Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
ホロテープ保管庫 No.00臨床試験
「非公式」と記された専用の収納箱に保管された複数のホロテープ。
収納箱は暗証番号と生体認証よって厳重に施錠されている。
内容「臨床試験」
記録媒体:テキスト用ホロテープ
BlackVaultの記録保管庫収容されているホロテープ。
一般には公開されない機密情報が記録されている。
RobCo製ターミナル等のUOS搭載機器でのみ閲覧可能
注意:機密データの不正アクセスが検出された場合セキュリティプロトコル5に基づき処理される可能性があります。「処理」によるユーザーの生命に関して、管理者は一切の責任を負いません。
プロジェクトの目的
キヴォトス由来の人類種の生態に関する医学的研究及び生物学的身体機能の調査
プロジェクトリーダー:ターキン・M・ゴッドフレイ
被験体:梔子ユメ
学校:アビドス高等学校(仮)
学年:3年(仮)
最初に留意すべき点は、現在彼女はすでに死者として公的には記録されているため、アビドスから除籍されていること。そして死者と扱われた生徒が後に生きていたと判明し、尚且つ復学したという事例は過去には一件もなく、プロジェクトの成否によって、今後キヴォトスの法整備が必要になること。
よって被験体が覚醒した場合、以降の彼女の処遇は未定である。
念のため連邦生徒会のために胃薬を常備するようにすること。
臨床試験を行う前に、被験者の諸々の健康状態に関して調査を実施した。
外傷は無し、細菌、ウイルス等に感染した形跡もなし、しかし長期的な昏睡状態の影響か呼吸器、免疫等、身体機能の約91.2%が平均(一般の生徒を基準とする)より著しく低下しているため、抗生物質、栄養剤等の点滴の定期的な投与及び人工呼吸器による気道確保、生体情報モニタによるバイタルチェックは必要不可欠となっている。
加えて脳波が極めて微弱で、脳死に限りなく近い状態だと言って良い。
皮膚への接触、注射針の穿刺等、外部からの刺激に対しては一切の反応なし。
これらの調査で得た情報に基づき、意識レベルの判定を行った。
結果は、グラスゴーコーマスケール(GCS)、およびジャパンコーマスケール(JCS)の二つを用いて表記する。JCSの表記を同時に行う理由としてGCSとは違った判定基準を用いるため、多角的視点から被験者の容態をより明確に診断する目的がある。これに付け加え、キヴォトスの文化は公用語や食生活等が日本を中心とした極東アジア地域と類似している。そのためこのように他の規格から得たデータも用意しておけば、もしキヴォトスの公的医療機関の協力が必要になった場合において、素早く情報を共有できることが期待できる。
意識レベル判定結果
JCS:レベルⅢ-300
GCS:E-1 V-1 M-1
結論を述べると、現在最低レベルの昏睡状態にある。
脳死に近い言ったように、この通り彼女の容体は極めて深刻な状態だ。
かつてVault-tec大学で収集した数多くの医療に関する論文を改めて読み直した。しかし、このような事例に該当する患者が、外部からのアプローチによって覚醒したという記録は一つもなく。回復の見込みは現段階では絶望的だ。
黒服は俺にならできるかもしれないと言ったが…正直自信がない。
俺はあくまでも戦闘、救助、救急処置が可能ないわば衛生兵でしかなく、本格的な医療知識は最低限しか持ち合わせていない。
暫くはメンタスを服用しながらネットや図書館を探し回ってあらゆる論文、症例と治療法の記録を徹底的に読み漁ることになるだろう。不幸中の幸いは、電子化された情報のおかげで本で埋まる部屋の数が減るということくらいだろう。
あとは、そう…まだ彼女が辛うじて生きているという事だ…。
年 月 日
これが長期的な治療になる事は明白だ。いきなりメスで体を切り刻み薬品を投与するのはリスクに見合わず慎重に試みる必要がある。
そのため初動は昔からある様々な原始的な手段を講じる。
先ず10分おきに彼女の名前を呼びつつ覚醒を促すように声をかけるのを約4時間ほど繰り返した。
当然のことだが、やはり反応はなかった。
スヌーズを絶えず繰り返す目覚まし時計の気持ちが少しわかった気がする。少しも笑えやしない皮肉だ。
とても気が遠く感じる。
年 月 日
今回は身体的接触を用いながら前日と同様の方法を試した。
体を少し揺すったり、頬を軽く叩いたり等だ。(注釈:痛みを伴わない範囲で)
炭酸アンモニウムを主成分とする「気付け薬」も試したが…
彼女のヘイローが光ることはなかった。
最も、この長きに渡る昏睡状態の原因が未だ不明なわけだが、こんな方法ではうまくいく保証がないことは既に分かり切っていた。しかし、原因究明と並行してありとあらゆる手段を講じなければならない現状においては不可欠だ。
年 月 日
日増しにメンタスの摂取量が増えてる。
今週に入って3回目の中毒症状が出た。
過度に睡眠時間を削っていて、時々本来の業務をこなす際に気を失う。
なぜこんな事を書いている?これはユメに関する報告だ。
思考した内容をそのまま入力してしまっている。良くない。
また症状が出てる。良くない良くない良くない。
さて、よくある一般的な方法はもうほとんど試したと思う。
本日は段階を進め薬剤を用いた投薬実験を行った。
使用した薬剤はエピネフリン
注射器を使い0.15mg投与。
結果:心拍数や循環機能に良性の反応を示したが、覚醒には至らず。
予想はしてた。今日はアディクトールを服用してもう寝る。
年 月 日
凄いことが起きた。
とにかく驚くべきことだ。
先ず何が起きたのかだが、二つある。
