Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
対策委員会は完結したと言ったな?
アレは嘘だ。
はい、本当にすみません。説明させてください。
と言っても事は割と単純でして……。
作者「ふう!ようやく完結したぜぇ!いやっほーい!!」
作者「丁度いいし今までの話の加筆修正とかしよっかな~。」
作者「……。」
作者「……ん???」
作者「そういえば……後日談書いてなくね!?」
アホ「書かないとダメじゃね!?」
ドアホ「次章書くとか馬鹿面下げて言ってる場合じゃなくね!!!?」
超ドアホ「ってかビナー戦も書かないとダメじゃね!!!?」
超ドアホ2「そしたら復興編だいぶ先になるくね!?!?」
超ドアホ3「そ れ っ て や ば く ね !!!?」
と思って急遽執筆しました。
えー毎度のことながら肝心なところで頭が抜けてる作者でした。
本当にすいませんでした。そういう訳ですので復興編暫く延期します。
そろそろ真面目にTODOリストとか作るべきでしょうか……。
そして今回はパートごとに分けさせてもらいました。
後日談は次章にもつながる内容になっているので良ければ是非。
アビドスで大仕事を終え、帰還したシャーレの教師達は同日夜…再びアビドスに来ていた。
その目的はたった一つ。
目の前にある屋台だ。
「よっ、大将!」
「おお!エドワードさんに、ターキンさん!」
「これはこれは、皆さんお揃いだな。いらっしゃい!」
そう、彼らの目的は何を隠そう紫関ラーメンである。
なんでも教師達は事が済んだら皆で行こうと前から話し合っていたのだ。
そんな彼らを柴大将は尻尾を大きく振りながら出迎えてくれた。
まるで仕事から帰ってきた主人を出迎える愛犬のようだ。
「柴大将!元気そうで良かった!」
「前よりも何だか活力に満ちてるな?何か良い事でも?」
オズワルドとターキンはあの現場に遭遇していたため大将の活気に満ちた姿に安堵すると同時に、二人は大将があの一件で少し落ち込んでいてもおかしくない。そう思っていたのでそれが少しばかり不思議だった。
「そうだなぁ、このところ屋台を始めてから若い頃を思い出しちまってえらく気合が入ってるんだ。」
「ところでそこの兄ちゃんも先生達の友人か?」
「ああ、紹介するよ。」
「彼はグーンズ。私たちの同僚であり、良き友人だ。」
「初めまして大将。話はターキンからお伺いしてます。」
「美味しいラーメンを作ってくれる神様みたいな店主さんだと……。」
「ははは!流石に神様なんて大それたもんでもねぇよ。」
大将は照れくさそうに言う。
それはそれとして彼らの気持ちは十分に受け取っていた。
「だがそこまで言ってくれるたぁ、ラーメン屋冥利に尽きるってもんだよなぁ…。」
「こいつぁ、ますます腕が鳴るってもんだな!」
「それじゃ皆さん方、注文はどうする?」
「紫関ラーメンを頼む。」
「俺も!」
「では私もそれで。」
「同じく。」
「私もそれで頼むよ。」
教師達の注文は同じだった。
初めて皆で集まって食べるラーメン、この場は一旦好みを置いてこの店の定番で足並みを揃えた。
「よし、紫関ラーメン5杯だな。」
「ちょっと待っててくれな。」ササッ
伝票をすらすらっと書き留めるとそのまま調理を始めた。
店舗だった時とは違い、カウンターの目の前に台所がある屋台は、料理人の手捌きを直に拝むことができる上、ちょっとした親しみもそこから感じる事ができた。
「紫関ラーメンはいいぞ。」
「食ってみな、飛ぶぞ。」
「オズ、さてはお前それが言いたかっただけだな?」
「この間コメディーショーを見てつい……。」
