Fallout76 -once in a blue archive-   作:egguimen

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さて今回はホシノ救出&アビドス防衛戦に向けレジデント達が準備をしていきます。
今回は長らく音沙汰がなかった最後の教師も…?

それでは本編へ。


Ready for war

 

サラサラ……

 

「……はぁ。」

 

某日昼。場所はゲヘナ学園の風紀委員会の委員会室。

天雨アコはそこで今もなお先日のアビドスの一件で反省文を書いていた。

 

 

「委員長、その……これは、いつまで書けば良いのでしょうか……?」

 

「……今200枚目くらいでしょう。自分で1000枚書くって言ってなかった?」

 

「それはその、それくらい反省していますという比喩でして……。」

 

「アコ、言い訳する暇があるなら手を動かせ。」

 

「っ…はい先生……。」

 

ペスコフに注意され、再び反省文と向き合うアコだったが。

 

「全く、だから無駄に虚勢を張るなと……。」

 

「う、うるさいですね!私は―「何か言ったか?(圧)」…いいえ何も……。」

 

流石の彼女もペスコフには強く出られずにいた。

 

「そういえば先生、今日シャーレの方は大丈夫なの?」

 

「ああ、エドワードと当番の生徒が引き受けてくれている。」

「今日は1日ここにいるつもりだ。」

 

本来、シャーレの先生は一人だが、この世界には5人も先生がいる上、優秀なロボットがいる為、仕事にはだいぶ余裕があった。

因みに、今日の当番はワカモだ。

 

「……そう。」キラキラ

 

今日一日彼といられる事を知り、ヒナは通常形態のゲヘナシロモップからゲヘナキラキラシロモップに進化した。

 

「……またマコトのバカが何かしでかさないとも限らん。警戒しておかねば…。」

 

その頃、ゲヘナ生徒会室では…

 

「はぁあっくしゅっ――!!」

マコトが大きなくしゃみをした。

 

「…誰かマコトの先輩の噂でもしてるんですかね?」

イロハの言う通りだった。

 

「キキキッ、誰かがこのマコト様の素晴らしさを語っているに違いない…。」

 

やはりマコトはゲヘナバカマコトだった。

それはそれとして場面はペスコフ達のところに戻る。

 

「とにかくアコ、今日は100枚書だけでも書いておけ。」

「私は少しイオリの様子を見てくる…。」

 

そしてペスコフは外で仕事中のイオリの下に向かった。

 

「うぅ…………。」

 

唸りながら原稿用紙と向き合っていると、アコはアビドスの一件で気になる事を思い出した。

 

「……ところでヒナ委員長。」

 

「何?」

 

「あのアビドスのホシノという方は、お知り合いなのですか?」

 

「いや、実際に会ったのはあれが初めて。」

 

「そうでしたか。どことなく、よく知っている方のように話されていたので……。」

 

「………小鳥遊ホシノ。」

()()と呼ばれた、本物のエリート。2年前の情報部の分析では、ゲヘナにとっての潜在脅威の一つとしてリストアップされていた。」

 

「何と……全くそういった感じには見えませんでしたが……。」

「私から見たらだいぶこう、のんびりとした雰囲気と言いますか…。」

 

「アコ、外見で相手を判断するものじゃない。」

「……でも確かに、2年前とはずいぶん空気が違った。」

 

ヒナが語る、当時のホシノの印象はこうだ。

 

「元々は攻撃的戦術を得意とした、かなり好戦的なタイプで……荒っぽくて、鋭い印象だったのだけれど。」

 

どうやら当時の彼女はかなり荒んでいたようだ。

 

「………まあそれはさておき。」

「あの時、あのまま戦っていたらきっと、風紀委員の大半が戦闘不能になったはず。」

「アコ、あなたの早とちりでね。」

「それに加えてあの場にはターキン先生もいた。あのまま衝突していたら被害はそれ以上に深刻になっていたはず。全滅すらあり得た。」

 

「戦力の分析はしっかりと行ったはずだったのですが…そういった情報は……。」

 

「……まあ。ある日突然、活動報告も途切れたからね。」

「なにしろ小さい学校だし、情報部も途中から脅威とはみなさなかったのかもしれない。」

「詳しいことが知りたければ、情報部の昔の資料でも漁ってみることね。」

 

ヒナは過去のホシノの姿を思い返しながら不思議に思っていた。

 

「それにしても、小鳥遊ホシノ……あんな事がありながら、未だにアビドスを離れないで残っていたなんて……。」

「一体なぜ……?」

 

一方その頃ペスコフは……。

 

「おい…………イオリ。」

「これは一体どういう状況だっ……!!!」

 

そこにはイオリが自分の足をターキンに舐めさせようとしている異様な光景が広がっていた。

遡ること数分前。

 

「無理だ。」

 

「そんな!どうして!?」

 

「当り前だ。ゲヘナの風紀委員長とシャーレのペスコフ先生に、そんなに容易く会えるわけないだろう。」

 

「私もシャーレなんだけど!?」

 

「とにかく二人は忙しいんだ。ほら、分かったらさっさと帰れ。」シッシッ

 

ターキンは分け合ってペスコフとヒナの二人に会う必要があった。

ペスコフはシャーレとして協力を要請するため、ヒナには個人的に「ある事」を聞きたいことがあった。

 

「どうしても今じゃないと困るんだ……お願いだ…。」

 

「………。」

 

とはいえ彼女にも会わせられない理由がある。

彼女はこの間彼が差し向けられたロボットに酷い目に遭わされたのだ。

だから会わせたくない。ぶっちゃけ完全な私怨である。

 

「まあ…どうしてもっていうならそうだな………。」

 

彼女は彼の教師生命を終わらせかねないとんでもない条件をだした。

読者の皆さんもよく知っているだろう。

 

「じゃあ土下座して私の足でも舐めたら考えてやっても「わかった。」は?」

 

「土下座して…舐めればいいんだな?……を!」

 

彼はやる気満々だった。

 

「ちょちょちょ、ちょっと待てよ正気か!?」

「躊躇いとか、大人としてのプライドとか「プライドで命が救えるか!!

