

 

最早、彼は敵に「うんぬ」と言う余裕すら与えなかった。

 

「であああっ!!」

 

バギャアアァォッ!!

 

右に斧を薙ぎ、5体破壊。

 

「はああああああっ!!!」

 

今度は左に薙ぎ、更に5体。

 

「…!!こんのっ――メギャアァアンッ!!

 

重装兵が盾を構えるも無視して振り下ろし破壊。

 

「ぬるい、ぬるいぞぉ!貴様らそれでも兵士かぁ!!?」

 

「クソッ、化け物が舐めやがってぇ!!」

「うおおおお!!」

 

ダダダダダダダダダダッ!!

 

戦術など一切考えてない力任せな猛攻の中に生まれた一瞬の隙を兵士は狙ったつもりなのだろうが…

 

「……ッ!!」

「そんな豆鉄砲で核戦争を生き延びたこの服を貫けると思うなクソボケがぁあああ!!」

 

ドガッシャアアアン!!

 

お構いなしと言わんばかりに滅殺。

勿論、ターキンは被弾していた。だが彼からすれば貫通しなければノーダメージ。

普通銃弾を防具で受け止めようとも、衝撃で激痛を感じ身悶えするものだが、彼は闘争本能によりアドレナリンが過剰分泌されており、銃撃の痛みをまるで意に介していないのだ。

まあ平常時でも精々「ウゥン!!」くらいしか呻かないのだが……。

 

これこそがアパラチアのイカレ消防士、ネジが外れた救世主の本領だ。

 

「いつもだけど、なんて無茶苦茶な戦い方してんの…。」

「今日はいつになく野蛮な戦法(?)だし……。」

 

「銃で撃たれて平然としてるし、動きがヘイローがある生徒のそれと変わらないんだけど…。」

 

「あれがウェイストランド人…。」

 

「ん、私にもアレできるかな。」

 

※こんな戦い方するのはレジデントだけです。生徒の諸君はマネしない様に。

 

「マネできるわけないでしょ!?」

 

茶番も閑話休題、ターキンの大虐殺はまだ始まったばっかりだった。

 

『先生、奥から増援が―「新鮮な得物じゃああああ!!」キャラ変わりすぎでは!?』

 

「いたぞ!斧を持って暴れてる頭のおかしな侵入者だ!!」

 

「んだと?ぶっ殺すぞコラァアアア!!」

 

ガッシャアアアアアアアン!!!

 

清々しい逆切れをしながらぶっ殺(壊)した。

 

「後退しろ!」

「いいか、相手は斧一本だ。安全距離を確保して確実に――バガシャアアン!!

 

「隊長ーーー!!?」

 

「だーれが斧一本しか持ってないってぇ?あぁん!?」

 

もうここまでくると新種のチンピラである。

 

彼の手に握られていたのはガウスピストル。

斧をぶん回して近距離の敵を処理する合間にチャージして遠距離の敵も抹殺する。

なんて効率的な作戦なんだぁ……(ヤケクソ)

 

[BUILD:BERSERKER]

 

「鏖殺じゃあああッ!!」

 

- ジィ――ッ…! -

- カチッ… -

 

最短距離の目標をV.A.T.S.で補足、ダッシュで詰め寄り…

 

0%……95%

 

「くたばれぇ!!」シュンッ

 

間合いに入った瞬間、ターキンは雑兵の眼前に急接近!

まるで瞬間移動が如しだった。

 

「早ッ!?」

 

ゴガアアアアアンッ!!…シュ――ッ

 

対応する間もなく奴の首は宙を舞い、もう行き場のない電流が煙となって吹きあがった。

 

ブゥ―ン… 99

 

処刑の合間にガウスピストルのチャージが完了。

 

「この爆風、集団にどれだけ効くかな?」

 

殺意の中に紛れる好奇心を、後方の兵士達にぶつける。

 

ヅドンッ!バンッ!!

 

「……――ッ!!!??」

 

敵の陣形の真ん中に着弾した青の光弾が炸裂、爆発に伴って発生したパルスがオートマタの回路に異常を発生させ、スタン状態に陥る。

 

「ほお、お前たちはそうなるのか…。」

「何秒スタンするかな?」

 

ガウスピストルをホルスターにしまい、消火斧を両手に持つ。

 

悪夢のカウントが始まった。

 

「1」ザンッ……

 

「2」ザンッ……

 

「3」ザンッ……

 

「4」ザンッ……

 

「5」ザンッ……

 

「6」ザンッ……

 

「7」ザンッ……

 

「8……。」ザンッ……

 

彼が数えていく度、奴らの電源は静かに消える。元からついてなどいなかったかのように。

とても静かで……とても残酷な処刑だ。

そして10を数え終わる前にはもう、彼の周囲には首がない兵士の残骸が周囲を無惨に転がっていた。

 