ターキンとオズワルドの先にウェイストランで焦げた脳みそをラーメンで焼き増しされた二人はそう力強く大将のラーメンに太鼓判を押した。
「そうか…それは楽しみだな。」
グーンズが未だ味わった事がない「ラーメン」に胸…というよりは胃を高鳴らせていた。
その間にせっせと大将は料理を作り数分後には盛り付けを終わらせ彼らの前に器を並べていた。
提供されたラーメンは、通常より量が増えていた。体感1.7倍ほど…しかし、彼らにそんな大盛りを頼んだ覚え勿論はない。
「はい、紫関ラーメン5杯お待ち!」
「大盛りはサービスだ。」
「おお!いいのか!?」
「これは少し財布の紐を緩めておいた方が良さそうだな。」
そんな冗談交じりのペスコフの一言に大将は待ったをかけた。
「いいんや!値段はそのままで構わねぇよ。」
「なんてたって…あんた達には凄く世話になったんだ。」
「店の事もそうだが、何よりこの街を命懸けで守ってくれた。」
そう、彼らが守ったのはなにもアビドス高校だけではない。
この街で生きる人々の命、暮らし、文化、社会……。
アビドス自治区そのものをレジデント達は守り抜いた。
『…………。』
それに気付かされた彼らは…気が付けば合衆国とこの街を重ねていた。
悲しいことに、自分達では祖国を救う事はついに叶うことはなかった。とても悔しい事ではあるが……その事実だけは受け入れるしかない。
それでも、生徒達の
その事実に、後悔を遺して逝ったレジデント達は少し心が救われた気がした。
彼らがそう思う中、大将は続けて言った。
「俺もこれぐらいはあんた達にしてやらなくちゃ…示しがつかねぇのよ。」
「だから今日くらいは好きなだけ食べてってくれ。替え玉もたんまりあるからな。」
大将は後ろで吊り下げている面の入ったてぼを指さした。
「これはこれは…至れり尽くせりだな…。」
「せっかくのご厚意だ、冷めないうちに頂こう。」
「こうなったら食い倒れるまで食おうじゃないか。」
「あっ!」
ペスコフとグーンズが箸に手を伸ばした時、ターキンはある事を思いついた。
「せっかくだ、皆でアレをやらないか?」
「ほら、生徒達がランチの前によくやってるアレ。分かるだろ?」
「一度皆でやりたかったんだ。な、いいだろ?」
「ああ、アレか…いいな。」
彼の提案に賛成した一同は両手を合わせ…
『いただきまーす!』
そして彼らの少し遅い夕飯が始まった。
「ふーっふーっ…。」
ズズーッ
全員が勢いよく麺を啜った。
「うんめ~っ!!」
「やっぱりこれだ!この味だ!!」
「あ~、Vaultを出てから初めてまともな飯を食った時を思い出すなぁ…。」
「いっけねぇ、涙でラーメンがしょっぱくなる…。」
エドワードは直ぐにコートの袖で目を拭った。
「わかるぞ…俺も暫くのドッグフード生活だった直後にこれを食った時は脳内麻薬がドバドバだった。」
「下手に薬やるよりこれを啜ってる時の方がずっと幸福を味わえる。」
「間違いないな…これはヤクよりキマる。」
傍から聞いたかドン引き間違いない会話だが、幸い身内しかないので大した問題にはならなかった。
大将は怖いから聞かなかったことにした。
そう語るターキンとオズワルドにグーンズも頭を縦に振り肯定する。
「ああ、実に美味い…この限られた空間の中でこれほど完成された料理を作れるとは…。」
「柴大将、あなたは天才だ!」ズルルルルッ!
ラーメンの完成度に感動したグーンズは大将の腕の良さを褒めちぎった。
「おいおいよしてくれよ、照れるな全く…。」
そういう大将は嬉しそうに尻尾を勢いよく振っていた。
しかしそんな事お構いなしに彼らは目の前のラーメンにがっついていた。
「ガルルルルルルルルッ!!」ガブゥッ!