 

「………!?」

 

そう、何を隠そうターキンは既に生徒の命を背負って覚悟完了状態。

常人なら躊躇いたくなるようなこんなマネもこの状態になれば一切の躊躇がなくなるのだ!!

一部の紳士な先生方はそもそも、そういったことに躊躇いという概念がないかもしれないが…。

 

「私は生徒の為だったらなんだってやるさ………。」スッ

 

彼はイオリに言われたままに土下座をすると、妙にしなやかな手つきでイオリの足に手を添えて…。

 

「れぇ…。」

 

舌を出した。そして……

 

 

「お、おい、わわわ分かったからやめ「おい。」あっ。」

 

「イオリ……これが一体どういう状況なのか…。

説明してもらおうか………!!ギロッ

 

ターキンの舌がイオリの生脚に触れる寸前、間一髪でペスコフが来たことによりターキンが変態になる事は免れた。

代わりにイオリの名誉が犠牲になったが……。

 

「人の趣味にとやかく言うつもりはないが…流石にこれは正気を疑うぞ、イオリ。」

 

「ち、ちが!これはその―」

 

勿論、この鬼将軍と恐れられるペスコフに言い訳なんてものが通じるわけはなく…。

 

「何が違うんだ?私がこの目で見る限りではお前が()()()()にとんだ無礼を働き、公の場で無様を晒させ辱めようとしたその間際のようにしか見えないが?」

 

「っ……。」

イオリの顔はみるみる青ざめていった。

 

「まだ何か言いたいことはあるか……?」

 

ペスコフ先生に威圧的に詰め寄られたイオリは観念し…

「いいえ…すみませんでした。」

とあの時の威勢がパタリと消えたように弱弱しい声で答えた。

 

「よろしい。後は分かってるな?」

 

「はい……アコちゃんの所に行ってきます……。」

 

「うむ。」

 

トボトボと鉛のように重たい足取りで委員会室へと戻った。

 

あの現場に遭遇したのが普通の人間だったら、恐らくターキンの方を変態だと思うだろう。

しかしペスコフは、「俺の親友がそんな不埒な事を自らするはずがない。」という確信があった。

脚の一本や二本で揺らぐ信頼関係ではなかったのだ。

 

「全く……大丈夫だったかターキン。」

 

「ああ、ペスコフ!でも良かったのかアレで?結構落ち込んでたみたいが……。」

 

「相手はゲヘナだ。あれくらいが良い薬というものだ。」

 

「…色々苦労してたんだな、お前。」

 

「……まあな。」

「そんなことはいいが、一体どうしたんだ?今はアビドスで仕事中だと……」

 

「そうだ、緊急なんだ!ヒナも呼んできてくれ、話したいことが…。」

 

「何やら只事ではないようだな…。」

 

彼は電話で直ぐにヒナを呼び出した。

 

「やぁヒナ、わざわざ呼び出して悪いな。」

 

「ううん。別に構わないけど、話っていうのは?」

 

「ターキンが何か困ったことになっているらしい。」

 

「…ターキン先生が?」

 

「ターキン、説明してくれ。」

 

「ああ、実は………。」

 

ターキンは二人に事の顛末を全て話した。

 

「ホシノがカイザーPMCに連れていかれただと!?」

 

「小鳥遊ホシノが…!?」

「それは確かに不味いわね…アビドスが今日まで存続したのは彼女の存在が大きいから…。」

 

「その上パワーアーマーまで持っていかれた!?」

 

「不本意だが…やむを得ないかった……。」

 

「よりにもよってお前の相棒を渡してしまうとは……。」

「……まさかフュージョン・コアも!?」

 

「いや、それは予め抜いておいた…。」

 

その辺は抜け目ないターキンだった。

でもパワーアーマーは渡したし、後で「騙したな!」とか言われてもお門違いである。

 

「そうか…なら事態は幾分かマシか……依然深刻な事に変わりはないが……。」

 

不幸中の幸いにペスコフは少し安堵する。

しかしそれ以前に仲間と生徒が窮地に立たされたことへの怒りが収まらない。

 

「全く!企業というのはどこも往々にして倫理観が欠落した肥溜め小屋しかないのか?」

「子供達の未来を何だと思っているんだ!ふざけるのも大概に……!!」

「はぁ……ここでこんな事を言ってもしょうがないな……。」

 

「なんとかホシノを奴等から助け出さないと……彼女の身が危ない。」

「だから頼むペスコフ、どうか力を貸してくれ。」

 

長年地獄を共にした友の頼み、断る道理など彼にはあるわけがない。

 

「そうか………。」スッ

 

彼はマスクを外すと、目の傷に触れ、自身の意志を示す。

 

「お前にはウェイストランドで幾度も助けられてきた。」

「その借りを僅かでも返せるというならこれ以上のことはないだろう。」

「…喜んで力を貸そう、友よ。」

 

「ありがとうっ…ペスコフ…!!」

 