最初にユメから初めて脳波のシグナルに変化があった。
そして二つ目、なんとヘイローが「発生」していた。監視映像から、昨日の実験を切り上げた時からすでに発生していたことが分かった。しかし覚醒状態のキヴォトス人のように常にその場にとどまることはなく、フレーム単位での点滅を繰り返していた。ガイガーカウンター見たいな挙動だった。
目を疑うほどの信じがたい出来事だった。
これに放射能が関係していることは明らかだ。
以下の説明は完全なヒューマンエラーであり、改善すべきことであることはわかっている。しかしこれにより新たな知見が得られたのは紛れもない事実だ。反省点が大いにある危険なアクシデントだったが、同時に有効活用すべき貴重なインシデントでもあることにも留意してほしい。
先日、不注意で溶剤由来の試作変異血清を室内のテーブルに放置してしまった。
原因は重度のメンタス中毒による注意力欠乏、アディクトールの効き目が悪くなっていた。
今後の対策としてしばらくはメンタスを控え、今後はカフェインで代替する。
近い内に放射性物質のサンプルを用いた臨床実験を試みる。
被爆の懸念については、今回のインシデントからキヴォトス人が放射能耐性を有することが確認された。
グールやスーパーミュータント程の高い水準ではないものの、キヴォトス人は放射能に対する抵抗能力があることが判明した。ユメの体細胞の一部に放射線を少量照射した際、破損したDNAが一般人よりも5倍のスピードで修復されていた。染色体にも異常は見つからず、細胞は正常な機能を維持した。
これは従来のがん治療の革新にもつながる大きな発見だった。
そして放射能とユメの意識への変化の因果関係について。今回発生したユメのヘイローの出現、および脳の信号パターンの変化から推測された仮説はこうだ。
「放射能に対する神経学的防御反応」
ヒトの身体には脊椎反射という身体機能がある。
火などの高温の熱源に手が触れた際、熱を感じて即座に腕を曲げたり。
あるいは、膝を叩いたときに足が高く跳ね上がったり。
意識を司る脳を介さず、脊椎が直接身体を守る機能だ。
そして更にキヴォトス人の場合には、これらに加えて放射能に対しても無意識に身体を守ろうとする反射機能が存在している可能性がある。
注目すべき点は、それが筋肉や臓器等の一塊の体組織での作用ではなく、それらを構成している細胞単位で機能する事。
もしもこの機能の存在が事実である場合。普通の人間であれば間違いなく、脊椎を中心に末梢神経および中枢神経に深刻な負荷がかかることになり最悪の場合命にも関わる。
このような通常ならあり得ない身体機能が存在する可能性を示しているのはキヴォトス人が持っている「ヘイロー」だ。
銃弾、レーザー、プラズマ、火炎、電気、様々な深刻なダメージを伴う物理現象に対して強力な耐性を持つキヴォトス人が有している天使の輪を思わせるような固有の器官。神秘の源。
このヘイローが何かしらの特殊な方法によって細胞単位での防衛機能に関する処理をしている可能性が極めて高い。というのも先ほどのインシデントでも言及した通り、事故発生時のユメから初めて観測されたヘイローは放射能に曝されてる間、激しい点滅を繰り返していた。その回数、タイミングともにPip-boyのガイガーカウンターから発せられるノイズと一致していた。
本来、キヴォトス人は睡眠や気絶といった意識のない状態になった場合ヘイローが消失する。
今回の放射能への暴露という条件下での発生は、これが身体の防御反応であると同時に、身体への警告であることも示している。ヘイロー発生と同時に起きた脳波の活性化がこれを裏付けている。
一方で放射線は自然界にごく当たり前に存在し、常に浴びるものだ。しかし生徒たちが普段過ごす日常においてこのような反応が全くないことから、おそらくキヴォトス人の身体に由来する独自の基準があるのだと思われる。
そして今、実験による説の立証が急務となった。
理論が確立されれば、彼女はついに目覚めらるかもしれない。
もう少しだけ待っていてくれ。もうすぐあわせられる。
年 月 日
先日、例の監視映像を改めて確認していた所、不審なものが映り込んでいた。
被験者が安置されているベッドの隣、テーブルの奥の陰に人型のシルエットのようなものがある。シルエットはカメラを凝視している。当然だが、特徴はどの先生にも当てはまらない。そもそも人じゃない、異常な存在なのは明らかだ。まるで子供の落書きみたいな形状で、首が極端に細長く、逆さにした水滴のような頭部でつながっていて、目の瞳が異常に大きい。とても気味が悪い。新種の
キヴォトスは未知が多い、何がいても不思議じゃない。
しかし、こいつは何の前触れもなく突然あそこに現れた。俺がいない所で、俺を見つめながら、眠る生徒のすぐ近くに。
今回ばかりはあまりに不気味で、今までにないくらい背中に寒気を感じている。キヴォトスだろうがアパラチアだろうがどこだろうが、これほど異様で身の毛がよだつものは滅多にないだろう。
これが薬物中毒による幻覚症状ならどれほどよかっただろう。
そんな「何か」が地上から一切秘匿されたBlack Vault最高クラスのセキュリティ網を突破し侵入している。
間違いなく非常にまずい状況だ。
これからセキュリティチームを編成して施設中を徹底的に捜索する。何としてでも「それ」を見つけ出し、事実を確かめなければいけない。あれが何なのか、何が目的なのか。なぜユメの傍に現れたのか。
ユメの収容室を今夜中に大至急移転する必要がある。
移転先には医療用のMr.ハンディと護衛のセキュリトロンを配備する。
今後のために下記に映像に映った存在の手書きのモンタージュを掲載しておく。