「oh...」
ターキンに至っては昨日までまともな食事を摂っていなかったせいもあってか、チャーシューに食らいつく姿がまるで100年くらい断食してたフェラル・グールだった。仲間達は少し引いた。
そうしてラーメンを皆が堪能している中、大将は静かに言う。
「本当に…ありがとう…。」
柴大将は、彼らには返しても返しきれないほどの恩があると思っている。
「セリカちゃんや生徒たち達は特にそうだ……。」
「あの子達も実は夕方に来てくれてんだが…本当に嬉しそうに先生達の事話してたよ。」
「もういつぶりなになるんだろうなぁ…あの子達の心の底からの笑顔見たのは……本当に…。」
大将は初めてお給料をもらった時のセリカの笑顔を思い出して目が潤んだ。
「いつもは申し訳なさで少し引き攣らせてたのになぁ……。」
「見れて…嬉しかったなぁ……。」
大将はしみじみと自分の感情を客に吐露した。
そして自分のこれまでの無念を語った。
「……ここの大人達には、カイザーに抗う力なんてもうなかった。」
「悔しいが…あの子達を助けてやれる懐なんてどこにもなかったんだ……。」
「でかい借金も、奪われていった土地も……俺達でもどうにもできない問題だった。」
「俺には美味いラーメンを作ることでしかあの子達を支えてやれなかった…。」
「そのラーメンすらも、俺の手からなくなっちまう所だった…。」
「「………。」」
彼は恐らく大将は今まで一番彼女達の傍にいた大人だった筈だ……それでも、あの子達に何もしてあげられなかった事がどれだけ……歯がゆく悔しいことだったのか…想像に難くはなかった。
「だから俺は…あんた達には心底から感謝してる。」
「あの子達を、アビドスを救ってくれたことに………いくら礼を言っても足りない。」
そんな中、話を聞きながらラーメンを食べ進めていたターキンは箸をそっと置いて言う。
「まだです。」
「?」
「アビドスは…まだ救えてはいません。」
「俺はただ、自分の生徒を助けただけです。」
「何も礼に及ぶことなんてしてはいませんよ。」
「仕事ですから。」
前に大将が病室で彼に頼み込んだ時と同じ答えを、彼は言った。
「………。」
「そうだな……あんたはそういう人だよ。」
彼のあまりの謙虚さに最初は戸惑いを隠せなかったが、大将は直ぐに納得した。
恐ろしい顔にはとても似つかわしくない、底知れぬ善性……。
そんなターキンは、ずっとアビドスの天候に目をつけていた。
「アビドスが、アビドス高校があんな事になったのは……」
「元を辿ればここを不毛の砂地に変えた天変地異だ。」
「天変地異……砂嵐の事か?」
「そう、何年にも亘って昔この地を襲い続けた砂嵐。」
「それは今でも局所的に発生している…。」
「この砂嵐による砂漠化が続く限り……アビドスの未来はずっと砂に埋もれたままだ。」
ターキンからすれば、自分のこれまでの行動はアビドスの未来を始める為の命懸けの下準備に過ぎなかった。
彼にとっては、ここからが本番ですらあった。
「……。」
その沈黙の中、大将は思った。
アビドスの砂嵐、彼の言う通り…思えば全てはそこから始まった。
抗いようがなく、ただ耐え忍ぶしかない自然の猛威…。
例え軍隊を圧倒する武力と、法の支配を越えた権力を持っていようと、人は自然には勝てない。
そんな大人でもどうにもできない災害に……どう立ち向かえばいい?