「気にするな。同じVaultで育った間柄だ、困ったときはお互い様というもの。」

「それに生徒とはこの世界の『未来』、如何なるものにも代えがたい宝だ。」

「それを守るのは、教師として当然の義務だろう。」

「だが、相手の戦力も未知数だ……備える越したことはないな…アイツらにも私から連絡しておこう。」

 

「是非とも頼む。」

 

「うむ……。」

「カイザーめ…我ら76に喧嘩を売る事の恐ろしさをその身に叩きこんでやる!」

「……私は少し出掛ける。」

 

「了解だ。」

 

怒り心頭のペスコフはスマホを片手にシャーレへと向かった。

ヒナは少し残念そうだった。後でお詫びをしようと思う。

 

「それで、私が呼ばれたのは何故?」

 

「実はヒナに聞きたいことが…。」

 

「聞きたいこと?」

 

「うむ、ホシノの件なんだが……」

 

 

 

 

「あの子の先輩について…何か知らないか?」

 

 

 

 

その言葉で、ヒナの表情が一瞬強張った。

 

「………!!」

「……どうしてそれを?」

 

ターキンは素直に応える。

 

「君なら何か知っているんじゃないかと思った…それに。」

「………あの子はずっとその先輩に何か未練を抱いていた。」

「晴らすことはできなくても…せめて何かしてあげたい。」

「だから頼む、彼女の先輩の事を知っているなら……教えて欲しい。」

 

「…………。」

 

ヒナは暫く悩んだが、他ならぬペスコフ先生の友人の切実な頼み。

断るわけにもいかないと諦めるように了承した。

 

「わかったわ。でもこれで一つ貸し……ってことにしてもいいかしら?」

 

「……勿論。今は少し難しいが…事が済めばなんでも言ってくれ。」

「どうにも私は二人の時間を邪魔してしまったようだしな……。」

 

「そ、それは気にしなくていい////」

 

自分の思考が顔に出ていたようで、ヒナは恥ずかしさで顔を赤らめた。

しかし、それとは別に彼に忠告する。

 

「でも、ゲヘナの生徒に『なんでも』なんて言うのは危険よ。ターキン先生。」

 

だが、それは危険蔓延るウェイストランドを生きた人間には無用な心配であった。

 

「危険なら慣れてる、それが生徒の為なら猶更。」

 

「そう……。ふふっ、やっぱり先生の言うとおりね。」

 

彼女の何気ない言葉が彼には気になった。

 

「ペスコフが、何か言ってたのか?」

 

「いいえ、ただ……あなたの事を頗るお人好しな人だって。」

 

「………よく言われる。」

 

「ええ、そうでしょうね。」

 

閑話もここで打ち止め、二人は早速本題に入った。

 

「それで、小鳥遊ホシノの先輩の事だけど…。」

「名前は梔子(くちなし)ユメ……アビドス最期の生徒会長。」

「生徒会長というその立場上、情報部も彼女には目を光らせていた。」

 

「ふむ。」

 

「……ところで先生。」

 

「なんだ?」

 

「彼女についてアビドスの子達はなんて言ってた?」

 

「……ただ学園を去ったと…。」

 

「………やっぱり。まあ、あんな事…後輩達に言えるはずないものね…。」

 

「……そのユメという子に何があったんだ?」

 

「梔子ユメは……」

 

 

 

「砂漠で遭難し、砂嵐に遭い亡くなった。」

 

 

 

それを聞いたターキンは驚くこともなくただ静かに呟いた。

「………そうか。」

 

「私はダメだった」…その言葉の意味が今、確信に変わった。

 

ヒナはそれを見て意外に思った。

「…あまり驚かないのね。」

 

しかし、彼にはそういったことに心当たりがあった。

「……何となく、そんな気はしてた。」

「ホシノが彼女について話してた時の目は……大事な人を失った目だったから。」

 

それは、両親を失ったあの日の俺と……同じだった。

 

「「…………。」」

 

やはりあの子も…亡くしていた……なら、俺にできることは……その後悔に寄り添ってあげることだろう。あの子を……もう独りにしてはいけない。

ホシノ、君は必ずシロコ達の下に連れて帰る。それが私の責任だ。

 

「……話してくれてありがとう。」

「…………それじゃ。」

 

「待って。」

 

「………?」

 

「話にはまだ続きがある。」

 

「…………。」

 

彼女が語るその悲劇の続き……それは――

 

 

 

 

 

「彼女が死んで数日経った後、保管されていた梔子ユメの遺体は突然アビドスから姿を消した。」

 

ヒナから聞かされた衝撃の事実にターキンも流石にその目を丸るめた。

 

「…それは一体…どういうことだ!?」

 

ヒナは、情報部だった頃の当時を思い出しながら語る。

 

「私はあの日、その瞬間を目撃したの。」

「誰かが、装置に繋がれた彼女の遺体をトラックに運び込む姿を……。」

「その時みた人の顔はよく覚えてないけど……とても不気味だったことだけは覚えてる。」

 

連れ去った人間の放つ言葉に表せない不気味さ…彼はそれで何かに気が付いた。。

 

「…………!!」

 

「それが…私が知る彼女の全て。」

 

誰も知らない、あの子の先輩の身に起きた事件。

それは、ターキンに一つの確信を持たせた。

 

「ああ…わかった。」

「ヒナ、重ねて礼を言わせてくれ。ありがとう。」

 

「ええ。頑張ってね、ターキン先生。」

 

「……無論だ。」

 

ヒナの話を聞いた彼は、アビドスで起きた事の全てを振り返り整理する。

 

・砂嵐によりアビドスが砂漠化

・それに伴いカイザーに借金ができる

・この頃から土地の売買が始まる

・最後に残されたホシノとユメが学校を守ろうと奮闘

・ユメが死亡

・ユメの遺体が何者が盗み出す

・その後シロコとノノミが入学(恐らくこの頃に対策委員会が始まった?)