「誰一人復帰しなかったなー。」

 

ターキンは何食わぬ顔で残骸を漁りだした、ジャンクの回収は大事だ。

 

こうして、最初のオートマタの警備兵たちはたった一人の男の手によって壊滅したのだった。

 

 

「もう増援が来る様子はないな。」

 

「何度見ても豪快な戦い方ですね…。」

 

「脳筋ここに極まれりって感じね…。」

 

「ん、正にバーサーカー。」

 

「まあ生い立ちを考えたら腑に落ちちゃうんだよねぇ。」

 

もはや彼の殺戮ショーは生徒達には最早様式美になりつつあった。

それはそれとして、生徒達はあのオートマタ達が一体何なのか気がかりだった。

 

「うへ、結局こいつら何だったんだろうねぇ?」

 

「強さは言わずもがなだが、不良やブラックマーケットのガードみたいな連中より連携がしっかりしていた。」

「何だかきな臭いな……。」

 

「便利屋や風紀委員会より面倒かもしれない…。」

 

「この方たちはこんなところで一体何をしてるんでしょうか?」

 

「……。」ガサガサ…

「……!!」

 

俺は燻っている兵士の残骸の腕を凝視し、マークと名前を見つけた。

 

「皆、これを…。」

 

『これは、何らかのマーク……ですね?』

 

「その下、文字が書かれてるだろ?恐らく連中の所属だ。」

 

「これ……まさか…!!」

 

ホシノ達の目に映る文字にはこう書かれている。

 

 

 

 

KAISER PMC

 

 

 

 

「「カイザーPMC…。」」

 

「カイザーめ…金融に不動産、今度はPMCときたか。」

 

「カイザー?こいつらもカイザーコーポレーションってこと!?」

 

「それに「PMC」という事は……」

 

「何?PMCって何かまずい言葉なの?」

 

「Private Military Company つまり……民間軍事会社だ。」

 

PMCといえば、やはりヘルキャット・カンパニーを思い出す。

やつらは独自のパワーアーマーを有しており、当時は指折りの軍事力を持った民兵組織だったようだ。

最も奴らに関しては記録しか存在してないし、出会っても全員既に死体だったが……。

 

「ぐ、軍事……!?」

 

「……。」

 

「つまり相手は本物の軍隊……完全に組織化された戦争専門の集団だ。」

 

「ぐ、軍隊ぃ!?」

 

「と言っても今のところロボットにしか出会ってないが…。」

 

普通、兵員を確保するならロボットより総合的な身体能力が高い生徒を兵士にしていてもおかしくはない。

幸か不幸か、不良や退学した生徒たちは大勢いる……

 

不幸だな。

 

そう考えているのはノノミも同じなようで、

 

「確かにおかしいですね、普通キヴォトスのPMCなら生徒の兵士がいてもおかしくない筈なのですが……。」

 

皆がそのことに疑問を抱いたが、悠長に思考する時間はない。何故なら……

 

 

ウーーーッ!ウーーーッ!ウーーーッ!ウーーーッ!ウーーーッ!

 

 

『敵の警報装置が作動しました!』

 

「これ、何だか大事になりそうな予感なんだけど……。」

 

ブロロロロロロ……

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

「これは…ヘリの音……?」

 

「それに、この地面の揺れ……恐らく戦車。」

 

『大規模兵力が接近中!こちらを包囲しに来ています!』

 

「向こうからわざわざ出迎えに来るとはな。」

「盛り上がってきたぜ……ケヒッ」

 

「あっ、先生がまた戦闘狂に」

 

「ホシノ、セリカ達を頼む。」

 

「ほいほい任せて~。」

 

ホシノが後輩たちの前に立ち盾を構えると、敵陣へ駆ける彼を見送った。

 

「…アヤネちゃん、念のためカーゴボットで様子をモニタリングしてて。」

「必要だったら支援してあげて。」

 

『はい、わかりました!』

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

「……。」

 

敵を肉眼で取られる距離にまで迫った時、彼は仁王立ちを決め込み敵を達観した。

 

「120㎜ライフル砲戦車5台、武装ヘリ3機…APC7台…どれも形式は不明だが動作機構が古いな。」

「ここじゃあんなのが最新なのか?」

 

彼の両親の世代でもある2070年代以降の人間からすれば、これらの兵器は祖父か曾祖父ほどの時代の人間が使っていたような古めかしい兵器だ。彼からすれば、単なる骨董品に等しい物だった。

 

あんな旧型戦車より、昔共産党の残党兵と出くわした時のキメラタンクのほうが恐ろしかった。

あの155㎜キャノン砲2門をそのまま車体にくっつけた機体の姿を見た時は背筋が凍り付いたものだ。

 

「ちょうどいい、奴らの鼻っ柱をへし折ってやろう。」スッ

 

俺はミサイルランチャーを迫りくる機械化部隊へ差し向けた。

 