アビドスを支配していたのは、カイザーでも市民でも学園でもない…
アビドスそのものだというのに…。
長年そこで暮らしてきたからこそわかる、故郷の恐ろしさ……
それは大人たちを抗うよりも先に挫折させ、人々から希望が消え……
そしてこの地は見限られた……ただ無垢な子供たちを残して。
しかし…もう心配する必要はない。
自然が剥き出す牙を喉笛に突き立てられる大地、アパラチア・ウェイストランド。
レジデント達はそんな愛しくも狂暴な故郷に首輪をつけた。
そんなとんでもない事をしでかしたイカれた奴らが今、ここにいる。
大将がそんなレジデント達の底の知れなさを改めて思い知るのは…もう少し後になる。
その後ターキン達は替え玉を2、3個頼み、存分にラーメンを堪能した。
『ごちそうさまでした。』パッ
幸せなひと時は気が付けばもう過ぎていて、名残惜しいが…
また来ればいい。
ああ、本当にいつぶりだろうか……明日が来る心配をせずに済むのは。
そう思いながら会計を済ませる。
いつレイダーがC.A.M.P.に忍び込んで喉笛を掻き切りに来るのか、
いつ数分前まで自分だった塊がスーパーミュータントの肉袋の中に押し込められるのか、
いつどこかに埋もれた不発弾が爆発して…廃墟の壁のシミになるのか、
ここでは少なくとも…そんな事を考える必要はない。
「安心」……なんて懐かしい言葉なんだ。
ごく普通に過ぎ去る何気ない瞬間の特別さを噛み締めながら、彼らは帰路に就いた。
皆で人がいない夜道を歩いていると、ペスコフはターキンに単刀直入に訊いた。
「………それで」
「何か策はあるのか?ターキン。」
「…ああ。」
「ずっとここに来てからこれが使えるんじゃないかと考えてたんだ。」
彼が考えていた策……それはアパラチアにあった装置を使う事だ。
「なあオズ…シェナンドーのこと覚えてるよな?」
「はっ、覚えてるも何も…。」
シェナンドー…そこ彼の全てが始まった場所…途方もない飢えと渇きの根源だった。
反芻する度……頭が痛む。
バージニア州シェナンドー国立公園
アメリカが環境を保護していたの国立公園の一つだ。戦前には山の尾根に沿って敷かれているスカイライン・ドライブがあった自然豊かな地域だった。
そして、中央に立つダークホロー邸を中心に広がるその地下には気象学研究を行っていたVault63があった。
しかしある実験が原因でVault63では大規模な「事故」が発生した。その結果、遠くウェルチという町の近くにある積灰の山にあったVault63の防爆扉は事故による爆発により76がある森林地帯の道路まで飛ばされた。
その扉の謎を追うべく、オズワルドはそこへ向かったが……まさかあんなことになるなんて……。
「あそこで俺の全てが変わった………。」
「人生も…生きる意味も……何もかも。」
「あっ、ああ…………そう……だな。」
彼は不本意に辛い記憶に触れてしまった事を素直に謝った。
「すまないオズ…野暮なこと聞いてしまって……。」
「悪気はなかったんだ。」
「分かってる、気にするな。」
オズワルドは静かに謝罪を受け入れた。
その横でペスコフはターキンの考えを察していた。
そして気まずい空気を流す為にそのまま話を切りだした。
「シェナンドー…そして砂嵐……ふむ。」
「ああ、アレをつかうのか。」
「そうだ。」
「天候管理施設……それをこのアビドス砂漠に建造する。」
天候管理施設、戦前のアメリカ政府のATLAS計画をVault63が引き継いだ結果開発された装置だ。
開発者にはロブコの社員も関わっている。
施設の機能は実にシンプル、特定の地域の天候をコントロールできるというものだ。
ボタン一つで天気を快晴にも豪雨にも猛吹雪にもできる。
その便利さの反面、使い方によっては恐ろしい気象兵器にもなり得てしまう。
実際ペンタゴンにはこの装置の兵器利用に関する議論が交わされた議事録も残っていた。