・更に一年後にセリカとアヤネが入学

・5人で対策委員会として活動

・ターキンがアビドスを訪れる

・ヘルメット団と便利屋が襲来

・ブラックマーケットでカイザーの手がかりを発見

・風紀委員会と交戦。ペスコフの謝罪により和解

・ヒナから得た情報を基にカイザーPMCの施設を襲撃

・ホシノがカイザーに連れていかれる

・ホシノを奪還するための準備に入る(現在ここ)

 

どうも、このキヴォトスの一企業がやることにしてはこの出来事は些か陰謀が過ぎる。

アメリカの戦前の企業ならまだしも……。恐らくこの事件は、カイザー以外も絡んでいる…。

その証拠に……。

 

カチッ、カチカチッ…。

 

彼はピップボーイのメッセージを開く。

そのメッセージの差出人はこう名乗っている。

 

 

 

Black suit

 

 

 

 

その頃PMCとアビドス砂漠に向かったホシノは……

 

「な、何で……何をしている!?」

「どうしてこんなところに()()がいるんだ!!」

 

薄暗く広々とした不気味な雰囲気を放つ部屋の中央に位置する台座に、彼女は縛りつけられ拘束されていた。

そこに来るまでに通った通路の所々にある部屋、その扉の隣の窓から彼女は恐ろしいものを目撃した。

 

「ううっ……うううっ……。」

 

「あっ……あー……。」

 

その部屋では、生徒達が謎の装置に繋がれ魘されていた。

彼女はそれを見て黒服に問い詰めた。

 

「彼女達は一体何なんだ!?」

 

「なんだと言われましても……。」

「何もおかしなことではありませんよ、ホシノさん。」

「彼女達はカイザーに雇われた兵士です。」

「そして今は、その雇い主であるカイザーPMCの兵力を底上げする為に、ここでちょっとした実験プログラムに参加してもらっています。」

「……アビドスを手に入れる為に…。」

 

黒服はカイザーがアビドスを手に入れようとしている事を彼女に告げた。

 

「何っ!?…そんな、話が違うぞ!!」

 

彼女の叫びに彼はただ冷たく笑いかける。

 

「くくく……勿論、あの借金の大半はきちんと返済させていただきますとも。それが、私たちの間に交わされた約束ですから。」

「それはそうとして……あなたが退学してしまい、残念ながらアビドス高等学校にはこれ以上、公的な生徒会メンバーが残っていないようですね。それでは学校は成り立たないでしょう。」

 

それは、自身に罠に嵌められたことを彼女に告げる言葉だった。

 

「……!!」

 

黒服、この存在にはアビドスを助けるつもりなど元からなかった。

こいつはただ……自身の目的のために『生徒』を利用した…それだけだった。

 

「私たちが何故、あんなくだらない企業の、詐欺まがいの行為を支援していたのだと思いますか?自治区の土地を奪ったところで、ブラックマーケットのような無法地帯が一つ増えるだけです。」

「そんな場所は、このキヴォトスにいくらでもあります。」

 

彼は奇妙に口角を吊り上げる。

 

「しかし……もし、企業を主体とした新たな学園が誕生したら……?」

「アビドスに現れるその新しい存在は、果たしてこのキヴォトスにどんな影響をもたらすのか、とても興味深いとは思いませんか?」

 

それは、Vault-tecがここに存在したらやり兼ねないであろう悪趣味な社会実験だった。

 

「……っ!」

 

と言ったものの、それは彼からすればあくまでついででしかない。

 

「……しかし、これは単なる余興に過ぎません。」

「ホシノさん、私たちの目的は最初からあなたでした。」

 

彼は最初から彼女を標的にしていたことを話した。

 

「あなたに契約書へサインをしてもらうこと、あなたに関する全ての権利を頂くこと。」

「その目的のために利害関係が一致したので、カイザーコーポレーションに協力していた。」

「ただそれだけのことです。」

「何か勘違いされていたようですね……誤解を招いたのなら謝罪しましょう。しかし私は最初から、カイザーの所属ではありません。「私共の企業」がカイザーコーポレーションだとは一度も言っていないはずです。」

 

カイザー社と手を組んでまで黒服がホシノを狙う理由。それは彼女の力にあった。

 

「あなたのような()()()()()()()()()()を手に入れたというのに、まさか、勿体ない形で消耗させるなんてことは致しません。」

 

ホシノの光を失った瞳を覗き込みながら黒服は言う。

 

「あなたを実験体として研究し、分析し、理解する。」

「この興味深い実験こそが、私たちが観測を渇望していたもの。」

「つまりはそういう事です。」

 

彼はそう言葉を締めくくり、「実験室」の扉を閉ざした。

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

オズワルドはペスコフからの連絡を受けて今、トリニティ総合学園を訪れていた。

 

「ターキンが助けを求めてる…。」

「くくく……今日は人生最良の日かもなぁ……。」

「なんたって……」

 

ヘルメットの下で邪悪に微笑む彼の胸の内は……

 

「彼が積み重ねた献身に遂に報いる事ができる…ああ、なんて素晴らしいことだろう!」

 

彼もまたペスコフと同じく友の力に慣れることを嬉々としていた。少し様子が変にも見えるが…。

そんなオズワルドが鼻歌交じりに校舎の廊下を進むと、テラスに通じる扉をあけた。

 