……ピコン

 

搭載された目標補足コンピュータが中央のヘリをロックオンしたのを確認し、ランチャーの発射口を空に向ける。

 

「民主主義をお見舞いしてやるよ!!」カチッ

 

 

ボシューッ……ドオオオオオオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

ボガアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

 

GRENADIER[2]とDEMOLITON EXPERT[5]で火力を底上げされたミサイルはヘリのプロペラを直撃、制御を失ったヘリは戦車隊の中央に墜落。

直後に弾薬庫に引火し、歩兵を巻き込みながら戦車2台と輸送車3台が大破した。敵陣に大混乱を招いた。

 

「血祭りにあげてやるぜえええ!!」ダッ!

 

これでサイコ使ってないんだぜ?こえーよな。

 

「イエアアアアアアアアアアア!!!」

 

ターキンは咆哮を上げながら消火斧片手に敵部隊に突撃した。

それではその間の敵視点から繰り広がる絶望の一幕をご覧ください。

 

「優先目標が急速に接近中!!」

 

「やつめ、斧にレールガンに次はミサイルだと!?ふざけてるのか!!」

 

「砲手はどんどん砲撃しろ!!手を緩めるな!懐に入られたらお終いだぞ!!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

「ファイヤアー!!」

 

 

 

 

ズドドドオオオオン!!

 

 

 

命令通り標的めがけて肩撃ち式対戦車兵器や戦車の砲塔で多数の砲弾を撃ち込むが的が小さすぎるあまり効果は出なかった。

 

「ダメです隊長、的が小さすぎます!機銃掃射で何とか……」

 

「無駄だ!なんでかわからんが報告によればヤツはAP弾でも貫けない固いアーマーを着こんでる!」

「その上何発かは着弾寸前で起動が変わる怪現象が発生してる。あいつは何かがおかしい、普通じゃないんだよ!」

「仕留めるにはこの近接信管榴弾の爆発半径内に奴を捉えるしか無い!」

「……!!いや待てよ、前言撤回!軽機関銃でもなんでも支援火器で弾幕を張れ!その隙に野郎のどてっぱらにぶち込むんだ!やれ!!」

 

「了解!機銃手、砲手、攻撃開始ィ!!」

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!」」

 

 

兵士たちは藁にもすがる思いで撃って撃って撃ちまくった。

それはもう死に物狂いだった。

 

 

ダダダダダダダダダダッ!!

 

 

ズドオオオオン!!

 

ズドドオオオオン!!

 

 

「効果は?」

 

「ポジティブ!目標が進行をやめ岩を盾に隠れました!」

 

「よし、そのまま迫撃砲で確実に仕留めろ!!」

(侵入者め……カイザーPMC少佐である私が率いるこのオスカー機動中隊を敵に回したことたっぷりと後悔させてやる!)

 

「砲手準備急げ!」

 

ここで仕留められなければ我らオスカー機動中隊は壊滅する……ッ!!何としても食い止めないと!

 

「目標、距離105メートル、風速を考慮し角度を西に5度修正、砲弾の信管を7秒に設定。」

「砲撃準備よし!いつでも撃てます!!」

 

「ッてえええい!!」ブンッ

 

少佐が勢いよく手を振り下ろし号令をかける。

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

 

 

ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

 

爆炎を見て兵士たちは成功を確信し歓喜した。

 

やった!やった!やったぞ!ついに奴を仕留めた、これで後は施設にいる侵入者たちを……

 

「諸君、喜ぶのはまだ早いぞ!」

「観測手、目標への効果は…?」

 

少佐が呼びかけるが応答がない。

 

「おい、聞いてるのか?おい!」

 

「あ……ああ……!!」

 

腰を抜かした観測手の双眼鏡の持つ手が震えている、それは次第に大きくなり……やがて…。

 

 

「あ、あれは悪魔だ……ッ!!」ガタガタッ

 

「おい!どうした!何を見た!!」

 

「ネガティブです!作戦の効果は……全くありませんでした……ッ!」

「我々はもうお終いです!」

 

我を失いかけながらも、目撃した無情な事実を彼は己の絶望を込めながら上官に伝える。

 

「私は降ります!あんな化け物を相手にするなどみすみす死ぬようなものだったんです!」ダッ!

 

「おい!どこに行く!?」

 

兵士は双眼鏡をその場に捨てると脱兎が如く戦場から逃げ出した。

皆がその姿に呆気に取られ、幸運なことに誰も止めることはなかった。

 

「一体なにがあっと言うんだ…。」スッ、

「……ほえ?」

 

 

双眼鏡を通して、彼は地獄から来た悪魔の姿を見た。




今回も読んでいただきありがとうございます。
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カイザーの悪夢は次回も続く!
余談も余談ですが逃げ出した観測手の階級は伍長です。
それではまた。
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