「なるほどな………しかしなぁ…。」
ターキンの考えてる事を理解はしたが、一つ気がかりなことがあった。
「問題なのはそれで本当に
「アパラチアじゃ砂嵐どころか砂漠すらなかった。」
「雨雲を発生させたり消したりはできても、果たして大気中に飛散した大量の砂粒をそれでコントロールできるのか?」
「それについてなんだが、既に実証して効果を確認済みだ。」
その辺はぬかりないターキンだった。さながら某宇宙忍者に出てくる悪魔博士である。
因みにこれに関しては実は以前にアビドスの改装工事でちょっとだけ触れていたりする。
「以前、C.A.M.P.用の小型天候管理施設をアビドス高校の校舎に置いたんだ。」
「数日かけて周囲を観察したか、周辺では砂嵐は一つも観測されなかった。」
「それはそれは…なかなか用意がいいな。」
「後でデータを貰ってもいいか?」
「勿論、後でコピーを用意するよ。」
そのターキンの興味深い話にペスコフは知的好奇心が刺激された。
エンクレイヴの将軍のVault時代からの科学者気質は健在だった。
そしてここからが本題だった。
「さっきも言ったように、天候管理施設で砂嵐を抑制することはできる。」
「だがそれを幾つもそこら中に配置するわけにもいかない。」
「アビドス前途をC.A.M.P.だけじゃ限度があるし、なにより管理しきれない。」
「それはそうだな。」
「だから……。」
「これを砂漠の中央に立てるんだ。」
ターキンはピップボーイからフォルダを取り出しそこから一枚の写真を取り出した。
そこに写っていたのは巨大な建物で、一見するれば天体観測施設の様にも見えた。
「ホークスビル天候管理施設。」
この建物を一言で説明するならC.A.M.P.用の天候管理施設を巨大化させたものだ。
そしてそこはオズワルドがあの男の企みを止めた決戦の舞台でもある。
「この大きさならたった一つでアビドス全体の天候をコントロールできる。」
「資材や費用なら
「だが大丈夫なのか?知ってるだろ、あのストームの原因は……。」
ペスコフはアパラチアを騒がせたストームの存在を考えて建造には少し慎重になっていた。
そうなることは無理もない。
Vault63の元監督官、ヒューゴシュトルツ……シェナンドーで起きた大事件…国立公園を覆う巨大なストームと電気を帯びた謎のグール「ロスト」の発生の元凶はこの男だった。
ヒューゴは視覚障害を患っていたがそれを感じさせない程優秀な男だった。やり手のビジネスマンで、妻を深く愛していた。その反面狡猾で、自分の目的の為ならどこまでも非情で冷徹だった。
しかし天候管理施設の事故により彼の妻はロストと化し、意識を失った。
妻を取り戻したかった彼は、知ってか知らずかロストの自我を支配する計画を企てオズワルドを利用した。
その陰謀を知ったオズワルドはヒューゴの計画を阻止し、身柄を拘束された彼は実験体としてVault63で冷凍保存された。
彼の体はロストをグールに戻すための実験体として利用されることになった。
それがシェナンドーで巻き起こった事件の顛末だった……。
「少なくともここにヒューゴ・シュトルツはいない。」
「しかし…うん、やはり強力なセキュリティは必要だろうな…。」
「絶対にな。」
「まぁ、とにかく建設に取り掛かることになったら呼んでくれ。」
「俺は実際に装置を使ったこともあるからな。力になれる筈だ。」
「ああ、ありがとうオズ。」
シャーレへ戻る道中で、教師達はこれまで誰も成し遂げられる者はいなかった「アビドス復興」の計画を着実に練っていた。
「それじゃ、また明日。」
シャーレの前に着くと先生達はそのまま解散し、それぞれC.A.M.P.へと帰っていった。
ターキンを除いて…
カツン……カツン………
地下室を歩くとクラフトチェンバーを通り過ぎていき、廊下の突き当りに向かった。
そこには不自然に建てられたエレベーターがあり…ターキンはそっとボタンを押した。