ガチャ……

 

「――なんですっ。お願いします!」

 

扉を開けた先では、ヒフミがティーパーティーの主要メンバーの一人に何かを懇願していた。

 

「ヒフミ。」

 

「う、うええっ!?お、オズワルド先生!!」

 

「あら、オズワルド先生、いらしていたのですか。」

「今日は他に用があると伺っていたのですが…今日はどのようなご用が?」

 

「予定が急遽変更になった。今回はそれで君に用がある。」

「単刀直入に…アビドスについてだ。」

 

トリニティ総合学園「ティーパーティー」のメンバー、桐藤ナギサはこれといった反応は見せずに言う。

 

「ああ、その事でしたら、今ヒフミさんから事情を伺っていた所です。」

 

「それなら話は早い、申し訳ないが、少しばかり力を貸してほしい。」

「友の頼みなんだ。私からもどうか頼む。」

 

「そうですね…お二人の言葉が事実なら、これは聞き逃すわけにはいきません。」

「その上オズワルド先生にはヒフミさんの件でお世話になりましたし……無下にするわけにもいかないでしょう。」

 

彼女が言うヒフミの一件と言うのは、ヒフミがこっそりブラックマーケットでグッズを買いに出かけたのを彼が必死になって探し回っていたことを言っている。

もっと言うと、その後彼女は見つかり、普通に厳重注意を受けた。

 

 

しかし彼女がモモフレンズを求める限り、その危険行為が止まる事はないだろう。

 

 

それとは別にナギサはカイザーの存在はこの学園の不安要素だと考えている。

 

「そのPMCという企業の存在が我が校の生徒達に良くない影響を及ぼしかねない事も確かです。」

「今回はちょっとした例外という事で、何か考えた方が良さそうですね。」

 

「…感謝するよナギサ。この恩は忘れない。」

 

この言葉にナギサは意味深な笑みを浮かべた。

 

「そうですか…でしたら、例の条約でシャーレの力を貸していただいても構いませんね?」

 

「勿論。ペスコフと話し合う予定もある。是非とも手伝わせてほしい。」

 

「ええ、お願いします。」

 

「それではアビドスへの支援ですが……そうですね、確かちょうど牽引式榴弾砲を扱う屋外の夜間授業の予定があったはずです。」

「せっかくですし、ちょっとしたピクニックなどいかがでしょう。」

 

「えっと、牽引式榴弾砲ということは……L118の…?」

 

「あとペスコフが試作したプラズマ弾の試験運用も兼ねてる。」

 

折角なので余談だが、ペスコフの趣味は兵器開発だ。

そういうこともありレジデント達は、このキヴォトスで新たな武器を手にするかもしれない…。

では話の続きを。

 

「はい。そういう事ですので、他ならないお二人にお任せします。細かいことは私の方で。」

「愛は巡り巡るもの……ヒフミさんとオズワルド先生がいつか私に愛をお返してくれる時を、楽しみにしています。ふふっ。」

 

微笑む彼女に彼はもうすっごいことを平気な顔で言い放った。

 

「待たずとも、私は二人の事を常に愛しているよ。」

 

あくまで自分の生徒として…だという事はこれを読んでいる先生達もお分かりだろう。

そこの辺りの線引きが皆しっかりしているのがシャーレの教師である。

しかしそんなことを彼女達は知る筈もなく……

 

「ふぁいっ!?////」

 

「ぶふっ!?////」バシャッ

 

突然の「愛してる」発言にヒフミは戸惑いナギサは思わず含んだ紅茶を盛大に吹き出した。

 

「……?」

 

一方でこの女たらしも甚だしい真似をしている男はただ呆けた顔をしていた。

こんな発言が平気でできてしまっているのも彼の素顔が西洋風の中々にハンサムな顔立ちをしているからだ。よく言うだろう「※ただしイケメンに限る」と。

 

「そうだっ!こうしちゃいられない。さあ、行こうヒフミ。」

 

「ふ、ふぁえ~…」シュ~~ッ

 

オズワルドは頭から湯気が立ち上るヒフミの手を引いてその場を後にした。

 

その頃アビドスでは……

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

「~♪」

 

怪我を直した紫関ラーメンの柴大将は鼻歌交じりに自身の屋台でテキパキとラーメンを作っていた。

 

「うん、大体こんなもんかな。」

と柴大将は目の前のラーメンをいつかの記憶と照らし合わせていた。

 

それはそれとして、今日は顔なじみのお客さんがここには来ていた。

これからとんでもない大戦争が始まろうと言うのに暢気なものだろう。

因みにその客というのは……

 

「わっ、屋台も良い感じじゃん!」

 

そう、便利屋である。

柴大将は手を休ませることなく紫関ラーメンの成り立ちを語る。

 

「元々、紫関ラーメンは屋台から始めた事もあってな。懐かしい気分だよ。」

 

この屋台やラーメンの材料費は便利屋のお金から、そして調理器具や食器、屋台の組み立て等はペスコフが手配していた。

その際にペスコフも礼にとラーメンをご馳走してもらったらしく、その彼曰く…

 

「味わい深いスープとコシがある麺。具材の一つ一つにも彼の拘りが感じられた…。丁寧かつ大胆な調理から生み出されるその味はこれまでの人生で味わってきた全てを優に凌駕していた。次は仲間達と一緒に食べたい。」

 

と饒舌に感想を述べていたそう。

どこぞのレスポンダーにも見習ってもらいたいものだ。

 

ちなみハルカは現在、自分が爆破したわけではないがC4を店に仕掛けたことに少なからず自責の念を感じており、死のうか迷っていた。ムツキはそれを「まあまあ」と慣れた様子で宥めている。

 

「それにしてもやめるって聞いてたけど、またお店を開くことにしてくれてよかったよ~。」

 

「ああ、ちょっと前にどっかの誰かさんが、お店の前にお金を置いて行ってくれたこともあったからな。」

 

「……。」

柴大将の話でアルは咄嗟に笑顔で誤魔化すが、気まずさが露骨に顔に出ていた。

またそれとは別に、大将はちょっとしたある世間話をする。

 

「それに、こんなご時世に俺のラーメンを気に入ってくれた奴が3人もいてな……。」

「その上全員口を揃えて「次は友人達と一緒に食べたい」なんて言うもんだからよ。」

「本当なら引退して、ゆっくりしようと思ってたんだが……。」

「そんなこと聞いたらなんだか無性に()()()()()()()って思ってな……。」

 

長年貫いてきた彼の意志は…本人の知らぬところでそっと引き継がれていた。

 

「っと、よーし出来上がりだ!」

 

大将が話している間にもうラーメンは完成し、出来立てがアル達のもとに出された。

しかしそのラーメンは……。

 

 

ドドドン!――カァァッ!

 

 

 

「580円の紫関ラーメン4杯、お待ち!」

 

あの日初めて彼女達が来店した時に出された、4人前が一つの器に盛られた大将の『粋』がマシマシにつまった特製ラーメンだった。勿論これには流石に便利屋達も驚いた。

 

「これ、また量を間違ってるきが……?」

 

「あはっ、まあ良いじゃん良いじゃ~ん。」

 

驚きはしたが、その思い出の詰まった一杯に懐かしさも感じていた。

そして……。

 

「「いただきまーす!」」

 

便利屋たちはその一杯のラーメンを4人で堪能した。

 

 

「あー美味しかった。」

 

ラーメンを食べ終えて、店を去ろうとした時だ。

 

ブゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

屋台の向かいの人気がない道路からエンジン音がひと際存在感を出しながら迫った。。

 

「?」

 

音を追った先にいたのは、愛車のバイク「ダラス」にまたがるデザート・レンジャー・コンバットアーマーを装備した男。

左腕にピップボーイを持ったその男は入植者達の頼れる保安官こと、エドワード・エイシスだった。

 

キキーーッ!!

 

エドワードは屋台の前までくるとブレーキをかけながらハンドルを切って停める。

その姿はカウボーイが手綱を引いて馬を止める姿にも似ていた。

 

「やあやあどうも!こんにちは。」

 

「おお、新しいお客さんかい?」

 

「いいや、今日は違うんだ。あんたに別の用がある。」

「俺はシャーレの人間だ。」スッ

 

保安官がバッジを見せるのと同じ仕草でシャーレの職員証を提示する。

 

「ほう、あんたもシャーレの先生か…するとターキンさんの知り合いかい?」

 

「へへっ…、知り合いも何もそいつぁ俺の()()さ……。」

 

彼の顔はヘルメットのせいでよくで見えないが、その仕草や喋り方はとても表情豊かだった。

 

「あ、相棒!凄くハードボイルドだわ……!!」

 

「あれがハードボイルドかはともかく…渋い格好だね。」

「性格も他の先生とタイプがかなり違ってるし。面白そう!」

 

便利屋達を余所に彼はここに来た理由を思い出す。

 

「って違う違うそんなことを話しに来たんじゃなかった。」

「あんた、店の切り盛りはその辺にして、避難した方がいいぜ。」

 

「避難?なんかあるのかい?」

 

「ここはもうすぐ自由発砲地帯になる……つまり、戦争が起きる…。」

 

エドワードの答えに大将も目を丸くした。

 

「戦争って……そりゃまた大層な…」

 

「気持ちはわかるぜ、いきなりそんな話をされても困るのはな。」

「だが悠長なことも言ってられない…。こうしてる間にも市民の避難は始まってるんだ。」

「だから柴大将、あんたには一刻も早くここを離れて貰う必要がある。」

 

そう、ここはさっきから道路どころか街全体から人がいなくなりつつあった。

このVAULTには生徒が直接逃げ込めるように校舎と直接つながっている入り口と、市民が避難する用の二つの入り口が設けられている。

アビドス市民は全員アビドスVAULTの前者の方へと避難しているのだ。

 

「しかしそりゃ弱ったな……せっかく屋台も用意したのに…また壊されちゃたまったもんじゃない…。」

「っていうかあんたも俺の事知ってるのか?」

 

「ああ、なんでも相棒たちが世話になったって聞いたからな。」

「店の事も聞いてるよ。……残念だったな。」

 

「まあなぁ……それで引退しようと思ったのをとりやめて再スタートしようって時にこれだもんなぁ…。」

「……はぁ。」

 

大将は突然のことに頭を抱え尻尾をぶらんと下げてしまった。

 

「大将さん……。」

 

便利屋達も大将の事を案じていた。

 

「それなら俺に任せてくれ!あんたの屋台ならこの「ダラス」で安全な場所まで牽引してってやれる。」

 

彼はそう言いながらダラスのハンドルを撫でる。

 

「それは願ってもない申し出だが……本当にいいのかい?」

 

「構うもんか!ダチが世話になってるんだここでほっとく方が酷ってやつだろ。」

「ささっ、遠慮するな!」ジャラッ

 

彼は外れない様にしっかりとチェーンでバイクと屋台を繋ぐ。

 