ポーン
無機質な電子音が到着を知らせ、扉が開いた。
エレベーターに乗ると…緊急通報用のボタンを3回押し、脇の手すりの裏にある隠しスイッチを押した。
『……アクセスキーコードを入力してください。』
ウィーン…
自動音声が流れた途端、操作盤が内部に格納された。
そして先程まで操作盤があった場所には、キーボードのキーをそのまま取り付けたようなキーパッドが現れた。
ターキンは終始無言のまま音声の指示に従って12桁のコードを入力した。
ピッピッピ………
『コード確認、ゲストの生態スキャンを開始。』
『………スキャン完了…ターキン・ゴッドフレイ。』
『運転を再開します、到着までしばらくお待ちください。』
ゴゴゴゴゴゴ……
「………。」
待つこと丁度1分。
ポーン
『目的地に到着、ドアが開きます。』
ウィーン…
「………。」
エレベーターを降りた先は、地下洞窟だった。
人工的に掘られたこの洞窟は、通路がまっすぐ伸びていてエレベーターの両脇を通り抜けるように換気ダクトが通っていた。通路の両サイドは「
「保安と奉仕に努めます。」
「作業現場への立ち入りは現在制限されています、ご注意ください。」
「………。」
彼らの言葉を聞き流しながら進んでいくと見慣れた空間が広がっていた。
そこにあるのは……Vaultだった。
しかし、普通じゃない。
入口の周囲はライトがなく、扉は黒く塗装されていた。
まるで暗闇の中に隠そうとしているような……。
ーTHE BLACK VAULTー
このVaultには正式な名前がない。
シャーレによって秘密裏に作られた極秘情報を保管するためだけに作られたVaultだ。
連邦生徒会すらこのVaultの存在は知られていない。
秘密を守る為にも、このVaultはトップクラスの強固なセキュリティを有している。
扉を抜けると、エントランスに入る為の扉がレーザーグリッドで遮られている。
これを通過できるのは専用のバイオメトリックIDを登録しているシャーレの職員のみ。施設内はセキュリトロンとアサルトロンが巡回し、侵入者をレーザーと5mm機関銃で塵にする。塵の掃除は用務員のMr.ハンディがやってくれるから問題なし。
万が一にもこれらが突破されれば施設は直ちにロックダウンを開始する。
そして10Gyの放射線が施設全体に照射され生物が死滅するか、自我を失ったミュータントになり殺処分される。
ここまで徹底していればこの施設への不正アクセスは限りなく不可能に近い。
筋金入りのハッカーでもない限りは…。
そんなVaultにかれが一体何をしに来たのか…それは………。
ー MEDICAL BAY ー
ブラックVaultのメディカル・ベイ、医療施設だ。
ここにはとある重要な人物が隔離されていた。
彼女はこの医療用カーテンの向こうにいる。
「ふう…どうしたものかな………。」
頭を抱えながら彼は消防服を脱ぎ76のジャンプスーツに着替えた。
「まあ、やれるだけやるしかないか…。」
そして白衣と羽織ってサージカルマスクを着け…そして青色のニトリル製手袋をはめて用意をすませると、カーテンの奥へと入っていった。
ターキンがカーテンの向こうに籠り始めてから約1時間後…
「………うーん。」
ようやくでてきた彼は気が遠くなるのを感じながら唸り声を漏らすと、脇のデスクのターミナルを起動した。
試験記録 MED-0018
試験の目的
昏睡状態のキヴォトス人を覚醒させる方法の研究
被験体:梔子ユメ
学校:アビドス高等学校
学年:3年
注釈:彼女は死亡者として記録されているためアビドスから除籍されている
よって被験体が覚醒した場合の以降の処遇は現在保留中
試験を行う前に、被験体の容態を確認した。
外傷は無し、しかし長い昏睡状態の影響で身体機能は平均より低下している。
加えて脳波が極めて微弱だった。