「よし、これで準備オッケーだぜ。」

 

「いやあ助かるよ、シャーレの旦那。」

 

彼は単に「シャーレの旦那」と呼ばれたのが気になり、自分の名を名乗る。

 

「エドワード・エイシス。」

「それが俺の名前だ。今後も世話になるだろうから覚えててくれよ?」

 

「エドワードさん…だな。よし、しっかり覚えさせてもらうよ。」

 

「よし!それじゃ行くぜ!」

 

「くれぐれも安全運転で頼むな。」

 

「勿論。これでも伊達に保安官してたワケじゃないんだぜ?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……

 

と、エンジンを吹かしていざ屋台を引っ張ろうという時だった。

呆然とその様を見ていた便利屋にエドワードは声をかけた。

 

「あ、そうだ。おい便利屋!

 

「!!」ビクッ

 

「オズワルドから依頼の連絡は届いたろ?」

「しっかり頼むぜ?」

 

彼女達が未だこのアビドスにいた理由、それはオズワルド先生からの依頼だった。

[カイザーを倒すのに協力して欲しい]という。

 

「っ!!」

「……ええ!任せて頂戴!」

 

彼女の返事を聞いた彼は満足そうに屋台を連れ安全な何処かへとダラスを走らせた。

 

ブロロロロロロロ……

 

「じゃあな~!あんまし悪さすんなよ~しょっぴくからな~!」クルクルクル…。

SSAをくるりと回してちょっとばかしの牽制も兼ねながら、彼は別れの挨拶を告げた。

その牽制はしっかりと彼女達に効いていたようで……。

 

「…あの人絶対に敵にしたら厄介なタイプだよね。」

 

「うん、間違いない。」

 

「け、消しますか?」

 

「無謀だからやめときなよハルカちゃん。ターキン先生で思い知ったでしょ?」

 

「あとあの鬼将軍でもね。」

言わずもがなペスコフの事である。

 

彼女達がそんなやり取りをする中、アルは始終彼の姿に目を輝かせていた。

ダイハーズ(ターキン)以来の輝きっぷりを見せていた。

 

情に厚く、クールで渋くてユーモアのある人物。

何というか……それは彼女にブッ刺さっていたようだ。

アルからしてみれば、彼が秩序側の人間であることは悔やまれるところだろう…。

 

「さて、そろそろ行くわよ。」

 

「……社長、本当に行くの?」

 

何故、便利屋68が雇い主であるカイザーを裏切りシャーレの味方についたか……。

それは極めて単純、()()()をつけたのだ。

オズワルドからカイザーの話を聞いた彼女たちは、彼らの依頼を受けた事を激しく後悔した。

彼女達が目指すのは一流の悪党の道、人の道を外れた外道に成り下がるなどまっぴらだった。

そんな相手に手を貸すくらいなら、ここで裏切って一発お見舞いしてやった方がいいとアルは判断した。

 

「いくらオズワルド先生からの依頼でも、PMCは相当な強敵だよ。」

「失敗だってあり得るかもしれない……。」

 

「失敗を恐れてちゃ真のアウトローになるには程遠いわ、カヨコ。」

 

「おお、流石アルちゃん!この間風紀委員長からびびって逃げ出したとは思えない!」

 

「う、うるさいわね!!あ、アレは別に依頼でもなんでもなかったし……わ、割に合わなかっただけよ!」

「……それに、ここのラーメンまた食べたいし…。」

 

「……社長。」

 

「アルちゃん……。」

 

「アル様……。」

 

ふと顔を覗かせた彼女のあどけない純朴な思いに、思わず生暖かい視線を送るムツキ達。

 

「……さあ、私と一緒に地獄の底までついてくる覚悟はできたかしら?」

 

「くふふっ……。」

 

「はあ……仕方ない…。」

 

「はい!アル様の為ならたとえ地獄の底だろうと、どこまでついて行きます!!」

 

「ふふっ……それじゃあ、行きましょうか。」バッ

 

便利屋達も覚悟も決め、合流地点へと向かった。

 

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

夕暮れ、ターキンを除くシャーレの先生達はアビドス校庭に設営されたテントに集結していた。

 

「よし、これで集まったか?」

 

「いや待て、彼がまだ来てない。」

 

「そうだぜオズ、ターキンはともかくあいつが来てくれない限りは話を進められない。」

 

 

「お~~い!!」

 

噂をすれば影が差すということわざがあるように、その人物はちょうどいいタイミングでやってきた。

 

アビドスの校門の向こうからこちらに高速で迫る人影、その正体は。

 

 

ガッガッガッガッッ!!

 

 

パワーアーマー、『T-60』だ。

 

T-60、デザインはT-45に似ているがその性能には雲泥の差がある。

当時米軍ではトップクラスの性能を誇ったT-51型とプロトタイプながら優れた整備性を持ったT-45の両方の特性を兼ね備えた最も実用的なモデルだ。

米中戦争時に大量生産され、T-60が送り込まれた戦場ではその性能を存分に振るい、アラスカ州 アンカレッジで大量の戦果を上げた。

 

その性能を理解しいたウェイストランドの軍事組織、ブラザーフッド・オブ・スティールことB.O.S.はこのパワーアーマーを回収、T-51と併用しながら運用していた。

 

そんなT-60に乗っている彼は……

 

「遅れてすまない、少しアレの整備に手間取ってしまってな。」

 

「気にするな。アレを依頼したのは私なんだ。」

「お前はこの中では一番手先が器用な方だからな。[グーンズ]。」

 

「あれでターキンを助けられるなら大儲けだろうな。」

 

ヴィクター・ロドリゲス・グーンズ

 

人種はエドワードと同じヒスパニックで、お互い遠い親戚である。

彼もまた例に漏れずVault76の生まれであり、彼らの親友だ。

Vaultでの生活において特に目立った事はなかったが、友人たちと健全な関係を築いていた。

来たる再生の日、Vault76を発った彼はB.O.S.の存在を知る。

彼らがその最期を迎えたディファイアンス砦を単独で奪還した彼は、彼らの無念を晴らすべく遺品のT-60に乗り込み、エンクレイヴが生み出したスコーチビーストを殲滅するためファイヤーブリーザーとなったターキンと手を組んで焦土作戦に加わった。

焦土作戦後、新たにカルフォルニアから派遣されたB.O.S.の部隊と合流した彼はそこでブラックバーンが引き起こしたスーパーミュータントの事件の解決に大きく貢献しナイトに昇格。

特にヤツの人体実験でスーパーミュータントにされかけた入植者をターキンと共に救出した話は今もなおファウンデーションの人々に語り継がれている。

その当時は上司であるナイト・シンとリーダーのパラディン・ラフマーニの意見が衝突し、関係に亀裂が入る事態も起きたが、彼が西へと向かうシンを追いかけて引き止め、二人の仲を取り持ち、安定を取り戻した。

 

彼の性格は一言でいえば情熱的。

情に厚く、それでいて冷静、己のナイトの役目に誇りを持っている。

 

因みに当時の彼の楽しみは回収した技術データを片手にスクライブ・バルデスに会うことだった。所謂片思いである。

そんなこともあり、彼はナイトでありながらスクライブ顔負けの知識も持ち合わせている。

 

それでは最後の教師の解説も済んだところで話の続きに戻ろう。

教員たちはカイザー侵攻に際して対策会議を行っていた。

 

「じゃあ全員集まった事だし今回の作戦をここで今一度、共有しておこう。」

 

「私とヒナが務める迎撃部隊「ストライクチーム」はカイザーPMCを兵力をこの確認したした次第、いつでもアビドスと共に作戦に移行できるようここで待機する。」

 

「ちゃんと対策委員会にそのことは話しておいたか?」

 

「無論だ、作戦についても既に連絡している。後はVaultの扉が開くのを待つのみだ。」

 

「なるほど。」

 

「エドワードはロボットで構成されたセキュリティ・ユニット「ブラボー部隊」の特別警戒チームと合流しアビドスの市街地を巡回し、異常があれば随時報告してくれ。僅かな変化も見逃すな。」

 

「ラジャー、任せとけ。」

 

「グーンズはベルチバードに搭乗し、ベルチボット8機と共に地上のブラボー部隊と協力しながら上空から周辺を巡回、敵勢力を確認した場合至急連絡してくれ。」

 

「了解。」

 

「オズワルドはヒフミ達の砲撃支援をより確実なものとするため戦闘発生時に敵の配置を特定する偵察班として便利屋達と行動してもらう。交戦は自由だが、無理はするな。」

 

「了解した。最善を尽くそう。」

 

「よし、後は今夜…連中がツラを出すのを待つのみだ。」

「我々のモットーは覚えているな?」

 

「「「当然」だ」だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人は、(War...)過ちを繰り返す。(War never changes...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―───────────────────────────────────────────

 

 

日が沈んだシャーレのオフィスには、ターキン先生がいた。

 

「初めて来たときは山積みだったのになぁ…。」

 

彼は懐かしそうに、綺麗に整頓されたデスクを見た。

 

「…機材も増えてるな。」

「……これが終われば、ここでの仕事もペスコフ達と一緒にできるのかなぁ…。」

「………。」

 

何気ない日常を夢見た後、彼はシッテムの箱を取り出した。

 

「………。」

 

アロナはくうくうと机で寝息を立てている。

 

「……これでは風邪をひいてしまうな。」

 

AIが風邪を引くことはないだろうが……今は放っておけなかった。

シッテムの箱の中の「教室」に入ると、持ってきた寝袋に彼女をそっと入れた。

 

「………お休みアロナ。」

 

彼は彼女の頭を名残惜しそうに撫でると、教室を出てシッテムの箱を自分の机に置いた。

 

「…よし。」

 

彼が部室を去ろうとした時、彼女の寝言が聞こえた。

 

『むにゃ……先生は…私が………まもり………ます……。』

 

彼女の健気な寝言に目が潤む。しかし…彼女にも限界はある。

 

「……君には託された未来がある。」

「………ごめんな。」

 

彼はそう言い残し……彼女を置いて一人シャーレを出た。

ここで…彼女を失うわけにはいかない。

 

「………。」グゥッ…

 

ターキンは決意を拳に固めて、ピップボーイのメッセージを頼りに……暗い街へと歩き出した。

 

「あなた様……。」

 

前を見据える彼には、背後の影から心配そうに見つめる少女に気づくことはない。

 

 

 

 

 

次回、ターキンの大人としての戦いが始まる。




というわけでストーリーを改編した結果、ゲマトリアとカイザーがVault-tecに迫る勢いで倫理ガバガバ企業になってしまいました。
それに伴ってレジデント達の怒りのボルテージも急上昇…。
そしてユメ先輩の展開に関しては意見が分かれると思いましたし凄く悩みましたが……
もうこうなったらいけるとこまで逝ってやろうと思います。何事も思い切りです。

次回へと続きます……

今回も読んでいただきありがとうございます。
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