手に触る、注射針の穿刺、微弱な電流など外部からの接触に対しても一切の反応がない
この診断を基に彼女の現在の意識レベルの評価は以下の結果となった。
JCS:レベルⅢ-300
GCS:E-1 V-1 M-1
結論として、彼女は現在重度の昏睡状態にある。
率直に言うと、彼女にとってこれはとても深刻な状態だ。
前にVault-tec大学で見つけたあらゆる医療分野に関する論文や書籍、症例を参照したが。彼女と同じような状況に陥った患者は稀も稀、非情に極めてレアなケースで、そこから回復したという記録はどこにもなかった…死亡記録は見つかったが…………全く笑えない冗談だな。
黒服は俺にならできるかもしれないと言ったが…正直自信がない。
俺はあくまでも救急隊員兼フィールドメディック、衛生兵と同じで医療における基礎中の基礎は熟知しているが専門的な医療知識は正直あまりない。学ぶ機会もそれほど多くはなかった。
更に問題なのはキヴォトスの生徒は我々が居た世界のどの人類種とも異なる全く別の種族であるという事だ。
前に、ペスコフから生徒の血液サンプルを貰った事がある。
カイザーに誘拐された生徒から了承を得たうえで提供してもらったらしい。
そして血液を調べたのだが…我々とは異なる遺伝子構造を持っていた。生徒のDNAはコーカソイド、モンゴロイド、ネグロイド……地球上に存在するどの人種とも一致しなかった。
それどころか……キヴォトスの人間は恐らくホモ・サピエンスですらない可能性がある。
まあ、よく考えれば犬や猫の耳が生えていたり角や羽が生えていたり他の動物の身体構造がある時点でその可能性しかなかったし、それは私も薄々感じていたのだが…改めてこうして現実を目の当たりにすると、なんとも衝撃的だ。
まあ、柴大将も柴犬だし……この世界ではそういうものなのだろう。
とにかく、キヴォトス人は我々とは全く異なる人類…そうなると元の世界の医療知識がそもそも通用しない可能性がある。
そのため今後暫くはメンタスを服用しながらネットでキヴォトス人とこの世界の医療に関する様々な論文、患者の症例と治療法の記述を山ほど読むことになるだろう。不幸中の幸いは、この世界の電子化された情報のおかげで部屋が本で埋まることはないということだ。
それと…まだ彼女が辛うじて生きているという事…本当によかった。
この事実だけでも、ホシノにとっては救いになる筈だ。
しかし、言葉を話すことも聞くこともできない今の彼女をホシノに合わせてもいいのだろうか…伝えたいことも伝えられない。そんな状態で彼女に会わせても……余計辛い思いをさせるだけではないのだろうか。
なんとかユメが目覚めてくれればいいんだが……できれば…天候管理施設が完成する前に…
「覚めない夢なんて無いんだ……大丈夫、きっと大丈夫だ……。」
「まぁとりあえずこんなものでいいだろ、添削は少しいるだろうが。」
カチッ
記録を終えると、彼はターミナルの電源を切ってVaultを後にした。
はーいってことでPart1はここまでです!
どうでしたかね?今回は柴大将にもスポットライトを当てて書かせてもらいました。
さーて、医療知識なんてかけらもない作者はここからどうやって付け焼刃の知識でユメ先輩を復活させるのか今後の展開が楽しみですね。(白目)
因みにオズワルドのバックストーリーはエデン条約まで温めて置く予定ですのでお楽しみに。(作者による重大なネタバレ)
今回も読んでいただきありがとうございました。
もしこの作品が面白いと思っていただけたらお気に入り、感想お願いします!
それではまた次回お会いしましょう。
余談ですけど10連5回目でセイアちゃん引きました。
元々確立が上がってるのもあると思うんですが今回が過去一運良すぎて吐きました。
声がイメージピッタリすぎて悶えました。
そして脇が凄くえっっっっっっっっっっっどい!!!たまらないね!!
4年かかったけど声優ついてよかったじゃんね☆